山村貞子とは鈴木光司氏原作の映画『リング』シリーズに登場する「貞子」の本名です。
この記事では山村貞子の生い立ちや誕生日、父親や母親や家族、実在したモデル、生前は美人、かわいい少女だったという彼女の素顔が見られる作品を紹介します。
この記事の目次
山村貞子とは・『リング』シリーズに登場するホラーヒロイン
山村貞子は1991年に出版された鈴木光司氏のホラー小説と、本作を映像化した映画『リング』シリーズに登場する人物です。2019年には、ニューズウィーク日本版でイチローや草間彌生らの名だたる著名人ととも「世界が尊敬する日本人100」に選出されるという快挙を果たしています。
貞子は『リング』の一作目では現世に強烈な恨みを残して死んだ怨霊として登場し、見た者は一週間以内に死ぬという「呪いのビデオ」を通して次々に厄災を起こしていきました。
生前は舞台女優をしており、信じられないほどの美少女で自身も母親も超能力者という特殊な生い立ちから差別や迫害を受け、世の中のすべてを激しく呪いながら古井戸の底で死んでいったとされます。
作品によって容姿が異なりますが、もっとも有名な姿は1998年に公開された映画一作目に登場する、顔がすべて隠れる黒髪のロングヘアーに白くて長いワンピース、性別がわからないほどの高身長という出で立ちです。
ぎこちない動きで井戸から現れ、テレビの外に這い出てくる様子が話題となり一大ブームを起こしました。
なお、この演出は原作の小説にはなく(原作の小説では怨霊となった貞子の容姿について、とくに記述はない)、映画独自のものでした。
小説『リング』での貞子
鈴木光司氏の小説『リング』での貞子は、映画同様に見たら一週間後に死ぬという「呪いのビデオ」を作った元凶として描かれています。
原作小説は主人公の新聞記者・浅川和行と友人の高山竜司が「呪いのビデオ」の謎を追いながら、自分たちにかけられた呪いを解除する方法を探すというあらすじで、大まかな流れは映画と同じです。
しかし原作小説では貞子とは何者なのか、妻子のために期限までに呪いを解く方法は見つかるのかという点がクローズアップされており、ホラーよりもサスペンス色が強くなっています。
また、後述しますが作中で貞子の生い立ちや迫害される様子が細かく描かれているという点も、映画版とは異なる点です。
生前の姿については細かく描かれている一方、怨霊となってからの貞子は存在を匂わせるだけで作中には登場しておらず、貞子自らが出てきて人を呪い殺すという描写もありません。
小説では高山竜司は「見たくなかった自分の惨たらしい死に姿」を幻視してショック死しており、浅川和行も続編で交通事故死しています。あくまで、貞子の呪いで死んだらしいという描き方をされており、作中に貞子そのものは登場していません。
映画『リング』での貞子
小説版と違い、映画『リング』は主人公の浅川和行が女性の浅川玲子になっており、高山竜司との関係も友人ではなく元夫に変更されています。
そして生前の貞子については、これも原作小説にはない設定の高山竜司の持つ超能力「触れるだけで人の考えがわかる超能力」を通じて語られます。
小説と比べると細かく生前の人物像が明かされないため、いっそう貞子は化け物じみた存在となっており、不幸な生い立ちに共感し、井戸から彼女の遺体を搬出して供養したことで呪いは解けただろう、と安心したところで貞子が登場するシーンは観客の恐怖心を大いに煽りました。
TVから這い出た貞子が長い前髪から激しい憎悪と怒りを宿した片方の目だけを覗かせる様は、後に本作がハリウッドでリメイクされた際にも踏襲されています。
一作目の映画『リング』での貞子は女優の伊野尾理枝さんが演じており、動きをぎこちなく、この世ならざるものに見せるために貞子が井戸から出て動くシーンは、逆回転で撮影されました。
また、白目がアップで映されるシーンでは伊野尾理枝さんではなく、本作の助監督を務めた宮崎紀彦氏が貞子を演じています。
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貞子の目から人間らしさを排除するために、まつげをすべて切って撮影するという提案をされた伊野尾さんが「ほかの作品に出られなくなってしまう」と反対したためです。
