死体をホルマリン漬けにする死体洗いのアルバイトがあるという都市伝説があります。
死体洗いのアルバイトの詳しい内容や元ネタとなった大江健三郎の小説、都市伝説の真相や題材にした作品などをまとめました。
この記事の目次
死体洗いのアルバイトとは「遺体をホルマリン漬けにするアルバイト」
世の中には都市伝説がたくさんありますが、その中の1つに「死体洗いのアルバイト」があることを知っていますか?
死体洗いのアルバイトとは、簡単に言うと、「遺体をホルマリン漬けにするアルバイト」です。医学部の学生は、遺体を解剖する実習があります。
その実習のための遺体を洗って、解剖できるようにするという仕事が「死体洗いのアルバイト」なんです。
この死体洗いのアルバイトはあくまでも都市伝説で、「こんなアルバイトがある」、「こういう仕事があるらしい」という噂レベルでしかありません。
ただ、遺体を解剖するような医学部・大学病院、さらに遺体を解剖していそうな軍の施設などは一般人にはわからない「閉ざされた世界」であり、そこで秘密裏に解剖が行われていて、死体洗いのアルバイトがあってもおかしくはないという思いから、死体洗いのアルバイトの都市伝説が広がっていったと思われます。
「死体洗いのアルバイト」はありそうな気もするし、ご遺体を洗うなんてそんなアルバイトはなさそうな気もする絶妙なラインのアルバイトであり、だからこそ都市伝説として広がったと思われます。
死体洗いのアルバイトの都市伝説や仕事内容
都市伝説の死体洗いのアルバイトの内容を詳しく見ていきましょう。「死体洗いのアルバイト」なんて、どのように死体を洗っていくのでしょうか?
死体洗いのアルバイトの仕事内容
死体洗いのアルバイトは、医学部の学生が解剖実習をするための遺体を洗うアルバイトです。医学部で学生が遺体を解剖するのは、必ず行われる実習・教育課程です。そのための遺体は「献体」された遺体を用いるのですが、解剖前には腐敗しないようにホルマリンで洗浄・固定する必要があります。
このホルマリンでの洗浄・固定をするのが、死体洗いのアルバイトなんです。死体洗いのアルバイトは、ホルマリンプールに遺体を入れて、一晩中遺体が浮いてこないかを監視し続け、遺体が浮いてきてしまったら、棒を使って遺体をプールに沈めるという仕事をします。
遺体は腐敗してくると、体内でガスが発生するために、死体が浮いてきてしまうのです。それを棒で沈めてきちんとホルマリン漬けにするための仕事が、死体洗いのアルバイトになります。
高額時給らしい
この死体洗いのアルバイトは、高額時給で稼げるバイトと言われています。本来は大学の教員や学生が行うべきものなのですが、みんなやりたがらない仕事なので、高額時給で秘密裏にアルバイトの募集をかけています。
時給は1~2万円と言われています。
やり手が少ないバイトなので、教授がセコイ人でなければ2時間3~5万円ほどになりますけど、衣服を買いなおすのにお金が必要ですし、1週間は誰とも会いにくくなりますので、割が良いバイトとは言えませんね。
時給1~2万円のアルバイトは、かなり高額バイトであることは間違いないですね。この辞意級の高さも、都市伝説として広まった要因の1つかもしれません。
2ちゃんねるには体験談も
都市伝説の死体洗いのアルバイトですが、実は体験談もあるんです。
友達が二人で死体洗いのバイトに行ったらしい。
水槽みたいなのに、ホルマリンと死体が入れてあって、浮いてきた死体を棒で沈める、というのを一晩中やるバイトだったらしい。
で、水槽がプールみたいな作りになってたから、片割れが水槽に落ちたらしい。気持ち悪いんで早く水槽から上がろうとする片割れを、友人はゾンビと思い込み、棒で滅多打ちにしたらしいw
15 :本当にあった怖い名無し:2006/11/05(日) 20:48:53 ID:S19mDJqzO死体沈めのバイトは本当にあるよね。友達がやってた
