SNSなどで高額な報酬を謳って応募者に違法行為の手伝いをさせる闇バイト。この記事では闇バイトについて、なぜ応募者が後を絶たないのか、探し方や隠語、闇バイトが関わる事件一覧や逮捕者、危険性や事故死したケースについて紹介していきます。
この記事の目次
闇バイトとは
闇バイトとは犯罪の代行や協力をする代わりに高額な報酬を受け取るという、違法なアルバイトのことです。
主にSNSやネット掲示板などで募集されており、高額報酬、即入金、誰にでもできる簡単な仕事、などのタグが付けられていることが多く、闇バイトで行われている仕事としては、以下のようなものがあります。
・特殊詐欺の受け子や出し子、電話番
・銀行口座やキャッシュカード、携帯電話の名義の売買
・違法薬物の運搬、荷受け
・強盗や窃盗の実行犯
・パチンコの打ち子
・出会い系のサクラ
一度応募してしまうと脅されて何度も犯罪行為の手伝いをさせられ、逮捕されるまで使われるケースが多いとされています。
闇バイトでに手を染めるのは10代、20代の若者が多く、2022年の闇バイト関連の逮捕者数のうち、477人が未成年者だったとのことです。
また、末端の実行犯には指示役の正体が伝えられることはないため、闇バイトで雇われた者を逮捕しても犯罪組織の幹部にまで辿り着くことはほぼありません。そのため「犯罪組織のトカゲの尻尾」「使い捨て」とされています。
闇バイトに応募する人が後を絶たないのはなぜ?
前述のように闇バイトに応募してしまうのは圧倒的に若者が多く、社会経験の乏しさから手っ取り早く大金が稼げるという甘い言葉に騙されてしまうのではないか、と言われています。
闇バイトに手を出す若者がお金を欲しがる理由はさまざまで、突然解雇されて生活に困窮してやむを得ずといったものから、ギャンブルやゲーム課金で借金ができてしまった、推し活や投げ銭に使うお金が欲しいというものまであります。
また入り口もSNSやネット掲示板など、それ自体はなんら違法性のない、日常的に利用されているツールであるため、応募のハードルが低いことも若者が簡単に闇バイトに堕ちてしまう理由でしょう。
学校やアルバイト先の先輩から、「簡単に稼げる割のいい仕事があるよ」と声をかけられ、話を聞いたら闇バイトの勧誘だったというケースもあるそうです。
この場合は知り合いが紹介してくれたのだから安全だろうと思って手を出してしまい、学校や周りの友人に犯罪者だとバラすと脅されて、いいように使われることが多いといいます。
闇バイトの探し方
闇バイトは以下のようなSNSや匿名掲示板で募集されていることが多く見られます。
・X(Twitter)
・iMessage
・ジモティー
・爆サイ
SNSでの募集の場合、高収入、高額バイトなどの甘い言葉のタグがつけられているほか、「貧困」「お金が欲しい」といったタグがつけられていることがあり、お金に困っている人を犯罪に誘い込もうとする様子が窺えます。
また、生活苦を訴える投稿やSNSのお金配り案件への応募などをすると、闇バイトの斡旋役から「簡単に稼げる仕事を紹介します」と声がかかり、仕事に誘われるケースもあるといいます。
また、2022年の夏頃からは「Indeed」や「エンゲージ」といった求人サイトでも闇バイトの募集が確認されており、募集者側はダミー会社を使ってサイトの審査をパスしているとのことです。
仕事の内容は「回収」「配達」「ハンドキャリー」など曖昧な言葉で説明されていることが多く、応募するとTelegramのような秘匿性が高いメッセージアプリに誘導されます。
闇バイトで募集される仕事一覧と隠語
闇バイトで募集されている仕事は多岐に渡り、なかには第三者に計画の詳細がわからないように隠語が使われるケースもあります。
ここでは代表的な闇バイトの仕事と、その仕事で使われる隠語を紹介していきます。
特殊詐欺の受け子・出し子
電話などで言葉巧みに高齢者を騙し、現金の振り込みやキャッシュカードと暗証番号の提示などを求める特殊詐欺。
孫や子どもを騙ってお金を振り込ませる「オレオレ詐欺」や、契約していないサービスの契約金や違約金の支払いを強要する「架空請求詐欺」などを含む犯罪行為です。
