琵琶湖に浮かぶ「沖島」はかつては多く猫が住む「猫島」として人気でしたが、現在は「猫が消えた」と話題になっています。
この記事では沖島の人口や行き方やスポットやグルメなど観光のポイントや宿泊施設、猫が消えた事件をめぐる連れ去り疑惑と現在の状況などについてまとめてみました。
この記事の目次
沖島は琵琶湖にある島でかつては「猫島」として人気だった
「沖島」(おきしま)とは、琵琶湖に浮かぶ島で、日本で唯一の淡水湖に浮かぶ有人島として知られています。
かつては多くの猫が暮らし「猫島」としても知られ、訪れる人々の心を和ませてきました。しかし、ある時を境「猫が消えた」と言われるようになり現在はその姿を大きく変えています。
ここでは、沖島の基本情報から行き方(アクセス方法)、観光スポット、宿泊施設などの訪れる前にチェックすべき情報や人口減少や高齢化という課題。そして、島を揺るがした「猫が消えた」原因と疑われる連れ去り事件の噂、その後と現在の島の姿などを詳しくまとめていきます。
沖島の地理と概要
沖島は、滋賀県近江八幡市の沖合約1.5kmに位置する、琵琶湖で最大の島です周囲約6.8km、面積約1.53k㎡のこの島は、世界的にも珍しい「湖沼の有人島」として学術的にも注目されています。
沖島の大部分は山地が湖岸に迫る地形で、人々は南西部のわずかな平地に肩を寄せ合うように暮らしており、家々の間を細い路地が縫うように走る独特の集落景観を形成しています
沖島内には自動車や信号機はなく、島民の主な移動手段は三輪自転車です。「ガンガン」と呼ばれる荷台付きの三輪自転車でゆっくりと行き交う人々の姿は、沖島ならではののどかな風景と言えるでしょう。
沖島の歴史…源氏の落人伝説から湖上交通の要衝へ
沖島の歴史は古く、湖底からは縄文土器が発見されるなど、古くから人々の往来があったことがうかがえます。
本格的に人が住み始めたのは、平安時代末期の保元・平治の乱(1156年~1159年)に敗れた源氏の落武者7人が、この島にたどり着き、漁業を営みながら住み着いたのが始まりと伝えられています。現在も島民には、その落武者の末裔とされる姓が多く残っています。
その後、沖島は湖上交通の要衝として、また戦略的にも重要な拠点として歴史の表舞台に登場します。室町時代には足利義政によって湖上を行き交う船の監視が命じられ、戦国時代には織田信長から浅井長政攻めへの協力を求められました。
この功績により、信長から感謝状とともに琵琶湖での漁業における特権を与えられた歴史は、沖島の漁業の礎となっています。
また、島内にある西福寺には、本願寺第8代上人である蓮如が嵐を避けて島に立ち寄った際に残したとされる直筆の「虎斑の名号(とらふのみょうごう)」と「正信偈(しょうしんげ)」が寺宝として大切に保管されています。
沖島の産業…琵琶湖の恵みを活かした漁業の島
沖島の主幹産業は、なんといっても漁業です。島民の多くが漁業に従事しており、その暮らしは琵琶湖と固く結びついています。
沖島は琵琶湖の漁獲高の約4割を占めるほど重要な役割を担ってきました。底引き網、刺し網、定置網(エリ漁)など様々な漁法で、アユ、ビワマス、ニゴロブナ、スジエビ、シジミといった多種多様な湖の幸が水揚げされます。
しかし、近年は琵琶湖の環境変化や外来魚の増加、水質汚染などにより漁獲量はピーク時から大幅に減少し、漁業従事者の高齢化と後継者不足も深刻な課題となっています。
かつては石材業も盛んで、明治時代には東海道線や琵琶湖疏水の工事に使われる石材を切り出し、島に大きな収益をもたらしましたが、現在ではその面影はありません。
沖島の人口と高齢化問題
沖島の人口は、1955年(昭和30年)には808人を数えましたが、その後は減少の一途をたどっています。令和4年(2022年)には約221人となり、昭和33年から比較すると約70%も減少しています。
人口の減少に加えて深刻なのが高齢化で、2022年時点での高齢化率は65.7%に達し、これは近江八幡市全体(28.3%)や滋賀県全体(26.8%)を大きく上回る数値です。若者の島外流出も続き、島の活力をいかに維持し、未来へと繋いでいくかが大きな課題となっています。
このような状況を打開すべく、2013年に離島振興法の対象地域に指定されたことを機に、「沖島町離島振興推進協議会」が設立されました。
島の魅力を発信する観光事業や移住促進の取り組みが積極的に行われ、近年では地域おこし協力隊として島に赴任し、任期終了後も定住する若者も現れるなど、新たな希望の光も見え始めています。
沖島への行き方(アクセス方法)
沖島へは船でしか渡ることができません。
ここでは、電車や車を使った本土側の港(堀切港)までの行き方と、そこから沖島への連絡船「おきしま通船」について、時刻表や料金などを詳しくご紹介します。
