早バレとは、主に少年ジャンプなどの雑誌に連載されているワンピースや呪術廻戦などの漫画を正式に公開される前に流出させることで、違法な犯罪行為です。なぜ、どうやって早バレができるのかの仕組みや、早バレで逮捕された例、犯人の現在を紹介します。
この記事の目次
早バレとは
早バレは主に漫画雑誌に連載されている作品を、公開される前にリークする行為です。
近年ではインターネット上に発表前の最新作をアップすることを早バレと呼ぶことが多く、とくに少年ジャンプ連載中の『ワンピース』や『呪術廻戦』、少年マガジン連載中の『名探偵コナン』などの人気作品の早バレ画像の流出が目立ちます。
また、漫画作品だけではなく、ゲームやトレーディングカードなどの商品を発売時期よりも前に入手(フラゲ)し、まだメーカーが公開していない情報をリークする行為も早バレに含まれ、いずれも犯罪行為に該当します。
似た言葉として「ネタバレ」がありますが、こちらは発売や公開から間もない作品の内容を不特定多数に拡散してしまうことを指し、違法行為にはあたりません。
以前は注目を集めるために匿名掲示板などに文字起こしした漫画の内容や、画像の一部をアップする人が多い傾向にありましたが、現在は自分のサイトやYouTube、TikTokに公開前の人気漫画をアップして、広告収入を得るケースが取り沙汰されています。
日本国内のみならず海外でも翻訳された公開前の人気漫画の画像が流出することが起きており、作家や出版社が被る被害総額の多さも問題となっています。
早バレはなぜ・どうやってできる?仕組みや原因
以前は早バレといっても、雑誌が発売される前日から2日前程度に情報が流出するケースが多く、リークされる画像も個人が自宅のスキャナーで取り込んだものや、平置きした雑誌を携帯電話のカメラで撮影したようなものが目立ちました。
これらは少年ジャンプなどの雑誌を発売日より早く店頭に置く店が近くにある人や、印刷所で働いている人など、発表前の漫画をいち早く目にできる人によって行われていたとされます。
しかし、近年では出版社がリリースしている電子書籍さながらの高画質で、しかも正式に雑誌が発売される前の週の水曜日から木曜日に早バレが出回るようになりました。
以前にXで、水曜日なのにもかかわらずトレンドに「呪術のネタバレ」というワードがトレンドになり、なんで水曜日なのに本誌の内容をアップしているアカウントがあるのかと騒ぎになったこともあるほどです。
どうやって、なぜこのようなことが可能になったのでしょうか。ここでは早バレの仕組みについて見ていきましょう。
早バレ画像の発生源は海外
たとえば週刊少年ジャンプは毎週月曜日が発売日ですが、新聞のようにギリギリまで原稿を作成しているわけではありません。
雑誌の中身自体は発売の2週間前には完成しており、出版社から受け取ったデータをもとに印刷所が雑誌を作成するわけです。以前の早バレは、この段階で画像が流出したことで起きると指摘されていました。
しかし、現在では少年ジャンプなどの人気コミックは海外でも主に電子書籍として販売されているため、出版社は日本の印刷所だけではなく、海外にも完成した雑誌のデータを送る必要があります。
日本語で描かれた漫画をその国の言語に翻訳する手間が発生するため、海外には発売日よりもかなり早く、余裕をもってデータが送られます。
この海外に送られたデータが漏洩し、毎週火曜日から水曜日にかけてXやInstagramなどのSNSやTikTokにアップされて拡散されているのです。
そのため、最初に出回る早バレは日本以外の言語のものが多く、それをさらに日本人が日本語に翻訳して、自身が運営するサイトにアップします。
これが、発売される前の週の火曜日に最速で少年ジャンプの早バレ画像が出回る原因とされています。
木曜日に少年ジャンプを販売する店もある
一昨日、昨日と買いそびれてたサンデーをいつもの早売り店に買いに行ったらジャンプ入荷してた。
木曜日に入ってるとか珍しいこともあるもんだ。— (:3[ゆじR] (@Sanji3rd_Eudi) November 10, 2022
あそこの店は日曜日の夕方に少年ジャンプを店に並べる、という噂が子どもの間で流れて、わざわざ買いに行く子が出るというのは昔からあった話です。
