山形県の朝日山地にある神秘的な湖「大鳥池」に生息するとされる幻の巨大魚「タキタロウ」が話題です。
この記事ではタキタロウの伝説や写真、これまでの目撃例や調査の経緯、推測される正体や伝説の真相、実在説と絶滅していないとする説、現在などについてまとめました。
この記事の目次
タキタロウとは山形県鶴岡市大鳥池に生息するとされる伝説の巨大魚
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山形県鶴岡市の新潟県との県境にまたがる朝日山地にある以東岳(いとうだけ)の北麓に位置する大鳥池(おおとりいけ)には、「タキタロウ」と呼ばれる巨大魚の伝説があります。
伝説によればタキタロウは、古い文献などによると、体長は7尺から1丈(212cm〜303cm)ほどの大きさで、尾びれの部分が異常に大きいと言われています。形状の特徴としては、ウサギに似た三つ口のような形状をした口を持ち、下あごの先が長く伸びて上あごの先に食い込んだようになっているとも、下あごの部分がめくれ上がったようになっているとも伝わっています。
また、タキタロウの体の色は茶褐色で、体表には丸い斑点模様があり、まるで油を塗ったようなぬめりがあるといった特徴も伝承されています。タキタロウの身は赤身で脂がのり、味が濃くトロッとした食感で非常に美味であるとも言われています。
タキタロウの性格については貪欲であるが、警戒心が強いとされ、生態については、約4℃の水温を好み、普段は湖底で生息しており、寒い時期に産卵するといった内容が伝えられています。
他にも、タキタロウを怒らせると嵐に見舞われるとか、ヘビや鹿、カモシカすらも飲み込んでしまうなどの神格化されたような伝説も数多く伝えられています。
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このタキタロウは、元々は古くから地域に伝わる伝承でしたが、1975年に釣り漫画の金字塔「釣りキチ三平」(単行本の第8巻と第9巻)に「O池の滝太郎」としてタキタロウが登場した事によって全国的に広く知られるようになり、1980年代のUMAブームも合わさって未知の大魚として大きな話題となりました。
また、タキタロウが生息すると伝わる大鳥池は、周囲が3.2km、面積は40キロ平方メートル(40ヘクタール)にもおよぶかなり大きな湖で、最大水深は68メートルとも71メートルとも言われています。水面の標高は966メートルとかなりの高所に位置し、山間の秘境とも呼べるような場所にひっそりと佇む湖であり、未知の怪魚が生息していてもおかしくはないと思わせるような神秘的な雰囲気が漂っています。
そして、後述するように、何度か行われた調査や多数に上る目撃証言などから、この大鳥池に何らかの巨大魚が生息している事は確実だとみられています。
こうした理由から、今でもタキタロウの存在を信じる人々は多くおり、実際に釣り上げる事を夢見ている釣り人も少なくありません。
タキタロウの写真や画像
伝説の巨大魚であり、UMAの一種とも目されているタキタロウなので、これがタキタロウであるというような写真や画像はほとんど存在しません。
ただ、これまでに大鳥池では何度か巨大な魚が釣り上げられていて、その剥製のレプリカや模型、魚拓が残されていて、その写真や画像は確認できます。
大鳥池に向かう道の入り口にある資料館「タキタロウ館」にはタキタロウではとされる魚の魚拓や模型、写真などが展示されています。
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上の写真は、「タキタロウ館」に展示されている、1965年10月20日に釣り上げられたという2尺3寸(約70cm)の巨大魚の魚拓です。これもタキタロウの若い個体ではないかという説もあるようです。
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上は、タキタロウではないかとされている写真です。伝わっているように、三つ口で下あごの部分が上あごに食い込んだようになっています。また、表面に斑点模様も確認できます。
