ゾディアック事件とは、1968年から1974年にかけてアメリカで発生した連続殺人事件です。犯人が難解な暗号文を送ってきたことで知られます。ゾディアック事件の真相考察まとめや、なんJ、アンビリバボー、本件を題材にした映画について紹介します。
この記事の目次
ゾディアック事件の概要
ゾディアック事件は、アメリカの犯罪史上もっとも謎めいた未解決事件とされる連続殺人事件です。
1969年10月14日、アメリカ合衆国カリフォルニア州のサンフランシスコにある新聞社「サンフランシスコ・クロニクル」に、血液の付着したシャツの切れ端と手紙が送られてきました。
この切れ端は、手紙が届く3日前の10月11日にサンフランシスコ市内で遺体が発見されたタクシー運転手、ポール・スタインのものであり、手紙には「ポール・スタインを殺したのは自分だ」という旨が記されていたといいます。
手紙の送り主は「自分が殺人犯である」と証明するために、わざわざ被害者を殺害した後に衣服の一部を切り取り、新聞社に送り付けてきたのです。
当時、サンフランシスコでは1968年12月、1969年7月と9月に3件の殺人および殺人未遂事件が起きており、3人の死者が出ていました。
犯人は事件を起こすたびに「サンフランシスコ・クロニクル」などの新聞社に手紙や暗号文を送り付ける、殺人現場に怪文書を残すなどしており、これらの犯行声明文には必ず下の記号が書かれていいました。
さらに犯行声明文の送り主は自らを「ゾディアック」と名乗っており、これまでの事件はすべて自分による犯行だと主張してきたのですが、警察は「手紙の主が必ずしも犯人とは言えない」として慎重な姿勢を見せていました。
しかし、被害者のシャツの切れ端を送ってきたことから一連の事件はゾディアックによるものとの見方が強まり、警察もマスコミも手紙から手がかりを探そうと奔走。
その後もゾディアックは警察を嘲笑うかのように「次は子どもを狙う」「警官を殺そうと思う」といった挑発的な手紙やグリーティングカードを送り続け、その中で「この13文字の暗号を解くと自分の本名になる」という情報を提供してきました。
この暗号は犯人につながる重要な手掛かりとされましたが、現在も解読されておらず、ゾディアック事件そのものも未解決のまま捜査が打ち切られています。
ゾディアック事件の時系列① 第一の殺人
1968年12月20日、高校生のデービッド・アーサー・ファラデー(当時17歳)とベティ・ルー・ジェンセン(当時16歳)がカリフォルニア州ヴァレーホのレイク・ハーマン・ロードで殺害されるという事件が発生します。
恋人同士であった2人はこの日の夕方に「高校のクリスマスコンサートに行く」と言ってそれぞれの家を出ており、一緒に行動していました。
2人は通っていたホーガン・ハイ・スクールには向かわずに、合流したのちに友人の家を訪れ、予定を変更したのかそのままレストランで食事をしたことが明らかになっています。
そして食事後は「恋人たちの小道」という、ロマンティックな通称を持つのレイク・ハーマン・ロードに向かいました。
空港写真を見てもわかるように、レイク・ハーマン・ロードは自然が豊かなものの周辺に店や民家もなく、夜になると人通りもあまりないといいます。
そのため2人っきりの時間を過ごせる=恋人たちの小道という通称がついたのでしょう。
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しかし、2人はこの場所で目撃者のない殺人事件の被害者となってしまいます。この日の23時過ぎに、2人の遺体が近所に住む女性によって発見されたのです。
2人は22時15分頃にレイク・ハーマン・ロードに車を停め、それから車内で語り合っていたものと見られます。
警察は事件現場の状況から、そこへ犯人の乗った車が近づき、2人を外に出るように脅して車から降りたデービッドの頭を22口径の拳銃で撃って殺害したと考えました。
その後、逃げようとしたベティーを背後から5回撃ち、殺害。ベティーは何とか逃げようとしていたらしく、車から8m離れた場所で遺体が発見されたといいます。
ゾディアック事件の時系列② 第二の事件
1969年7月4日、ウエイトレス、ダーリーン・フェリン(当時22歳)と友人でマイケル・ルノー・マジョー(当時19歳)が襲われる事件が発生します。