月曜日にいっせいに売る約束のものを他店に先駆けて1日でも早く売るというのは問題のある行為なのですが、インターネットもなく、早バレが拡散されなかった時代には影響も少なかったため、黙認されてきたとも言えます。
しかし、現在ではなんと発売前週の木曜日には少年ジャンプを店頭に並べている店もあるとされ、これも早バレが拡散される原因となっているのです。
一般的に発売日前に雑誌を店頭に置くのは本屋やコンビニなどではなく、学校の近くなどにある個人経営の雑貨店が多いといいます。
発売日前に少年ジャンプなどをフライング販売することで、利益を得ている店もあるわけです。
さらに、これらのフライング販売された雑誌をスキャンしてネットにアップする人も存在します。
早バレは犯罪行為・どこからが違法なのか
早バレは毎週、雑誌の発売日を心待ちにしているファンにとっては楽しみを奪う迷惑行為です。
早く、それも無料で読めるのだからラッキーではないかという声もネット上では見られますが、大半の人が「出版社や作者に対価を払わずに作品を楽しみたくない」と早バレを嫌う意見をあげています。
また、早バレはれっきとした犯罪行為です。まず、発売される前であろうと後であろうと、権利を持っている個人や会社の許可を得ずに画像などをネット上にアップすることは、著作権侵害にあたります。
では、早バレではなくても発売早々にファンの人が、自分で購入した漫画雑誌の感想を述べるネタバレ行為は違法になるのでしょうか?
この点について、時事ドットコムに掲載されたネタバレ投稿についての記事で、以下のような解説がされていました。
「熱心なファンによる感想サイトと、金銭目的のネタバレサイトは一目で違いが分かる。作品の結末に触れただけで違法になるわけではないので、ファンは安心して感想を投稿してほしい」
ファンが同じ作品を応援している人と感想を共有する行為については、仮にネタバレに繋がっても法的に問題はないとのこと。
では、画像をアップしていなくても、収益目的で早バレで得た情報を文字起こしした場合はどうなるのでしょう。
時事ドットコムの同記事内では、文字情報であっても引用元が違法であった場合には著作権侵害にあたると指摘しています。
漫画そのものをアップしていなくても、正当な理由なく内容をリークする行為は違法行為になるのです。
早バレサイトに広告を載せている会社の責任は?
自分のSNSのフォロワーを増やしたい、承認欲求を満たしたいという動機で早バレを行う人もいます。
しかし現在、多いのは違法に得た早バレ画像をまとめたサイトや動画を作り、広告収入を得ているケースです。
こういったことを行う人は、そもそも広告収入が入らなければ早バレすることもないため、違法なサイトに広告を出している企業にも責任があるのではないかと指摘されています。
過去には違法コピーした漫画をアップし、広告収入を得ていた「漫画村」というサイトが摘発された際に、このサイトに広告を出していた会社が著作権侵害ほう助の罪に問われたことがありました。
裁判の結果、漫画村に広告を出していた2社に1100万円の賠償金支払い命令が下されています。
そのため早バレサイトに広告を掲載した場合、広告主の会社も同様に著作権侵害ほう助とみなされる可能性があるでしょう。
発売日前に雑誌を売る店や買ってしまった人に責任はある?
では、雑誌を正式な発売日に先駆けて店売りする行為は違法なのでしょうか?
他店を出し抜いて早く物を売って利益をあげる、出版社から頼まれた日の前に商品を店に並べるという行為は、倫理的には問題があるものの、違法行為にはあたらないとされます。
出版社も、あくまでも「頼んで本を委託販売してもらっている」という立場のため、早売りに罰則を設けることなどはできないのだそうです。
また、配送に時間がかかる地域には余裕をもって納品するため、どうしても早売りをしてしまう店がでてしまうのだといいます。
フライング販売している店に違法性がないのであれば、正当な対価を支払って発売日より先に雑誌を購入する客の行為も、それ自体は法的に問題はありません。
ただ、自分や友人や知人同士で楽しむ限りは問題がなくても、早売りで得た情報をネット上にアップしてしまうと著作権侵害に問われるおそれがあるため、注意が必要です。
早バレサイトへのリーチサイトを開設した場合は?
自分が早バレをしていなくても、早バレをしているサイトに誘導するようなアンテナサイトやリーチサイトを運営していた場合は罪に問われるのでしょうか?
