林一貴は2021年にさいたま市大宮区のネットカフェで、女性従業員を人質に立てこもり事件を起こした犯人です。この記事では林一貴の生い立ちや家族、前科や再犯、在日との噂、結婚歴の有無、事件を起こした動機、裁判や現在について紹介していきます。
この記事の目次
林一貴が起こした大宮区のネットカフェ立てこもり事件の概要
2021年6月17日16時頃、さいたま市大宮区桜木町1丁目にあるネットカフェ「マンボープラス大宮西口店」から、「女性従業員が男性客に呼ばれて個室(ブース)に入って行ったきり戻ってこない。客の個室に行っても応答がない」という110番通報が入りました。
通報した従業員によると、女性従業員(当時21歳)は「個室のテレビがつかない」と声を掛けられて14時20分頃に客の部屋に入ったといい、最初はインカムを通して店長らとやり取りをしていたものの、音信不通になったとのことでした。
女性従業員はテレビを確認して部屋からでようとしたところを、この個室ブースにいた男・林一貴(かずたか・当時40歳)に背後から首を掴まれて倒され、カッターナイフで脅されたうえで結束バンドで拘束されていました。身動きがとれなくなっていたため、外に出ることも、助けを呼ぶこともできなかったのです。
おまけに個室ブースのドアも、林が接着剤で金具を固定して開かないようにしていました。
駆けつけた警官によって女性従業員を解放するように説得が試みられましたが、林はとりあわずに32時間もの時間が過ぎます。
そして18日22時半すぎになってやっと、捜査員が林の立てこもっている個室に突入し、寝ていた林を逮捕して人質の女性従業員を保護したのです。
事件解決後は完全個室を売りにしているネットカフェでどのように従業員を守るかが議論されるきっかけにもなった一方で、犯人の林一貴がなぜこのような事件を起こしたのか、立てこもりの要求はなんだったのかも注目を集めました。
通常であれば人質をとって立てこもり事件を起こす人間には、金銭など何かしらの要求があるはずですが、林の口からはそういったものはありませんでした。
また女性従業員と林には面識がなく、彼女を人質にした理由も不明でした。そのため大宮ネットカフェ立てこもり事件は、明確な動機のわからない不気味な事件と言われたのです。
林一貴は再犯で前科あり?余罪もあった
林一貴には、ネットカフェ立てこもり事件のほかに2件の余罪があることが判明しています。
逮捕後に明らかになったことですが、林は大宮ネットカフェ立てこもり事件を起こす一週間前にもSNSで知り合った20代の女性を東京都新宿区のホテルに6時間監禁し、首を絞める、殴りつけるなどの暴行をしたうえ、現金約20万円を盗むというを起こしていました。
また、4日前の6月13日にも横浜市内のホテルで風俗店従業員の22歳の女性が客の男に首を絞められ、手脚を拘束されたうえで所持金およそ32万円を盗まれるという事件が起きており、この事件の現場に残されていた指紋が林一貴の指紋と一致したと報じられています。
新宿のホテルで暴行された女性は警察に被害届を出そうと警察に向かったそうですが、「単なる痴情のもつれ」「合意のうえでホテルに行ったのだから自己責任」と言われて被害届を受理してもらえなかったのだといいます。
「大宮の事件報道を見て、あの日に私を監禁、暴行した男だとわかったんです。びっくりして、あらためて2度も新宿警察署に被害届を出そうとしましたが、受理してもらえませんでした。現場に残されていた林容疑者のトートバッグは、あの日に来た警察官が押収して新宿署が保管しているんです。調べれば、すぐに同一人物とわかるはずなのに」
さらに林は2018年にも強制性交未遂と強盗致傷で2度逮捕されており、前科があることが明らかになっています。
2018年3月22日、当時東京都町田市中町に住んでいた林は、近所に住む女性のアパートに侵入し、4月30日に逮捕されて強制性交等未遂と住居侵入容疑で起訴されていました。
そしてこの逮捕の前の4月2日にも、町田市内で暮らす19歳の女子大学生を自宅マンションの前で待ち伏せして、ゴム製のハンマーで女性の頭を数回殴りつけて全治一週間の怪我を負わせるという傷害事件を起こしていました。
強盗目的で女子大学生を待ち伏せしていたと見られていましたが、林自身は「金を取るつもりはなかった」と強盗については否認していたと報じられています。
4月2日の事件については5月24日に再逮捕されましたが、この2件あわせても懲役1年にも満たない量刑だったようで、2019年6月には収監先の秋田刑務所から仮出所していました。
刑法では強盗であれば5年以上の懲役刑、強盗致傷であれば無期または6年以上の懲役刑と定められています。
にもかかわらず逮捕から1年ほどで仮出所していたとなると、この時は強盗では起訴されず、傷害罪のみで起訴されたのでしょう。
おそらく3月22日の事件についても、裁判で有罪とされたのは住居侵入のみで未遂であった強制性交については不問とされたのかもしれません。