正確には、体験談ではなく「友達の体験談」になりますが、ホルマリンの水槽に死体を入れて、浮いてきたら棒で沈めるという作業は、まさに都市伝説の「死体洗いのアルバイト」そのものです。
友達の体験談でも、このような体験談を読むと、死体洗いのアルバイトは本当にあるのかもしれないと思ってしまいますね。
都市伝説の派生バージョンもあり
死体洗いのアルバイトは、大学病院・医学部の解剖実習用のご遺体をホルマリンプールに漬けこみ、浮いてきたら棒でプールに沈めるという仕事でした。
しかし、この「死体洗いのアルバイト」には派生バージョンもあるんです。派生バージョンは軍関係のものです。ベトナム戦争で戦死したアメリカ兵の遺体を日本に運んできて、日本の米軍基地で死体を洗うアルバイトがあったようです。
ちょうどベトナム戦争で、ベトナムから米軍が死体を持って立川基地に帰って来る。その死体洗いのアルバイトは、当時でも1日1万円くらいもらえたのかな。僕は小さいからできなかったけれども、先輩たちはやっていました。
また、ベトナム戦争時のアメリカ兵の死体洗いのアルバイトは、ただ単に死体を洗うだけでなく、ご遺体を縫合したり、死化粧(エンバーミング)をする仕事もあったようです。
死体洗いのアルバイトの元ネタ
都市伝説の死体洗いのアルバイトには、元ネタがあると言われています。死体洗いのアルバイトの元ネタは2つあると言われています。
大江健三郎の「死者の奢り」
出典:amazon.co.jp
死体洗いのアルバイトの元ネタの1つ目は、大江健三郎の「死体の奢り」です。「死体の奢り」とは、ノーベル賞作家の大江健三郎氏が、1957年に文芸雑誌『文學界』の8月号に掲載した短篇小説で、芥川賞候補にもなり、サルトル流の実存主義の思想、時代の暗い閉塞感をよく表現し得る文体として評価が高かった作品です。
この「死体の奢り」は、大学の医学部が舞台で、主人公は解剖用にアルコール水槽で処理されている死体を違う水槽に移し替え、移動させるアルバイトをしているという内容です。
「死者の奢り」の中には次のような描写があります。
「死者たちは、濃褐色の液に浸かって、腕を絡みあい、頭を押しつけあって、ぎっしり浮かび、また半ば沈みかかっている」
引用:「死体洗いのバイトは存在するが、時給は1500円」なぜかデマが語り継がれる葬儀業の本当の話 危険で高給な裏の仕事ではない (3ページ目) | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)
この大江健三郎の「死者の奢り」の描写は生々しく、衝撃的なものでしたので、ここから「実際に大学の医学部で死体洗いのアルバイトがあるのではないか?と言われるようになり、それが語り継がれていったと言われています。
ベトナム戦争のエンバーミング
死体洗いのアルバイトの都市伝説には、派生バージョンとしてベトナム戦争で亡くなったアメリカ兵の死体洗いのアルバイトがあったと言われています。
これは、どうやら半分は本当で半分は都市伝説のようです。なぜなら、「死体洗いのアルバイト」はないけれど、エンバーミングの仕事は日本で行われていたからです。
ベトナム戦争で、ベトナムから近いアメリカの同盟国は日本でした。そのため、ベトナム戦争で死亡したアメリカ兵が日本に運ばれ、エンバーミング(死化粧)され、その仕事は日本人が行っていたこともあるようなんです。
古株の話では通常死体は九州の米軍基地に船で運ばれて、そこにある専門の機関がバラバラに吹き飛んだ手足を縫い付けるのだが、アメリカ軍が戦闘で大負けすると九州だけでは処理できないため横田基地に運ばれてくるのだそうだ。そして通称裁縫小屋と呼ばれるオレンジ色の建物で死体に処理を施して、棺に入れてアメリカ本国に送還するいう事だった。
