ネオ麦茶とは、2000年に発生した西鉄バスジャック事件の犯人が2ちゃんねるで使ったとされるHNです。ネオ麦茶こと本名・谷口誠一の生い立ちや経歴、中学、親や妹などの家族や実家、事件の動機や死者、判決、現在や結婚、顔写真について紹介します。
この記事の目次
ネオ麦茶事件の概要【西鉄バスジャック事件】
2000年5月3日の正午頃、2ちゃんねるに『佐賀県佐賀市17歳・・・。』というスレッドが立てられました。
このスレを立てたのは「ネオ麦茶」というコテハンで2ちゃんに書き込みをしていた人物で、ネオ麦茶は「ヒヒヒヒヒ」とだけ書き込んで姿を消します。
そしてネオ麦茶はこのスレを立てたおよそ1時間後に、九州自動車道の太宰府インターチェンジ付近でバスジェック事件を起こしたのです。
ネオ麦茶は自分で立てたスレから姿を消した後に、刃渡り約32㎝の牛刀を隠し持って西日本鉄道の高速バス「わかくす号」に乗り込みました。
そして13時35分頃にバスが太宰府インターチェンジ付近へ到達すると、牛刀を取り出して運転手に突き付けたののです。
運転手を脅したネオ麦茶は乗客に向かって「天神には行くな」「このバスを乗っ取ります」とバスジャックを宣言。
本来であれば、わかくす号は佐賀第二合同庁舎を出発し、福岡の西鉄天神バスセンターに向かう予定でした。
しかし、ネオ麦茶は九州自動車道を走るように運転手を脅迫したとされます。そして乗客に対しても、バスの後部座席に集まり、車外から様子がうかがえないようにカーテンを閉めるように指示しました。
この時、不運にも疲れていたのか騒動に気づかずに座席で熟睡していて、ネオ麦茶の指示に従わなかった女性がいました。
するとネオ麦茶は腹を立て、「ふてくされて寝ているふりをしているんですか」「僕の指示に従えないんですか」などと言い、牛刀で寝ている女性の首などを刺したとされます。
これを見た乗客たちはパニックになり、ネオ麦茶は恐怖に怯える乗客たちに「お前たちの行く先は天神じゃない、地獄だ」などと言って絶望を与えました。
こうして九州自動車道から関門橋を経て中国自動車道に入り、山口県内に到着したのですが、その間にネオ麦茶はさらに2人の乗客を牛刀で切りつけました。
一方で西鉄佐賀自動車営業所では定刻通りに出発したわかくす号が一向に天神に着かないこと、連絡も取れないことを訝しんでいたとされます。
そして走行中のわかくす号から飛び降りた乗客が警察に通報したことを機に、バスジャック事件が発覚。
中国自動車道に入ったところですでに山口県警は事態を把握しており、高速道路交通警察隊もわかくす号を追尾し、人質の安全と突入の隙をうかがっていました。
その後、小郡インターチェンジ付近で乗客の1人がバスの窓から飛び降り、負傷したところを警察隊が保護。
この乗客の証言によって、バスの乗客がハイジャック犯に切り付けられた負傷していることが明らかになります。
事態を重く見た警察は、わかくす号が山陽自動車道に入り、下松サービスエリアに近づいたところで車両を投入して行く手を阻もうと試みました。ここでもバスが減速した隙を見て乗客1人が飛び降りて逃走しています。
この頃にはマスコミも西鉄バスジャック事件の報道を開始しており、2ちゃんねるでも『佐賀県佐賀市17歳・・・。』が話題になって「バスジャック事件の犯人はネオ麦茶なのではないか？」と噂されるようになっていました。
というのも、ネオ麦茶は当時の2ちゃんねるでは決して良い意味ではない方で有名な人物であり、「あいつならやりかねない」と考える住民が多かったのだそうです。
2ちゃんねるでも議論や事件の実況が続くなか、わかくす号は広島県内に入り、広島市安佐南区の武田山トンネル付近で男性の乗客が全員解放されました。
この時、ネオ麦茶は警察を警戒してなんと乗客の6歳の少女を盾にしていたといいます。
そしてその後、警察との交渉で差し入れと引き換えに負傷していた乗客3人を解放。しかし、そのうちの1人、塚本達子さん（当時68歳）は解放時にすでに息を引き取っていました。