この日の夜、ダーリーンはマイケルを迎えにヴァレーホのブルー・ロック スプリングス ・パークに向かっていました。
午前0時前に目的地の到着。マイケルを車に乗せたところで、別の車が2人の乗っていたシボレー・コルヴェアの真横に停まり、その後すぐに走り去って数分後に戻ってきたといいます。
戻ってきた不審車両はダーリーンの車の真後ろに停車し、車からは懐中電灯と9㎜拳銃を持った男が降りてきました。
そして2人の乗る車に突然5回発砲して立ち去り、車からマイケルのうめき声が聞こえてきたのを確認すると戻ってきてさらに2回発砲してとどめを刺そうとしました。
現場を後にした犯人の男は、7月5日の午前0時40分頃にガソリンスタンドの公衆電話からヴァレーホ警察署へと電話をかけ、自ら殺人事件が起きたことを通報したうえで「犯人は自分で、レイク・ハーマン・ロードの事件も自分がやったものだ」と伝えたとされます。
その後、警察によって2人は発見されて病院に搬送されましたが、ダーリーンは死亡。生き残ったマイケルによると、犯人には以下の特徴があったとのことです。
・26~30歳くらいの白人男性
・身長は173㎝程度
・体重は88~91㎏程度
・頭髪は薄茶色でくせ毛
ゾディアック事件の時系列③ 最初の暗号文と解読結果
出展:https://cdn-history-com.translate.goog/
1969年8月1日、この日初めて犯人からの手紙が、サンフランシスコ・クロニクル、サンフランシスコ・エグザミナー、バレーホ・タイムズ・ヘラルドの3つの新聞社に届きす。
手紙の内容はいずれも「レイク・ハーマン・ロードとブルー・ロック スプリングス ・パークの殺人は自分の犯行だ」「同封している暗号文を新聞の一面に掲載しろ。そもなければ週末に12人殺す」というものでした。
それぞれの手紙には138文字ずつの暗号が添付されており、これは3つあわせると以下のような408文字の暗号文が完成するようになっていました。
出展:https://www.researchgate.net/
「ゾディアック」と名乗る
最初の手紙が送られてから6日後の8月7日、サンフランシスコ・エグザミナー社にまたもや犯人からの手紙が届きました。
この手紙で犯人は自らを「ゾディアック」と名乗り、「先に送った暗号文を解読すると自分の正体がわかる」と伝えてきたとされます。
ハーデン夫妻による解読
ゾディアックから送られてきた暗号文は通称「Z408」と呼ばれ、要求通りに新聞に掲載されました。
そして1週間後には、カリフォルニア在住で高校教師のハーデン夫妻によって解読されます。
まず夫妻は「犯行声明文を送るような人物は利己的な性格をしていると予想される」と考え、最初の文字を「I」に置き換えたといいます。
続いて「I」の後に同じ文字が2回続いている箇所は「KILL」だと推測。こうして文字を当てはめていって解読に成功したとされます。
なお、この形式のホモフォニック暗号(同音換字暗号)と呼ばれるもので、犯人も単純な置き換えではすぐに解読されると予想していたらしく、「L」には異なる文字を使うなどの工夫をしていました。
しかし、ハーデン夫妻は見事に解読に成功し、結果をヴァホーレ警察に提出。暗号文には犯人の本名などの情報はなく、以下のような内容が書かれていたと発表されています。
私は人を殺すのが好きだ。森で野生の動物を狩るより楽しい。なぜなら人間は最も危険な動物だからだ。私は死後の世界で自分に仕える奴隷を集めている。この計画の妨げになるので、身元を明かすつもりはない
なお、下の画像はZ408で使用された暗号キーです。この図に従って解読を進めると上の文章が現れます。
出展:http://www.zodiologists.com/
ゾディアック事件の時系列④ 第三の事件
出展:https://zodiackillerfacts.com/
1969年9月27日、大学生のブライアン・カルビン・ハートネル(当時20歳)とセシリア・アン・シェパード(当時22歳)が襲われるという事件が発生します。
2人はこの日、カリフォルニア州ナパにあるベリエッサ湖にピクニックに来ていました。
