他の牛丼チェーンとは一線を画す「焼き牛丼」が話題となりブームを引き起こした牛丼チェーン「東京チカラめし」の急激な衰退ぶりが話題です。
この記事では東京チカラめしがなぜ次々と閉店して衰退したのかの理由や、復活を期す現在や今後の展望などについてまとめました。
この記事の目次
東京チカラめしは一時期焼き牛丼で話題になった牛丼チェーン
「東京チカラめし」は、煮込んだものではなく焼いた牛肉をご飯に乗せた「焼き牛丼」を売りにして一時期ブームを巻き起こした牛肉チェーンです。
2011年に東京池袋に第1号店(池袋西口店、2020年10月に閉店)をオープンさせるや、瞬く間に店舗数を増やし、2013年までに全国で134店舗を展開するまでに急拡大しました。
煮込むのではなく、焼いた牛肉をご飯に乗せた「焼き牛丼」で人気を博した「東京チカラめし」。2011年6月に1号店を東京・池袋にオープン後、ブームに乗って最盛期には134店舗にまで拡大した。
東京チカラめしは2013年頃から閉店する店舗が相次ぎ急激に衰退
一時は画期的な焼き牛丼で大ブームを起こした牛丼チェーン「東京チカラめし」でしたが、2013年を境にして次々と不採算店を閉店させ、2019年3月の時点で8店舗、2021年1月の時点で5店舗、2022年9月の時点で2店舗、そして2023年の現在、ついに国内には1店舗を残すのみとなっています。
次の見出しからは、東京チカラめしがなぜ次々と店舗を閉店させ衰退したのかの理由について見ていきます。
東京チカラめしがなぜ閉店し衰退したかの理由① 材料費上昇と人員不足
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「東京チカラめし」を運営する「三光マーケティングフーズ(現在はSANKO MARKETING FOODS)」は、2014年6月期の有価証券報告書で、事業縮小と業績不振の理由として、「米国産牛肉等の主要食材の高騰」、「コンビニエンスストア等、業種を越えた企業間競争の激化」、「雇用環境の変化に伴う人員不足」、「平成26年4月の消費税増税による収益力の低下」の4つを挙げていました。
三光マーケティングフーズの有価証券報告書(14年6月期)では、苦戦する背景として「米国産牛肉等の主要食材の高騰、コンビニエンスストア等、業種を越えた企業間競争の激化、雇用環境の変化に伴う人員不足、さらには平成26年4月の消費税増税による収益力の低下」を挙げている。そして、同社は居酒屋業態に経営資源を集中させるため、東京チカラめしの業態を大幅に縮小させることを決定した。
ただ、これは他の飲食店チェーンも条件は同じなので、東京チカラめしだけ衰退した理由としては説得力に欠けます。
東京チカラめしがなぜ閉店し衰退したかの理由② 調理時間の長さや飽きられて客が減少
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東京チカラめしの最大の売りは、「焼き牛丼」という他の牛丼チェーンとは一線を画したメニューでした。
ところが、逆にこれが東京チカラめしの弱点になり、閉店数増加と衰退の理由となったとの指摘も見られます。
東京チカラめしは都心部の繁華街を中心に小型の店舗を出店していましたが、牛丼などのファーストフードを提供する小型の店舗ではランチタイムなどのピークタイムでの客の回転率を高められるかどうかが利益を上げられるかどうかの重要なポイントになります。
「吉野家」や「すき家」などの大手牛丼チェーン店ではあらかじめ煮込んでおいた牛肉をご飯に乗せて提供するためスピーディに料理を提供する事が可能ですが、東京チカラめしでは、牛肉を焼くオペレーションがあるため、料理の提供に時間がかかり回転率を高められなかった事が業績悪化につながったとされています。
また、繁華街や都心部の牛丼店のランチタイムは、素早く美味い物を食べて仕事に戻りたいという客が多いため、そうした人達のニーズにも合っていませんでした。
東京チカラめしの焼き牛丼には「焼く」というオペレーションがあり、すき家や吉野家のように「よそう」だけの店舗と比べて提供時間が長くなる。つまり、ピークタイムに客数が稼げないのだ。
繁華街の牛丼店で食事をする客は「早い」「安い」「うまい」を求めている。提供時間の遅れは客のニーズに合っていなかった。
また、焼き牛丼の珍しさで、スタートした当初は大きな話題になった「東京チカラめし」でしたが、しばらくして目新しさがなくなると客足が減り業績を悪化させたとの見方も出ています。
当初は集客できていた店舗でも、肉を焼く調理作業などで商品提供に時間がかかり、目新しさで来ていた客が一巡すると採算が合わなくなり始めた。
東京チカラめしがなぜ閉店し衰退したかの理由③ 拡大が急すぎて育成が追いつかずに破綻
「東京チカラめし」は、2011年6月9日に第1号店である池袋西口店を東京都池袋に開店させました。
運営会社の三光マーケティングフーズは2012年6月末までに50店舗を展開する計画を発表。今後の同社の主力業態になるとの報道も出ました。
その後、三光マーケティングフーズは猛烈な勢いで東京チカラめしの出店を進め、わずか1年3ヶ月後の2012年9月11日に100店舗を突破させました。
しかし、この頃から閉店する店舗が目立つようになり、2013年に入ると営業方針を転換し深夜帯の営業を休止(それまでは24時間営業が基本方針だった)。その理由は、急激な店舗展開によって従業員の育成が追いつかず、一部スタッフへの負担が大きくなりすぎたためだったとされています。
従業員の教育不足が衰退の理由になったという指摘については、実際に当時の現場を経験している元従業員の方が以下のように証言しており、これが東京チカラめしが次々と閉店し衰退した理由として最も説得力があると見られています。