それゆえ映画版の貞子の目元はまつげをすべて切った男性のもので、さらに人間味を排除するために上下逆に撮影しています。
『らせん』での貞子
『リング』シリーズの2作目となる『らせん』は、安藤満男が友人の高山竜司の司法解剖をおこない、そこから「呪いのビデオ」の存在を知り、独自に調査を進めるという内容です。
前作の『リング』では貞子の呪いとされていたものの正体が、天然痘に似た未知のウイルス「リングウイルス」であり、網膜を通して感染し、心臓の冠動脈に肉腫を発生させるという他に例を見ない作用をしていたことが明らかになります。
また本作はリングウイルスに感染した高野舞という女性が再び現世に貞子を産む、という展開があります。
『ループ』での貞子
『リング』シリーズの最終章となる3作目の『ループ』では、貞子や浅川、高山らが生きていた世界は「ループ」という仮想世界に存在する仮想の生命体だったことが明かされます。ループは生物の変化や進化をシュミレートするために作られた仮想空間です。
前作の後、ループの世界は仮装生命体のヤマムラサダコ(貞子)が作り出したリングウイルスによって滅びかけており、現実の世界にもリングウイルスが流出。致死率100%の転移性ヒトガンウィルスに変異して、世界を滅ぼそうとするというあらすじです。
なお、3部作のうち『ループ』のみ映像化が困難なことから映画が作られていません。
山村貞子の生い立ち
生前の貞子は、1947年に伊豆大島の南端にある差木地地区に生まれました。母親の山村志津子は貞子を産む前の年にて伊豆大島沖で役小角(えんの おづぬ・飛鳥時代にいたとされる呪術者)の像を引き上げており、この頃から予知や透視などの超能力が使えるようになりました。
小説での貞子は両性具有者で、睾丸性女性化症候群(性別としては男性であり、精巣を持つものの、外見上の特徴や生理的な性質は女性)だと説明されています。
父親は志津子の超能力を研究し、彼女を崇めている心理学者の伊熊平八とされています。しかし伊熊には妻子がおり、表面上は学者と研究対象という関係でした。
また貞子が7歳の頃に弟が誕生していますが、生後4ヶ月で亡くなっています。
母親の自殺
弟が誕生、そして亡くなった翌年、貞子が8歳の時に母親の志津子と伊熊博士がマスコミを集めて大規模な超能力の公開実験をおこないますが、これが大失敗に終わったことで志津子は精神を病んでしまいます。
マスコミに叩かれておかしくなってしまった志津子は、1956年に三原山の火口に身を投げて自殺。母1人子1人で育った貞子は、母親の従兄弟の家に引き取られました。
そして1957年、小学4年生の時に三原山の噴火を予知して学校内で有名になります。なお、映画版では志津子の公開実験の時にすでに強力な超能力を持っており、母親のことを詐欺師呼ばわりした記者の1人を睨みつけて変死させています。
上京
1965年、18歳になった貞子は舞台女優を志して上京。四谷にある劇団「飛翔」に入団します。そして同じ劇団で音響効果を担当していた遠山博と恋に落ち、密かに交際を開始しました。
しかし、劇団内には人並み外れた美貌の持ち主であった貞子に言い寄ろうとする者が多く、また貞子も遠山以外の劇団関係者を誘惑していました。
ある時、貞子は遠山とのやりとりを録音したテープを脅しに使い、自分を辱めようとした劇団員4人を呪い殺してしまいます。そしてその直後の舞台「黒い服を着た女」での主演を最後に劇団を去りました。
劇団員時代の貞子の様子は、リングの外伝作品である『レモンハート』に描かれています。
山村貞子の死因
1966年、貞子が20歳の時に父親の伊熊が結核を患い、南箱根にある療養所に入りました。
ここで伊熊の主治医であった長尾城太郎に強姦された貞子は、天然痘ウイルスのキャリアであった長尾から天然痘をうつされます。リングウイルスが天然痘に似ていたのは、このためです。
貞子を強姦した長尾は、彼女を古井戸に突き落として殺害。映画『リング2』では井戸に落とされてからの貞子の様子が描かれているのですが、井戸のなかで30年近くも生存しており、這い上がろうと井戸の壁を引っ掻いたために爪がひび割れてボロボロになったことがわかります。