タキタロウの目撃例や捕獲話、追跡調査など
続けて、タキタロウの目撃例や捕獲話、本格的な追跡調査などを紹介していきます。
遅くとも江戸末期にはタキタロウの伝説があった
まず、タキタロウという言葉が確認できる最も古い文献は、江戸末期から明治にかけての博物学者・松森胤保が著した「両羽博物図譜」です。
この文献の「岩名」(イワナ)の項に、「大物ヲ瀧太郎ト云 五尺計ノモノ大鳥川ヨリ流レ来ルコト有」(大物をタキタロウという、151cmほどの魚が大鳥川の方から流れ来る事がある)と書かれています。この文献では、この大魚の存在を否定しているのですが、少なくとも大鳥池にかなり古くからタキタロウと呼ばれる巨大魚の伝説があった事がわかります。
大正時代に2匹の巨大魚を水門工事の作業員が捕獲したと伝わる
1917年(大正6年)、大鳥池の水門工事でダイナマイトを使った時に、爆破の後に2匹の巨大な魚が湖面に浮かび上がってきて、それを2人の工事作業員が持ち帰ったとする話が地元周辺に伝わっています。
2人の作業員はこの巨大魚を4日間かけて食べたと言われています。
1メートル近い魚が10数年おきに捕獲されている
大鳥池では、それからも10数年おきに、1メートル近い巨大な魚が捕獲されたという話が出ています。こうした巨大魚の魚拓や写真なども残されています。
1982年7月に2メートルの巨大魚を登山中の4人が目撃
1982年7月、地元旅館「朝日屋」主催の登山に参加していた4人が、小魚の群れを追いかける2メートルもある巨大魚の姿を登山道から目撃しています。
これは地元新聞などで大きく報じられ、これをきっかけにして、専門家らによる大鳥池の調査団が組織される事になりました。
1982年には、地元旅館「朝日屋」主人だった佐藤征勝さん(71)ら4人が、小魚の大群を追う体長2メートル前後の巨大魚の群れを登山道から目撃。地元新聞などで報じられた。
1983年から3年にわたる調査が実施され実際に大型魚が捕獲される
登山客の目撃の翌年の1983年、地理や地質などを専門とする学術専門家6人や、朝日村関係者、NHKの取材班(水中撮影班含む)などにより、大規模な大鳥池調査団が組織され、3年にもわたる追跡調査が実施されました。
調査が終わりに差し掛かった1985年には、体長約70cm〜80cmの大型のイワナが刺し網で捕獲され、大鳥池に大型の魚が生息している事がはっきりし、これは全国的なニュースになっています。
捕獲された魚を専門家が鑑定したところ、「アメマス系のニッコウイワナ」と「オショロコマに近いアメマス」で意見が割れ、結局正確な正体の判明には至りませんでした。
83年には地理や地質などの学術専門家ら6人と村などによる大鳥池調査団が組織され、3年間に及ぶ追跡調査が行われた。調査終盤に体長70センチの大型のイワナが刺し網にかかり大型魚が生息していることは分かったが、タキタロウは発見できなかった。
2001年にタキタロウとされる体長72cmの魚が捕獲される
その後も、大鳥池では何度かタキタロウではないかとされる大型魚が捕獲されています。2001年にも72cmの大型魚が釣り上げられ、タキタロウではないかと報じられましたが、その後は長い間タキタロウが捕獲されたといったニュースは出ませんでした。
2001年に72センチのタキタロウとされる魚が釣り上げられて以来、目撃情報もないという。
2014年に30年ぶりの本格調査が実施され魚群探知機により
2014年、前回の本格調査から約30年ぶりに、地元の「大鳥地域づくり協議会」が大鳥池の本格調査に乗り出しました。
この時の調査では、最新の魚群探知機を投入した調査が実施され、水深25メートルから54メートルの水域で何度も反応があり、1日に少なくとも6回以上、1匹から数匹の魚影を探知する事に成功しています。
伝説の巨大魚「タキタロウ」がいるかもしれない――。鶴岡市の朝日連峰にある山上湖・大鳥池(標高約960メートル)で今月、地元有志らがタキタロウの調査を行ったところ、水深25メートルから54メートルの水域で魚群探知機の反応が何度もあった。メンバーは「未知の魚が生息している」と興奮気味だ。
タキタロウの正体
