久留米・指ペンチ事件とは2018年10月に発覚した、福岡県久留米市内にある建設会社・福子建設で起きた傷害事件です。この記事では久留米・指ペンチ事件の動機や犯人の野崎研二に下された判決、被害者や犯人の現在について紹介します。
この記事の目次
久留米・指ペンチ事件の概要
2018年10月26日、福岡県久留米市荒木町にある建設会社「株式会社福子建設」の経営者である野崎研二(当時45歳)が逮捕されました。
野崎研二は同年10月15日の17時頃、自社の従業員の男性の指をペンチで挟み、そのままねじるなどの暴行をくわえて骨折など全治14週間の重傷を負わせたとされ、傷害容疑での逮捕でした。
従業員を素手で殴るといった行為でさえ暴行罪に問われる可能性があるにもかかわらず、凶器、それもペンチで手指を挟んで骨折させるという行為は理解しがたいものがあります。
そのため報道時はネット上でも「普通の会社なのだろうか」「ヤクザの拷問みたいだ」「やっていることが反社にしか見えない」との声があがりました。
そして社会の関心はこのような事件を起こした野崎研二に向けられるのですが、その後の調べで彼には傷害致死事件や傷害事件を起こした過去があること、会社での暴行が常態化していたことなどが発覚。
さらに従業員の指をペンチでねじ切ろうとする様子の動画が流出し、あまりの痛々しさとおぞましさに厳罰を求める声があがったのです。
また、過去にも傷害致死事件などで建設業許可の取消処分を受けていたにもかかわらず、福子建設の経営者が野崎研二のままであること、この久留米・指ペンチ事件が発覚して指名停止措置を受けた後も、措置期間が明けた後すぐに福子建設が久留米市からの工事依頼を受注していることに対しても、杜撰すぎるとの非難の声が集まっています。
久留米・指ペンチ事件の背景・動機
出典:https://www.data-max.co.jp/
久留米・指ペンチ事件の被害者となった男性従業員は、2015年頃に福子建設に入社しました。
入社は知人の紹介だったといい、慣れない仕事に手間取る被害者に対して腹を立てた野崎研二が、次第に手を出すようになっていったとされます。
「作業の失敗や発注ミスなどを繰り返すうちに、入社して1年後くらいから、殴る蹴るの暴行を受けるようになりました」(Nさん)
被害者は野崎研二に受けた暴行について上のように証言しており、2016頃から2018年10月の発覚に至るまでの間、虐待を受け続けていたことが窺えます。
もちろん被害者男性も黙って耐えていたわけではなく、「やめてください」と訴えたそうですが、野崎研二は聞く耳を持ちませんでした。
それどころか被害者男性への暴行は悪化していき、2017年の12月には鉄パイプで右脛、あばら、手首を殴打されるというどう見ても犯罪としか思えない暴力を受けたといいます。
痛みに悶絶する私を見て野崎氏は『お前の足は頑丈だな』などと言い、その後、あばら、右手首など、体全体を殴りました。
そこまでされたのなら、病院に行くほどの怪我を負っていなくても警察に被害届を出すべきではないかと思う方も多いでしょう。
被害者男性は「暴行を受ける前に社用車運転中に事故を起こしてしまった。その負い目があったため、被害届を出すのを躊躇してしまった」とのこと。
それとこれとは別だろう、我慢する必要などなかったのにと歯噛みしたくなりますが、日常的にミスに対して暴行を受けていたため、被害者男性も正常な判断ができなくなっていたのかもしれません。
脚を引きづって歩く様子を心配する家族や友人に対しても「自転車で走っていて転んでしまった」と心配させないように嘘をついていたそうです。
ここまでしておきながら野崎研二は久留米・指ペンチ事件について逮捕から起訴まで一貫して関与を否認しており、従業員に怪我を負わせた動機についても明かしていません。
しかし、このように長期にわたって日常的に社内で暴力沙汰が横行していたことから考えて、少しでも気に入らないことがあれば公的機関に訴え出ないような従業員を狙って暴行をくわえ、憂さ晴らしをしていたのではないかと思われます。
久留米・指ペンチ事件の犯人・野崎研二の前科
出典:http://anchikaluto.blog.jp/
久留米・指ペンチ事件の犯人である野崎研二は、2009年にも傷害罪で逮捕されていました。
