剣道の名門高校である東海大福岡高校剣道部でいじめがあり、いじめを苦に高校2年生の男子部員が自殺した事件がありました。
東海大福岡高校剣道部いじめ事件の被害者の侑大さん(苗字非公開)の生い立ちや親・家族、中学での剣道生活、東海大福岡高校への進学や剣道部でのいじめ事件、顧問も加害者の1人なのかどうかやいじめ事件のその後と現在をまとめました。
この記事の目次
侑大は東海大福岡高校剣道部いじめ事件の被害者
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侑大さん(苗字非公開)は東海大福岡高校の剣道部いじめ事件の被害者です。
東海大福岡高校に入学して剣道部に入部した直後の2019年4月~6月にかけて、性被害を含む壮絶ないじめを受けました。
その後、いじめの主犯だった先輩は卒業し、心機一転また剣道に打ち込むつもりで顧問に相談しましたが、顧問から不適切な指導を受けたことが引き金になり、侑大さんは2021年3月に遺書を残して自殺しています。
学校が設置した第三者委員会の調査では、侑大さんへのいじめの事実は認定されましたが、いじめが侑大さんの自殺の直接的な原因であるとは認定されず、原因は特定できなかったと結論付けました。
侑大の生い立ち
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侑大さんは虫や自然が大好きな子供でした。
5,6歳の頃から、生き物や自然を紹介する番組を欠かさず見ていました。よく一緒に見ようと誘われたり、その番組の内容の話を聞かせてくれたりしました。
侑大さんはカマキリやバッタ、セミなどの虫を捕まえてきて、母親に見せると、その虫を逃がすような心優しい子供だったとのことです。
侑大さんが剣道に出会うのは小学2年生の時でした。友達の兄に誘われて、少年剣道部に見学に行き、剣道をカッコいいと思って、自分から「剣道をやってみたい」と両親に伝え、地域の少年剣道部に入部しました。
入部した時から練習が大好きで熱心に練習し、週3~4日の稽古も休まずに通っていました。また、この少年剣道部で先生や先輩、保護者から礼儀などを指導してもらったとのことです。
侑大さんは剣道が大好きで心優しくて、礼儀正しい子供だったんですね。
侑大は中学で剣道漬けの毎日を送る
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中学生になった侑大さんは、中学の部活で剣道部に入部しますが、小学生の頃から続けていた少年剣道部も辞めることなく続けていました。中学の剣道部と少年剣道部の掛け持ちをしていたので、まさに剣道漬けの毎日を送っていたんです。
剣道に捧げた中学生活ではしっかり結果を残しています。
・中1秋の新人戦:県大会出場
・中2夏の中総体:県大会出場
・中2秋の新人戦:県大会出場
・中3夏の中総体:県大会出場
・玉竜旗:ベスト16
団体戦では「5人抜き」をしたこともあるそうですので、かなりの実力者だったことは間違いありません。
剣道を通じて、先生方や先輩、友達の優しさに触れながら、侑大は芯が強くて仲間や友達を大切にするとても優しい子に成長してくれました。
中学の剣道部では副キャプテンを務めていたとのことですし、剣道の仲間だけでなく、小学校時代の友達やゲーム関係で知り合った友達などたくさんの友達に囲まれていたそうですので、侑大さんは人格者であり、仲間・友達から慕われている存在だったのでしょう。
中学の頃の侑大は「優しい」
中学生の頃の侑大さんは、本当に優しくてみんなから慕われるような存在でした。Xに中学の頃の同級生が、侑大さんとの思い出をポストしていました。
亡くなれた方は、実は中学の同級生です
侑大くんは本当に剣道が上手く、真面目の上に笑顔が本当に可愛い同級生でした、しかし自殺で亡くなったって聞いた時はもう言葉が出なくて泣きました
なんでこんな優しい人が亡くなるんだろ?って同窓会でその担任だった方が侑大に向けてみんなで乾杯しよう!— 川村壱馬 (@k_nissy0805) February 23, 2024
侑大さんは剣道がうまくて、真面目で笑顔がかわいくて、優しい人だった。侑大さんの人柄は家族の証言からも、この同級生の証言からも、侑大さんの写真からも伝わってきます。
侑大は剣道部が強い東海大福岡高校に進学