すると、白い十字と円が組み合わされた記号のものが描かれた布を服につけた男が現れ、45口径の拳銃をちらつかせて「自分は看守を殺して刑務所から脱獄してきた。メキシコに逃げるための車と金が必要だ」と言って、2人に車と所持金を渡すよう脅してきたといいます。
男はセシリアにプラスチック製の紐を渡してブライアンを拘束するように言い、そのあとにセシリアも縛り上げました。
2人はこのままおとなしくしていれば男は車を奪って立ち去るだろうと思っていました。しかし、男はナイフを取り出して身動きの取れない2人をめった刺しにしたのです。
男はブライアンの体を6箇所、セシリアの体を10箇所刺したうえで立ち去り、離れた場所に止められていたブライアンの車のドアに上のような犯行声明を残しました。
そしてその後、19時40分頃にナパ郡保安官事務所へ電話をかけて殺人事件が起きたことと、自分が犯人であることを伝えています。
一方、襲われた2人は叫び声を聞いて駆け付けた釣り人親子によって助けられ、病院に搬送されました。
しかし、セシリアは搬送中に意識を失ってそのまま亡くなってしまい、ブライアンだけが助かったとされます。
ブライアンによると、犯人には以下のような特徴があったとのことです。
・白人男性
・身長は180㎝程度
・体重は77㎏超
・黒いフードを被り、その上からクリップ留めのサングラスを装着していた
ゾディアック事件の時系列⑤ 第四の事件
続いて1969年10月11日、タクシードライバーのポール・スタインが殺害されるという事件が発生します。
この日の22時頃、スタイン氏はサンフランシスコ市内で1人の男性客を乗せました。男は、サンフランシスコの豪邸街であるプレシディオハイツに向かうように伝えてきたといいます。
そして、しばらく走ったところで男はタクシーを止めるように指示してきました。
指示通りに停車すると、男は9㎜拳銃でスタイン氏の頭を撃ちぬき、財布などを奪って逃走。その際、スタイン氏の着ていたシャツの一部を破いて持ち去りました。
この時、タクシーの停まった向かいの道路にちょうど10代の少年3人組がいたといい、彼らはすぐに殺人事件が起きたことを警察に通報します。
少年らの通報後、すぐに警察が現場にかけてつけましたがスタイン氏は即死が確認されたとのことです。
さらに警察は少年らから聴取した犯人の特徴を無線で周辺の警察署や巡回中のパトカーに伝え、早期の逮捕を狙いました。
ところがこの時、どういうわけか少年らの証言とは異なる誤った情報が周知されてしまったのです。
そのため、近くを巡回中だったドン・ファウク巡査とエリック・ゼルムス巡査が犯人と思しき男を目撃していたにもかかわらず、見逃してしまうという痛恨のミスが発生してしまいます。
数分後に正しい情報が無線で流された時には、すでにファウク巡査らは男を見失っており、その後の捜査で再び男に辿りつくことはありませんでした。
なお、この事件はゾディアックが自分の犯行と認めている最後の事件となります。
ゾディアック事件の時系列⑥ 犯行声明文と第二の暗号文
出展:http://www.zodiackillerfacts.com/
1969年10月14日、サンフランシスコ・クロニクル社に血液のついたシャツの切れ端と、手紙が送られてきました。差出人はゾディアックです。
手紙には自分がスタイン氏を殺害したという旨とともに、次はスクールバスを狙って子どもを射殺する予定だということが書かれていました。
シャツの切れ端はスタイン氏の遺体から剥ぎ取られたものに間違いなく、これまで11日の事件はタクシー運転手を狙った強盗殺人と見ていた警察も、ゾディアック事件として捜査を開始します。
事件の目撃者である少年らの証言から、下のゾディアックの似顔絵も作成、公開して情報を募りました。
ゾディアックを騙る男がTVに出演する
10月20日、ゾディアックを名乗る男から警察に電話が入り「KGO-TVのトーク番組に音声出演したい、指定する弁護士も番組に出せば自首する」と要求してきました。
TV番組にはゾディアックが指定したベリ弁護士が出演し、ゾディアックを名乗る「サム」という男も電話出演をしています。
しかし、この男の声は実際に本物のゾディアックの声(低く、イギリスなまりの英語を話す)を聞いた警察官や事件の生き残りから「別人だ」と指摘されて、なりすましと結論付けられました。