闇バイトでは主に特殊詐欺の受け子、出し子、かけ子が募集されており、それぞれの隠語が示す仕事内容は以下のようになっています。
・受け子…被害者と接触し、現金やキャッシュカードなどを受け取る役。Uと呼ばれることもある
・出し子…ATMから詐取した現金を引き出す役。Dと呼ばれることもある
・かけ子…リストに基づいて被害者に電話をかけ、騙す役
特殊詐欺に関わった場合、業務の種類にかかわらず逮捕された場合には詐欺罪が適用されます。
詐欺罪の罰則は10年以下の懲役刑と重く、初犯でも執行猶予がつかないケースが多いです。
なお、特殊詐欺の闇バイトで逮捕された場合、懲役1年半から2年の量刑になることが多いといいます。
銀行口座や携帯電話の名義の売買
銀行口座を開設させたり携帯電話の新規契約をさせ、その名義を依頼人に売却するという仕事です。
一見すると簡単でリスクのない仕事内容に見えますが、売却した銀行口座や電話番号はマネーロンダリングや犯罪行為に使われることが多く、罪収益移転防止法違反として1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金に課されます。
また、銀行口座の売却や譲渡が明らかになったり、譲渡した口座で不審な金銭のやりとりが見られた場合には、同一名義の銀行口座がすべて凍結される恐れがあります。
さらに今後、銀行口座を開いたり携帯電話を契約したりできなくなることもあるため、リスクは大きいと言えるでしょう。
違法薬物の運搬、荷受け(運び屋)
出典:https://free-materials.com/
違法薬物や盗品、密輸品など通常の配達業者には配送を頼めないものを運搬する仕事で、運び屋という隠語で呼ばれます。
所定の場所に行って荷物を受け取り、指定された場所まで持っていくだけなので罪悪感なくやってしまう若者もいるそうですが、違法薬物の密輸入に加担してしまった場合には10年以下の懲役または3,000万円以下の罰金、もしくは併科という重罪となります。
運び屋の闇バイトの中には「渡航費用を支払うので、海外に行って荷物を受け取ってきてほしい」と旅行がてら簡単な荷受けを頼みたいと甘い言葉で募集をかけるケースもあるそうです。
しかし、違法薬物の密輸は薬物犯罪の中でももっとも重いため、軽い気持ちで加担して多くのものを失う恐れがあります。
なお、違法薬物の取引現場では以下のような隠語が使われることがあります。
・大麻…野菜、葉っぱ
・MDMA…X、罰、バツ
・覚醒剤…アイス
・対面で直接、薬物の取引をすること…手押し
強盗や窃盗の実行犯(タタキ)
強盗や窃盗はタタキ、もしくはTという隠語で呼ばれる闇バイトです。言い逃れのできない違法行為のため、逮捕後に「アルバイトで雇われただけ」という言い訳は当然通じません。
タタキという隠語は警察用語で強盗を意味するもので、同じく警察用語で窃盗は「のび」といいます。
しかし、闇バイトでは強盗も窃盗も、あらかじめターゲットの資産を電話などで確認してから盗みに入るアポ電強盗も、タタキと呼ぶことがあるようです。
強盗罪には5年以上20年以下の懲役刑が科され、原則として初犯であっても執行猶予がつかないとされています。
さらに強盗に押し入った先で人に怪我をさせたり、殺害してしまった場合には死刑を言い渡されることもあります。
また、闇バイトでは他の犯罪グループが盗み出した金品を強奪する「取り子」という仕事も存在し、これもネットなどで募集されていることがあるそうです。
-
パチンコやスロットの打ち子
仕事として報酬をもらってパチンコやスロットを打つことを隠語で「打ち子」と呼び、これについては違法なケースと合法なケースが存在します。
たとえばパチスロ必勝法を載せた雑誌やサイトの特集記事を作るため、人を雇って対象の台で遊ばせるという行為に違法性はありません。
また、パチンコ店が店が賑わっているように見せるため、サクラとして打ち子を雇うこともあるようですが、これも度が過ぎて詐欺罪に当たらない限りは罪に問われる可能性は低いでしょう。