負傷者を解放した後、しばらくネオ麦茶と警察は膠着状態になりましたが、20時頃にはわかくす号を発車させて、東広島市高屋町小谷の小谷サービスエリアに向かいます。
こうして到着した小谷サービスエリアで、ネオ麦茶と警察はさらに長い膠着状態に入ることとなります。
広島県警は食糧や簡易トイレ、毛布などの差し入れを乗客に行い、日付が変わっても交渉を続けました。
そして事件発生から一夜が明けた5月4日の午前5時過ぎ、機動隊員がわかくす号に突入。
ネオ麦茶は機動隊員の左脚を切りつけるなどして抵抗を見せましたが、すぐに取り押さえられて逮捕となりました。
こうしてネオ麦茶事件こと西鉄バジャック事件は解決しましたが、逮捕後にネオ麦茶が『佐賀県佐賀市17歳・・・。』というスレ通りに17歳であったことは世間に大きな衝撃を与えます。
この事件は多くの模倣犯を生み、社会に影響を及ぼしました。また、神戸連続児童殺傷事件の犯人や豊川市主婦殺人事件の犯人ととネオ麦茶が同い年であることも取り沙汰され、「キレる17歳」という言葉が流行りました。
ネオ麦茶の生い立ちと経歴① 家族と幼少期
ネオ麦茶は1983年3月に父親は会社員、母親は保健師で妹が1人という4人家族の長男として、佐賀県内で誕生しました。
早生まれということもあってか幼少期には体も小さく、同学年に子どもと比べると運動も苦手だったといいます。そのため周囲に劣等感を抱いていたそうです。
しかし、運動が苦手な代わりに勉強には熱心に取り組んでおり、小学校、中学校と成績は優秀でした。
とくに中学校に入って家庭教師をつけられると成績は一気に良くなり、定期テストで学年2位になることもあったそうです。
ネオ麦茶の生い立ちと経歴② 中学時代のいじめ
ここまではごく普通の家庭で健全に成長した、努力家で真面目な少年という印象ですが、中学3年生の時に彼を大きく変える事件が起きます。
ネオ麦茶は通っていた佐賀市立昭栄中学校で、いじめを受けるようになってしまったのです。
いじめは単なるからかいなどではなく、文化祭の準備中に制服を切り裂かれて捨てられるなど相当に悪質なものでした。
そして次第に学校で受けた理不尽な扱いのうっぷん晴らしのため、ネオ麦茶は家庭内で暴力を振るうようになっていきます。
とくに暴力の矛先は自分より力の弱い家族に向かった様子で、妹の制服をズタズタに破いて投稿できないようにする、家族で可愛がっていたハムスターを殺すなどの行為が見られたそうです。
急変した息子を心配した両親は学校に出向いて相談しますが、担任はもちろん学校責任者も教育委員会もはいじめの存在を認めず、問題解決には至りませんでした。
こうして受験を目前に控えた中学3年生の1月、ネオ麦茶は筆箱を同級生に取り上げられて「返してほしければ踊り場から（下の階に）飛び降りろ」と脅されてしまいます。
煽るように目の前で次々と同級生らが踊り場から飛び降りる様子を見せられたネオ麦茶は脅されるがままに踊り場から高さ5mほど下に飛び降りて、着地に失敗。そして腰椎の圧迫骨折という大怪我を負ってしまったのです。
この怪我での入院が原因で、ネオ麦茶は高校の入試テストも病室で受けることになってしまいました。
ネオ麦茶の生い立ちと経歴③ 高校中退
イレギュラーな状態で受験に挑んだものの、普段から真面目に勉強していたネオ麦茶は見事に志望校の佐賀県立致遠館高等学校に合格しました。
致遠館高等学校は佐賀県内でも屈指の進学校なのですが、ネオ麦茶の第一志望は別の高校でした。
しかも、腰椎の圧迫骨折の影響でコルセットを装着して通学することになったことになってしまいます。
さらに、もともと引っ込み思案な性格なのか、中学時代のいじめが性格を変えてしまったのか、入学初日のオリエンテーションで自己紹介ができずに言葉を詰まらせてしまい、またしても同級生たちから笑われてしまったそうです。
実際にはどのような反応だったのかはさておき、ネオ麦茶本人は同級生たちの笑いを「嘲笑」と感じたようで、そのままクラスに馴染むことができずに入学から10日も経つと不登校になってしまいます。