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剣道漬けの中学生活を送っていた侑大さんは、高校でも剣道を続けてもっと強くなるために、自ら剣道の名門である東海大福岡高校に進学したいとご両親に申し出ました。
侑大は、「高校でも剣道を続けたい。剣道が強い学校に行きたいから、東海大付属高校に行かせてほしい」と言いました。私も父親も、侑大が望むならと、応援しました。
侑大さんは東海大福岡高校に剣道の特待生として入学します。入学後すぐに剣道部に入部し、さらに親・家族と離れて、高校の剣道部の寮に入り、集団生活を送るようになりました。
侑大は親や家族に剣道部でいじめられていることを報告
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自分で志望した東海大福岡高校に剣道の特待生として入学し、剣道部の寮に入って剣道に打ち込む日々を送っていた侑大さんでしたが、剣道部内でいじめを受ける事態になりました。
いじめの事実を両親が知るのは入学から約2ヶ月後の2019年6月です。侑大さんは寮に戻らずに、両親や家族がいる自宅に泣いて戻ってきたのです。
剣道部の上級生たちからあざができるほど殴られたり、携帯電話をとられたりしたと明かし、母親の前で涙ながらに、学校をやめたいと訴えました。
引用:【東海大福岡高いじめ】「おれ頑張るけん」と語っていた我が子に何があったのか 母は答えを求め続ける|福岡・佐賀のニュース|FBS福岡放送
大好きな剣道のために進学した高校を辞めたいと訴えるなんて、本当に辛かったはずです。しかも高校1年生の男子が、母親の前で涙を流しながらいじめられていることを伝えるなんて、精神的に追い込まれていたのでしょう。
しかも、この時、侑大さんは「死にたいけど、死ねんかった」と話したそうです。
侑大さんと母親は、その翌日に学校を訪れ、剣道部の顧問と話し合いました。母親は顧問にいじめに対する対応を求め、次の約束を取り付けます。
・いじめた側は寮から自宅に戻る
・侑大さんも自宅から通う
・侑大さんは剣道部にとどまる
・顧問はいじめた側に指導する
・侑大さんの再入寮はいつでも可能
侑大さんは剣道部の寮を出て、自宅から片道1時間半かけて東海大福岡高校に通い、朝練や夕方の練習に参加していました。
いじめのきっかけは上級生の命令を断ったこと
第三者委員会の報告書によると、いじめが始まるきっかけは侑大さんが上級生の命令に従わなかったことです。
報告書では、侑大さんが上級生の命令に従わず一発芸を断ったことなどを、いじめが始まった理由として挙げています。
引用:【東海大福岡高いじめ】「おれ頑張るけん」と語っていた我が子に何があったのか 母は答えを求め続ける(FBS福岡放送) – Yahoo!ニュース
上級生に一発芸を命じられて断っただけでいじめが始まるなんて・・・。こんなことを理由にいじめが始まったなんて、侑大さんは何一つ悪くないし、100%加害者である上級生が悪いことがわかります。
侑大は剣道部でのいじめを苦に自殺
侑大さんは東海大福岡高校の剣道部で2019年4月~6月にいじめを受け、剣道部は続けるけれど、寮を出て自宅から通うことにしました。
その後、高校2年生になってからも自宅から高校に通い、剣道部の部活動を続けていたのですが、高校2年生の3月(2021年3月)に侑大さんは自殺したのです。
侑大さんは母親に「外で課題してくる」と言って外出した後、変わり果てた姿で発見されました。
「警察から電話がかかってきて、 侑大くんらしき人が見つかっているので確認お願いしますと。最初はもう何も言葉も出なくて。」
引用:【東海大福岡高いじめ】「おれ頑張るけん」と語っていた我が子に何があったのか 母は答えを求め続ける|福岡・佐賀のニュース|FBS福岡放送
侑大さんのスマホには剣道部内でのいじめや男性顧問への不満が記された遺書が残されていました。
侑大が剣道部で受けていた10のいじめ
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遺書を残して自殺した侑大さんの母親は、遺書を手掛かりに警察に捜査を依頼し、さらに東海大福岡高校にも調査を求めました。
東海大福岡高校は第三者委員会を設置し、侑大さんへの剣道部内でのいじめを調査したところ、2019年4月~6月にかけて次の10のいじめがあったことが認定されました。
〈第三者委員会が認定した10のいじめ〉