暗号文「Z340」
スクールバスを狙うという犯行予告はサンフランシスコ中の親をパニックに陥れ、ゾディアック事件は連日報道されることとなります。
そんななか、11月8日にサンフランシスコ・クロニクル社にゾディアックからの新たな暗号文が届きました。
出展:https://commons.wikimedia.org/
届いた暗号文は上の画像のもので、340文字からなるために通称「Z340」と呼ばれます。
ゾディアックはこの暗号文も新聞の一面に掲載するように求め、「無視されると寂しくなって『得意なこと』をしたくなる」「暗号文には自分の正体が書かれている」といった手紙も添えられていました。
得意なこと、というのは殺人と考えて間違いなく、サンフランシスコ・クロニクルはこの暗号文も紙面に掲載します。
暗号の解読にはFBIや警察機関のほか世界中の暗号マニアが挑みましたが、前の「Z408」に比べて格段に難解になっており、暗号が解読される前にゾディアック事件の捜査は打ち切りとなりました。
11月9日の手紙
出展:https://www-history-com.translate.goog/
11月9日にもゾディアックはサンフランシスコ・クロニクルに手紙を送っています。手紙はこれまでの事件の手法などが書かれたもので、以下のような内容でした。
・殺人現場から指紋が見つからないのは、犯行前に自分の指先に接着剤を2度塗りしてコーティングしているためだ。
・犯行に使用した拳銃はすべて国外で購入した。そのため拳銃から足がつくことはない。
・スタイン氏を殺害した現場には一つだけ血の付いた指紋を残してきた。これは警察のためにわざとやったことだ。
また7枚に渡る手紙の中には、スクールバスを爆破するための爆弾の作り方や犯行計画が書かれた紙も入っていました。
ゾディアック事件の時系列⑦ その後の行動
スタイン氏の事件の後も、ゾディアックの犯行ではないかとされる誘拐事件や殺人事件、失踪事件などが発生しましたが、犯行声明が出ていないことから犯人の確定はされていません。
1970年以降もゾディアックは手紙やグリーティングカードを新聞社に送っており、1970年4月20日には自分の名前を13文字の暗号(通称「Z13」)で記したと記載している下の手紙を出しています。
出展:http://zodiackillerciphers.com/
しかし、この暗号が解読できないまま1974年1月を最後に手紙も途絶えることとなり、事件は迷宮入りしてしまいました。
ゾディアック事件の真相判明か?暗号文「Z340」が解読される
[youtube https://www.youtube.com/watch?v=-1oQLPRE21o]
2020年12月、事件発生から半世紀が経過してなんとゾディアックの残した暗号文「Z340」が解読されと発表されました。
Z340を解読したのはアメリカでソフトウェアをしているデーヴィッド・オランチャク氏、オーストラリアの数学者のサム・ブレーク氏、ベルギーのプログラマー、ヤール・ファンエイケ氏の3人のアマチュア解読家です。
3人はこのコードを解読するためだけのソフトを解読したといい、解析にかけた結果なんと65万通りの解読ができたとされます。
彼らは1つ1つの解読結果をチェックするという気の遠くなるような作業を経て、やっと英単語のようなものが含まれるものを発見したそうです。
この結果が解読の糸口になると考えた3人は、21列からなるZ340を9列、9列、2列のブロックに3分割し、左上から順に下に1、右に2移動した文字を読んでいきました。
そしてすでに判明している文字をベースに、ほかの文字を解読する機能を使ってこの解読結果をもう一度解析したところ、以下のような内容の文章が現れたのです。
あなた方が私を捕まえようとして大いに楽しんでいることを望む
私のことを扱ったテレビ番組に登場した人物は私ではない
ガス室送りになれば一層早く天国に行けるので私は怖くない
ます、自分の名を騙ってTVに出た「サム」は偽物だと主張しています。
さらに、自分が殺した人間は天国で自分の奴隷になるため死刑は怖くないといった以下の文章が続きました。
なぜなら私はいま十分な数の奴隷を所有しているが他の人間は天国にたどり着いても何も持っていないため死を恐れている