なお、この時のことを林はまったく反省していなかった様子で、新宿のホテルに女性を監禁した際にも「俺は女をハンマーで殴ったことがある」などと話し、被害者を脅していたといいます。
林一貴の生い立ち① 出生と家族・学生時代
林一貴は栃木県日光市で生まれ、幼い頃に両親が離婚して母親に引き取られたといいます。ただ、ネットカフェに立てこもっている時にはなぜか「実家にいる『両親に』連絡してくれ」と警察に訴えていたそうです。
中学は日光市の市立東原中学校に通っており、フィールドホッケー部に入り、キーパーを務めていました。学区内の中学に通っていたのでしょうから、実家も東原中学校付近だったのかもしれません。
同級生の証言によると「見た目はぽっちゃりしていて、目立つような生徒ではなかった。どちらかといえばやんちゃで、ヤンキーのような長髪だった」とのこと。
なお、中学の卒業文集には以下のような文章を寄せていたといいます。
中学の卒業文集ではレーサーからハリウッドスターになる夢を語り、〈ここまでやったら人間国宝だね、僕はすごい家に住む、そして財産は10億えええんん弱〉
中学卒業後、林は宇都宮市内の私立高校に進学します。この高校はヤンキーの多い学校だったといい、林も周囲にあわせて前髪を伸ばし、当時流行っていた髪型を真似ていたといいます。
しかし、あまりうまく周囲に馴染めなかったようで、この髪型が原因で「ゲゲゲの鬼太郎」といじられるようになったそうです。
話し方も小声でボソボソとしたものであったことから、高校の同級生からは「地味でヌメッとした不気味なやつという印象」との証言が出ています。
その後は2年時に高校を中退しており、ほかの高校に編入する、大検を受けるなどの行動はせずに定職にもついていなかったものと見られています。
林一貴の生い立ち② 借金癖
高校中退後の林は借金を重ね、その取り立てが実家にまでやってくるようになりました。
実家の付近の住民によると林の母親は息子の借金癖のひどさと取り立てに悩み、大宮での事件が起きるだいぶ前に戸籍を抜いて、親子の縁を切っていたとのことです。
「息子さんが作った借金の取り立てが実家にまで来るようになり、お母さんは随分悩んでました。知人の説得もあり、10年以上前に宇都宮まで行って籍を抜き、親子の縁を切ったそうです。3年前に会ったときには、『息子は人様に言えないところにいる』と漏らしていました。その後もガンを患い、ようやく元気になってきたところだったのに……」
この「人様に言えないところにいる」というのは、時期的にも秋田刑務所に収監されていることを指しているのだと思われます。
はっきりとした足取りはわかりませんが、高校を中退してからの林は実家に引きこもっていたわけではないようで、10年前には宇都宮で暮らしていたこと、そして2018年に事件を起こした町田市内に引っ越してくる前には富山市内にいたことが明らかになっています。
しかも『週刊文春』の記事によると、富山市内では普通のアパートではなく更生保護施設に住んでいたといいます。
更生保護施設とは身元を引き受けてくれる人がいない少年犯罪者や刑務所出所者を受け入れ、自立を目的に一定期間の生活基盤を提供する施設のことです。
このような場所に入居していたとなると、林は2018年の事件以前にも犯罪に手を出して逮捕されていた、さらなる前科があるということになります。
その後は2017年の4月に更生保護施設から町田市内のアパートに引っ越してきたといいますが、やはり定職にはついていなかったようで2018年の3月からは逮捕まで家賃の滞納が続いていたそうです。
なお、町田市内で起こした事件が報じられた際には、林の職業は「無職」と報じられていました。
林一貴が大宮ネットカフェ立てこもり事件を起こした動機
裁判で明らかになったことですが、大宮ネットカフェ立てこもり事件で林は個室ブースに籠城中に女性従業員に性的暴行をくわえていました。
どう考えても脅迫のうえ強姦したとしか考えられない状況ですが、林はあろうことか裁判でこの性的暴行について「性交はあったが合意のうえだった」と説明していました。
しかも罪を軽くするために嘘をついている様子ではなく、「事前にセックスをしていいかと聞いたら、彼女は首を縦に振っていた。だから『あ、いいんだ』と思ってやった」「断られたらやらなかった」と堂々と話していたといいます。
手脚だけではなく首も結束バンドで絞められた状態で、カッターナイフを持った男に性交を要求されれば、断ったら殺されるという恐怖から応じてしまう女性も少なくないでしょう。それでも林は「脅していない、性交は合意のうえ」と歪んだ解釈をしたのです。
この供述には弁護士からも「状況から女性は従わざるをえなかった、とは考えませんでしたか?」との疑問があがっていました。
また検察からは「被害者とは初対面ですよね。なぜ初対面の人物が性交に応じると思ったのですか?」との質問がされ、林は以下のように答えていました。
被告「まあ……前提として、自分が個室内で自分の首を絞めて死のうとしたときに逃げなかった。『大丈夫ですか』と心配してくれた。あとは警察からの最初のインターホンでのやりとりのとき、自分が少し機嫌を悪くしたとき、『落ち着いてください』と言われて……自分もそういうような気持ちになった」