1. 剣道着を返してもらえない
2. スマホ取り上げ・アプリ削除
3. 指紋認証を先輩の指紋に
4. 勝手に女子にLINEを送られる
5. スポンジ製バットでたたかれる
6. 肩などを殴打
7. 顔に粘着テープをぐるぐる巻きにされる
8. アダルトグッズで暴行
9. 畳に貼り付けなど
10. 下半身の動画を撮影・共有される
侑大さんは剣道部の部室で部員10人以上が見ている中、身体をガムテープで畳に貼り付けられ、下着を降ろされて陰部を手淫された。それを動画に撮られてSNSで拡散されたこともありました。
部室内で部員10人以上の前で、畳の上に身体を粘着テープなどで貼り付けられ、わいせつな行為をされた。さらに、それを撮影した動画をSNSで他の生徒に拡散されたという。
さらに、アダルトグッズを肛門に入れられそうになったこともありました。
これは、「いじめ」の範疇を越えて、傷害事件・強制わいせつ事件と言えるでしょう。あまりにもひどいいじめの内容です。
これらの性被害を受けていたことは、侑大さんは家族・母親には言うことができず、母親はこれらの性被害を侑大さんの自殺後に初めて知ったとのことです。
侑大が先輩たちからとてもひどい性被害を受けていたことがその時初めて分かりました。大切な侑大がこんなひどい目に遭っていたことを知り愕然としました
引用:部活動で上級生からいじめ 「侑大が亡くなったあとひどい性被害を受けていたことを知り愕然としました」自殺した高校生の母親が再調査求め会見 – RKBオンライン
あまりにもひどいいじめですし、こんないじめに遭っていたなんて母親・家族には言えない侑大さんの気持ちもよくわかります・・・。
侑大いじめ事件の加害者の1人は家裁送致
侑大さんが自殺したいじめ事件の加害者は上級生5人であると、第三者委員会は結論付けました。この上級生5人は、侑大さんが高1の時に高3だった上級生です。
この上級生5人の中で、寮長だった1人は強制わいせつで家裁に送致され、2年間の保護観察処分になっています。
認定したいじめに関わった上級生5人のうち、寮長だった男子生徒(当時3年)は強制わいせつの非行内容で家裁送致され、2年間の保護観察処分となった。
侑大さんの命が失われているのに、2年間の保護観察処分だけというのはあまりにも軽い処分ではないでしょうか。しかもほかの4人は罪に問われていないのですから。
侑大いじめ事件の加害者は顧問も含まれる?
東海大福岡高校剣道部いじめ事件の加害者は、侑大さんが高1の時の上級生5人であると第三者委員会に認定されましたが、剣道部の顧問も加害者の1人の可能性があります。
剣道部の顧問は侑大さんのいじめ事件に対し、どのような対応をしていたのでしょうか?
きちんと対応していなかった
2019年6月に侑大さんは寮ではなく家族のもとに戻りましたが、その翌日に母親と侑大さんは剣道部顧問のところに相談に行き、いじめへの対応を求めました。
侑大さんはこの時、いじめの加害者の名前と「死にたいと思ったけど死ねなかった」と顧問に伝えています。つまり、顧問は侑大さんがいじめを受けていたこと、さらに自殺を考えるまで追い詰められていることなどを認識していたことになります。
しかし、顧問は学校側にいじめの事実を伝えることはありませんでした。また、いじめに対してどのような対応をしたのかという報告を侑大さんとその家族にしていませんでした。ということは、きちんといじめに対応していなかった可能性があります。
侑大さんの再入寮を拒否した
侑大さんはいじめの主犯だった2学年上の先輩が卒業するころになると、「寮に戻りたい」と思うようになり、2年生の12月に顧問に「寮に戻りたい」と伝えました。
前年の6月にいじめが原因で寮を出る時には、「いつでも寮に戻ることができる」という約束だったのに、顧問は侑大さんの申し出を拒否したのです。
その後、いじめの加害者が卒業するタイミングで、もう一度寮に戻りたいと再入寮を希望したが、顧問から「態度を改めなければ再入寮はできない」と断られた。
引用:高2男子自殺 粘着テープで畳に…剣道部内で“10のいじめ” 暴力的・性的な内容も 母親が会見「原因究明」訴え|FNNプライムオンライン
「態度を改めなければ再入寮できない」、一体どのような態度を改めれば良かったのか。なぜ、いじめの被害者の侑大さんがそのようなことを言われなければいけなかったのか疑問ですよね。