処分理由は、久留米県土整備事務所発注の歩道バリアフリー化工事現場において、同社社員で同工事の現場代理人が、同僚作業員の顔を数回けり、打撲などの軽傷を負わせたとして11月16日、福岡県警から傷害容疑で逮捕されたため。
引用:福子建設 指名停止
この記事の中にある「工事の現場代理人」というのが野崎研二です。
野崎研二が公共事業の工事中に自社の従業員の顔を蹴り、逮捕されたことが原因になって福子建設が指名停止処分を受け、2009年11月27日から12月26日までの間、福岡県が発注する業務に入札できなくなったとのことです。
この事件では会社への指名停止とは別に、野崎研二個人に対しても傷害罪で懲役1年、保護観察付き執行猶予の判決が下っていました。
しかも、野崎研二が起こしていた事件はこれだけではなく、2005年12月にも金銭トラブルでもめた知人を殴って死亡させてしまい、傷害致死で逮捕されていたといいます。
1回目は2005年12月、金を貸していた知人に暴行を加えて死亡させ、傷害致死で懲役3年、執行猶予5年の判決。
上記のように、傷害致死で逮捕された後に野崎研二は懲役3年、執行猶予5年の判決を受けています。
ネット上でも「人を殺しておいて執行猶予がつくの?」と疑問の声があがっていましたが、殺人ではなく傷害致死の場合、裁判で「とくに酌むべき事情」が認められ、過去に禁錮5年以上の刑に処されていない場合に限って、執行猶予がつくことがあるとのことです。
野崎研二が傷害致死事件を起こしたのは2005年、傷害事件を起こしたのは2014年ですから、この判決を見るに2005年以前には少なくとも傷害事件での逮捕歴はなかったのでしょう。
裁判で認められた「酌むべき事情」というのが何だったのかは不明ですが、この時に野崎研二の持つ凶暴性を裁判所が適切に判断できていたら、後の傷害事件や久留米・指ペンチ事件は防げていたのかもしれません。
久留米・指ペンチ事件の裁判
久留米・指ペンチ事件は被害者男性の家族が見かねて警察に相談したことから、発覚しました。
そして警察の調査の結果、2018年10月26日に野崎研二が逮捕に至ったとされます。
野崎研二には前科がありますから、傷害罪で起訴されれば今度こそ執行猶予がつかず、相応の懲役刑が科されるものと思われました。
しかし、実際には野崎研二は「傷害罪」ではなく、より軽い「暴行罪」で起訴されたといいます。
傷害罪と暴行罪の違いは簡単にいうと以下の通りです。
傷害罪
15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処される。
暴行罪
2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金または拘留に処される。暴行を受けたものの、怪我がない場合などに適用される。
人の指をペンチでねじ切ると脅してはさみ、骨折までさせて逮捕され、かつそれ以外に雇用主という立場を利用してさんざん従業員に暴行をくわえてきたにもかかわらず、暴行罪では最長でも2年の懲役刑にしかなりません。なぜこのような、理不尽な起訴内容となったのでしょうか。
これについて被害者男性の弁護士は、「野崎被告に負わされた怪我が多すぎて、どれがいつ受けた暴行でできたものかわからず、傷害での立件が難しいと検察が判断したと聞いている」と語っていました。
骨折ならば病院の受信記録が残っているだろうから、それを証拠にすればよいのではないかと思います。
しかし、野崎研二は自分の犯行が明るみに出ないよう、すぐに病院に行かないように被害者男性を脅したり、受診の際には「自転車に乗っていて転んだ」と嘘をつくように指示していたそうです。
そのため診療記録も、暴行の証拠にはならなかったのです。こうして久留米・指ペンチ事件は暴行罪として起訴されたのだといいます。
裁判中の野崎研二の態度
逮捕時も「知らない」「関係ない」と事件への関与を一切認めなかったという野崎研二。裁判になっても態度は変わらず、暴行の事実を全否定していました。
しかし、暴行現場を隠し撮りした動画が証拠として提出されると「動画内に撮影されていることだけはやった」「あとは知らない」と一変して供述を変えたといいます。