こうして自宅に引きこもりがちになり、高校1年生の3月には学校を自主退学しました。
ネオ麦茶の生い立ちと経歴④ PC・２ちゃんねるとの出会い
高校中退の前後にネオ麦茶は両親にパソコンをねだり、買ってもらっていました。
パソコンを手に入れたネオ麦茶は寝食を忘れて部屋にこもってネットサーフィンをするようになり、やがて2ちゃんねるに没頭しはじめます。
2ちゃんねるの開設は1999年ですから、当時はまだ人もさほど多くなく、好事家が集まる掲示板といった雰囲気でした。
ネオ麦茶は最初、2ちゃんねるで「キャットキラー」という固定のハンドルネームを名乗っていましたが、当時の2ちゃんねるではコテハンは目立ちたがりと嫌われる傾向にありました。
反対にネオ麦茶は当時の2ちゃんねるでは匿名を隠れ蓑にブラクラ（サイトを表示する際にブラウザに過剰な負荷をかけるスクリプトやプログラムなど）を投下したり、誹謗中傷、煽り、荒らしなどの行為が現在とは比べ物にならないほど横行していたため、あえてコテハンを名乗ったといいます。
なお、キャットキラーというコテハンの由来は、ネオ麦茶が2000年に定着したばかりのギコ猫やモナーといった2ちゃんねるで頻出するアスキーアートを嫌っていたためだそうです。
キャットキラーを名乗ったネオ麦茶は、1日中2ちゃんねるのスレに張り付いては匿名ユーザーを挑発して荒らしを誘発し、荒らしが起きると叩くというマッチポンプに勤しんでいました。
そして2000年2月にとあるスレで匿名ユーザーと喧嘩になったネオ麦茶は「このスレの1000レス目をとったほうが勝ちということにしよう」「1000がとれなかったら、自分はキャットキラーを辞める」と、コテハンをかけた勝負を挑みました。
こうしてネオ麦茶は勝負を宣言した後、連投を繰り返して1000スレを狙いました。しかし、1000レス目は別の住民に取られてしまい、それに気づかずに「1000ゲット！俺の勝ち！」という書き込みを1001レス目にしてしまったのです。
これに怒り狂ったキャットキラーことネオ麦茶は怒り狂い、レス数の制限がかかるまで罵詈雑言を書き込み続けました。
ついに1016レス目で自分の敗北を認めてキャットキラーのコテハンを返上すると宣言するのですが、ここで新しいコテハンとして宣言したのが「ネオ麦茶」だったのです。
当然、「キャットキラー返上＝名無しになること」と思っていたスレ住民は反発。ネオ麦茶は2ちゃんねる内でますます嫌われてしまいました。
なお、ネオ麦茶というハンドルネームは、2ちゃんねるができたばかりの頃に掲示板の脆弱性を悪用して荒らし行為をしていたハッカーのハンドルネーム「むぎ茶」に、ギリシア語で新しいを意味する「ネオ」をつけたものとされています。
ネオ麦茶の生い立ちと経歴⑤ 精神病院への入院
ネオ麦茶として再び2ちゃんねるに張り付きだした少年ですが、上記の理由から匿名住民らのあたりは冷たくなり、ネット上にも居場所をなくしてしまいます。
こうしてネオ麦茶は学校に馴染めなかった時と同様に、再び家庭内暴力を起こすように。
母親や妹への暴力は酷かったそうで、周辺住民のなかには「妹の悲鳴を聞いた」と証言する人もいたほどです。
さらに父親にも大阪や名古屋などの大都市へ車で連れて行くように強要し、気に入らないことがあるとペットの犬にも殴る蹴るの暴行をくわえていました。
息子の凶暴さに危険を感じた母親は警察にも相談に行ったといいます。しかし、ネオ麦茶は母親のこの行動を「裏切り」と感じ、余計に反発するようになりました。
そんななか、母親が息子の不在時に部屋に入ったところ、とんでもないものを発見するという事件が起こります。
ネオ麦茶の部屋には親が買い与えた覚えのないナイフやスタンガン、ハンマーなどがあり、机の引き出しからは中学校襲撃をにおわせるメモが出てきたのです。
ただごとではないと思った両親は、国立肥前療養所（現在の肥前精神医療センター）に相談。ネオ麦茶は2000年の3月5日に医療保護入院となります。