しかし、あらかじめ不正に細工された台で遊ぶように指示され、打ち子が利益を得た場合には窃盗の共謀共同正犯が成立し、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金が課されます。
なお、SNSなどで「パチンコで遊ぶだけで高額収入」などと謳い、打ち子を募集していることがありますが、これは闇バイトの募集よりも登録料を騙し取る副業詐欺のケースが多いといいます。
出会い系サイトのサクラ
出会い系サイトに一般会員を装って登録し、他のユーザーの現金やポイントを消費させるという闇バイトです。
単に会うつもりや交際するつもりがないのに思わせぶりな言葉で相手にお金を出させるいわゆる色恋営業のほか、男性なのに女性のふりをする(または逆)といったように架空の人物を装って、相手を騙すケースもあります。
出会い系のサクラはスマホ1台でどこでもできるうえ、騙される方が悪い、やり取りをしている時間は夢を見せてやったのだから良いだろう、と軽い考えで手を染める人も多い犯罪です。
しかし詐欺罪にあたる可能性もあり、過去には逮捕者も出ています。
追い出し屋
追い出し屋とは、オーナーや不動産会社などから依頼を受けて家賃を滞納している入居者に嫌がらせをして追い出す闇バイトです。
追い出し屋の仕事としては、人目につく場所に「〇〇号室の入居者の××は家賃を滞納している」といった貼り紙をする、家主がいない間に合鍵で部屋に入り込み、家財を処分するといったものがあります。
約束している家賃を守らない方が悪いとの考えから加担してしまう人も少なくないとされますが、それぞれ名誉毀損罪や窃盗罪、住居侵入罪に該当するため立派な犯罪行為です。
アリバイ会社
アリバイ会社とは、実際には雇用していな人に対して虚偽の給与明細や源泉徴収票などを発行する会社で、定収入がなく部屋が借りられない人やクレジットカードが作れない人が主に利用するとされています。
検索するとネット上にも多数のアリバイ会社の広告やサイトが表示され、軒並み「アリバイ会社は違法ではありません」と謳っています。
しかし、虚偽の信用情報で不動産会社や金融会社を騙すわけですから、場合によっては契約の相手方から背信行為による詐欺として訴えられるおそれがあります。
実際に摘発されたアリバイ会社もあるため、闇バイトでアリバイ会社で働くのはもちろんのこと、客として利用するのも避けるべきです。
ぼったくりバーの従業員
パパ活やギャラ飲みといった異性と飲食を一緒にするだけで高収入が得られるアルバイトを斡旋すると謳って若い女性を集め、ぼったくりバーで働かせるという闇バイトも存在します。
もともとパパ活やギャラ飲みも危険性のあるグレーなアルバイトであるため、これらの紹介を頼んで個人情報を握られ、風俗や違法な店で働かされることになっても周囲に相談しづらいと考える人が多いです。そのため犯罪の温床になりかねないと危惧されています。
夜逃げ屋
多重債務者や犯罪者など「訳アリ」な人の引っ越しを手伝う夜逃げ屋も、闇バイトとして募集されていることがあります。
作業自体は通常の引越し業者と変わりませんが、犯罪者の夜逃げを知らずのうちに手伝ってしまった場合であっても犯人蔵匿罪などに問われるおそれがあります。
チラシ貼り
電柱や自動販売機の側面などに、上のようなポスターが貼られているのを見たことはないでしょうか。
このようなポスターには決まって「お金持ちの年配女性とデートをすることで月に30〜50万円の高額報酬が得られます」という内容の求人と、採用会社の電話番号が印刷されています。
しかし、そんなうまい話があるわけがありません。電話をすると採用担当を名乗る人物に繋がり、仕事を斡旋する前に登録料を指定の口座に振り込むように言われます。
登録料を払うと音信不通になり、もちろん仕事など斡旋されないという昔ながらの詐欺です。
許可を得ずにこのような詐欺会社や闇金のチラシを街中に貼る仕事も闇バイトで募集されており、この行為も軽犯罪法違反に該当します。
闇バイトの報酬は本当に高額?