動画を見て観念し、これまで自分がやってきたことをすべて認めるのならいざ知れず、証拠があるものだけは渋々認めるという態度では、反省の様子はまったく見られません。
動画の出どころははっきりと報道されていませんが、おそらくこのままでは被害者男性が危ないと感じた同僚が、動画を隠し撮りしていたのではないかと噂されています。
裁判でも福子建設の従業員が証言に立ったそうですが、野崎研二は「被害者も従業員も嘘をついている」と訴えて自分が被害者のように振る舞ったといいます。
久留米・指ペンチ事件の判決
結局、第一審で福岡地裁が野崎研二に言い渡した判決は懲役1年10ヶ月でした。やはり暴行罪での起訴でしたから、これだけで済んでしまうのかという印象を受けます。
しかし、野崎研二はこれでも重いと感じたらしく一度控訴し、その後に取り下げていました。
この行動に対して被害者男性の弁護士は以下のような考察をしています。
今後の方針を決める為にいったん控訴したものと思われます。また、示談に持ち込むことによって執行猶予付きの判決に持ち込みたいという考えもあったと思われます。
実際に弁護士のもとに野崎研二側から示談の申し込みがあったそうですが、この時、提示された金額があまりに低いものであったために交渉決裂になったといいます。
被害者男性と弁護士としては「暴行での起訴でも実態は傷害罪なのだから、見合った示談金を」と伝えたものの、野崎研二から提示されたのは「立件されている暴行以外は何もしていない」という主張のもと、暴行での示談金だけでした。
そして、示談の話がまとまらないと察するやいなや、野崎研二は示談を取り下げたとされます。
この話からも第一審の判決が言い渡された後も野崎研二はまったく反省しておらず、保身しか考えていないことが窺えます。
久留米・指ペンチ事件のその後① 野崎研二の現在
野崎研二に対する刑は2019年中には確定していたため、現在は出所して社会に出ていると予想されます。
刑事裁判が終わった後、被害者男性の弁護士は民事裁判では傷害事件として起訴し、賠償金を求めて争うつもりだと話していました。
民事裁判については続報がないため、現在どのような話が進んでいるのかは不明です。
久留米・指ペンチ事件のその後② 福子建設の現在
出典:https://www.kenkokarate.com/
野崎研二が逮捕された後、久留米・指ペンチ事件の舞台となった福子建設はGoogleマップで名称を「野崎研二の指ペンチ小屋」と書き換えられるなどしていました。
これだけ立て続けに問題を起こしたのだから廃業していても不思議ではありませんが、福子建設は現在も野崎姓の人物が代表取締役のまま営業している様子です。
久留米・指ペンチ事件発覚時の法人代表者は野崎研二の母親だったとのことなので、現在の代表取締役も母親なのかもしれません。
野崎研二は経営者と報じられていましたが、裁判では「アルバイトの身分だった」と主張しており、逮捕の影響は直接福子建設に及びにくいよう、実態とはかけはなれた登記がされていたようです。
子育てしやすい会社として福岡県福祉労働部労働局のサイトにも登録されていますが、あのような事件が起きると就職希望者もそう多くはないでしょう。
③
久留米・指ペンチ事件のその後③ 被害者男性の現在
久留米・指ペンチ事件で骨折などの怪我を負った被害者男性は、2018年に弁護士のもとを初めて訪れた時には松葉杖をついていたといいます。
これ以降の被害者男性の情報としては、2022年に匿名掲示板の爆サイに「久留米・指ペンチ事件の被害者とこの間会ったけど、普通に指が動いていたよ」という書き込みがありました。
匿名掲示板の情報ですから真偽は不明ですが、被害者男性が回復して後遺症などなく生活していてくれればと願います。
久留米・指ペンチ事件についてのまとめ
今回は2018年10月に発覚した久留米・指ペンチ事件について、犯人の野崎研二の犯行動機、判決、被害者や事件現場となった福子建設の現在について紹介しました。
自社の従業員に対して信じがたいほど凄惨な暴行をくわえ、それが露見しないように工作までしていた野崎研二。仕方のないこととはいえ、刑事裁判の判決がたった懲役1年10ヶ月というのは驚きを隠せません。
せめて民事裁判では、被害者男性の救済となるような判決が出ることを願います。