絶命した後の貞子は1990年10月18日に浅川和行と高山竜司によって発見され、井戸から遺体が引き上げられました。(映画では浅川玲子と高山竜司)。
その翌日の19日には貞子を引き取って育てた養親の元に遺骨が引き渡されています。
『らせん』での再生後
1990年11月8日に宿主の高野舞の体を使ってもう一度誕生した貞子は、舞の姉の高野真砂子を名乗り、リングウイルスについて研究していた安藤満男の前に現れます。そして安藤の動きを監視するようになるのです。
同じ頃、亡くなった浅川和行の残した呪いのビデオに関する記事を集めて出版された作中作「リング」が、浅川の兄によって出版されて話題になっていました。
「リング」が映画化されると聞いた高野真砂子は、貞子時代に劇団員をしていた経験を活かしてオーディションに申し込み、見事に主役の座を射止めます。
貞子は自分が出演した映画にもリングウイルスの情報を念写し、映画を観た人、映画や書籍「リング」に関する音楽やゲームなどに触れた人すべてがウイルスに感染するようにします。これにより急速に人口は減少していき、代わりに貞子のクローンが増殖していったのです。
貞子の本当の最後
仮想世界「ループ」のなかで増殖を続けるリングウイルスに対して、唯一抗体を持っていたのが仮装生命体のタカヤマリュウジでした。
そしてタカヤマリュウジが無症状感染の状態で、現実に転生してしまったために転移性ヒトガンウイルスが誕生したことが判明します。
タカヤマは二見馨という人物となって転生しており、このことに気づいて自らの抗体からリングウイルスを無効化するワクチンを作り、再びループの世界に戻ります。そしてタカヤマはワクチンを使ってループ内にいたサダコと彼女のクローンをすべて抹消し、貞子を完全に滅ぼしました。
山村貞子の能力
出典:https://hisohiso.ti-da.net/
生前の貞子が持っていたとされる超能力は予知能力と念写で、呪いのビデオの映像は貞子が念写で作り出したとされています。
呪いのビデオは以下のような構成になっており、このビデオを見た一週間後に貞子が現れます。
・井戸に落とされた貞子の視点から見える夜空
・髪の毛を梳かす母親の姿を写した鏡
・伊豆大島の三原山噴火を知らせる新聞記事のようなもの。文字が蠢いている
・地面に這いつくばる人々
・頭から布を被り、画面の左端を指差す人物と「しょうもんばかりしているとぼうこんがくるぞ」という老婆の声
・「貞」の文字が浮かび上がる眼球
・井戸の映像
最初の貞子の視点では井戸の上に人影が写っており、この正体は彼女を殺そうと井戸に突き落とした人物だと考えられます。
また伊豆大島は貞子の故郷であり、その噴火に関する文章や地面を這う人々は、彼女が三原山噴火を予知したものではないかと思われます。
「しょうもんばかりしているとぼうこんがくるぞ」というのは、伊豆大島の古い方言で「水遊びばかりしていたら化け物が来る」という意味です。
そしてビデオが彼女の目を通して作られたことを暗示する貞子の瞬きの映像が挟まれた後に、現在も遺体がある井戸の映像が流れてビデオは終わります。
自分の遺伝子をウイルスに紛れ込ませて拡散する
『リング』ではこのビデオに呪いがかけられていると考えられていましたが、『らせん』ではビデオを観た者は未知のウイルスに感染して病死していたこと、さらにウイルスの姿は精子の頭部と尾部が丸く繋がったリング状のものであることが明らかになります。この形状が「リングウイルス」と名付けられた由来です。
リングウィルスの塩基配列は7割が天然痘由来のもので、3割が分割した貞子の遺伝子情報となっています。
リングウイルスは感染者の心臓周辺の冠状動脈に肉腫を作り、一週間で肥大化して心筋梗塞を起こします。しかしウイルスの増殖や進化に協力した場合には、リングウイルスは感染者の体内でほどけて精子のような姿になります。呪いのビデオを観てしまっても、ダビングして人に見せれば助かるのはこのためです。
ただ、無事に済むわけではなく姿を変えたウイルスは脳に向かい、宿主を操って呪いのビデオと同じように作用する呪いのメッセージを書かされることになります。これにより一層多くの人に、貞子のリングウイルスは拡散されていきました。