実はアンテナサイトやリーチサイトを運営しているだけでも、罪に問われるおそれがあります。
2017年7月には「はるか夢の址(あと)」という、海賊版サイトや早バレサイトのリンクを集めたリーチサイトの運営者が著作権法違反(公衆送信権の侵害)の疑いを受け、サイト閉鎖となったケースもありました。
さらにこのケースでは運営者9名が逮捕されて著作権侵害で刑事告訴され、2019年にうち3名に懲役3年6ヶ月、3年、2年4ヶ月の有罪判決が言い渡されています。
また、民事訴訟でも運営者らに総額約1億6000万円の支払いを命じる判決が出ました。
早バレと知りながらデータをダウンロードする行為は?
早バレを含み、違法にアップロードされたものだと知りながら、それをダウンロードする行為は違法行為にあたります。
以前は個人で楽しむだけならば、海賊版や早バレでアップされた漫画をダウンロードしても罪には問われなかったのですが、2020年に改正著作権法が施行されてから違法行為になったのです。
正規ではお金を支払わないと閲覧できない著作物を、違法と知りながらダウンロードした場合は、2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金を科されるおそれがあります。
自分のスマホやPCで見るだけだから大丈夫、ということはないため注意が必要です。
早バレで逮捕されたケース① 少年ジャンプ・呪術廻戦の早バレ
2024年2月4日、『呪術廻戦』など少年ジャンプ連載の漫画の早バレを違法アップロードしたとして、外国籍の男2人が逮捕されました。
逮捕されたのはムサ・サミル容疑者(36歳)と、会社員の男(34歳)。
サミル容疑者は東京都新宿区で「Japan Deal World」という会社を経営しており、Xのアカウント(@japandealworld)を見る限り、少年ジャンプ連載中の漫画を中心にアニメグッズを海外向けに販売していた模様です。
2人は早売りの店で少年ジャンプを購入し、2023年1月に早バレをネットに流したと報じられており、セリフなどを翻訳したものを海外に流した可能性も浮上。
彼らが逮捕されて間もなく、毎週水曜日に『呪術廻戦』の早バレをアップしていたアラブ人が、自身のXアカウントに「もう早バレはアップできない」とポストしたことから、サミル容疑者らが海外の有名リーカーに情報を流したのではないかとも囁かれています。
出典:http://www.anige-sokuhouvip.com/
この逮捕を受けて、ネット上では「海外からのリークだと思っていたら、日本から流出した早バレだったのか」と驚きの声があがっていました。
また、サミル容疑者らが逮捕された際に『呪術廻戦』の早バレ画像がワイドショーなどで紹介されたのですが、これが単行本にまだ収録されていなかったシーンであったためにさらにネットをざわつかせることに。
しかもTVで大々的に流された早バレ画像のなかに、作中きっての人気キャラクター・五条悟の死亡シーンまであったため、「テレビ局も集英社も酷い。なぜ放送前にチェックしないのか」とファンの間で炎上沙汰になりました。
なお、サミル容疑者らから早バレのデータを受け取って拡散していたとみられるリーカーたちは、まだ逮捕されていません。
少年マガジンの早バレをアップしていたことも発覚
逮捕後にサミル容疑者らは、少年ジャンプだけではなく週刊少年マガジンの早バレ画像をネット上にアップしていたことが明らかになり、2024年2月25日に再逮捕されています。
流出させたのは人気漫画『ブルーロック』の誌面を撮影したものとのことで、集英社に続き講談社も、早バレのルート解明に尽力すると発表しています。
早バレで逮捕されたケース② ワンピースの早バレを海外サイトにアップ
出典:https://www.christiantoday.co.jp/
2015年11月13日には、同じく少年ジャンプ連載中の人気漫画『ワンピース』の早バレをネット上に公開したとして、会社員の日高武久(当時69歳)と中国人3名が逮捕されています。
日高武久は配送会社の社員で、仕事で印刷会社から受け取った少年ジャンプを別の配送会社に受け渡す途中で1冊抜き取り、共犯者の中国人に渡したとされます。
中国人3名は日高武久から受け取った雑誌から『ワンピース』をスキャンしてセリフを英語に翻訳し、海外向け海賊版サイト「mangapanda(マンガパンダ)」に公開したとのことです。
早バレで逮捕されたケース③ ワンピースの早バレサイト運営が逮捕
出典:https://onepiece.ria10.com/
2017年9月には、ワンピースの早バレサイト「最新ジャンプネタバレ ワンピースネタバレ速報」と「ワンワンピースまとめ速報」の運営者が逮捕されています。
逮捕されたのは秋田市のウェブデザイナー・堀田井良史(当時31歳)と長屋静華(当時23歳)、沖縄県の自営業・上原暢(当時30歳)らの男女3人で、当時、上記の2つのサイトは『ワンピース』の2大早バレサイトとして人気を博していました。
堀田井良史らは早売りで少年ジャンプやヤングジャンプを購入し、『ワンピース』や『東京喰種:re』最新話の内容を書き出した文章と取り込んだ画像を自身が運営するサイトにアップしていたとされます。
3人が早バレサイトで得た広告収入は莫大なもので、警察の発表によると堀田井良史らが2014年以降少なくとも約3億500万円、上原暢らが2012年以降約7400万円の収益を得た可能性があるとのこと。
おそろしいことに両サイトの閲覧者数は、集英社が公式に運営するサイトよりも多かったといいます。
このケースは国内の早バレサイトで初の逮捕者となり、出版元の集英社は類似のサイトの運営者にもサイト閉鎖や記事の取り下げを勧告したと報じられており、実際に記事の全削除に応じたサイトもありました。
早バレで逮捕された犯人の現在は?