闇バイトの募集では日給5〜20万円、月に数回働くだけで30万円稼げるといったように通常では考えられない報酬が提示されています。
しかし、実際には多くの場合で報酬は支払われず、一度渡された報酬を取り上げられたり、もう一度仕事をしたら支払うと言われてずるずるとタダ働きをさせられるケースが圧倒的に多いそうです。
それどころか運び屋や携帯電話の名義譲渡などの闇バイトでは、「渡航費は後で精算する」「譲渡された携帯電話の利用料金は請求されない」との説明があっても、闇バイトに募集した側にすべて請求がいくことがあり、結果として多額の負債を負わされることも少なくありません。
違法行為に加担してしまったために警察に相談することもできず、結局、背負わされた借金を支払い続ける人もいるといいます。
怪しい、報酬はもらえないのではないかと気づいた時点で「仕事を辞めたい」と訴えても、応募をした時点で以下のようなフォームへの個人情報の記載や免許証といった身分証の提出を求められるため、途中で辞めるのも困難です。
「実家に行くぞ」「家族に何かあっても知らないぞ」などの言葉で脅されて辞めることができず、家族や警察にも相談できずに犯罪のコマとして使い捨てにされる。闇バイトではこういったケースが主流だと言われています。
生活苦から軽い気持ちで闇バイトに応募し、特殊詐欺に加担させられたという若者は、関西テレビの取材に答えて以下のように語っていました。
「お金が必要でしたことなのに、必要だった以上にお金が絶対に出ていく。前科もつく。マイナスしかないし、いいこと絶対にないから。犯罪するぐらいなら他にもなんでもできる。信じる人を絶対に間違わないで欲しい」
引用:だまし取った金額は1千万円 “闇バイト”を経験した女性が語る ハマると抜け出せない恐怖の実態 「前科もつく、いいこと絶対にない」
4000万円盗んで報酬は10万円というケースも
2023年2月、新宿区に住む会社役員の自宅に4人の男が押し入り、現金約1,250万円と貴金属など2,900万円相当が盗まれるという事件が起こりました。
逮捕された犯人の1人、山本裕司(当時36歳)は、闇バイトに応募して「10万円やるから」と言われて窃盗に入ったとされます。
実行役は4000万円も盗み、報酬はたった10万円。これだけのお金のために人の道を外れて前科者になる人がいるのかと驚かされるとともに、末端の実行役に支払われる報酬の低さにも衝撃を受けます。
闇バイトで起きた事件や逮捕事例
運び屋をやって死刑
2009年10月30日、マレーシアの首都クアラルンプールの空港で日本人の元看護師竹内真理子(当時37歳)が逮捕されました。
逮捕の理由は覚醒剤の密輸。竹内真理子は加工したスーツケースの底に合計約3.5kgの覚醒剤を隠し持っていたのです。
取り調べに対して彼女は「ドバイの空港で見ず知らずの外国人に運ぶように頼まれて持ってきただけ」と供述し、中身は知らなかったと弁解しました。
結局、彼女に覚醒剤を渡した黒幕の存在は分からなかったものの、薬物の密輸入に対して厳しい規制をしているマレーシアの法律に照らし合わせて竹内真理子にはなんと死刑が言い渡されます。
竹内真理子が誰に頼まれて運び屋をしたのかは報道されていませんが、ジャーナリストの石井光太氏の取材からは彼女が知人とともに運び屋の闇バイトをしていた可能性が浮かび上がっています。
どうやら海外の空港で依頼人から預かった荷物を運ぶだけで数十万円の報酬を得ていたといい、こんなにうまい話がない、荷物の中身は危険なものだろうと気づいていたものの、ずるずると闇バイトを続けてしまったそうです。
