「涼宮ハルヒの憂鬱」や「けいおん！」、「らき☆すた」などの人気アニメを制作してきた京都アニメーション。日本だけでなく世界にも多くのファンがいましたが、その京都アニメーションの第1スタジオが放火され、36人の死者をだす大事件が起こりました。
京アニ放火事件の概要や事件の状況、場所、被害者数（死者・負傷者）、犯人の経歴やおかしい動機、生存者のその後、死刑判決や現在をまとめました。
この記事の目次
京アニ放火事件は日本史上最多の犠牲者を出した放火殺人事件
出典：sankei.com
京アニ放火事件は「京都アニメーション放火殺人事件」のことです。
2019年7月18日に京都市内にある京都アニメーション第1スタジオで、犯人の青葉真司がガソリンを撒いて放火し、死者36人、負傷者34人（犯人を含む）を出す大惨事となりました。
まずは事件の概要から確認しておきましょう。
・事件名：京都アニメーション放火殺人事件（京アニ放火事件）
・場所：京都府京都市伏見区桃山町因幡15-1 京都アニメーション第1スタジオ
・発生日時：2019年7月18日10時31分ごろ
・事件内容：ガソリンを撒いて放火
・死者：36人
・負傷者：33人＋犯人
・犯人：青葉真司
・損害：建物全焼
この京アニ放火事件は明治時代以降、戦争以外で日本最多の犠牲者数を出した事件です。
世界的にも有名なアニメ制作会社が放火され、30名以上の死者を出したという大量殺人事件は、日本国内だけでなく世界でも大きく報じられ、各国の著名人から追悼のメッセージが寄せられたほか、SNSでは「#PrayForKyoani」の投稿がトレンド入りし、さらに国内外から30億円以上の寄付金が集められました。
京アニ放火事件の状況
京アニ放火事件がどのような事件だったのかをもう少し詳しく見ていきましょう。
犯人の青葉真司が事件を起こす準備をする
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犯人の青葉真司は京都アニメーションを逆恨みし、犯行を決意して、事件3日前の2019年7月15日に包丁6本を持ってさいたま市内の自宅を出発し、新幹線で京都に向かいました。
7月17日にには京都市内のホームセンターでガソリン携行缶や台車を購入し、その日は台車を押して約10km歩き、京アニの関連施設を訪れ、事件のための下見をしていました。
この日は現場から約500m離れた公園で野宿し、翌7月18日（事件当日）の10時ごろ、現場から約500m離れたガソリンスタンドで「発電機に使う」と告げてガソリンを40リットル購入しています。
そして、台車を押して、京アニの第1スタジオに向かったのです。
事件発生
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京アニ第1スタジオ近くの路地で、ガソリンを携行缶からバケツに移し替えた青葉真司は、10時31分ごろ京アニ第1スタジオに入り口から侵入しました。そして、2つのバケツに入ったガソリン10～15リットルを建物1階に撒き、ライターで着火しました。
この時、犯人の青葉真司は「死ね」や「くそが！」などと居合わせた京アニのスタッフに叫んでいたとのことです。
犯人がライターで着火した瞬間、「ドーン」という爆発音とともに爆燃現象が発生し、瞬く間に火は3階まで延焼しました。京アニ第1スタジオは3階まで抜きぬけの構造だったため、火や煙が吹き抜け空間を一気に上がる「煙突効果」が生じて、建物全体に一気に炎と煙が充満してしまったんです。
建物内に階段は2つありましたが、どちらも煙が噴き上げている状況であり、地獄絵図となり、2回から飛び降りたり、窓にしがみついたり壁伝いに逃げた人などはいましたが、多くの犠牲者は逃げる手段がない状況だったようです。
事件から約1分後には最初の119番通報が入り、9分後の10時40分には最初の消防隊が到着して、増援要請後に放水を開始しましたが、建物は全焼、死者36人・負傷者33人を出す大惨事となってしまいました。
