成田空港のド真ん中にある一軒家は木の根ペンションと呼ばれています。木の根ペンションの概要や歴史的な背景、詳しい場所や行き方、予約方法や泊まってみた人はいるのか、オーナーや所有者と現在をまとめました。
この記事の目次
木の根ペンションとは成田空港のど真ん中にある一軒家
出典:facebook.com
木の根ペンションとは成田空港の敷地内にある一軒家のことです。
成田空港の第1ターミナルの南ウィングから約300mの場所にあり、誘導路に囲まれた場所にあります。誘導路は滑走路~ターミナル~格納庫などをつなぐ飛行機用の道路になりますので、木の根ペンションの周りはどんどん飛行機が通っています。
そのような中に、ひっそりと二階建ての一軒家が建っていて、その一軒家は木の根ペンションと呼ばれています。
木の根ペンションは一般に公開されているペンション・宿泊施設というわけではなく、私有地に建てられている一軒家となっています。
木の根ペンションがある成田空港はコロナ前は1日12万人以上が利用し、700機以上の航空機が離発着している日本最大の国際空港です。
国際空港の敷地内のど真ん中と言っても良い場所に建っていて、誘導路・滑走路にも隣接しているという世界的に見ても非常に珍しい一軒家・ペンションが木の根ペンションなのです。
木の根ペンションにはプールもある
木の根ペンションには、なんとプールが併設されています。
木の根ペンションのプールは、元々「地域の畑作のための灌漑用水事業」として計画された溜池でした。それを現在はプールとして活用しています。
木の根ペンションは地域と密に連携をするというコンセプトのため、ため池をプールにしているようです。
農村という土地柄、『生産者と消費者を繋ぐ場』『農村と都市部の交流の場』をコンセプトにしています。
地域とも密に連携しており、ペンション内での交流会の開催、庭で地元で育てられた無農薬野菜の販売会や、音楽イベントが開催されたりと、世代を超えた交流の場所として多くの人々に愛されてきました。
空港のど真ん中にプールがあるペンションなんて、ちょっとリゾート感がありますし、スペシャル感は満載ですよね。プールで泳ぎながら、間近で飛行機を見ることができるというのは、かなりの贅沢でしょう。
木の根プール再塗装計画実施中🎨
世界唯一、国際空港の中にあって国際空港でない、泳げて踊れて語り合えるプール。
引用:Facebook
確かに、国際空港のど真ん中で飛行機の隣で入れるプールは世界的に見てもどこにもないでしょう。
木の根ペンションは三里塚闘争の中で生まれた
木の根ペンションはなぜ、成田空港のど真ん中にあるのでしょうか?しかも、誘導路・滑走路に隣接し、飛行機がすぐ近くを通る場所にあるのでしょう?
木の根ペンションが生まれた背景には三里塚闘争があります。三里塚闘争という長く激しい闘争の中で木の根ペンションは作られました。
三里塚闘争とは?
三里塚闘争とは成田空港の建設に伴って、地元住民と社会主義・共産主義の活動家らが中心となって行っている空港建設反対のための闘争です。
・発生:1966年6月22日~
・場所:成田空港とその周辺
・死者:12名
・逮捕者:1200人以上(2回の強制代執行のみ)
日本の新しい国際空港を建設するにあたり、現在の成田空港の場所に建設が決まったのと同時に、空港建設に反対した地元住民らが日本共産党や日本社会党の指導の下に「三里塚芝山連合空港反対同盟」を結成し、成田空港建設反対運動を展開しました。
1967年には、反対同盟は過激な思想を持つ新左翼を受け入れることを表明し、反対運動が過激化し、暴力に訴えるようになっていきます。そのうち、徐々に地元住民は政府から提案された補償内容に納得して、土地買収に同意し、反対運動をやめていきました。すると、反対同盟の中核は地元住民ではなく、ほかの土地から来た新左翼が担うようになります。
その後、1971年には第一次行政代執行・第二次行政代執行が行われ、反対同盟と機動隊が衝突し、第二次行政代執行では反対派によって機動隊が襲われ3人が希望する東峰十字路事件が発生しました。
代執行後は膠着状態になり、開港直前には成田空港管制塔占拠事件も起こるなどゴタゴタがありましたが、1978年5月20に日にようやく成田空港は開港しました。
1990年には円卓会議が開かれ、政府から謝罪があり和解に向かいましたが、一部の反対派は和解に納得せずに、現在でも反対運動を続けていて、三里塚闘争は発生からもうすぐ60年が経過しますが、現在でも終結していません。
成田新法でペンション建設
出典:mainichi.jp
三里塚闘争では成田空港建設予定地の土地買収が進められ、1968年の時点で予定地の89%の買収は完了していましたが、逆に考えると11%の土地所有者は成田空港建設に反対していたということになります。