竹内真理子には二審でも死刑判決が下されています。軽い気持ちで運び屋をやって極刑を言い渡されるという、闇バイトの恐ろしさがよくわかるケースと言えるでしょう。
広域連続強盗事件
2023年1月19日、東京都狛江市の民家からこの家に住む大塩衣与さん(90歳)が結束バンドで両腕を縛られ、頭から出血した状態で発見されるという強盗殺人事件が発生しました。
大塩さんは激しい暴行を受けたと見られ、警察と同居する家族が見つけた時にはすでに亡くなっており、家の中は荒らされていました。
この日の昼、千葉県警から警視庁に「大塩さんの家が強盗団に狙われている」という情報提供があったといいます。
千葉県警は別の強盗事件で逮捕した男のスマホから大塩さん一家の情報が出てきたことから、強盗団のターゲットになっているのではないかと考えて警視庁に報告していたのです。
警視庁はすぐに外出していた同居家族に連絡をとり、1人で留守番をしているという大塩さんの様子を見に駆けつけました。しかし、すでに家は荒らされ、大塩さんも変わり果てた姿で息を引き取っていたのです。
当時、関東では東京近県を中心に強盗や窃盗事件が頻発していました。さらに以下の事件ではて口に共通点が見られたため、規模の大きな犯罪グループが組織的に動いているのではないか、と考えられました。
・2022年12月5日…東京都中野区に住む49歳の男性の家に複数の男が押し入り、現金約3,000万円が盗まれる。男性は顔を殴打されて怪我を負わされ、自力で通報した。
・1月10日…栃木県足利市に住む50歳代の男性の家に複数の男が押し入り、現金約300万円を盗まれる。男性は粘着テープで縛られた姿で発見される。
・1月12日…千葉県大網白里市のリサイクルショップに2人組の男が押し入る。居合わせた店長が抵抗し、駆けつけた警察によって男たちは逮捕される。この犯人の持つスマホから大塩さんの自宅情報が出てきたため、千葉県警は警視庁へ連絡した。
・1月14日…茨城県竜ヶ崎市に住む70歳代の夫婦の家に3人組の強盗が押し入り、現金約2万5,000円が盗まれる。夫婦は粘着テープで縛られた姿で発見される。
警察の捜査によって事件翌月の2月22日には大塩さん宅に押し入った犯人のうち3人、野村広之(当時52歳)、永田陸人(当時21歳)、19歳の少年が逮捕され、同月28日には加藤臣吾(当時28歳)も強盗殺人罪で逮捕。
4人は接点も面識もなく、「Kim」「ルフィ」と名乗る人物の指示に従って犯行に及んだことが明らかになり、SNSで闇バイトに応募していたことや余罪があることも判明しました。
このルフィと名乗る男は2021年の夏以降、日本各地で発生した50件以上の強盗や窃盗事件に関与した疑いがあり、指示に従って闇バイトに手を出し、逮捕された容疑者は60人を超すとも報じられています。
その後、一連の広域強盗事件の首謀者で指示役のKimと見られる渡辺優樹(当時39歳)と、その右腕でルフィと名乗っていたとされる今村磨人(当時39歳)を含む闇バイト幹部4名がフィリピンから強制送還。
狛江市の事件で起訴されるとともに、現在もどの事件に関与していたのか洗い出しがされています。
ポケカ強盗で35歳男性が逮捕
2023年4月12日の午前5時頃、秋葉原にあるトレーディングカード販売店に男(35歳、無職)が侵入し、ポケモンカード1500枚を盗み出すという事件が起こりました。
工具で店のショーケースを破壊し、約115万円相当のポケカを盗み出したこの男は、わざわざ沖縄から窃盗のために上京していました。
男はTwitter(現在のX)で高額報酬を謳う求人に応募し、指示役からポケカを盗んでくるように言われて店に窃盗に入ったといいます。