私は天国での死後の人生が安楽なものになることが分かっているので怖くない
結局、残念ながらZ340にもゾディアックの正体につながる情報はありませんでした。
なお、ゾディアックの本名が記されている可能性が高いと考えられている13文字の暗号「Z13」ですが、こちらは暗号文そのものが短すぎるため、解読は不可能なのではないかと見られています。
ゾディアック事件の犯人考察まとめ
ゾディアック事件の犯人なのではないかと考察されている人物は3人います。ここではその3人について紹介していきます。
①アーサー・リー・アレン
出展:https://zodiackillerfacts.com/
アーサー・リー・アレンは事件当初から警察がゾディアック事件の犯人ではないかと見て、マークを続けていた人物です。
この男は1958年に海軍を除名されており、その後は1968年3月には生徒にわいせつ行為をしたとして勤務先の小学校をクビになっています。事件発生時はカリフォルニア在住でした。
歪んだ性的嗜好の持ち主だったといい、すぐに暴力を振るうことから妻はおろか恋人さえできたことがないという人物だったとのことです。
アーサー・リー・アレンがゾディアックではないかと疑われた理由は2つあります。
1つは1971年頃からゾディアックのことを信奉するような発言を繰り返していたことで、何度も話を聞かされていた友人が訝しんで警察に通報したことから、警察にマークされるようになったといいます。
もう1つは、彼が「Zodiac」という刻印のある腕時計をしていたことです。警察が家宅捜索した際にこの腕時計が押収され、ゾディアックが使っていたシンボルマークまで刻印されていたことから、犯人を示す重要証拠と見られました。
しかし、実はこの時計はスイスの高級腕時計ブランド「Zodiac」のもので、一般に流通しているものです。そのため腕時計が犯人の証拠というのは厳しいと言えるでしょう。
ただ、アーサー・リー・アレンはゾディアックから連絡が途絶えた1974年9月から3年間、強制わいせつ罪で服役していたため、「アーサーが犯人だったから、別件で逮捕されている間は事件が起きなかったのではないか?」とも考察されました。
彼は1991年に腎不全で他界していますが2002年に行われたDNA鑑定の結果、ゾディアック事件の犯人ではないことが明らかになっています。
②アール・ヴァン・ベスト・ジュニア
アール・ヴァン・ベスト・ジュニアは、2014年に息子のゲーリー・スチュワート氏が『殺人鬼ゾディアック』という著書の中で、「自分の父親がゾディアックだと思う」と指摘したことで犯人候補に挙がった人物です。
彼は父親が海軍諜報員という経歴を持ち、本人も語学に長けていたことから暗号を作ることが得意だったといい、ゾディアックと同じくイギリスなまりの英語を話していたといいます。
さらに『ミカド』という日本文化をモチーフにしたオペラが好きでセリフを暗唱できたそうなのですが、実はゾディアックは1970年7月に『ミカド』のセリフをベースにした手紙を新聞社に出していました。
高校の同級生からも「ヴァンは当時から『殺害した相手を天国で奴隷にできる』というミカドのセリフに憑りつかれていた」との証言が出ています。
また、牧師の父と母が不仲で母が教会で不倫をしていたという生い立ちのためか、悪魔崇拝にのめり込んでいたそうで、テート・ラビアンカ殺人事件で知られるチャールズ・ミルズ・マンソンとも交流があったといいます。
成人した彼はまだ14歳だったジュディという少女(スチュワート氏の母)と駆け落ちし、一度は逮捕されたものの釈放されて再度ジュディを連れ去って妊娠させてるという事件を起こしました。
そしてジュディに経済DVをしたうえに勝手に生まれて間もないスチュワート氏を「泣き声がうるさい」という理由で捨ててしまい、再び逮捕されています。
懲役3年の刑期を終えた後、アール・ヴァン・ベスト・ジュニアはサンフランシスコで生活しており、さらに彼が出所した頃からゾディアック事件が起こるようになりました。
ゾディアックが逮捕されない真相
暗号作成の知識がある、イギリスなまりの英語、「殺害した相手を天国で奴隷にできる」という強固な思い込み、『ミカド』の暗唱、出所時期と事件発生時期の一致など、多くの点から彼が犯人ではないか?という見方が有力視されています。