つまり、恐怖心から林を刺激しないようにと女性従業員がかけた言葉が、林の「自分を思いやってくれている」「自分のことを好きなのかもしれない」という信じがたい勘違いを生んでいたのです。
では、強姦をした事実があるから林はわいせつ目的で立てこもり事件を起こしたのかというと、そうでもない様子です。
逮捕当初は女性従業員に対して「運命の人だと思った」などと語っていた林ですが、裁判では事件を起こした動機について「社会への復讐」と語っていました。
前述のとおり、林は前科持ちです。林自身の証言によると、この前科のせいで就職もできず、社会復帰もままならないことから社会に対して恨みを持つようになり、立てこもりという犯行に及んだというのです。
マイナンバーカードを作ろうとしたら、身分証を作るための身分証が必要だと言われて断られた。一般的な会社からは、身分証かスマホがないと雇うことができないと言われた。刑務所に何回か入っていると、なかなか社会生活がうまくいかない。身分証も作ってもらえなかった。長く1回入ると、普通に生活できないのかなと言いたかった……
出所後の生活について、林は裁判で上のように話していました。身分証が作れないというのは前科者うんぬんというよりも、住所が定まらなかったからでしょうか。
そもそも借金で母親に迷惑を掛けなければ絶縁もされていなかったでしょうから、たとえ刑務所に入るようなことがあっても母親が身元を引き受けてくれたはずです。実家に住所を置ければ身分証も持てたでしょう。
林が刑務所から出てもまともな生活が遅れなかったというのは、自分が招いた結果といえます。
また、おそらく数日前に新宿や横浜で起こした傷害事件や強盗事件でまた逮捕されるかもしれない、それなら目立つ事件を起こして世間の注目を集めようという目論見もあったのかもしれません。
いずれにしても社会の関心をひくことが目的で初対面の女性を監禁して暴行するというのは到底理解できない行動ですし、社会から同情や共感も得られないでしょう。
2018年の事件の動機は?
2018年の事件や立てこもり事件の直前に起こした事件については、おそらく金銭目的だったのでしょう。
2018年の事件を起こす頃はアパートの家賃を滞納していたという話がありますし、立てこもり直前に起こした事件では合計で50万円以上の現金を被害者から盗んだと報じられています。
2019年に秋田刑務所を出てからはたまに日雇労働をしていたようですが、生活費が底をついて力の弱い女性相手に強盗することにしたのだと考えられます。
ただ、不思議なのは直前に50万円以上の現金を盗んでいながら、ネットカフェ立てこもり後に逮捕された林の所持金は数百円だったという点です。いったい何にお金を使っていたのでしょうか。
林一貴の裁判と現在
2022年7月6日、さいたま地方裁判所で林一貴の初公判が開かれました。罪状は逮捕監禁致傷と強制性交等致傷の2つでしたが、林は女性従業員を監禁した事実は認めたものの強姦については一貫して否認を続けました。
おそらく2018年の事件の時に強盗と強制性交未遂で罪に問われずに軽い量刑で済んだため、強制性交等致傷が不問になれば軽微な処罰で済むと思ったのでしょう。
検察が「被害者は個室ブースで首を絞められ、拘束されてすぐに強姦されたと証言している」と、被害者の女性従業員の証言と林の証言の食い違いを指摘すると「被害者は嘘をついている!」と大声をあげたといいます。
一審の判決公判は7月20に開かれ、林には検察の求刑通りの懲役20年が言い渡されました。(弁護側は懲役5年が妥当と主張)。
食い違っていた証言については「何の落ち度もなく、突然事件に巻き込まれた被害者が嘘の証言をするとは考えづらい」として、被害者女性の証言を採用したとのことです。
また、裁判を担当した裁判長は厳しい判決を下した理由について以下のように説明していました。
公判中における林被告の供述内容や態度などから「反省は認められない」とし、現時点では「再犯に及ぶ可能性が高いと言わざるを得ない」と述べた。
その後、判決に納得がいかない林は東京高等裁判所に控訴しましたが、東京高裁は2023年3月3日にこれを棄却しています。
林と弁護側は一審の時と同様に「被害者は常時拘束されていたわけではない。逃げるチャンスがあったのに、自分の意志でブース内に留まった」などと主張していましたが、「被害者は恐怖心に支配されていたと予想できる。脱出は困難だった」と裁判長に否定されていました。
控訴を棄却された後の動きは報じられていませんが、二審で諦めるとは考えづらいため、おそらく最高裁判所まで争うつもりでいるものと思われます。そのため懲役20年という刑が確定するまでにはもう少し事件がかかるかもしれません。
なお、ネット上では「前科や余罪を考えると懲役20年でも甘い」「出所しても同じような事件を起こすに決まっている。無期や極刑が無理なのはわかるが、なんとかできないものなのか」といった厳しい声が多く見られました。
林一貴は結婚している?