犯行の前日に茨城県のレンタカー店で車を借りた後に、面識のない男に工具などの犯行に使う道具を渡されたとのことで、盗んだポケカもこの男に手渡したそうです。
しかし、指示通りに仕事を終えて盗品も渡したにもかかわらず、指示役の男は「後で報酬は振り込む」と言い残して音信不通になり、実行犯役の男は一円も受け取れませんでした。
そのため沖縄に帰ることもできず、しばらく東京近郊の知人の家などを転々とした後に家族に旅費を払ってもらって2ヶ月後の6月に沖縄へ帰還。自宅に戻ったところで警察がやってきて、逮捕となりました。
結局、男は沖縄から東京までの往復の旅費を自腹で支払ったうえ、窃盗の前科がついてニュースで顔が報道されたという結末を迎えています。
銀座の高級時計店強盗事件
2023年5月8日の18時過ぎ、買い物客で賑わう銀座の高級時計店「クォーク銀座888店」に覆面をつけた3人の男が押し入り、ロレックスなど腕時計100本以上を盗み出すという強盗事件が起こりました。
店の周囲にいた人々は、あまりに堂々とした犯行の様子に「ドラマの撮影じゃないのか」と思ったそうで、犯行の一部始終を動画で撮影する人までいたほどです。
店から出た男たちは近くに停まっていた車に乗り込み、共犯者の男の運転であっという間に反抗現場を後にしました。
しかし目撃者が多く、警察への通報も速やかに行われたために犯行の1時間後には赤坂で犯人の1人が逮捕され、ほかの2人と運転手役の男も全員逮捕されることに。
その後の警視庁の発表で、逮捕された強盗犯は無職の16歳の少年と18歳の高校3年生、アルバイトの19歳、職業不詳の19歳と発表され、世間を驚かせました。
少年たちはそれぞれ面識はなく、個別にSNSで闇バイトに応募して犯行当日に初めて知り合ったといいます。
さらに7月にはこの強盗事件に使われた逃走車をレンタカー店から借りた33歳の会社員男性が、5人目の共犯者として逮捕されており、この会社員男性も闇バイトの募集から事件に加担したと報じられました。
72歳の高齢者が受け子
2023年7月10日には、郵便局員を騙って「還付金を受け取るためにキャッシュカードを新しいものと交換してください」といって70歳の女性からキャッシュカードを騙し取ろうとしたとして、なんと72歳の高齢者が逮捕されました。
特殊詐欺の受け子をはたらいたこの男性は、携帯電話で「高収入」「日払い」というワードで検索をして闇バイトにたどり着いたといいます。
男性は指示役から言われるがままに女性に連絡をしたと犯行を認めており、警察は指示役についても捜査しているとのことです。
知らぬ間に闇バイトに加担していた主婦
2023年5月、闇バイトに加担していたとして20代の女性が逮捕されました。女性は3人の子どもを持つシングルマザーで、元夫から養育費も振り込まれずに生活に窮していたといいます。
闇バイトに手を出してしまったきっかけは、「在宅でできる仕事があれば」と軽い気持ちでXにツイートをしたこと。まだ子どもも小さく、通える範囲の保育園にも未満児クラスの空きがないことから、融通のきく仕事を探していたのだそうです。
数日後、女性のアカウントに「藤田」と名乗る男から「在宅でできる商品管理の仕事に興味はありませんか?」という内容のDMが届きました。
願ってもない話に女性は飛びついてしまい、テレグラムに誘導されて仕事の依頼を受けるようになります。
仕事の内容は「藤田」から送られてきた商品を指定の買取サイトで査定してもらい、買取価格が出たら「藤田」に連絡。