入院に際してネオ麦茶は激しく反抗し、両親に対して「貴様ら、この恨みは絶対に忘れないから覚えていろよ！」という捨て台詞を吐いたといいます。
ところが、実際に入院生活が始まると医師や看護師などスタッフに対してはもちろん、他の入院患者に対しても礼儀正しく接し、生活態度も真面目そのものだったそうです。
ネオ麦茶の生い立ちと経歴⑥ 凶行のきっかけ
そんななか、西鉄バスジャック事件を起こす直前の5月1日にネオ麦茶はある事件の存在を知ります。
その事件とは愛知県豊川市で2000年5月1日に発生した、豊川市主婦殺人事件です。
豊川市主婦殺人事件は当時17歳の高校生が起こしたもので、「人を殺してみたかった」という動機で面識のない主婦を手にかけたという衝撃的な事件でした。
テレビで事件の報道を見たネオ麦茶は、豊川市主婦殺人事件の犯人が自分と同じ年であることに興味を持ち、事件についての情報を集めるとともに犯人の少年にあこがれを持つようになっていきます。
逮捕後に発見されたネオ麦茶の手記には、豊川市主婦殺人事件の犯人に対して以下のようなことが書かれていたそうです。
・すばらしい。とても良い風潮だ
・なんか運命的なものを君とは感じるよ
・年も一緒、学校では優等生ってところも同じ…ハハハ
・人殺し、みんなですればこわくない
・僕も今日、実行するよ
内心では殺人犯の少年に憧れ、自分も凶悪犯罪を起こしたいと思っていたものの、外から見たネオ麦茶は真面目で従順な少年でした。
そのため、この時に彼から1泊2日の一時帰宅を願い出られた担当医師は、外泊の許可を出してしまったのです。
ネオ麦茶が西鉄バスジャック事件を起こした動機
国立肥前療養所を出たネオ麦茶は当初、自分が通っていた佐賀市立昭栄中学校へ向かい、ここで無差別に生徒を襲撃しようとしました。
しかし、ゴールデンウィーク中で学校が休みであったため断念。バスジャック事件に計画を変更したとされます。
当初、母校を襲撃して無差別殺人を起こす予定だったということからも想像がつくように、ネオ麦茶が西鉄バスジャック事件を起こした動機には中学時代に受けたいじめが深くかかわっていると考えられます。
自分の生活を一瞬にして地獄に変えてしまったいじめといじめの加害者を憎み、ネット上で見知らぬ人々と交流して気を紛らわせていたと思われるネオ麦茶。
しかしそれもうまくいかず、唯一の居場所だと思っていた2ちゃんねるでも嫌われてしまったことで宙ぶらりんになって、会ったこともない豊川市主婦殺人事件の犯人の犯人にシンパシーを感じてしまったのでしょう。
ネオ麦茶はキャットキラーを名乗っていた頃、「どうせ俺はゴミカスな人間だ。」「生きていて良かったと思った事は一度もない。」などと書き込んでいました。
少年は自分がひきこもりであることを告白し、「ガキのころからみんなにバカにされ、さげすまれて生きてきた」「人生に夢も希望もない」と弱い自分をさらけ出し、ネット上の見えない誰かと必死に繋がろうとしていた。
昭栄中学校の襲撃計画でも、無差別殺人に成功したら自分も自殺するつもりだったとのことですから、生きていても良いことなんてないのだし、せめてもの復讐をして死にたいという願望があったのかもしれません。
ネオ麦茶事件の被害者と死者
2000年5月3日から4日にかけて起きた西鉄バスジャック事件で牛刀で切りつけられた乗客は3人。うち塚本達子さんが出血多量で亡くなっています。
塚本さんはバスから飛び降りて逃げた乗客が出た際、激高したネオ麦茶に「連帯責任です！」と言われて一緒にコンサートに向かっていた山口由美子さんとともに切りつけられ、大怪我を負ったとされます。
このことから事件解決後には、バスから逃げた乗客に対して「無責任だ」「この人が逃げなければ、女性は死ななくて済んだのではないのか」と批判の声があがりました。
しかし、警官でも自衛官でもない一般人が凶器を持った人間と密室に閉じ込められたら、怖くて逃げたい、隙があれば逃げ出したいと思うのは当然のことです。