洗浄の後でバラバラになった手足を針で縫い付けたり、傷口を縫合したりロウソクを死体の空洞部分に垂らして見た目を整えた後で防腐剤の粉をぶっかけるのだそうだが、中にはどうにも手のつけようが無い死体もあって、そういうのは失った部分に綿を詰めて人型にした後で包帯でグルグル巻きにしたそうである。
ベトナム戦争で戦死したアメリカ兵のご遺体を、本国・ご家族に送るための仕事は実際にありました。
大江健三郎の「死体の奢り」で死体洗いのアルバイトが都市伝説的に広がっていった。そして、そこにベトナム戦争でのエンバーミングの仕事をした人たちの体験談が加わって行って、現在の死体洗いのアルバイトの都市伝説が作られたと思われます。
死体洗いのアルバイトの真相
都市伝説の死体洗いのアルバイトの真相は、デマです!医学部での解剖用の遺体を洗うアルバイトはありません。
『都市伝説の正体-こんな話を聞いたことはありませんか? 』の中で、著者の宇佐和通氏は、次のようなリサーチをしたそうです。
「47都道府県の病院にアトランダムに電話を入れ、死体洗いのバイトはあるかを尋ねたが、いずれの病院からも『ノー』という答えが返ってきた」という自らのリサーチ結果を披露。
また、法医学者の西丸與一のエッセイ『法医学教室との別れ』の中で、在日アメリカ軍のモルグ(死体置場)職員から明確に「そのような事実は存在しない」とのコメントが出されていると書いています。
これらのことから、都市伝説の死体アルバイトはデマであり、ただの都市伝説であると言えるのです。
ホルマリンプールは存在しない
そもそも、ホルマリンプールは存在しません。ホルマリンは人体に有害なもので、第3類特定第2類特定化学物質に指定されています。また、揮発性が高く、ホルマリンプールの近くにいて、一晩中棒で死体を沈める作業をしていれば、中毒症状を起こしかねません。
そんな危険な作業をただのアルバイトにさせるとは考えにくいです。しかも、2ちゃんねるの口コミには次のようなものがありました。
水槽がプールみたいな作りになってたから、片割れが水槽に落ちたらしい。気持ち悪いんで早く水槽から上がろうとする片割れを、友人はゾンビと思い込み、棒で滅多打ちにしたらしいw
ホルマリンは強力な化学反応で細胞を殺して組織を固定する作用があります。そんな危険なプール(水槽)に落ちたら、相当ヤバいですよね。這い上がろうとする友達を棒で滅多打ちにするなんて余裕はありません。
だから、この死体洗いのアルバイトは都市伝説なのです。
死体洗い(エンバーミング)は専門家が行う
ただ、大学医学部でご遺体の解剖を行いますので、ご遺体を保存しておく必要はあります。ただ、その保存作業は専門家が行いますし、ホルマリン漬けにする時にはプールは用いません。
ご遺体を保存するためには、まず頸動脈や大腿動脈を切って、そこからホルマリン液(防腐剤・固定液)を注入して、血液を排出します。それから、脳を取り出してアルコール液に漬け込んで保存するのです。
本来、献体を受けると、AiCT撮影や固定液注入、脳摘出などの保存処理を行って安置・保管。その後、解剖学実習に活用されます。
また、ホルマリンは有毒物質なので、組織を固定した後にホルマリンを抜く必要があり、その際にアルコールの水槽につけることもあるようですが、最近は遺体処理装置で行っているとのこと。
ただし、最近はホルマリンを抜く作業は箱形の「遺体処理装置」で行うケースが増えています。ホルマリンをプールで抜くと3カ月かかるのに対して「遺体処理装置」を使えば1カ月ほどですむそうです。
引用:「死体洗いのバイトは存在するが、時給は1500円」なぜかデマが語り継がれる葬儀業の本当の話 危険で高給な裏の仕事ではない (3ページ目) | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)
ご遺体の血管から血液を排出して、ホルマリン液を注入し、脳摘出などの行為を行いますので、アルバイトでは行うことはできず、エンバーミングの専門家が行うことになります。