OKの連絡が来たら、女性の名義でフリマサイトなどに出品し、売れたら自分の報酬(売り上げの1〜3割)を引いた売り上げを「藤田」に送金するというものでした。
送られてくる商品は化粧品やDVDなどであったため、女性は不信感を持たずに働いていたそうです。
しかしその後、「藤田」と連絡がつかなくなり、新しい仕事が決まった勤務初日の朝に警察が自宅に来て、女性は逮捕されてしまいます。
実は「藤田」から送られてきた品物は他人のクレジットカードを不正利用して購入したもので、女性はそれらの転売をさせられていたのです。
結局、女性は不起訴となり釈放されましたが、逮捕が原因で決まっていた仕事にも就けなくなり、後悔の日々を過ごしているといいます。
YouTuber・ゆゆうたが闇バイト強盗の標的に
[youtube https://www.youtube.com/watch?v=zlMVi3rKFlo?si=4BH6s-rok5e7rfsx]
2023年6月、YouTuberのゆゆうた(鈴木ゆゆうた)さんが、「自宅が闇バイトで強盗のターゲットにされていた」という衝撃的な告白をして話題になりました。
闇バイトの募集サイトにはゆゆうたさんの本名と住所が晒され、「この家に入って依頼したものを盗んできたら1人あたり50万円支払う」と書かれていたそうです。
たまたま、この情報を見かけた闇バイトの撲滅活動をしていた人がゆゆうたさんに知らせたことで警察に連絡がいき、問題が起きる前にゆゆうたさんは引っ越しをして事なきを得ました。
闇バイトの募集をかけた犯人はまだ逮捕されていませんが、これまでゆゆうたさんが住んでいた場所は常に特定されて情報をネットにばら撒かれていたこともあり、「悪質なストーカーがいるのでは?」「他の配信者も大なり小なり似たような目には遭っているのかも。早く逮捕して厳罰に処してほしい」との声がネット上であがっています。
闇バイトの末路が悲惨すぎる・事故死した若者も
闇バイトに手を出してしまった若者のなかには、逮捕よりも悲惨な目に遭っている人も存在します。
2020年9月には闇バイトに応募し、大阪府で号当グループの送金役をしていた男性が警察の取り調べを受けた直後に都内ホテルで首を吊って自殺をしており、2021年にも闇バイトから特殊詐欺に加担した男性が高尾山で首吊り自殺という最期を遂げていました。
2人とも、怪しい仕事に手を出さずに生きていれば若くして自死を選ぶことはなかったのでしょう。
さらに2021年5月30日には、闇バイトに応募して窃盗事件に関与していた大学生が、名古屋市内で金庫を盗み出した帰りに滋賀県の新名神高速道路のトンネル内で事故死をしています。
この青年は家庭環境も良好で両親とも仲が良く、性格も真面目で朗らかと闇バイトに手を出すような人物にはまったく見えなかったそうです。
大学に入学して滋賀県内で1人暮らしを始めてからも、頻繁に親に連絡をしており周囲も異変に気づかなかったといいます。
しかし、本人は高校生の頃から親に内緒でYouTubeに動画投稿をしており、そのなかで盛んに「なんとしても金持ちになりたい」「有名になりたい」といった話をしていました。
そして大学受験を終え、親元を離れた開放感からか青年は「コミュ力を鍛えたい」という目的で1人暮らしをして早々に髪の毛を染めてホストのアルバイトをするようになったとのこと。
ところが思うように売り上げが出せずに思い悩むようになり、精神的なバランスを崩してわずか3週間でホストクラブを退職。
その後、高校や大学の友人とも連絡を絶ち、SNSを通じて闇バイトに申し込んだことが確認されています。