林一貴に結婚歴があるか否かは報じられていません。しかし、裁判での様子や明らかになっている経歴を見る限り、ずっと独身だった可能性が高いと思われます。
結婚していれば配偶者が身元を引き受けるため、前科のせいで身分証もスマホも持てないということはないはずです。また裁判での身勝手な動機を聞く限り、林のような人物であればもし結婚・離婚の経歴があったのならば元妻にも憎しみや恨みが向かいそうな気がします。
ところが裁判では配偶者に対する発言はありませんでした。そのため、林に結婚歴があるとは考えにくいでしょう。
林一貴は在日韓国人という噂の真相は?
ネカフェに立て籠もった男、「林一貴」という名前だそうだが、在日○国人は通名に鏡文字を使う事が昔から有名だ。
あちらの国では、鏡文字は縁起がいいらしい。#ネットカフェ#ネカフェ#立てこもり
— †黒猫† (@hoshi_zero) June 18, 2021
大宮ネットカフェ立てこもり事件が起きた直後、マスコミが現場に押し寄せているという情報がネット上に多く寄せられていたわりに、事件についてあまり報道されなかったことから「犯人は在日コリアンで、報道規制されているのではないか」との噂がネット上で囁かれていました。
ただ、事件発生から林の逮捕まで詳細な報道がなかったのは人質にとられている女性の安否がわからなかったためであり、林の素性は関係ありません。
そもそも報道協定は人質をとっての立てこもり事件や誘拐事件などが起きた際に、報道の自由よりも被害者の身の安全を優先するという目的で作られたものです。誰が事件を起こしたのかは関係ないのです。
さらにネット上では「左右対称の漢字が含まれた苗字は在日コリアンの通り名の可能性が高い」「林という字は『リン』という姓のコリアンの通り名でよく使われる」といった噂もかねてからあったために、林一貴は在日だと断定する声が複数見られるようになりました。
左右対称の漢字が使われた苗字は通り名という説には何の根拠もありませんし、「林(リン)」という文字は朝鮮半島のみならず、日本や中国などアジアのさまざまな国で姓として使われてきた漢字です。
そのため林という苗字だから林一貴は在日コリアンに違いない、というのは極めて差別的な意見であり、林一貴のルーツが朝鮮半島だという噂はただのデマと言えるでしょう。
林一貴が起こした事件のその後① 女性従業員の現在
大宮ネットカフェ立てこもり事件の被害者となった女性従業員は、気丈にも林の第一審公判に出廷し、証言台に立っていました。
裁判の時点でも女性の首には拘束された際についた傷が残っており、左手の親指にもしびれが残っていたそうです。また精神的なショックも大きく、PTSDと診断されたといいます。
検察官から、事件後の日常生活に何か影響があったか問われると、女性は「知らない人を怖かったり、1人で外出することが難しかったり、人を信用することができなくなりました」と証言した。
現在、被害者の女性がどのように暮らしているのかは当然ながら報道されていませんが、少しずつでも元の生活に戻れていることを願わずにはいられません。
林一貴が起こした事件のその後② 類似の事件が発生する
大宮ネットカフェ立てこもり事件が起きた翌年の2022年6月21日、同じく埼玉県の川越市にあるネットカフェ「快活CLUB川越脇田新町店」でも客が女性従業員を個室ブースに監禁し、立てこもる事件が発生しました。
この事件の犯人の長久保浩二も40代で、10年前に信用金庫で立てこもり事件を起こしたという前科持ちと林に近い経歴を持っていました。
犯行の手口もカッターナイフで女性従業員を脅し、個室に監禁するというもので林の起こした事件に影響を受けていることが窺えます。
さらに動機についても「刑務所を出てきても居場所がなかった」「人生に嫌気が差した」「捕まって刑務所に戻りたかった」などと話しており、林同様に前科があることで思うように生きられないことに不満をためて犯行に及んだとのことです。
林一貴が起こした事件のその後③ ネットカフェへの影響
大宮と川越で立て続けにネットカフェ内に人質をとって立てこもる事件が発生したことから、2022年9月に全国のネットカフェ運営会社が加盟している日本複合カフェ協会では、従業員の安全確保についての運営ガイドラインの見直しが行われました。