また女性が排卵期に感染した場合、ウイルスは子宮に向かって受精卵と結合し、貞子の受精卵が誕生します。受精から一週間で貞子は誕生し、そこから更に一週間で生前の姿まで成長。
この貞子はクローンではなく、オリジナルの貞子の記憶や感情を持っています。さらにオリジナルの貞子が子どもを作れない睾丸性女性化症候群であったのに対し、再生した貞子は女性、男性両方の生殖機能を備えており、性交することで次々に自分のクローンを生み出すことができるのです。
ヤマムラサダコの能力
ループの世界でヤマムラサダコが産み出したウイルスが元となった転移性ヒトガンウィルスは、短期間のうちに感染者の体中に転移して悪性腫瘍をつくるとされます。
ガンに似た症状を引き起こす新種のウイルスであるため、このような名前で呼ばれました。
なお、仮装生命体のなかでなぜ、ヤマムラサダコだけがリングウイルスを生み出すほどの特殊な能力を持っていたのかは明らかにされていません。
山村貞子の家族① 父親
貞子の父親は、映画版『リング』と原作の小説で異なります。原作では貞子の父親は心理学者の伊熊平八です。
しかし映画では貞子の父親は人間ではなく、海からやってきた「異形」だと示唆されています。貞子が生まれたのも海岸の賽の河原です。
貞子が呪いを振りまくようになるまでを描いた映画『リング0 バースデイ』では、貞子は2人いたという設定になっており、片方の貞子が母親譲りの超能力を持つ大人しい女性であり、もう片方の貞子は実の父親に似た怪物で少女の姿をしています。
父親に似た貞子は幼い頃にとつぜん貞子から分離して現れ、以降は伊熊が薬を与え続けて呪いを抑え込み、隔離して育てていました。
母親似の貞子は上京して劇団に入り、小説『レモンハート』同様に遠山博と出会い、恋仲になります。『リング0 バースデイ』の貞子は小説版とは違い、遠山と真面目な交際を続ける純粋な女性でした。
しかし、少女時代の貞子が母親の志津子を罵倒したことに腹を立てて呪い殺してしまった記者の恋人・宮地彰子によって、もう1人の貞子の存在が明かされてしまいます。
もともと貞子が入団した直後に劇団の看板女優が変死したこと、さらにその看板女優の代役に貞子が抜擢されたことを筆頭に、彼女が来たことで不気味で不可解なことが続いたことから、「飛翔」の劇団員は貞子をよく思っていませんでした。
そのため舞台上で貞子がパニックを起こすように仕掛けを作り、公演が失敗に終わった後に貞子をリンチして殺害してしまうのです。
殺害された貞子はもう1人の自分と融合して蘇り、暴走して次々と人を呪い殺していきます。
そしてラストではその貞子を止めるべく、苦渋の選択で娘を古い井戸に落として殺害する伊熊の姿が描かれています。
映画版では実の父親ではないことが強調されていますが、貞子を井戸に落とした後に伊熊は「もう終わりにしよう、父さんもすぐに行くから」と声をかけており、貞子に愛情がなかったわけではないことがわかります。
山村貞子の家族② 母親
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貞子の母親の山村志津子は、もともとは超能力を持たない普通の女性でした。しかし貞子を産む前年に超能力を身に着け、超能力について研究していた伊熊平八と出会います。
小説版での志津子は超能力の公開実験で失敗を重ねてしまい、マスコミや世間からインチキだと糾弾されたことで精神を病んで自殺しています。
一方で映画版の志津子は公開実験で見事に隠された賽の目を言い当てて、自分に透視能力があることを証明しました。しかし1人記者から実験にはトリックがある、志津子の超能力はイカサマだと指摘されてしまいます。
映画『リング』では志津子は実験が成功したのにインチキだと糾弾されたことから、病んでいって自殺したように描かれましたが、実は怪物の面だけが結集したもう1人の貞子が誕生したショックで命を絶っていたことが『リング0 バースデイ』で明らかになっています。
また映画版では小説と違い、貞子ではなく志津子が三原山の噴火を言い当てており、公開実験の前に「千里眼の持ち主」として新聞に取り上げられました。
