雛見沢症候群はサウンドノベル『ひぐらしのなく頃に』シリーズに登場する架空の奇病・風土病です。この記事ではレベル別症状、感染原因、元ネタやモデルとなった実在の生物など雛見沢症候群について、作品のネタバレも含んで紹介していきます。
この記事の目次
雛見沢症候群の概要
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雛見沢症候群は、同人サークル「07th Expansion」によって制作された連作式のサウンドノベル『ひぐらしのなく頃に』に出てくる架空の風土病で、作中で起きる惨劇の原因です。
人口2000人未満の架空の村・雛見沢村でのみ確認されている奇病で、発症すると幻覚や幻聴から異常行動を起こすようになります。
さらに最重度感染者のL5になると錯乱状態や危機妄想から周囲を攻撃・無差別に殺傷するようになり、喉に異常な痒みを感じることから自分で喉を掻き毟って死亡するケースが多いとされます。
危険な風土病ですが、雛見沢村では病気として認知されていません。そのため雛見沢症候群の発症者によって発生した怪死事件についても、古くから村で信仰されている神様「オヤシロ様」になぞらえて「オヤシロ様の祟り」で事件が起きたと噂されています。
また妄想性障害のような症状が出るため、ストーリーの語り手が発症している場合には村で発生した事件の内容を曲解して伝え、「信頼できない語り手」として読者のミスリードを誘うこともあります。
雛見沢症候群の原因
雛見沢症候群は、雛見沢村にのみ蔓延している寄生虫によって引き起こされます。
この寄生虫が体内に入ることで発症。空気感染することから病気が拡散しやすいという厄介な特徴を持ちます。
空気感染するため、雛見沢村の住人や出身者だけではなく、外から村を訪れた者もすべて雛見沢症候群にかかっているとされます。ただ、自覚症状はないため日常生活に影響はありません。
また宿主が死ぬことで寄生虫も消滅するため、雛見沢症候群が原因で死んだ人間の遺体からは寄生虫は検出されません。
これらの特徴から設定上は寄生虫由来であるものの、実在の病気に例えるならプリオン病や狂牛病、ウイルス性脳炎に近いとも指摘されています。
雛見沢村に伝わる伝承によると発症例はかなり古くからあったようですが、正式に確認されたのは劇中の第2次世界大戦中。雛見沢出身の兵士らが自傷行為などの問題行動をたびたび起こすことに注目した軍医少佐の高野一二三が、病気の存在を発見したとされます。
雛見沢村にのみ寄生虫がいる理由
劇中では雛見沢村にのみ病気の原因となる寄生虫がいる理由は明かされません。
例外としてPS2移植版の『ひぐらしのなく頃に 祭』では、宇宙人が鬼ヶ淵沼に墜落した際にウイルスを流出させたという説明がされています。
しかし、本作は原作者の竜騎士07さんがシナリオ担当ではなく、本作を正史とするとほかのシリーズ作との整合性もとれなくなるため、寄生虫は宇宙由来という設定は非公式扱いされることが多いようです。
雛見沢症候群の発症と女王感染者
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雛見沢症候群に感染しても、すべての人が発症者になるわけではありません。発症者には以下の特徴が見られます。
・強い不安や極度のストレスを抱えている者
・感染後に雛見沢村から離れた者
前者のように不安や不信感が強い者の発症例や重症化が多く、雛見沢症候群に感染した者を村の外に出すと知らない土地への不安やストレスから症状が悪化するおそれがある、と考えられてきました。
雛見沢村の住民は全員が未発症でも雛見沢症候群に感染しているため、基本的に村人の移住などはご法度とされています。そのため雛見沢では村から出ると「オヤシロ様に祟られる」と信じられ、村を出る=良くないこと、村の守り神を怒らせることと見られてきました。
主要登場人物の1人である竜宮レナが、自分はオヤシロ様に祟られる=雛見沢症候群を発症すると思い込んでいたのも、彼女に村を出ていた時期があるからです。
また村の外に出る者が少ないため後者については発症例は稀ではあるものの、雛見沢村から距離的に離れた場所にいる者、村を離れた時間が長い者ほど発症しやすくなるとされています。
女王感染者
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雛見沢症候群には通常の感染者とは異なる女王感染者がいます。村内の御三家の一角で神事を司る古手家の直系が出産時に女王感染者を代襲しており、物語内では古手梨花がこれに該当します。
雛見沢症候群の発見者である高野一二三の推測によると、女王感染者には以下のような特徴が見られるとされます。
・女王感染者は雛見沢村を離れられない
・女王感染者のそばにいれば、通常の感染者は発症を抑えるとや一度発症した症状を緩和させることができる