その後も少しずつ土地買収は進められましたが、1970年ごろには空港公団は円満な用地取得は不可能と判断すると、国家権力による強制収用で土地を取得しようと考えるようになります。
反対派は強制収用を防ぐために、収用予定地に団結小屋や地下要塞を構築するようになります。団結小屋とは、労働争議や社会運動での拠点となるプレハブ小屋のような場所です。
成田空港建設反対の三里塚闘争でも、団結小屋はたくさん建てられましたが、三里塚闘争での団結小屋は飛行機の離着陸を妨害するために、鉄塔状の形態をしていました。
そして、木の根ペンションもこの団結小屋の1つで、元々は平屋の団結小屋だったんです。
しかし、団結小屋を排除して成田空港の拡張を計画していた政府は、1978年に成田新法(新東京国際空港の安全確保に関する緊急措置法)を制定しました。
木の根ペンションの場所にあった団結小屋も、この成田新法が適用される恐れがあったため、適用を逃れるために、団結小屋ではなく「ペンション」という名目にしようと、1989年に2階建ての木の根ペンションに建て替えられました。
プールに関しては、1980年ごろに作られました。前述のように、最初は灌漑用の溜池でしたが、1986年には地元住民(反対運動メンバー?)のためにプールとして使われるようになっています。
土地の買収によりペンションが移動
出典:4travel.jp
1989年に団結小屋の代わりとして木の根ペンションが作られましたが、当時の木の根ペンションと現在の木の根ペンションでは、微妙に場所が異なります。
元々は、木の根ペンションはプールの向かって左側にありました。木の根ペンションの敷地内に入ると、真正面にプール、左手に木の根ペンションという配置ですね。
しかし、現在は真正面にプール、右手に木の根ペンションになっています。
二年前の移転以降、初めてでした。かつてプールの左側(南東)に在ったペンションが、今は右側に在ります(私も共有者の一人である加瀬勉さんの土地を分筆した一坪共有地)。100mほどの移転。
たった100mの移転。一体何があったのでしょうか?
実は以前に木の根ペンションがあった場所(プールの左)が空港公団に収用されたからなんです。1997年に空港公団と土地所有者の小川一彰氏らは補償契約を締結しています。
ペンションの元の地主は小川一彰。6月で売却から2年がすぎるが、これまでに土地が更地にならないと、移転時の土地売却が非課税となった「買い替え特例」の適用が撤回され、正規の税を支払う義務が生じる。公団はこの問題を使って熱田派にペンション撤去を迫っていた。
引用:三里塚日誌HP版
この補償契約の締結で、木の根ペンションがあった場所は、空港公団のものになりました。そのため、木の根ペンションは建物をそのままプールの左側に移動させたんです。プールの左側はまだ空港反対派の土地でした。
木の根ペンションの場所
木の根ペンションの場所は、何度も言いますが、成田空港のど真ん中にあります。住所は千葉県成田市木の根296-1になります。
Google Mapを使って、木の根ペンションの場所を確認していきましょう。まずはこちらから。赤丸の場所が木の根ペンションです。成田空港のターミナルのすぐそばにあるのがわかります。
出典:google.com
もう少し寄ってみます。飛行機が木の根ペンションのすぐ隣に止まっています。
出典:google.com
もっと寄ってみます。
出典:google.com
この航空写真を見ると、木の根ペンションがとんでもない場所にあるのがわかりますね。
木の根ペンションの行き方
木の根ペンションにはどうやって行けば良いのでしょうか?飛行機の誘導路のすぐ近くに木の根ペンションがありますので、滑走路を通らないと木の根ペンションに行けないのでは?と思うかもしれません。
でも、木の根ペンションにはきちんとしたルートで安全に行くことができます。木の根ペンションは千葉県道・茨城県道44号成田小見川鹿島港線に接続していますので、車で行くことができます。また、公共交通機関を使っても、木の根ペンションに行くことは可能です。
まずは芝山鉄道の芝山千代田駅(東成田駅)に行きましょう。そこからは徒歩で15~16分です。芝山千代田駅からも東成田駅からも徒歩で木の根ペンションへにアクセスできます。
芝山千代田駅からは東成田駅方面に向かってただひたすらまっすぐ歩いていくだけです。途中でトンネルを通ります。トンネルを出ると、右に曲がる道が出てきます。そこを曲がって、徒歩1~2分で木の根ペンションに到着です。
出典:google.com