しかし、警察はアール・ヴァン・ベスト・ジュニアの捜査に消極的でDNA鑑定の結果も公表していません。
スチュワート氏はこのことについて「私の母親(ジュディ)は、ロテアという黒人初の殺人化の刑事になった警官と結婚している。彼はサンフランシスコの黒人社会の名士だ。そんな人物の妻の前夫がゾディアックというのは問題だから、捜査しないのではないか」と語っています。
実際、スチュワート氏の要請でアール・ヴァン・ベスト・ジュニアの捜査を快く引き受けてくれたロテアの部下も、しばらくすると「事件からは手を引くことになった」「諦めろ」と口をそろえて言ってきたそうです。
なお、アール・ヴァン・ベスト・ジュニアは1994年に吐しゃ物を喉に詰まらせて死亡しており、これ以上調べられることはないのではないかと言われています。
③リチャード・ガイコウスキ
リチャード・ガイコウスキは事件当時、『Good Times』とうい新聞社で編集の仕事をしていました。
彼は「ゾディアック事件について詳しく知りすぎている」として、新聞記者を自称する匿名の人物から警察に情報提供があり、捜査線上に浮上します。
ほかにもリチャード・ガイコウスキが怪しとされる根拠は複数ありました。一覧にすると以下の通りです。
・『Good Times』では水曜日を「プロダクションデイ」と呼んでおり、特に忙しい曜日だった。ゾディアックが送った15通の手紙は、すべて水曜日以外の曜日の消印で、逆に水曜以外はどの曜日にも手紙を出していた。
・1973年に『Good Times』は閉業しており、その後にゾディアックの動きもなくなった。記事を書くためにリチャード・ガイコウスキが自ら事件を起こしていたのではないか。
・リチャード・ガイコウスキは第二の事件で殺害されたダーリーンのストーカーとファーストネームが同じで、筆跡も似ている。
・ダーリーンとリチャード・ガイコウスキが口論しているのを目撃したという人物がいる。
・過去に衛生兵として軍に従事したことがあり、止血のためにシャツを裂く技術があった。つまり、スタイン氏の衣服の一部をはさみを使わずに裂いて持ち去ることが可能。
なお、リチャード・ガイコウスキのDNA鑑定も行われましたが、信頼できるデータが得られなかったとして警察は結果を公表していません。
ゾディアック事件はなんJやアンビリバボーでも話題に
2017年10月19日放送の『アンビリバボー』に、自分の父親がゾディアックなのではないかと主張するゲーリー・スチュワートが登場し、話題になりました。
また、5ちゃんねるのなんJなどのネット掲示板でもゾディアック事件の犯人考察は未だにされています。
しかし新情報がなく、どの犯人候補も決定打がないためか、真犯人をめぐってレスバトルが展開されるなどしているようです。
ゾディアック事件を題材にした映画『ZODIAC』
[youtube https://www.youtube.com/watch?v=yNncHPl1UXg]
ゾディアック事件を題材にした映画『Zodiac』は、2007年公開のデヴィッド・フィンチャー監督作品です。
サンフランシスコ・クロニクル紙で働く風刺漫画家と警官がゾディアックの正体を追うという内容で、犯人は不明、未解決という着地点になることがわかっていても見応えと緊迫感のある作品となっています。
ほかにもゾディアック事件に影響を受けた映画作品は多く、『ダーティハリー』に登場する殺人鬼・スコルピオのモデルもゾディアックがモデルとされています。
ゾディアック事件についてのまとめ
今回はアメリカ、サンフランシスコで発生した世界的に有名な未解決事件・ゾディアック事件について紹介しました。
13暗号が解けないこと、真犯人ではないかと見られているアール・ヴァン・ベスト・ジュニアがすでに死亡していることから、ゾディアック事件が解決されることはないのではないか?とも言われています。
2017年にはゾディアックの思考をスーパーコンピューターに学習させて事件解決の糸口を探る試みがされたそうですが、不気味な詩を書きだしただけだったという報告がされていました。やはり、真犯人の思考や動機は常人に理解できるようなものではないのでしょう。