沖島への行き方① 玄関口である堀切港までのアクセス
沖島への玄関口となるのは、近江八幡市にある「堀切港(ほりきりこう)」です。
【電車・バスを利用する場合】
JR琵琶湖線「近江八幡駅」で下車します。
近江八幡駅北口のバス乗り場(⑥番乗り場)から、近江鉄道バス「長命寺経由・休暇村行き」に乗車します。
約30~35分ほどで「堀切港」バス停に到着します。
バスの便数は1時間に1~2本程度と少ないため、事前に時刻表を確認しておくことを強くお勧めします。
平日であれば、近江八幡市が運営するコミュニティバス「あかこんバス」も利用可能です。こちらは運賃が片道200円と安価ですが、定員12名のマイクロバスなので注意が必要です。
【タクシーを利用する場合】
JR近江八幡駅北口から堀切港までは約11km、タクシーで約20分の距離です。バスとの時間が合わない場合や、荷物が多い場合に便利です。
【自家用車を利用する場合】
自家用車で向かう場合は、堀切港の近くにある「沖島町来島者用駐車場」を利用します。
注意点: 堀切港の港内にある駐車スペースはすべて島民用であり、来島者は駐車できません。必ず指定の来島者用駐車場に停めてください。
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駐車場から港まで: 駐車場から船の乗り場までは、徒歩で約5分です。
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駐車料金: 駐車場の維持管理のため、協力金として普通車は300円、バスは3000円を、定期船乗降口横のポストに入れます。
沖島への行き方② 連絡船「おきしま通船」
出典:https://static.chunichi.co.jp/
堀切港と沖島港を結ぶのが、島民の生活の足であり、観光客にとっても唯一の交通手段である「おきしま通船」です。
所要時間: 堀切港から沖島港までは、約10分間の短い船旅です。
料金: 運賃は片道500円です。
運行本数: 1日に12便(日曜・祝日は10便)が運航されています。ただし、季節や天候によって変更される可能性があるため、訪れる前には必ず沖島漁業協同組合のウェブサイトなどで最新の時刻表を確認してください。
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乗り方: 堀切港から沖島へ向かう便は、時刻表の「堀切港着」の時刻に出港します。例えば、時刻表に「堀切港着 9:15」とあれば、それが沖島行きの出港時間となります。
たった10分の船旅ですが、徐々に近づいてくる島の姿に、これから始まる非日常への期待が高まります。
沖島の観光スポットと楽しみ方
沖島には派手な観光施設はありません。しかし、だからこそ感じられるゆったりとした時間と素朴な島の暮らしが最大の魅力です。
ここでは、沖島を訪れた際に是非立ち寄りたいスポットや、沖島ならではの楽しみ方を紹介します。
沖島は小さな島ですが、歴史を感じる場所や美しい景色が楽しめるスポットが点在しています。徒歩でも十分に見て回れますが、島唯一のレンタサイクルである三輪自転車「ガンガン」を利用するのもおすすめです。
沖島の観光ポイント① 沖島漁業会館(沖島漁協)
出典:https://www.biwakokisen.co.jp/
沖島港の目の前にある建物で、島内散策のスタート地点となります。漁協の女性グループ「湖島婦貴(ことぶき)の会」が運営する食堂があり、地元の湖魚を使った料理を味わうことができます。島内マップもここで手に入ります。
沖島の観光ポイント② 奥津嶋神社(おくつしまじんじゃ)
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奈良時代、藤原不比等によって創建されたと伝わる歴史ある神社です。湖上交通の安全を守る神として信仰されてきました。小高い場所にあり、境内からは港や集落を一望できます。
沖島の観光ポイント③ 西福寺(さいふくじ)
出典:https://img-cdn.jg.jugem.jp/
島を開いたとされる源氏の落武者の一人の末裔が、蓮如上人に帰依して建てたお寺です。蓮如直筆の「虎斑の名号」と「正信偈」が寺宝として伝えられています。
沖島の観光ポイント④ 沖島小学校
出典:https://www.fureai-cloud.jp/
木造2階建ての、どこか懐かしい雰囲気の小学校です。島の子どもたちだけでなく、島外から船で通ってくる児童もいます。運動会は島民総出で行われる、島の一大イベントです。
沖島の観光ポイント⑤ おきしま資料館