青年は万が一の時のために相手とのやりとりを保存していたうえ、仕事をふられる前から指示役に対して「5月末で辞めたいです」「ネットでは(闇バイトを)辞めようとすると脅されるという話が出ていますが、ちゃんと辞めさせてもらえますよね?」と念押しまでしていました。
お金に困っていたわけでもなければ、闇バイトは危険だという知識も持っていたにもかかわらず、なぜか青年は手を出してしまったのです。
交通事故が起きた時、青年は車の座席ではなくトランクにいたとのことで、大型トラックに後ろから追突された衝撃で車外に放り出されて亡くなりました。
車には同じく闇バイト募集で集まった5人が乗っており、青年をふくむ2人が死亡したとされます。
少し前まで一緒にいた人物が事故死したのだから、同乗者もショックを受けただろうと大息や、同乗者のうち1人はNHKの取材に対して以下のような発言をしていました。
「身内でもなければ友達でもありません。本名も年齢も知りませんでしたし、ぼうしを被ってマスクもしていたので、顔も大して分からず、夜に2回しか会ったことのない関係です。そんな赤の他人がトラックに突っ込まれて亡くなったところで、何の感情もわいてきません」
大事に育てた息子が、自分たちの知らないところで犯罪に手を染めて事故死をしたうえ、最期の瞬間に一緒にいたのは遺体を見てもまったく心が動かなかったと話す見ず知らずの他人。
青年の父親は2023年8月27日放送の『NHKスペシャル わが子が“闇バイト”に手を染めるとき』に出演し、窃盗の被害者に謝罪をしたうえで闇バイトの恐ろしさを訴えていました。
NHK 総合 27日(日) 午後9:00
NHKスペシャル わが子が“闇バイト”に手を染めるとき
📱NHKプラスで配信予定💻https://t.co/1rX3vv0EGq— NHKドキュメンタリー (@nhk_docudocu) August 26, 2023
放送の後、Xでは「闇バイト」がトレンドワードとなり、「こんなに周囲に恵まれていても闇バイトに手を出すのか。理解が追いつかない」「うちの子は大丈夫、というわけにはいかなそう。どうしたら子どもを守れるのだろうか」といった声があがりました。
闇バイトの逮捕者は再犯率が高い
警視庁の発表によると、2022年に特殊詐欺で摘発された容疑者の人数は803人、うち20歳未満が153人で、その過半数が再犯だったとのことです。
再犯が多い理由については、前科者になったことで就職できず、出所後も闇バイトに手を出す人も多いのかもしれませんが、個人情報を握られていることから出所後に指示役から接触されて、またしても脅されて犯罪に手を染めてしまうのではないか?とも見られています。
このことを重く受け止めた警察は警視庁少年育成課から全国で活動している保護市に呼びかけを行い、2023年6月に闇バイトの再犯防止について議論する集会を開きました。
集会では「闇バイトで出所した若者の交友関係に気を配り、断続的な支援を」といったことが保護司に求められたといいます。
闇バイトについてのまとめ
今回は2023年に発生した広域強盗事件をきっかけに注目を集めている闇バイトについて、仕事の内容や報酬、逮捕者が出た事件などを中心に紹介しました。
警視庁によると「バイト」という言葉で呼ばれることから、罪の意識もなく闇バイトに手を出してしまう若者が多いとされています。
しかし、逮捕された人々や関与してしまった人々の末路は悲惨なものばかりです。誰でも楽をして大金が手に入る方法が本当にあるのなら、日本の国民は全員大金持ちになっているはずです。甘い話には引っかからないよう、くれぐれも気をつけたいですね。