剣道部の寮は顧問の親族が経営していたそうですので、その辺りに再入寮を拒否した理由があるのかもしれません。
無視・大量の課題などを出した
東海大福岡高校の剣道部顧問は侑大さんを無視したり、暴言を浴びせたりしたことがありました。また、自殺する直前には侑大さんに膨大な量の課題を出しています。
真面目な侑大さんに対して「生活態度が悪い部員」というレッテルを貼っていたとのことです。
顧問の不適切な指導が自殺の一因
侑大さんの母親は、顧問の不適切な指導も侑大さんが自殺した一因と述べています。
侑大が自ら死を選んでしまったのは、壮絶ないじめを受けたこと、いじめ後の剣道部内での孤独感、顧問から再入寮を拒否されたこと、顧問の厳しい対応があったこと等で剣道部内での行き詰まりや悔しさを募らせ、大好きな剣道が出来なくなっていったからとしか考えられません。
いじめに対してきちんと対応せず、いじめられても頑張って剣道に取り組む侑大さんを無視したり、暴言を浴びせ、さらに再入寮を拒否するというのは顧問もいじめ事件の加害者の1人であると言っても過言ではないでしょう。
侑大のいじめ事件のその後と現在
いじめが自殺の原因とは認定されなかった
侑大さんが自殺した後、東海大福岡高校はいじめ事件の第三者委員会を設置し、いじめ事件を調査しました。その結果、前述の10のいじめがあったことは認定されました。
しかし、いじめが自殺の直接的な原因とは認定されなかったのです。
学校が設置した第三者委員会は20日、自殺の直接的な原因は特定できなかったとした上で、侑大さんが剣道部の上級生から受けたいじめが自殺の一因になったことを認定しました。
引用:【東海大福岡高校いじめ】第三者委「監督の無視が影響」→学校「不適切な指導は確認できず」母「納得できない」|日テレNEWS NNN
いじめは自殺の一因だけど、直接的な原因とは言えないというのは、家族としては納得できないものだと思います。
剣道部の顧問はそのまま指導継続
東海大福岡高校の剣道部の顧問の不適切な指導が、侑大さんの自殺の一因と認定されました。
つまり、第三者委員会は侑大さんの自殺には、顧問の不適切な指導が関係していたと認定したことになります。しかし、学校側は不適切な指導はなかったとしています。
しかし、学校側は第三者委員会が指摘した不適切な指導は確認できなかったとしました。
■東海大学付属福岡高校・津山憲司校長
「(監督には)そういうふうな意識は全くなかったというところです。誰がいつ、どういうふうにということがなければ、懲戒処分にという形では法人の方が打てないと私は思っています。」
引用:【東海大福岡高校いじめ】第三者委「監督の無視が影響」→学校「不適切な指導は確認できず」母「納得できない」|日テレNEWS NNN
しかも、この顧問には口頭注意をしただけで、懲戒処分はなく、現在も指導を続けているとのこと。
再入寮を拒否し、無視したり暴言を吐いたりしても、「そういうふうな意識はなかった」というならば、それは教育者失格ではないでしょうか。学校もそれを容認しているなんて、侑大さんの辛さ・訴えは一体何だったのか。家族は納得できないですよね。
家庭環境も原因なのか?
侑大さんいじめ事件の第三者委員会は、家庭環境も自殺の一因であると結論付けました。
また報告書は、いじめや顧問の指導などが自殺の一因となった可能性があるものの、家庭環境などさまざまな要因によって男子生徒が自殺に至ったと判断し、直接的な原因は特定できないと結論づけた。
引用:高2男子自殺 粘着テープで畳に…剣道部内で“10のいじめ” 暴力的・性的な内容も 母親が会見「原因究明」訴え|FNNプライムオンライン
家庭に問題があったから、自殺した?これはあまりにもひどい結論ではないでしょうか?そもそも、家庭環境に問題があったら、侑大さんがいじめられた時に泣いて自宅に戻らないはずです。両親・家族を信頼していたからこそ、いじめを受けた時に家族のところに戻ったのでしょう。
それなのに、「家庭環境も自殺に至った要因」と結論付けるなんて、モヤモヤしか残らない結論ではないでしょうか。
侑大のいじめ事件のまとめ
東海大福岡高校剣道部のいじめ事件の被害者である侑大さんの生い立ちや中学の頃の剣道漬けの日々、高校進学といじめ事件の詳細や加害者や顧問の対応、その後と現在をまとめました。
この第三者委員会の結論を見ると、「第三者委員会って何のためのものだろう」と思わずにはいられません。