山村貞子の実在のモデル・高橋貞子
貞子のモデルとなったのは、明治から昭和にかけて実在した高橋貞子という人物だと考えられています。
明治19年に岡山県和木郡和木町で誕生した高橋貞子は無口で感受性が強い女性で、父親の影響から日蓮宗を強く信仰していました。
夫の宮二によって超能力を見出された高橋貞子は、超能力の研究をしていた心理学者の福来友吉博士と知り合い、彼の実験に参加することになります。
高橋貞子は福来博士のもとで念写実験をおこない、彼女の超能力は本物だと感じた博士は実験の正当性を示すために立ち会ってくれる学者を募りました。
しかしこの頃、御船千鶴子、長尾郁子と2人の超能力者の研究で失敗を重ね、またイカサマではないのか、と散々指摘されていた福来博士の研究に協力する学者は現れませんでした。
結局、福来博士は准教授として務めていた東京帝国大学を追放され、在野の学者になります。そして博士が職を失ったことへの責任を感じた高橋夫妻は東京を去り、故郷の岡山に戻りました。
一度も公開実験の場で超能力を示すことができなかった高橋貞子は、岡山で心霊治療(手かざしなどの、医療行為に頼らない病気や怪我の治療)をおこないながら暮らしていたとされますが、没年や死因については明かされていません。
なお、高橋貞子は名前のみが貞子のモデルとなったとされています。しかし『リング0 バースデイ』のなかで貞子が心霊治療をおこなうシーンなどがあり、映画版では名前以外にも高橋貞子をモデルにしたと思われる描写があります。
父親・伊熊平八のモデル
貞子の父親である伊熊平八のモデルとなったのが、高橋貞子の研究をしていた福来友吉博士です。
福来博士は日本の超能力研究者のパイオニアとされる人物で、心理学者として東京帝国大学で准教授の職に就いていました。
優れた透視能力を持つと騒がれていた熊本在住の女性、御船千鶴子の公開実験で注目を集め、次いで透視と念写の能力を持つという香川県の女性、長尾郁子、そして高橋貞子の研究をおこない、念写の発見者とされています。
しかしながら福来博士と超能力者達の実験結果には不審な点が見られ、やがて学長からも「東京帝国大学の研究者として、好ましくない行為」として研究内容を避難されてしまいます。そしてこの警告に対しても「念写や透視の能力は実在する」として反論したために、福来博士は大学を追われてしまったのです。
東京帝国大学から追放された福来博士は仙台に「福来心理学研究所」を設立し、超能力者の育成などをおこないました。しかし注目されることはなく、82歳で生涯を終えています。
母親・山村志津子のモデル
貞子の母親である山村志津子のモデルは、高橋貞子よりも前に福来博士の研究対象になった御船千鶴子という女性です。
御船千鶴子は透視で万田坑を発見したとして新聞に取り上げられた超能力者で、明治時代に千里眼ブームを起こしました。
福来博士とともに超能力実験をおこないましたが、千鶴子は博士や立会人に背を向けた格好、あるいは屏風の奥や個室に1人で閉じこもった状態で、対象物を手に持って透視をおこなうために、こっそり透視の対象物を確認しているのではないかと疑問を持たれていました。
さらに公開実験でもヤラセや仕込みが疑われたことから千鶴子はマスコミに糾弾されるようになり、24歳の若さで自ら命を絶っています。
千鶴子が実験の失敗からペテン師だと糾弾され、命を経つまでの一連の騒動は「千里眼事件」と呼ばれており、この事件も『リング』で志津子が自殺するまでのモチーフとなりました。
なお、遺書を残していないため千鶴子が自殺をした理由は明らかになっていません。そのため自殺の動機については諸説あり、自身の超能力が疑われたために自殺したというもののほかに、自分を使って金儲けをしようとした父親と義兄に辟易していたという説も有力視されています。
映画版の『リング』では、千鶴子の自殺の一因と考えられている「超能力で金儲けを企んだ身内の存在」という要素も取り入れられており、貞子の身元引受人の親族が志津子の超能力でひと稼ぎしようとした描写があります。
山村貞子は美人?素顔がわかる作品はある?
