1980年に枚方市で起こった京阪電気鉄道置石脱線事故は負傷者104人を出す大惨事になりました。犯人は中学生5人でいたずら目的でやった事故です。京阪電気鉄道置石脱線の概要や場所、原因と犯人の中学生の賠償金や裁判、その後と現在をまとめました。
この記事の目次
京阪電気鉄道置石脱線事故とは
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京阪電気鉄道置石脱線事故とは、1980年2月21日20時59分に大阪府枚方市の京阪電鉄京阪本線で起こった脱線事故です。
大阪府枚方市の京阪本線の枚方市~御殿山間で、中学生5人がいたずら目的で線路に大きな石を置きました。そこに淀屋橋発三条行の急行列車がやってきて、置石にぶつかり、先頭3両が脱線しました。
先頭の1両目は沿線沿いの民家に突っ込み、2両目は横転する大惨事となりました。
この京阪電気鉄道置石脱線事故では、幸いにも死者は出なかったものの、104名の負傷者を出しています。
また、この事故によって民家に突っ込んだ先頭車両は廃車となり、同じ番号の車両が代替として新設されることになりました。さらに、この事故処理のために一時的に京阪電鉄の枚方市~御殿山間は列車が走れない状態になりましたので、樟葉~枚方市駅間は代行バスが走行するようになりました。
京阪電気鉄道置石脱線事故の場所
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1980年2月20日に起こった京阪電気鉄道置石脱線事故は、京阪本線の枚方市駅と御殿山駅の間の「磯島曲線」と呼ばれるあたりで起こりました。
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淀屋橋発三条行の列車でしたから、枚方市駅を出発して御殿山駅に向かう途中で起こっています。
事故のニュース等を読んでいると、「磯島曲線のあたり」とか、「枚方市駅を出て磯島茶屋町のカーブに差し掛かったあたり」などと報道されていますので、京阪電気鉄道置石脱線事故は上記の地図の赤丸付近で起こったと思われます。
このカーブの辺りは両サイドとも民家・建物がすぐ近くにあり、いたずら目的で侵入しやすい立地になっています。
京阪電気鉄道置石脱線事故の原因
京阪電気鉄道置石脱線事故の原因は、中学生がいたずらで線路に石を置いたことです。石と言っても、道に落ちているような小さな小石ではありません。
コンクリート製のU字型溝の蓋を置いたのです。線路脇には、ケーブルトラフがありました。ケーブルトラフとは通信・信号・配電・送電などのケーブルを保護・格納するためのものです。その蓋を線路の上に置いたのです。
道路に側溝がありますよね。その蓋を線路に置いたと考えると、想像しやすいと思います。線路に小石を置いただけで、脱線のリスクがあるのに、側溝のコンクリート製の蓋を置いたら大惨事になりますよね。負傷者104人が出ても、死者はいなかったというのは、本当に奇跡的かもしれません。
この中学生5人がなぜコンクリートの置石をしたのか?それは完全ないたずら目的だったようです。暇を持てあました中学生5人が、イタズラ&度胸試しのような感覚で、置石(置きコンクリート)をしてしまったようです。
京阪電気鉄道置石脱線事故の犯人の中学生に損害賠償請求
刑事責任は問われなかった
京阪電気鉄道置石脱線事故では、犯人は中学生5人でした。大人が線路に置石をしたら、「汽車転覆等及び同致死罪」に問われて、無期または3年以上の懲役になります。
しかし、犯人は中学生だったことから、刑事責任は問われなかったようです。当時のニュースでも、逮捕などのニュースはありませんでした。14歳未満の触法少年だったのかもしれません。
損害賠償請求はあった
犯人の中学生5人は刑事責任は問われなかったものの、京阪電気鉄道は先頭車両は廃車となり、2両目・3両目は脱線して修理が必要な状態になっています。また、先頭車両が突っ込んだ民家は全壊しています。
当時の報道では、この京阪電気鉄道置石脱線事故による被害総額は2億8000万円となっていました。
京阪電鉄は犯人の中学生とその保護者に損害賠償を求め、1人当たり840万円を支払うことで、5人中4人の示談が成立しています。
被害総額2億8000万円を5人で分担すると、1人当たり5600万円になります。それを840万円で示談が成立したということは、いろいろな保険金が下りたということもあると思いますが、京阪電鉄はかなり犯人の中学生と保護者に譲歩した結果と思われます。
ただ、犯人の中学生グループの1人はこの示談に応じなかったのです。
京阪電気鉄道置石脱線事故では犯人の中学生が示談金で裁判を起こす
犯人のうち1人は「直接置石をしていない」として示談金支払いを拒否