改正ガイドラインでは従業員が利用者と個室ブーズで2人きりになることを避けるため、どのように利用者を誘導するべきかといった項目が盛り込まれ、万が一同様の事件が起きた時のために個室ブーズのドアは外から開けられるものにすることが努力義務とされました。
また、埼玉県も独自に個室のある店舗を中心に、ネットカフェへの防犯対策を県が指導できるよう防犯推進条例を改正するなど対策を講じています。
ただ日本複合カフェ協会や県が対策を講じても店舗運営会社の判断に委ねる部分も多いため難しい部分もある、との声もあがっています。
実際に大宮ネットカフェ立てこもり事件の現場となったマンボーは、日本複合カフェ協会に入っていません。そのため協会のガイドラインを守る義務がないのです。
なお、林の「身分証が作れなくてまともな働き口がない」という訴えを聞いて、身分証がなかったらネットカフェも使えないのでは?と思った方もいるかもしれません。
実は利用客に対して身分証の提示を求めることを義務付けられているのは、日本複合カフェ協会に加盟している店と東京都内にある店だけであり、事件現場となったマンボープラス大宮西口店は入店時に身分証の提示が必要ない店舗でした。
一概に店の運営形態が悪いとは言い切れませんが、「身分証の提示を求める店と求めない店では、どちらで犯罪が起こりやすいと思うか?」と聞かれれば前者と答える人が多いのではないでしょうか。
ネットカフェ難民の方々など、何らかの事情ですぐに身分証を作れない人にとって、身分証不要かつ安い料金で寝泊まりさせてくれるネットカフェは安住の地という側面もあるのでしょう。
しかし、入店の敷居が低かったこともマンボープラス大宮西口店で立てこもり事件が起きた原因の一つではないのかと指摘されており、日本複合カフェ協会に加盟していない店舗も何らかの防犯対策を講じ、それを公表するべきではないのかとの声もあがっています。
林一貴が起こした事件のその後④ 警察の対処への声
立てこもり事件が起きた当時、大宮駅周辺には人が多くいたことからSNSやYou Tubeにも、ネットカフェの入ったビルを撮影した写真や動画が現場の中継とともに数多くアップされました。
その影響もあって事件の発生についてはTVなどで報道される前から多くの人が知っていたものの、以降は32時間に渡って店の中で何が行われているのかわからない状況が続いたため、ネット上では「警察は何をしているのか」「早く突入しろ」といった非難の声もあがりました。
ただ個室ブースの様子は外から窺うことができず、どんな凶器を所持しているのかも不明だったことから警察も安易に突入できなかったのです。
また林と人質の2人しかいない場所に立てこもっているため、林が自殺してしまった場合には事件の全容はわからないままになってしまいます。人質の安全が最優先なのはもちろんですが、林の身柄も確保しなければいけなかったために、慎重な説得を重ねる必要があったのです。
最終的に現場で対応に当たった捜査員はインターホンを通じで林と60回以上ものやりとりをしたうえ、立てこもりから30時間が過ぎて林の体力が限界を迎え、寝落ちしたと判断してからブースへ突入。無事に従業員女性の保護に成功しています。
そのため時間はかかりましたが、「対応としてはこれ以上ないものだった」というのが事件解決後の警察への評価となっています。
林一貴と大宮ネットカフェ立てこもり事件についてのまとめ
今回は2021年6月17日に発生した大宮ネットカフェ立てこもり事件の犯人である林一貴について、生い立ちや事件を起こした動機、前科や余罪をふくめて紹介しました。
おそらく最高裁判所まで争ったとしても、林一貴に言い渡される判決が懲役20年を大幅に下ることはないのではないかと予想されます。
ただ裁判での様子を見る限り、20年で更正できるのか、再犯するおそれはないのかという疑いは捨てきれませんし、被害者の女性が命に別状なく無事に保護されたとはいえ、林の卑劣な犯行は到底許せるものではありません。類似の事件が起こらないよう願うばかりです。