犯人の青葉真司を確保
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京アニ放火事件の犯人の青葉真司は京アニ第1スタジオの1階でガソリンを撒いて放火した後、自分の衣服にも引火しましたが、その状態で逃走しました。
その犯人を京アニの社員2人が追跡し、現場から100m離れた京阪電鉄六地蔵駅付近の路上で取り押さえられました。
この時、犯人は両腕を火傷して皮膚がめくれ、右足からは炎と煙が出ている状態だったとのことです。この時の青葉真司を見た近所の人は火事の被害者だと思って、ホースで水道水をかけています。
その後、急行した警察官に身柄を確保されました。身柄を確保された後は、全身にやけどを負っていたため、病院に救急搬送されています。
京アニ放火事件の場所
京アニ放火事件の場所は、京都市伏見区にある京都アニメーション第1スタジオです。京阪電鉄の六地蔵駅から徒歩数分の場所にあります。
「涼宮ハルヒシリーズ」や「けいおん！」などを作った京都アニメーションのスタジオというと、オフィス街にあるような大きなビルを思い浮かべるかもしれません。
でも、京アニ第1スタジオは住宅街にあります。
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隣近所にオフィスやお店はなく、完全な住宅地。このような場所で、京アニ放火事件は起こったのです。
京アニ放火事件の被害者：死者36名・負傷者33名
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京アニ放火事件の被害者は、死者36名・負傷者33名でした。事件当時、京アニ第1スタジオには従業員70人がいましたが、そのうち69人が被害を受けたことになります。
死者：36名
京アニ放火事件の死者は36人にも上りました。事件当日に死亡した人が33人、翌日以降に死亡した人が3人です。日本において36人もの死者を出した事件は明治時代以降なく、過去最悪の事件となりました。
京アニ第1スタジオは3階建ての建物でしたが、犠牲者は3階に多かったことがわかっています。
＜階別死者数＞
・3階：20名
・2階：11名
・1階：5名
合計：36名
36名のうち、事件当日に死亡した33名の死因は焼死は22名、CO中毒が5名、窒息が5名。また、事件翌日以降に死亡した3名は火傷が死因だった人が2名、敗血症が1名でした。
死者が最も多かった3階では、死者全員が3階から屋上へ上る階段で折り重なるように倒れた状態で倒れていました。熱と煙、炎が充満している中で、階段では逃げることができず、窓からも逃げられなかったため、屋上に向かおうとした中で力尽きたものと思われます。
2階では死者は特定の窓付近に固まって倒れていました。生存者の証言によると、この窓は完全に開かなかったけれど、熱で割れてから脱出できるようになったそうなので、唯一脱出できる窓に殺到して、逃げ遅れてしまったということなのでしょう。
1階では事件当日に2人が焼死で死亡し、翌日に火傷が死因で1人死亡。さらに、もう1人も事件から約10日後の7月27日に火傷が原因で死亡しました。
また、24歳の女性は一時は人工呼吸器を外して会話ができるまでに回復しましたが、その後に皮膚移植をした箇所で感染を起こし、それが原因で敗血症となって10月4日に亡くなっています。
有名アニメーターも犠牲に
京アニ放火事件の犠牲者の中には、有名なアニメーターも含まれていました。
・木上益治
（ドラえもんの映画シリーズ、らき☆すた、CLANNAD、けいおん!、涼宮ハルヒの憂鬱、Free!）
・武本康弘
（クレヨンしんちゃん、ドラえもん、ポケットモンスター、涼宮ハルヒの憂鬱、らき☆すた、CLANNAD、Free!、ツルネ）
・西屋太志
（犬夜叉、涼宮ハルヒの憂鬱、らき☆すた、CLANNAD、ツルネ）
・池田晶子