・逆に女王感染者から離れた距離や時間に比例して、一般感染者の発症確率は上がる
高野一二三はこの推察から、女王感染者が代替わりをする前に死んでしまった場合には、早ければ24時間以内、遅くても48時間以内に村人が次々に症状を悪化させて殺し合いをするおそれがあると予想しました。
そして、女王感染者が死亡した際に被害を村内のみに抑えるために村人を全員殺害する計画・滅菌作戦が考案され、「緊急マニュアル34号」としてまとめられました。
実際に『ひぐらしのなく頃に解』の皆殺し編では梨花が殺された後に滅菌作戦がおこなわれ、自衛官によって住民全員が殺害される描写があります。
またシリーズ内の『祟殺し編』『暇潰し編』『罪滅し編』で発生する雛見沢大災害も、表向きは雛見沢にある鬼ヶ淵沼から火山性ガスが発生し、このガスの毒で住民が全員死亡したと伝えられましたが、実は滅菌作戦を隠蔽するための嘘でした。
なお、『綿流し編』と『目明し編』では梨花が死んだ後も住民に症状の悪化は見られなかったために滅菌作戦は実施されず、高野一二三の仮定は間違いだったとも考えられています。
雛見沢症候群のレベル別症状
雛見沢症候群の症状はL1からL5+までの7段階にわけられており、数字が大きくなるほど重症とされます。レベルごとの主な症状は以下のとおりです。
L1
感染者のうち、予防薬を投与されている者。症状が進行するリスクが低いと考えられる。
L2
予防薬を投与されておらず、雛見沢村に居住・滞在している者。つまり、雛見沢村の住民は全員がL2以上の段階にいる。
日常生活に支障はないが、L2以上の感染者は滅菌作戦の処分対象になる。
L3-
誰もいない場所で人の気配を感じるなど、非常に軽微な幻覚や幻聴に襲われるようになる。まだ日常生活には大きな影響はない。
L5まで症状が進行した場合でも、適切な治療を受ければL3-までは回復可能とされている。(昭和58年時点)
L3+
L3-の症状の影響から認知が歪み、猜疑心や不信感を持つようになる。
日常生活に影響が出始めるラインで、作中では北条沙都子が常時L3+の症状。
L4
幻覚、幻聴から異常行動を取るようになり、極度の人間不信に陥る。L4まで症状が進んだ者を説得することは難しく、通常のコミュニケーションは取れなくなる。
作中では『祟殺し編』の前原圭一と北条沙都子、『澪尽し編』の園崎詩音がL4まで進行。
L5-
危機妄想を持ち始めるようになり、異様に周囲を警戒するようになる。
作中では『罪滅し編』の竜宮レナと『目明し編』『祭囃し編』『澪尽し編』の鷹野三四がL5-まで進行。
L5+
末期症状。幻覚・幻聴の症状が最大限まで悪化し、周囲の人間が自分を殺そうとしているという妄想に陥る。結果、錯乱状態になり自傷行為や殺人などの攻撃行動を起こしてしまう。
また喉のあたりに皮膚の下をウジ虫が這い回っているような強い痒み・違和感を感じ、自分の爪で喉を掻き毟って自死するケースが多い。
作中では『鬼隠し編』『祟殺し編』の前原圭一、『綿流し編』、『目明し編』の園崎詩音、『祭囃し編』以外の富竹ジロウ、『祟殺し編』の北条沙都子と北条悟史がL5+まで進行。
雛見沢症候群のL5発症者【ネタバレあり】
劇中では主要登場人物のうち、女王感染者の梨花と村の御三家の一つである園崎家の娘であり、村内の情報が入りやすい立場にいる園崎魅音を除く全員が、L5まで症状が進行する描写があります。
ここでは『ひぐらしのなく頃に』の主要登場人物の雛見沢症候群発症理由や、L5まで進行した結末について紹介していきます。
前原圭一
『鬼隠し編』では主人公の前原圭一が雛見沢症候群L5+を発症します。
東京から転校してきたばかりの圭一は、過去に雛見沢村で起きた怪死事件のことを知って不安を増大させ、一気に症状を進行させてしまいます。
そして、良かれと思ってレナや魅音が怪死事件のことを黙っていたことが災いして疑心暗鬼に陥り、友人たちが自分を殺そうとしているという妄想に取り憑かれることに。
レナと魅音が持ってきてくれたおはぎに無数の針が入っているという幻覚を見た圭一は、ついに2人を殺害し、自分も喉を掻き毟って死亡しました。
竜宮レナ
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竜宮レナは『罪滅し編』と雛見沢村に戻ってくる前に住んでいた茨城で、雛見沢症候群L5-を発症します。
父親の再婚予定の女性・リナが財産目当てで近づいてきただけだと知ったレナは、リナと鉄平を殺害してしまいます。
それをきっかけに症状が進行。一時期は圭一らの説得で症状は緩和しますが、鷹野三四に様々なことを吹き込まれて混乱した結果、最終的にはL5まで症状が進み学校占拠事件を起こしてしまいました。
園崎詩音
園崎魅音の妹の詩音も『綿流し編』、『目明し編』でL5+を発症し、祖母を始めとして周囲の人々を殺害していきます。
実は物語の中で圭一たちが魅音だと思っていた人物は、妹の詩音でした。