そのため現在では「西鉄バスジャック事件の後、TVでも逃げ出した人を責めるような風潮があったのは異常だったと思う」「誰だって自分が助かることしか考えられないよ」という声が多く見られます。
ネオ麦茶の本名は谷口誠一？顔写真もある？
事件当時まだ17歳であったため、ネオ麦茶の本名は正式に報道されていません。
しかし、事件直後に2ちゃんねるに書き込まれた多数の書き込みのうち、信憑性が高いのではないかという結論に至った情報に「ネオ麦茶の本名は谷口誠一」とあったことから、2ちゃんねるでは本名は谷口誠一なのではないかと噂されるようになりました。
そしてその後、マスコミが「インターネットの匿名掲示板に西鉄バスジャック事件の犯人の本名が流出している」と報道したため、ネオ麦茶の本名が確定扱いになりました。
また、ネオ麦茶こと谷口誠一の顔写真もネット上に流出しています。上の写真は、実際には報道されなかったバスジャックの最中の様子を撮影したものです。
しかし、どういう経緯かネット上に流出してしまい、さらに読売新聞社のストリーム放送『YOMIURI NEWS STREAM』でも使用されてしまったことから、ネオ麦茶の顔画像として知られるようになりました。
ネオ麦茶の家族① 父親と母親
ネオ麦茶こと谷口誠一の父親と母親は上でも紹介したとおり会社員と保健師をしており、問題のない家庭だったといいます。
息子がいじめられていることが分かってからは学校に行く、犯罪の兆候を発見したら警察や精神病院に相談に行くといった状況に応じた対応をしていることから見ても、決して子どもに関心がなかったようには見えません。
ただ、西鉄バスジャックの被害者で牛刀で顔などを切りつけられて重傷を負った山口由美子さんは、谷口の逮捕後に彼の両親に対して「いじめで苦しんでいた時、ちゃんと話を聞いてあげていれば」と苦言を呈していました。
山口さんもまた、我が子の不登校に悩んだことがあったそうです。それだけに、不登校の背後にあるSOSを親が受け止めてあげるべきだった、欲しいというものを買い与え、暴力に怯えてばかりでは子どもは救われないのだと谷口の両親に訴えたのでしょう。
ネオ麦茶の家族② 妹
谷口誠一の妹は明るく、天真爛漫な性格だったといいます。しかし、兄が家庭内暴力を振るうようになると、妹は真っ先にターゲットとなってしまいました。
谷口は幼い頃から運動神経や身体の小ささに悩まされてきたためか、西鉄バスジャック事件でも反抗してきたら勝てない可能性のある男性客を先に全員解放するなどの行動を見せていました。
バスジャック中に怪我を負わせた乗客も全員女性で、男性に暴力を振るうのは避けていたようです。
また事件当日、谷口は両親に「サイクリングに行ってくる」と言って家を出たことから、兄がわかくす号に乗ると知らない妹も、偶然にも同じバスに乗る予定でいたのだそうです。
しかし、切符を買っているうちにバスが出発してしまい乗り遅れてしまったといいます。
もしもバスジャックしようとした車両に実の妹が乗っていたら、谷口は思いとどまることができたのでしょうか。
ネオ麦茶の裁判と判決
逮捕後、ネオ麦茶こと谷口誠一は「別にあのバスじゃなくてもよかった」「頭が良いのに塾に入れたこと、正常なのに精神病院に入れたことから親を恨んでいる」などと供述していました。
そして事件を起こした時のことを振り返り「バスジャックに成功した時は三国志の劉備玄徳になった気分だった」「英雄になった気分だった」と述べたといいます。
家庭裁判所に送致する前に広島地裁は谷口を精神鑑定にかけることを決め、精神鑑定を担当した医師からは「精神分裂症（統合失調症）の疑いがある」との結果が出されました。
この結果を受けて広島地裁は強盗殺人、強盗殺人未遂などの5つの罪状で広島家裁に送致。その際に「刑事処分相当」という意見書をつけました。
広島地裁は国内で発生したバスジャック事件で初めて死者が出たことなどから事態を重く見ており、少年事件としての保護処分ではなく、成人と同じ刑事処分を求めたのです。