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かつての島の暮らしや漁業で使われていた道具などが展示されており、沖島の歴史と文化を学ぶことができます。開館日が限られているため、事前に確認が必要です。
沖島の観光ポイント⑥ 見晴らし広場・ホオジロ広場
島の高台にある展望スポット。ここから眺める琵琶湖の景色は格別です。特に、比良山系に沈む夕日は絶景です。
沖島の観光ポイント⑦ 島の西側エリア
集落から少し歩くと、畑が広がるのどかな風景に出会えます。旧桟橋からは湖西の山並みを一望でき、静かな時間を過ごすのに最適です。
沖島の観光ならではのアクティビティ
レンタサイクルでの島めぐり
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島内の移動手段として活躍するのが、後部に大きな荷台がついた三輪自転車です。観光客向けに「GOODTIMES 沖島店」でレンタルすることができます。車が走っていない島内を、湖からの風を感じながらのんびりとサイクリングするのは最高の体験です。料金は2時間1500円からです。
釣り
琵琶湖は釣りの名所としても知られており、沖島周辺も人気の釣りスポットです。ブラックバスなどを狙う多くの釣り人で賑わいます。
湖岸でのんびり
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島には「杉谷ヶ浜」や島民手作りのプライベートビーチなど、静かな湖岸がいくつかあります。波の音を聞きながら、ただただ景色を眺めて過ごす贅沢な時間を楽しむことができます。
沖島観光ならではのグルメ
沖島を訪れたなら、新鮮な湖魚料理は外せません。島内にはいくつかの食堂やカフェがあり、素朴ながらも滋味深い島の味を堪能できます。
沖島漁業会館「湖島婦貴の会」
漁協の女性たちが作る、愛情のこもった湖魚料理が人気です。ブラックバスを使った「よそものコロッケ」や、うどん、予約制のお弁当などがあります。
汀の精(みずのせい)
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沖島港から徒歩10分ほどの場所にある、古民家を改装したカフェ&ギャラリー。予約制で、季節の湖魚や島の野菜をふんだんに使ったランチプレートやディナーコースがいただけます。琵琶湖の宝石と呼ばれる「ビワマス」のお造りなど、沖島ならではの味覚に出会えることもあります。
いっぷくどう
細い路地の奥にある隠れ家的なカフェです。営業が不定休のため、訪れる際は電話で確認するのが確実です。
食事処は予約が必要な場合が多いため、訪れる計画が決まったら早めに連絡することをおすすめします。
沖島観光での宿泊施設
日帰りでも十分に楽しめる沖島ですが、宿泊すれば、観光客が去った後の静かな島の夜や、湖から昇る朝日といった、特別な時間を体験することができます。島内には民宿が数軒あり、アットホームな雰囲気の中でくつろぐことができます。
沖島には、主に2軒の民宿があります。どちらも漁師が営んでおり、新鮮な湖魚料理が自慢です。また、現在は空き家を利用した民泊施設もオープンしています。
沖島の宿泊施設① 漁家民宿 湖上荘(こじょうそう)
島の西端に位置し、部屋からは琵琶湖大橋や比良山系が一望できます。特に、山に沈む夕日の美しさは格別です。
自家製のふなずしや、季節ごとの湖魚を使った煮付けなど、沖島の伝統的な食文化を存分に味わうことができます。食事のみの利用も予約すれば可能です。
沖島の宿泊施設② 島の宿(民宿)
こちらも予約制で食事や宿泊が可能です。沖島の家庭的な雰囲気を味わいながら、ゆっくりとした時間を過ごしたい方におすすめです。
沖島の宿泊施設③ 民泊施設「沖島民泊 湖心 koko」
近年では、島の空き家を活用した民泊施設「沖島民泊 湖心 koko」もオープンしました。
これは、島の活性化を目指す取り組みの一環であり、移住を検討している人のお試し暮らしの場としても活用されています。
宿泊する際の注意点
予約は必須: 島内の宿泊施設は数が限られているため、必ず事前に予約が必要です。
商店・コンビニ: 島内にはコンビニエンスストアやスーパーマーケットはありません。小さな商店はありますが、品揃えは限られます。必要なものは事前に本土側で購入していくと良いでしょう。
なお、本土側には、「休暇村 近江八幡」をはじめとするホテルや旅館も多数ありますので、旅のスタイルに合わせて宿泊先を選びましょう。
沖島はたくさんの猫が住む「猫島」として愛されていた
かつての沖島は、多くの猫たちがのんびりと暮らす「猫島」として、猫好きの間で広く知られていました。港で日向ぼっこをする姿や、人懐っこくすり寄ってくる様子は、沖島の風景に欠かせない、心和む存在でした。