姉妹が産まれた園崎家には代々第一子に鬼の刺青を入れて跡継ぎにする風習があるのですが、手違いで当主になるはずの魅音ではなく詩音に、この刺青が彫られてしまいました。そこから姉妹は入れ替わって生きることを余儀なくされていたのです。
詩音は魅音として生きながらも、沙都子の兄である北条悟史に恋をしていました。しかし、両家の間にある確執により、詩音の恋は認められませんでした。
悟史が沙都子を虐待する叔母を殺して逃亡したことから、自分たちの仲を割こうとする誰かが悟史を監禁したのではないかと疑心暗鬼になり、症状が進行。圭一や魅音、梨花、沙都子らを殺害した後に正気を取り戻し、自殺をしています。
北条沙都子・悟史
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北条沙都子と兄の悟史も『祟殺し編』でL5+まで症状が進行します。
悟史は前述のように妹を虐待する叔母を殺害した後に、一気に雛見沢症候群を進行させてしまいます。
そして入江機関で保護され、症状を抑える治療を受けることとなるのです。これが原因となり、『目明し編』で詩音はL5+を発症していました。
一方、沙都子は物語が始まる前の昭和55年にもL5を発症していたことが明らかになります。
幼い頃より両親の離婚、母親の再婚、再婚相手からの虐待を経験した沙都子は激しいストレスからL5まで悪化し、両親を崖から突き落として殺害していたことが劇中で示唆されます。
成長した沙都子には当時の記憶がなく、自分が両親を殺したことも覚えていませんでした。しかし、叔父に引き取られて虐待の日々が始まったことなどから、再度L5を発症して圭一を殺害してしまいました。
雛見沢症候群の治療方法
作中の昭和58年当時には、雛見沢症候群の原因となる寄生虫を駆虫する方法は発見されていません。
そのため雛見沢症候群には治療方法はなく、病気について研究を続けている極秘機関「入江機関」が開発したC120で症状を緩和するなどの対処療法しかないとされます。
ただしC120が使えるのはL5以上の発症者のみで、1日に2〜3回投与し続けなければいけないうえ、薬を使ってもL3程度の症状まで緩和できるのみです。
なお、沙都子が常時L3の状態にあるのは昭和55年に一度L5まで症状が進行し、それをC120で緩和しているためです。
また、入江機関は雛見沢症候群の治療だけではなく軍事利用も目的としており、治療薬や予防薬の開発過程で症状を促進するH173シリーズという薬も開発していました。
入江機関の監査役であった富竹ジロウはこのH173を投与された結果、L5の症状を発症して死亡しています。
雛見沢症候群は実在する?元ネタ・モデルの考察
雛見沢症候群の元ネタは公表されていませんが、実在する寄生虫「ロイコクロディウム」と似ているとも指摘されています。
ロイコクロディウムはカタツムリに寄生する吸虫の一種です。カタツムリに寄生するといっても最終宿主は鳥類であり、鳥の腸の中で成虫になって産卵し、糞とともに出てくるという生態を持ちます。
カタツムリはこの寄生虫の卵が混入した鳥の糞を食べることで寄生されるのですが、ロイコクロディウムに寄生された個体は昼間でも目立つ葉の上を動き回るなどして、鳥に見つかりやすい行動を取るようになります。
その結果、中間宿主にされたカタツムリは鳥に食べられてしまい、ロイコクロディウムは最終宿主に寄生成功となるわけです。
このように宿主を意のままに操って破滅に導くことから、雛見沢症候群の寄生虫はロイコクロディウムがモデルなのではないかとも言われています。
『ひぐらしのなく頃に』の元ネタとなった事件
『ひぐらしのなく頃に』のストーリー自体は、1938年に起きた津山事件(津山三十人殺し)という実在の事件をモチーフにしていると言われています。
津山事件は閉ざされた集落で人間不信に陥った青年が集落の住人全員を惨殺する計画を立て、最終的に猟銃や刃物を凶器に30名を殺害、自らも自殺を遂げたという事件です。
また、雛見沢大災害は1986年にカメルーンのニオス湖で起きたガス災害が元ネタではないか、と指摘されていますが、雛見沢大災害自体が自衛隊による村の殲滅であったためガス災害から着想を得た事件とは考えづらいでしょう。
雛見沢症候群についてのまとめ
今回は『ひぐらしのなく頃に』シリーズの鍵となる架空の風土病・雛見沢症候群の原因やレベル別症状、元ネタと考察される寄生虫について紹介しました。
雛見沢症候群に感染した語り手がミスリードを誘うこともあるため、『ひぐらしのなく頃に』はさらっと見ただけではストーリーがよくわからない、誰が黒幕なのか釈然としないと言われることもあります。
雛見沢症候群の詳細を理解してから見ると納得がいくシーンも多いので、一度見て話についていけなかったという方は、雛見沢症候群の予備知識を仕入れてからもう一度ひぐらしシリーズに挑戦してはいかがでしょうか。