京阪電気鉄道脱線事故では、犯人の中学生5人のうち4人は1人当たり840万円の示談金(損害賠償)を京阪電鉄に支払うことで和解しましたが、1人は示談金を支払うことを拒否しました。
この犯人の1人は「自分は直接は置石をしていない。だから、示談金を支払うのはおかしい」と主張したんです。裁判の記録から、この示談金拒否の犯人(A君)の動きを見ていきましょう。
1980年2月20日20時40分ごろ、道路上で中学校の同級生5人で雑談しているうちに、線路に物を置くという話題になり、各自経験談などを話すようになりました。
すると、5人のうち3人が金網の柵を乗り越えて線路の敷地内に入り、レールの上にガムを置き、さらに2つの石(コンクリートの蓋)を置いたんです。
その時、A君ともう1人は軌道敷内には入らずに、3人の行動を見ていました。しかも、A君は3人が置石をしているとは認識していなかったと主張しています。また、A君ともう1人は金網の外から置石行為を止めるように注意していました。
もつとも、被上告人は、京都行軌道上の置石(以下「本件置石」という。)については認識していなかつた。
(五) Gは、被上告人あるいはDから置石行為をやめるように言われたが、置石をそのまま放置したため、Fが、大阪行軌道上の置石を見て危険を感じ、これを取り除いたものの、京都行軌道上の本件置石には気が付かず、これを除去しなかつたところ、その直後に本件列車が進行して来て本件置石を踏み、前記のとおり本件事故が発生するに至つた。
このA君は「自分では置石をしていない。見ていただけだし、注意もした!だから、置石事件の犯人ではないし、示談金840万円を払うのはおかしい」と主張しました。
京阪電鉄は裁判を起こす
犯人5人のうち1人(A君)が示談に応じなかったために、京阪電鉄はA君に対して1982年2月に約1億1000万円の支払いを求める損害賠償を求める裁判を起こしました。
一審では京阪電鉄側の主張を認め、A君にも賠償責任があると認められましたが、二審の高裁では「グループには入っていたが、実行行為に関与していなかった」という主張が認められ、A君に支払い責任はないという判決が出ました。
しかし最高裁では、謀議に入った者も賠償責任が発生するという判決が出ました。その理由は以下の3つです。
・5人で話していた流れで置石という行為が起こった
・A君も置石を知り、事故を予見することができた
・置石を知った後除去して事故を防止する義務があった
被上告人の右注意義務の懈怠と本件事故との間には相当因果関係があるものといわざるを得ない
A君は実際にやっていなくても、話の流れで置石をしたことは明白だし、口頭注意だけでなく、きちんと物理的に置石を取り除く必要があった。それを怠ったのだから、損害賠償は発生するという判決です。
この最高裁での判決により、A君はほかの犯人の中学生4人と同様に、840万円を支払うことになりました。
この中学生の犯人5人の力関係は不明ですが、もしこのA君が実行犯3人に比べて弱い立場だったら、この判決はちょっとかわいそうにも思えます。A君は一応、置石を止めるように注意はしていますから。
京阪電気鉄道置石脱線事故のその後と現在
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京阪電気鉄道置石脱線事故では、中学生5人とその保護者に1人当たり840万円の損害賠償の支払いが義務付けられました。1980年当時の840万円というのは大金ですよね(今でも大金ですが)。
犯人グループの保護者達は全員が自宅を売却して、損害賠償金を支払うことになったそうです。
犯人が少年だったこともあって実名報道はありません。
しかし当然ながら加害者グループの親は全員が多額の賠償金を請求されており、全員が自宅を売却して支払いました。
そもそも、この中学生5人は近所の枚方市立第一中学校に通っていました。つまり、地元民です。地元の中学校に通う中学生5人が負傷者104人を出した脱線事故を起こしたとなれば、地元では針のむしろですよね。
自宅の売却をせずに賠償金840万円を支払えたとしても、そのままそこに住み続けるのは難しい可能性が高く、引っ越しを余儀なくされた可能性は高いです。
中学生犯人グループは、実名報道はありませんでした。インターネットがなかった時代ですから、特定されることもありませんでした。ただ、中学生犯人グループは、現在60歳前後になっていると思われます。おそらく、自分の子供や孫には「置石だけはするな」ときつく教え込んでいるはずです。
京阪電気鉄道置石脱線事故のまとめ
京阪電気鉄道置石脱線事故は、ほんのちょっと「イキってみたかった」ことから、起こった犯行だと思います。中学生なら、そのような考えになるのは不思議な事ではありませんから。しかし、そのイタズラがあまりにも大きな代償を引き起こしてしまいました。
レールへの置石は本当に危険!それだけは忘れてはいけないし、自分の家族・子供・友人にも教えこんでいきたいですね。