タキタロウの正体は、1985年の調査で捕獲された大型魚の鑑定結果、「アメマス系のニッコウイワナ」か「オショロコマに近いアメマス」から、限定された環境下で独自進化したイワナの亜種ではないかという説が有力とされていました。(アメマスとニッコウイワナは生物学的には同種とされているため)
しかし、2014年の魚群探知機を使った調査では、水深25メートルから54メートルの深い水域で魚影が探知されました。
専門家は、この水深でイワナやヤマメが生息する事はあり得ないので、全く別の魚種の可能性が高いとの見解を示しており、タキタロウの正体は全くの新種なのではないかという期待が高まりました。
「魚群探知機が反応した水深でイワナ、ヤマメが生息することはあり得ないので、別の魚種しか考えられない」とする根拠などから、参加メンバーはタキタロウの存在を確信。
他にもタキタロウの正体としては、イトウ(北海道や樺太などに生息する大型の淡水魚)、ソウギョ(中国原産の外来種)、大型のイワナやヒメマス、新種の古代魚、概知の魚が突然変異で巨大化したものといった説があります。
タキタロウ伝説の真相① 何らかの巨大魚は実在する可能性が高い
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タキタロウの伝説の真相としては、これまでの目撃証言や本格調査の結果などから、大鳥池に何らかの巨大魚が生息している可能性は極めて高いとされています。
そのため、タキタロウは伝説とされUMA的存在とされてはいるものの、荒唐無稽なオカルト話ではなく、極めて実在する可能性の高い未知の生物だと言えます。
今後、さらに調査が進められれば、タキタロウ伝説の真相がかなりはっきりしてくる可能性は高いかもしれません。
タキタロウ伝説の真相② 神格化された湖に近づかせないための作り話という説も
一方、あくまでもタキタロウの伝説は作り話で実際にはいないが真相とする説も存在します。
というのも、タキタロウがいるとされる大鳥池は、古い時代から女人禁制とされるなど、神格化された池でした。
これを根拠として、タキタロウの伝説は、不用意に大鳥池に人々が近づかないようにするため、怒らせると嵐を呼び、鹿やカモシカをも飲み込む恐ろしい巨大魚がいるという伝説が作り出されたのが真相ではないかという説が出ています。
タキタロウの現在① 既に絶滅していていないという説も
タキタロウの現在については、既に絶滅していていないのではないかという説も出ています。
19世紀中ごろまでは、タキタロウは確かに大鳥池に存在していたものの、次第に数を減らし現在は絶滅しているため、これまでに何度も調査を実施しているにもかかわらず発見できないのではないかという説です。
そうでなければ、これまでに1度も確実にタキタロウだと言える魚の写真や映像が記録されおらず、捕獲にも至っていない事に説明がつかないとも唱えられています。
タキタロウの現在② 水棲系UMAとして今でも人気が高い
タキタロウは現在も水棲系のUMAとして国内ではかなり人気の高い存在です。
2022年に入ってからも、釣り系やオカルト系のYouTubeなどで度々話題にされ、タキタロウをテーマにした動画がアップされています。
まとめ
今回は、山形県の神秘的な湖、大鳥池に生息するとされる幻の巨大魚「タキタロウ」についてまとめてみました。
タキタロウは遅くとも江戸時代末期から存在が伝承されている幻の魚で、1920年代から2000年代にかけて、何度も目撃情報やそれらしい魚の捕獲例が上がっています。
これがタキタロウだと確信できるようなはっきりとした写真は撮影されていませんが、近年の本格調査などでは、何らかの巨大魚が存在する可能性は極めて高いという結果が出ています。
タキタロウの正体については、独自進化したイワナの亜種、概知の魚の突然変異、全くの新種といった様々な説が挙げられています。
神格化された湖に人が近づかないように作られた作り話が真相という説や、現在は既に絶滅していていないとする説もありますが、近年の本格調査で存在が確信化している事から、現在は再び注目度が上がり、タキタロウを捕獲して正体を明らかにするというロマンを追う人も増えてきているようです。