木の根ペンションに行くために曲がる角には、「木の根ペンション」の看板が出ています。また、「この先私有地につき関係者以外立ち入り禁止」の看板も出ていて、なんだか怪しい雰囲気になっています。
出典:google.com
木の根ペンションには車でも行くことができるし、芝山鉄道の駅からもアクセスすることができます。
ただ、「この先私有地につき関係者以外立ち入り禁止」という看板があります。確かに、木の根ペンションは成田空港の敷地内ではなく、私有地にあります。つまり、人の家・人の土地です。人の土地に勝手に入ったら?そう、不法侵入になります。
木の根ペンションは面白い場所にありますので、「行ってみたい」と思う人は多いと思います。確かに、空港の中にあるプール付きペンションなんて興味を惹かれますよね。でも、興味本位で勝手に入ると、不法侵入になることがありますので、注意が必要です。
木の根ペンションのオーナー・所有者
木の根ペンションのオーナー・所有者は、たくさんいます。所有者がたくさんいるってどういうこと?と思うかもしれません。
実は木の根ペンションの土地は一坪共有地なんです。一坪共有地とは、土地を一坪未満にまで細分化して、登記簿上の名義人を増やした土地です。
木の根ペンションは363平方メートル(約110坪)の土地ですが、この土地の名義人は全国800人以上いるそうです。
その後、木の根ペンションに移動。木の根ペンションが建っている土地は全国800人以上が共有する一坪共有地である。こちらでも隣に建つ監視塔からガードマンが監視している。
110坪の土地の名義人が800人って、ちょっと異常ですよね。なぜこのような一坪共有地のような形をとっているのか?それは簡単には土地を収容できないようにするためです。
例えば、木の根ペンションのオーナーが1人だった場合、その土地を買おうとする人はその1人と交渉して契約をすれば、土地を収用することができます。
しかし、木の根ペンションは一坪共有地で所有者が800人以上います。木の根ペンションの土地を収用しようとした場合、800人と交渉して、それぞれ契約しなければいけません。1人でも反対したら、その場所は完全に収容できません。たった1坪以下の狭い土地でも収用できなかったら、それは不便ですよね。
特に、木の根ペンションは1997年に土地所有者が空港公団に土地を売ったため、ペンションを移動することになっています。だから、木の根ペンションは一坪共有地にして、反対は「絶対に成田空港に売らないぞ!」という強い意志を見せているし、連帯責任のようにして一体感を生んでいるのでしょう。
木の根ペンションは予約できる?泊まってみた人はいる?
木の根ペンションは予約できるのでしょうか?泊まってみた人はいるのでしょうか?
木の根ペンションは成田新法での摘発を逃れるために、ペンションとして建てられました。つまり宿泊施設なので、予約できるはずです。
インターネット上には「1泊1,000円」という情報がありますが、本当なのでしょうか?
この1泊1,000円というのは、反対派の方が「相談会」をした時の料金のようです。
宿泊代は1000円で自炊施設完備で、私小山が手料理でもてなしをします。
これはあくまでも営業用の料金ではなく、反対派の方主催の相談会の時の料金ですので、木の根ペンションに1泊1,000円で泊まれるというのは信じないほうが良いでしょう。
では、どうやって予約するのか?実は、木の根ペンションはFacebookのページを持っています。木の根ペンションのFacebookのページには電話番号やeメールアドレスなどは掲載されていませんが、メッセージで木の根ペンションのオーナー(管理者)と連絡を取ることができます。
だから、木の根ペンションに行ってみたい方は、まずはこのFacebookのメッセージで管理者の方と連絡を取ってみるのが良いでしょう。
泊まってみた人はいる?
木の根ペンションに泊まってみたいと思っている人は、実際に泊まってみた人の感想が気になっているのではないでしょうか。
インターネットをいろいろと探してみましたが、木の根ペンションに実際に客として泊まってみた人の感想はありませんでした。
木の根ペンションは「合宿所」のような使い方をしていることが多いようです。
7月9日~11日、成田空港内にある木の根ペンションで三里塚闘争とは何であったのか、何をもたらしたかを学ぶ合宿に参加しました。
また、成田空港建設反対派の人たちが中心となっているボランティア団体「地球的課題の実験村」も木の根ペンションで活動しています。
木の根ペンションに泊まった人はいるけれど、客として泊まったわけではなく、反対派の活動の一環として泊まったケースしかないようです。
木の根ペンションはやばい?