小説の『リング』シリーズではたびたび貞子の容姿についての記述されており、「見たことがないほどの美少女」「完璧に整った顔立ち」といったように、たいへんな美人であることが強調されています。
映画版では母親を自殺に追いやられた恨みや井戸のなかで死ななければいけなかった無念から、呪いを拡散させたように描かれていた貞子ですが、実は小説版ではリングウイルスを産んだ理由は「永遠に美しいままの自分でいたかった。そのために自分の遺伝子情報を残したかった」と自ら語っています。
小説版では子孫を残せない両性具有者であったという設定が、貞子の暴走を引き起こしたのです。
映像化された作品で生前の貞子の素顔がはっきりと見られるものとしては、『リング0 バースデイ』があげられます。本作で劇団員時代の貞子を演じたのは、仲間由紀恵さんです。
『リング0 バースデイ』は大人しく人付き合いが苦手な貞子が、その生い立ちのせいで周囲に忌み嫌われて悲惨な目に遭い続けるという悲しいストーリーではありますが、生前の美しい貞子が全編を通して観られる貴重な作品でもあります。
山村貞子はかわいい?萌キャラ?
映画『リング』公開時は、これまでのホラー映画の歴史を塗り替える恐怖の象徴として恐れられた貞子ですが、現在では萌キャラ、ゆるきゃらとして「かわいい!」と称されることも増えています。
2022年3月から、なんと貞子はYou Tuberデビューもしており『貞子の井戸暮らし』というチャンネルも開設。エクササイズやモーニングルーティンなど普段の生活について紹介しており、「女子力高すぎん?」「貞子ちゃんが可愛すぎて、どういう気持でリングを観たらいいのかわからない!」といったコメントが寄せられています。
また自身がキラーとして実装されたゲーム『Dead by Daylight』をプレイする動画も上げています。
山村貞子の誕生日はいつ?
貞子のプロフィールとして公開されているのは、家族構成と生前の職業、出身地、そして1947年に生まれたということだけです。誕生日までは設定されていないようで、小説にも記載はありません。
貞子はYouTubeに100の質問に答える動画も上げているのですが、誕生日については触れてていないため、やはり不明のままです。
なお、『リング』シリーズの外伝にあたる短編小説集『バースデイ』について、タイトルから山村貞子の誕生した日について書かれた小説かと思う方もいるようですが、3編とも彼女の誕生日を描いたものではありません。
『バースデイ』のなかには、『らせん』で貞子が再生した日のことを題材にした『空に浮かぶ棺』、山村貞子が人間ではなく「貞子」として生きることを決めるまでを描いた『レモンハート』、貞子が滅びた世界で新しい命が誕生する『ハッピー・バースデイ』の3編が収められています。
『リング』の世界観を理解するための副読本といった内容でもあるので、気になる方は『ループ』まで読み切ったあとで手に取ることをお勧めします。
山村貞子が登場する映画・ドラマ一覧
2022年までに貞子が登場する映画は国内で8本作られており、2022年10月にも新作『貞子DX』が公開される予定です。
また『リング』はアメリカと韓国でも映画化されており、こちらにも貞子をもとにしたサマラとウンソが登場します。
ここでは、これまでに公開された貞子が登場する映像作品と、貞子を演じた女優について公開日順に紹介していきます。
ドラマ『リング』
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『リング』は映画化される前の1995年にTVドラマとして映像化されています。ドラマのタイトルは『リング〜事故か!変死か!4つの命を奪う少女の怨念〜』。
この作品では三浦綺音さんが貞子役を演じており、貞子の設定や物語の構成も小説に忠実なものとなっています。
映画『リング』『リング2』
1998年1月11日に公開された映画第一作目では、貞子役を伊野尾理枝さんが演じました。また、少女時代は白井ちひろさんが、目のアップのシーンでは助監督の宮崎紀彦氏がそれぞれ貞子役を演じています。
伊野尾理枝さんは舞踏家の経歴を持ち、動きだけで不気味さを表現できることから貞子役に抜擢されたのだそうです。
1999年に公開された『らせん』とは異なるパラレルワールドを描いた続編『リング2』でも、伊野尾理枝さんが貞子役で出演しています。
映画『らせん』
『リング』と同時公開された『らせん』では、中谷美紀さんが貞子の宿主となる高野舞を演じており、再生した貞子も宿主と同じ姿になるために、再生後の貞子役も中谷さんが演じています。