沖島にはなぜ猫が多かったのか
沖島に猫が多かった明確な理由は定かではありませんが、いくつかの要因が考えられます。
漁師町という環境
漁師町では、漁で獲れた魚のおこぼれなどを目当てに猫が集まりやすい環境にあります。猫たちはネズミを駆除してくれる存在としても、古くから漁師と共に生きてきました。
島という閉鎖的な環境
島は外部との行き来が限られるため、一度住み着いた猫が繁殖しやすかったと考えられます。天敵が少なく、穏やかな気候も猫にとっては暮らしやすい環境だったのかもしれません。
観光客からの餌やり
「猫島」として知られるようになると、猫に会うことを目的に訪れる観光客が増えました。その多くが猫に餌を与えたことで、栄養状態が良くなり、さらに繁殖が進んだという側面もあったと考えられます。
動物写真家の岩合光昭さんが撮影した事で、沖島の猫たちはさらに有名になり、多くのメディアでも取り上げられるようになりました。人を恐れず、膝の上に乗ってくるほど人懐っこい猫たちとの触れ合いは、沖島を訪れる大きな魅力の1つでした。
沖島で猫が消えたのは連れ去り事件の噂も
かつて「猫島」として知られていた滋賀県・琵琶湖の沖島で猫がほとんど姿を消した件は、島外の人物による連れ去り事件が原因ではないかと噂されているようです。
沖島の「猫が消えた」事件の経緯と目撃情報
複数の情報によると、沖島の猫が激減したのは2021年の春頃からのことです。
島民の証言として、2021年3月に島民ではない女性2人組が、複数回にわたって大量の野良猫を島外へ連れ出す姿が目撃されたと報じられています。「保護」という名目で子猫を連れ去っていたという話もあります。
この女性たちが何者で、どのような目的で猫を連れ去ったのか、その真偽を含めて詳細は依然として不明な点が多いのが現状です。
沖島の「猫が消えた」事件の背景
沖島は、動物写真家の岩合光昭さんが写真集で紹介したことなどをきっかけに「猫島」として有名になり、多くの観光客が訪れるようになりました。しかし、一部の観光客による無責任な餌やりが、猫の過剰な繁殖を招き、結果的に飢えや厳しい環境で生きる不幸な猫を増やす一因になっていたという指摘もあります。
現在の沖島の猫たちの状況
2021年春を境に猫の数は大幅に減少し、島を訪れても1匹も見かけなかったという報告も複数あります。しかし、全く猫がいなくなったわけではなく、数は少ないながらも生息しているようです。港の桟橋の下で、自ら水鳥を狩りをして暮らす猫の姿も目撃されています。
この沖島の「猫が消えた」事件については、猫を愛する人々や島民の間で様々な憶測や意見が飛び交っていますが、連れ去ったとされる人物の特定やその後の猫の安否など、現在も未だに解明されていない部分が多いままです。
沖島の現在…新たな魅力と未来への展望
猫島であるという大きな観光資源を失った沖島ですが、その魅力は決して失われていません。むしろ、事件を乗り越えた今、島の持つ本質的な魅力が改めて見直されています。
静かで穏やかな島時間
猫目当ての観光客が減ったことで、島には本来の静けさが戻りました。車の走らない島で、波の音を聞きながらゆっくりと流れる時間を過ごす事は、何よりの贅沢です。
豊かな自然と景観
琵琶湖の美しい水、緑豊かな山々、そしてそこから眺める雄大な景色は、今も変わらず人々を魅了します。
人と文化に触れる旅
漁業と共に生きる人々の暮らしや、古くから受け継がれる歴史と文化に触れることは、沖島ならではの体験です。島の人々との温かい交流も、旅の大きな思い出となるでしょう。
沖島は今、人口減少や高齢化という大きな課題に直面しながらも、持続可能な未来を目指して様々な挑戦を続けています。地域おこし協力隊の若者たちが移住し、新たな活動を始めたり、島の食文化や暮らしを体験できるプログラムを企画したりと、島の魅力を次世代に繋いでいくための努力が続けられています。
まとめ
今回は、琵琶湖に浮かぶ日本で唯一の淡水湖の有人島「沖島」についてまとめてみました。
沖島はかつては「猫島」として多くの人々を惹きつけましたが、2021年を境に猫が減少しており「猫が消えた」との話がネット上で広まりました。その原因については不明なのですが、連れ去り事件が原因ではないかと噂されており、不審な女性2人組の目撃情報も出ています。
しかし、沖島の魅力は猫だけではありません。車の走らない静かな島時間、琵琶湖の雄大な自然、新鮮な湖魚料理、そして温かい島の人々との交流。そこには、都会の喧騒の中では決して味わうことのできない、豊かで穏やかな時間が流れており、予約をすれば宿泊しての観光も楽しめます。
沖島は人口減少や高齢化という厳しい現実に直面しながらも、若者の移住を促すような地域おこしの活動が始まっており、その未来も注目されています。