しかし、処分を判断するには被告人の責任能力を確認する必要があるとして谷口の身柄は佐賀少年鑑別所に収容されます。
こうして犯行寸前まで谷口を預かっていた国立肥前療養所などの意見を集め、谷口の第一回の審判は2000年6月17日に佐賀家庭裁判所で開かれました。つまり、成人犯罪と同様に裁くための逆送致はされなかったということです。
そして同年9月29日の第4回審判で、谷口には5年以上の医療少年院への送致が言い渡されることとなります。これが谷口に下された判決です。
佐賀家裁は犯行時に谷口に責任能力はあったとしながらも、精神鑑定の結果、解離性障害、行為障害の症状がみられるという精神鑑定の結果を受けて「更生には適切な治療が必要」と判断したとされます。
こうして谷口誠一は結局、2020年10月2日に京都医療少年院に移送され、5年4ヶ月の間、収容されることとなりました。
ネオ麦茶の現在…今の年齢や結婚情報
ネオ麦茶こと谷口誠一は2006年3月26日に医療少年院を退院しています。この時の年齢は22歳、現在は40歳になっているはずです。
医療少年院を出た後、どのように暮らしているのかは不明ですが、医療少年院収容中に谷口は自分のやってしまったことを深く反省した様子で、被害者や亡くなった遺族へ直接謝罪したいと口にするように変化したといいます。
もちろん被害者や遺族のなかには「会いたくない」「早期の医療少年院からの隊員を狙っているだけではないか」と谷口の申し出を断る人もいました。被害者や遺族の気持ちを考えれば無理もないことです。
しかし、上でも紹介した被害者の山口由美子さんは谷口に面会し、「誰かに理解してほしかったよね、辛かったよね」と谷口に寄り添って涙を流してくれたといいます。
中学3年生でいじめを受けて以降、ずっと閉ざされたままだった谷口は、後に山口さんに向けた手紙でこの時のことを以下のように書いていたそうです。
「私のことを思って泣いてくださった時、自分の罪深さと温かい思いが同時に沸き起こりました」
医療少年院退院後、谷口誠一の名前がニュースで流れたことはありません。そのため再犯せずに社会生活を営んでいるものと思われます。
現在、結婚しているのか否かも不明ですが、自分の辛さに寄り添ってくれた山口さんのためにも二度と罪を犯さないでほしいと願うばかりです。
ネオ麦茶の実家
逮捕後の民事訴訟で、谷口誠一に対して被害者22人へ総額1380万円もの賠償金支払いが命じられました。これは当時未成年であった息子に代わり、両親がきちんと支払っているといいます。
とはいえ事件の影響で母親は保健師の仕事を続けられなくなり、離職。父親も当時の職場にはいられなくなり、転職して賠償金を払い続けたものの支払いに窮して、ついには実家を手放してお金を工面したそうです。
真偽は不明ですが、2ちゃんねるには2008年の時点で「ネオ麦茶の近所に住んでいて事件後はインタビューも受けた」と名乗る人物から、「ネオ麦茶の実家は県内でも有名な女子高の正面にあった」「立地は良かったのに、売りに出されても買い手がつかないのか空き家になっている」との書き込みがされていました。
ネオ麦茶と西鉄バスジャック事件についてのまとめ
今回は200尾年5月3日から4日にかけて発生した西鉄バスジャック事件の犯人である、ネオ麦茶こと谷口誠一について、生い立ちや反抗動機、判決や現在を中心に紹介しました。
谷口誠一の犯した罪は決して許されることではありません。しかし、彼をここまで追い詰めてしまった元凶であるいじめの加害者たちは、おそらく谷口が引きこもっている間も、事件を起こした時も、医療少年院に収容された間も、何も感じずに暮らしているのでしょう。
元をたどれば中学生時代のいじめがなければ、起きていなかった可能性が高い西鉄バスジャック事件。亡くなった塚本さんのご冥福を祈るとともに、類似の事件を防ぐためにも教育現場でのいじめの対応の見直しや、いじめの厳罰化を求めたいものです。