関係者の間では「本当の理由は別にある」との指摘があがる。元従業員の一人は「急過ぎる店舗拡大が本当の原因ではないか。スタッフの教育が足りず、少数の調理スタッフに負荷が集中していた」と証言する。
東京チカラめしの現在① 日本ではほぼ全て閉店し残り1店舗へ
「東京チカラめし」は2013年を境に次々と店舗が閉店し、2023年10月の現在は国内では2店舗、千葉県鎌ケ谷市の「新鎌ケ谷店」と、大阪府大阪市日本橋の「大阪日本橋店」を残すのみとなっています。
そして、関東唯一の東京チカラめしであった「新鎌ケ谷店」は2023年11月4日に閉店する事が発表され、残るは大阪日本橋店のみとなります。
関東唯一の東京チカラめしだった「新鎌ケ谷店」の閉店発表にはショックを受けたファンも多かったようです。
東京チカラめし!11/4関東唯一残った店舗が閉店します😭名残惜しく新鎌ヶ谷店まで食べに行きました!営業時間も短縮されており、閉店間際は混雑が予想されます。お早めにお召し上がりください。(またどうしても食べたくなったら大阪へ行くしか無いな)#元祖焼き牛丼#三光マーケティングフーズ pic.twitter.com/ZzjIkUaJZB
— もっちもち (@motchimochi310) October 26, 2023
なお、国内唯一の東京チカラめしとなる、大阪日本橋店の場所は「大阪府大阪市浪速区日本橋3-5-29 1F」です。
東京チカラめしの現在② 香港やタイに進出し活路を模索
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現在、日本国内では新鎌ケ谷店(2023年11月閉店予定)と大阪日本橋店のみとなっている「東京チカラめし」ですが、実は2021年から香港とタイに進出しており人気となっているようです。
2021年に東京チカラめしが進出した香港では、九龍の繁華街「旺角(モンコック)」、同じ九龍の繁華街「新蒲崗」、そして香港科學園(香港サイエンス・パーク)の合計3店舗が展開中です。
2023年2月10日にはタイにも進出し、首都のバンコクの中心部にあるBTSサラデーン駅(Sala Daeng BTS Station)から徒歩1分にある商業施設「Thaniya Plaza」に第1号店を出店しています。
2021年に香港へ上陸、コロナ禍にもかかわらず人気となり3店舗を展開させると、今年2月にはタイ・バンコクに進出。日本人在住者や観光客の多いタニヤ通りに出店し、客足も順調だという。
東京チカラめしの現在③ 東京都心に新店舗開店の計画も
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2023年10月の現在、日本国内の店舗は大阪心斎橋店のみとなっている「東京チカラめし」ですが、運営会社の「SANKO MARKETING FOODS」の現在の社長・長沢成博さんが東京都心部に新店舗をオープンさせる計画がある事を毎日新聞に明かしています。
牛丼チェーン「東京チカラめし」が、2013年2月以来10年ぶりに国内に新規出店する。
長沢成博社長は、東京チカラめしの新店舗の出店時期については2023年中、場所については東京都心部と話されています。
新規出店の方針は、運営会社SANKO MARKETING FOODS(サンコーマーケティングフーズ、本社・東京都新宿区)の長沢成博社長が毎日新聞の取材に明らかにした。時期は23年中、場所は東京都心部だという。
ただ、現在はまだ東京チカラめしの新規店舗が出店されたという情報は出ていません。
新鎌ケ谷店の閉店が発表された際に、長沢成博社長は「できるだけ早いタイミングで新店舗のオープンを案内できるよう相応しい物件を探しています。」とコメントされていたので、現在はまだ物件を探している段階と思われます。
2022年8月には、都内唯一の「新宿西口1号店」が閉店。屋号に「東京」とありながら都内に東京チカラめしの店舗がなかったが、同社は「できるだけ早いタイミングで東京都内に新店舗オープンのご案内ができるよう、現在はふさわしい物件を探しております」と、都内への再出店を明かした。
ただ、新店舗を出店への意欲は強いようなので、近いうちに東京チカラめしの新店オープンのニュースが報じられる可能性が高そうです。
まとめ
今回は、2011年に東京池袋に第1号店がオープンし、他のチェーンとは一線を画した焼き牛丼を売りに瞬く間にブームを起こすも、その後急激に衰退した牛丼チェーン「東京チカラめし」についてまとめてみました。
東京チカラめしは2011年の1号店出店からわずか2年後の2013年までに全国で134店舗を展開するまでに急拡大しましたが、この年を境にして次々と店舗が閉店し、2023年10月の現在は国内に2店舗(うち1店舗は11月閉店予定)のみとなるまでに衰退しています。
一時はブームを巻き起こした東京チカラめしがなぜ次々と閉店し衰退したのかの理由としては、東京チカラめしの運営会社は有価証券報告書で材料費の高騰と人員不足などを挙げていました。
一方、本当の衰退理由は別にあるとする見方もあり、急激に店舗拡大したために従業員に十分な教育を行えなかった事と、強みであるはずの「焼き牛丼」は牛肉を焼く必要があり提供に時間がかかるという点が逆に弱点となってしまった事が衰退の本当の理由だと言われています。
2023年10月の現在、東京チカラめしは国内には新鎌ケ谷店(11月閉店予定)と大阪日本橋店のみとなっていますが、その一方で海外進出しており、2021年に香港に3店舗、2023年にタイバンコクに1店舗を出店しています。
また、東京チカラめしを運営するSANKO MARKETING FOODSの社長の長沢成博さんが2023年中に東京都心に新たな店舗を出店する計画を進めている事を明かされています。