大学の医学部・大学病院ではご遺体は敬意をもって丁重に扱われるものですので、アルバイトが棒でプールに沈めるなんて、まずありえないと言えるでしょう。
簡単な死体洗いのアルバイトはあるらしい
ただ、簡単な死体洗いのアルバイトはあるらしいという情報もあります。ホルマリンプールに棒で沈めるような乱暴なアルバイトではなく、ご遺体の保存処理をする前段階での死体洗いのようです。
2017年12月1日に放送された「じっくり聞いタロウ~スター近況(秘)報告」で佐々木孫悟空さんは、死体洗いのアルバイトを実際にしたことがあると話していました。
内容については「ストレッチャーで運ばれたご遺体をテーブルに移し、韓国アカスリのような手袋をつけて遺体をこすります。さらに体毛を剃らなければならないので、ローションのようなものを塗りたくって毛を剃り、(体のガスが漏れるので)穴という穴に綿を詰めました」と説明した。最後に、腐敗を防ぐため、遺体をホルマリンに浸したら終了とのこと。
引用:都市伝説じゃなかった“死体洗いバイト”作業内容&給料が明らかに | じっくり聞いタロウ | TVerプラス – 最新エンタメニュース
「遺体をホルマリンに浸す」という部分はちょっと盛っているかなとも思います。ただ、保存処理をする前段階での処理をアルバイトがしているのかもしれません。
この佐々木孫悟空さんは「1体につき4時間くらいかかります。僕は3万円いただきました」と話していました。
湯かんのアルバイトはある
また、遺体解剖とは関係ないところで、遺体を洗うアルバイトはあります。そのアルバイトとは湯かんです。湯かんとは亡くなった方をお風呂に入れて全身をきれいにすることです。
その後に死に化粧などを施し、お別れする時の服を着せて、棺にご遺体を納めます。
葬儀会社や地域によって異なりますが、この湯かんをアルバイトが行うことはあるようです。
ええ、「湯灌ゆかん」のアルバイトが現実にあります。湯灌とは、ご遺体をバスタブのようなものに入れて洗ったり、拭き清めたりすることです。最近では「湯灌」を「エンゼルケア」と呼び、新規参入する介護業者が増え、求人を行っています。
引用:「死体洗いのバイトは存在するが、時給は1500円」なぜかデマが語り継がれる葬儀業の本当の話 危険で高給な裏の仕事ではない (2ページ目) | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)
ただ、湯かんのアルバイトは都市伝説の「死体洗いのアルバイト」のように時給が高いというわけではなく、時給は1,500円程度とのことです。
死体洗いのアルバイトを扱った作品
出典:amazon.co.jp
死体洗いのアルバイトを扱った作品はこちらです。
・「都合のいい女」(テレビドラマ)
・「黒鷺死体宅配便」(漫画)
・「ハンニバル・ライジング」(映画・小説)
・「帆のないヨット」(漫画)
・「ドロヘドロ」(漫画)
・「にくいあんちきしょう」(漫画)
・「四八(仮)」(ゲーム)
・「イリヤの空、UFOの夏」(ライトノベル)
・「肢体を洗う」(ゲーム)
・「コードギアス 反逆のルルーシュ」(アニメ)
・「デジモンストーリー サイバースルゥース」(ゲーム)
・「氷室の天地 Fate/school life」(漫画)
・「忍者と殺し屋のふたりぐらし」(漫画)
・「ゾンビ屋れいこ」(漫画)
死体洗いのアルバイトは、意外とたくさんあるんですね。
死体洗いのアルバイトのまとめ
都市伝説の「死体洗いのアルバイト」の内容や元ネタ、真相と「死体洗いアルバイト」を題材にした作品などをまとめました。
この都市伝説は「ちょっと違うアルバイトはある」し、信ぴょう性がある絶妙なバランスを保っていることが、これだけ広まった要因と言えるかもしれません。