また再生前、生前の貞子は佐伯日菜子さんが演じており、この貞子は歴代最恐とも評されています。当時の佐伯日菜子さんは『EKO EKO AZARAK エコエコアザラク』や『うずまき』など数々のホラー映画に出演しており、ホラークイーンの異名を誇っていました。
本人はホラーの仕事しかオファーが来ないことに悩んだ時期もあったそうですが、海外で買い物をしていた際に現地の人に「貞子だ!」と言われたことを機に、「才能があるのなら、とことん怖い役を演じよう」と決意したのだといいます。
ドラマ『リング〜最終章〜』『らせん』
映画が大ヒットしたのを受け、1999年に放送されたテレビドラマ『リング〜最終章〜』と『らせん』では、木村多江さんが貞子を演じました。
木村多江さんは貞子役でブレイクをしており、本人も「貞子を演じてから、お芝居が楽しくなった」と語っています。
ドラマ『らせん』
ドラマ『らせん』では再生前の貞子を木村多江さんが演じており、貞子の宿主となる高野舞と再生後の貞子は矢田亜希子さんが演じています。
なお、本作では貞子は殺されては再生するという流れを繰り返しており、矢田亜希子さんのほかに及川舞さん(宿主の高村典子との一人二役)、須藤理彩さん(宿主の西島美咲との一人二役)が貞子を演じました。
映画『リング0 バースデイ』
前述のとおり、2000年に公開された『リング0 バースデイ』では仲間由紀恵さんが貞子役を演じています。仲間由紀恵さんはこの役と同年に放送されたドラマ『TRICK』で注目を集まるようになり、人気女優になりました。
また、少女のまま成長が止まっているもう1人の貞子は古谷千波さんが演じました。
映画『貞子3D』
2012年に公開された『貞子3D』は、鈴木光司氏の小説『エス』が原作の映画です。ただ原作の小説とはかなり異なる展開となっており、小説では名前程度しか出てこなかった貞子が、再び厄災の中心として登場しています。
本作で貞子を演じたのは橋本愛さんです。ただ原作にほぼ登場しない貞子を話に絡ませたためか、登場するのは物語の終盤(開始から1時間20分が過ぎた頃)で、「橋本愛の貞子をもっと観たかった!」という声も多く見られました。
映画『貞子vs伽椰子』
2016年に公開された『貞子VS伽椰子』は、『リング』と『呪怨』という2大ジャパニーズ・ホラーのクロスオーバー作品です。
貞子を演じた七海エリーさんは、ティーン向けファッション誌『ピチレモン』の元モデルで、キャスティングが発表された時には「こんな綺麗な方が貞子を演じるの!?」と話題になりました。
ここまで見てきてもわかるように、貞子を演じた女優さんは綺麗な方ばかりなのですが、七海エリーさんは初代の貞子以来、久しぶりに「顔をまったく見せない貞子」を演じたのです。そのため「顔を見せないのに、こんな美人を起用するのか」「もったいない!顔を見せて欲しい!」という声が多く上がりました。
映画『貞子』
2019年に公開された映画『貞子』は、鈴木光司氏の小説『タイド』を原作としており、山村志津子が生きていた世界線での話となっています。
初代映画『リング』の中田秀夫監督が再びメガホンをとったことでも話題になりました。前作で志津子を演じた雅子さんが2015年に亡くなったことから、本作では志津子と貞子の役を南彩加さんが演じています。
公開前から中田秀夫監督は「前作と同じように、貞子の目だけをアップにした恐怖描写はしない」と語っており、どのような貞子が描かれるのかも話題になりました。
映画『貞子DX』
『貞子DX』は2022年10月28日に公開予定の『リング』シリーズ最新作です。貞子の呪いのメカニズムを探る謎解き・タイムサスペンスホラー作品であることが公表されており、主演の⼩芝⾵花さん演じる天才女子大生が貞子に挑みます。
貞子を演じた役者さんは公開されていないのですが、予告編にも貞子がしっかりと登場しており、原作者の鈴木光司氏が世界観の監修をしていることから「ループに近い世界観の作品になるのではないか」「貞子は複数出てくるのでは?」と予想されています。
山村貞子についてのまとめ
この記事では『リング』シリーズに登場した世界的な人気を誇るホラーヒロイン、山村貞子について紹介しました。
大ヒット作となった一作目の映画『リング』の印象が強い貞子ですが、原作では自分の遺伝子を残そうとリングウイルスを産み出したものの、予想以上に被害が出てしまって驚いたことなども明かしており、萌えキャラ化されるのも納得してしまうような一面も持っています。
まだまだ貞子と『リング』の世界は広がりを見せていきそうなので、期待したいですね。