漫画の画像をネット上にアップすることは著作権法における、「著作権・出版権・著作隣接権の侵害」に該当します。
そのため刑事告訴された場合には、著作権法第119条第1項に基づき、10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、またはその両方が科されます。
早バレは違法アップロードのなかでも、とくに作品の売り上げに悪影響を及ぼす悪質な行為にあたるため、罪が重くなる可能性も高いと言えるでしょう。
過去のケースでは上で紹介した③の事例で、堀田井良史に懲役1年6ヶ月(執行猶予3年)と、罰金50万円が言い渡されました。
これから裁判が始まるサミル容疑者は海外に早バレのデータを流していた疑いがあることから、さらに重い罪に問われる可能性が高いでしょう。
ただ、それでも出版社や作者が被った被害や犯人が得た利益に対して、刑事罰の罰則は軽すぎるという指摘もあります。
また、組織的に早バレを行っている場合には1人を逮捕してもトカゲのしっぽ切りになるだけで、根本的な解決にならない、海外で流出してしまった場合は対応が難しいという問題もあります。
民事訴訟で、早バレの犯人が得た利益をはるかに上回る金額を損害賠償として出版社や作者に支払うようにすればよいのではないかといった声もあります。
しかし、裁判で多額の賠償金を請求されても真面目に支払う人ばかりではないため、罰則を強めても問題解決には至らないかもしれません。
結局は早バレサイトや動画を閲覧する人が減り、広告を出す企業がなくなり、早バレをしても何のメリットもなくならない限りは、早バレの犯人を捕まえてもいたちごっこになるのではないかとも指摘されています。
海外での早バレ根絶は難しいとの声も
早バレを根絶するには見る人がいなくなることが一番の方法ではあるのですが、海外では早バレや海賊版の根絶は難しいのではないかという声もあります。
これは単にお金を払いたくない、早く続きを読みたいという理由だけではなく、海外で流通している『ワンピース』や『呪術廻戦』などの人気漫画の内容が、日本の原本と一部異なるためなのだそうです。
たとえば喫煙シーンに対して規制が厳しい国では、愛煙家のキャラクターが煙草ではなく棒付きの飴をくわえていたり、銃を使うシーンが大幅に改変されていたりするといいます。
また、公式に出ている海外版の翻訳が受け入れられず、たまたま目にした海賊版の翻訳が自分の好みにあっていたため、悪いことだと理解しつつも、そちらを追うようになってしまったという人もいるとのこと。
どうしても日本で出版されている原本が読みたくて、日本語の勉強をしたという外国人の漫画ファンも少なくないといいますが、やはり全員がそこまでできるわけではありません。
こういった理由から、海外で早バレや海賊版がなくなるのは難しいのではないか?とも言われているようです。
早バレについてのまとめ
今回は逮捕者も出ている違法行為、早バレについて、仕組みや逮捕に至ったケースを中心に紹介しました。
最近では早バレ画像を踏みたくないため、毎週水曜日前後はSNSを見ない、好きな作品のタイトルをミュートにして情報を断つようにしているという漫画ファンも少なくないといいます。
作者や出版社の利益はもちろんですが、純粋に作品を応援している読者のためにも早バレや海賊版といった違法行為がなくなることを願います。