木の根ペンションはやばいという噂があります。確かに、空港のど真ん中にペンションがあるなんて、どう考えてもやばいですよね。
木の根ペンションに行っても怖い思いをしたり、追い出されたりすることはないようです。実際に、私有地である木の根ペンションに入ってみた人もたくさんいて、その時の写真がブログなどにアップされています。
ただ、木の根ペンションの所有者の人たちは三里塚闘争に賛成していた人たちです。成田空港の建設予定地で農業をしていた人たちが建設に反対するのは理解できますが、三里塚闘争が泥沼化したのは新左翼の人たちが入ってきてからのこと。
新左翼の人たちは、自分たちの主張・理想を通すために、成田空港建設反対運動を行ったとも言われています。
しかも、一坪共有地にしているということは、元々その土地を所有していた人が木の根ペンションのオーナーになっているというわけではなく、成田空港存続に反対し、なんとか自分たちの主張を通そうとしている人たちが所有しているということになります。
現在はそんな過激な思想は持っていなくても、三里塚闘争の「東峰十字路事件」などを知ると、やっぱりちょっとヤバいかも…と思ってしまいます。
成田空港反対運動の理念・考えに共感する人以外は、下手に近寄らないほうが良いかもしれません。
ぺこぱはもう1つの一軒家に行こうとしたが途中で断念
出典:ok.ru
この成田空港の一軒家問題は、テレビで取り上げられたことがあります。本格的に取り上げられたのは、2021年6月に放送された「パンドラTV」でした。お笑いコンビのぺこぱの2人が成田空港内にある一軒家に向かったのです。
この時、ぺこぱの2人が行ったのは、木の根ペンションではなく、もう1つの成田空港内の一軒家である「横堀鉄塔」の方でした。
しかし、この時のぺこぱの2人はこの横堀鉄塔にたどり着けませんでした。その理由は「やばい状況だった」からです。
・近くには監視カメラあり
・周辺には「強制収用実力阻止」などの物騒な看板あり
・危険な可能性があるため映像なしの音声のみの撮影
・一軒家に向かうと後ろから警備会社の車が来た
これらのことから、途中で一軒家に行くのを断念したとのことです。
インターネット上の情報を見ると、木の根ペンションに行っても警備会社の警備員がやってくるということはないようですが、それでもやばい可能性は十分にありますよね。
ちなみに、このぺこぱのテレビのロケは所有者には一切相談はなかったとのことです。
https://twitter.com/proseido9/status/1409897841309356037
このX(旧Twitter)アカウントは木の根ペンションの管理者の方です。まぁ、所有者に一切事前相談なく勝手にロケしたら、警備会社が飛んでくるのも頷けます。
木の根ペンションや横堀鉄塔もヤバいけれど、事前相談なくロケを敢行しようとしたテレビ局もヤバいということでしょうか。
木の根ペンションの現在
2022年にはクラウドファンディング
出典:camp-fire.jp
木の根ペンションは、2022年にクラウドファンディングをしています。木の根ペンションのプールを改修して、「国際空港のド真ん中でプールパーティーを実現したい!」ためのクラウドファンディングです。
このクラウドファンディングは成功し、2022年8月27日にはプールパーティーが行われたようです。200万円以上の資金が集まるってすごいですよね。
それにしても、「プールパーティー」なんて、木の根ペンションの所有者や管理者たちはパリピなのでしょうか。
毎年イベントが行われている
木の根ペンションでは毎年数回のイベントが行われています。
出典:facebook.com
出典:facebook.com
コロナ前までは例年「タイガー&ドラゴン」というレイヴが夏に開催されていました。
2022年10月には美大生によるレイヴが行わていましたし、2023年7月にはプール開き、さらに2023年8月11日には納涼祭が行われました。
木の根ペンションは世界でも類を見ない立地にあるペンション・敷地ですので、スペシャル感があるのですが、それでもDJなどを招いてのレイヴを行うということは、やっぱり木の根ペンションの管理者はパリピなのだと思います。
現在の左翼の人たちは、一昔前のような「お堅い真面目タイプ」ではなく、楽しいパリピタイプが増えているのかもしれません。
現在は宿泊は不可となっている
出典:facebook.com
木の根ペンションに泊まってみたいと思っている人に残念なお知らせです。木の根ペンションはイベントには使われていますが、現在はペンションとしては営業しておらず、宿泊不可となっています。
木の根ペンションのFacebookのコメントに「宿泊できない」とはっきり書かれていました。
木の根ペンション Kinone pension
なお、現在ペンションとしての営業活動は行なっておりませんので、身近なホテルか、こちらのカプセルホテルなどご利用ください。
引用:Facebook
出典:facebook.com
普段は営業していないので、突然押しかけても誰もいない可能性が高いです。ただ、イベントはFacebookで告知されるので、行ってみたい人はFacebookをチェックしておくと良いでしょう。
木の根ペンションのまとめ
成田空港内の一軒家の木の根ペンションの概要や歴史的背景、場所、生き方や所有者・オーナー、予約方法や泊まってみた人はいるか、やばい噂や現在をまとめました。
木の根ペンションに行くことは可能ですが、自己責任でお願いします。