（ドラえもん、クレヨンしんちゃん、犬夜叉、涼宮ハルヒの憂鬱、らき☆すた、CLANNAD、映画版ポケモン、涼宮ハルヒの消失）
これだけの有名なアニメーターを一瞬で失うことになった京アニ放火事件。
有名なアニメーターを失ったことは京都アニメーションはもちろん、日本・世界のアニメ界にとって、大きな損失になったと言えるでしょう。
負傷者は33名
京アニ放火事件の負傷者は33名です。（※犯人を除く）
・3階：1人
・2階：26人
・1階：6人（＋無傷が1人）
事件発生当時、3階には21人いましたが、1人しか助かりませんでした。生存者はみんなが屋上に避難しようとした中で、煙を吸い込んで断念し、しゃがみこんだ時に西側の窓を発見しました。窓から外を見ると、外壁に10cm程度のでっぱりを見つけ、そこにへばりつき、雨どいを伝い、さらに近隣住民に助けられて生還しています。
2階は26人が負傷しています。1人は窓から飛び降り、25人はベランダに避難して救出されました。1階では正面玄関から出た人が2人、1階窓から1人、2階窓（階段で2階に上がってから脱出）、トイレから3人が脱出し負傷しました。
被害者・死者の実名報道が問題に
京アニ放火事件では被害者の実名報道が問題になりました。
京都府警は身元が特定できた被害者から速やかに公表するとしていましたが、京アニ側からは遺族のプライバシーを保護するために、実名報道を控えるように要求が出ました。
一方、京都アニメーションは７月２２日、ネット社会の現在、実名が報じられると、プライバシーが侵害され、遺族が被害を受ける可能性があるとし、実名公表を控えるよう府警に要望した。
警察は最初、実名公表の承諾がとれた10人の死者の実名を公表し、それから死者全員の葬儀が終了してから残る25人の実名も公表しています。ただ、遺族全員が実名公表を承諾したわけではなかったようです。
府警は、犠牲になった３５人の遺族のうち２１人は実名公表拒否、１４人は承諾の意向だったと説明している。
遺族の半分以上が実名公表を拒否していたということになります。それにもかかわらず、マスコミの多くは遺族の意向を無視して、死者全員の実名を報じ、それが問題になったのです。マスコミは死者の実名を報じる際に次のような注釈をつけました。
朝日新聞は事件報道に際して実名で報じることを原則としています。
犠牲者の方々のプライバシーに配慮しながらも、お一人お一人の尊い命が奪われた重い現実を共有するためには、実名による報道が必要だと考えています。
この辺りは非常に難しい問題ですが、「重い現実を共有するためには、犠牲者・遺族のプライバシーや思い・気持ちは無視して良い」とも捉えることができる注釈です。もし、遺族が実名報道を望んでいないなら、実名報道は避けたほうが良いと思います。
京アニ放火事件の犯人・青葉真司の生い立ちや経歴
京アニ放火事件の犯人は、青葉真司です。
青葉真司は事件当時41歳。埼玉県さいたま市見沼区のアパートで一人暮らしをしていましたが、無職で生活保護を受けながら生活をしていました。
京アニ放火事件の犯人・青葉真司はどのような人物だったのかを見ていきましょう。
生い立ちや経歴
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1978年に埼玉県浦和市で生まれた青葉真司は9歳の時に両親が離婚し、父親と兄・妹の4人暮らしをするようになります。
父親はトラック運転手として働いていましたが、糖尿病が原因で仕事を辞め、生活保護を受けることになりました。しかも、父親から虐待も受けていたとのことです。
中学卒業後は定時制高校に通いながら埼玉県の非常勤職員として働くようになります。高校の頃に京都アニメーションの作品を知るようになっています。
高校卒業後はゲーム音楽を作る仕事をするために音楽の専門学校に進学しますが、たった半年で退学。さらにアルバイトなども辞めて、1人暮らしをするようになります。
その後は、アルバイトや派遣社員など非正規の仕事を転々としています。
父親は体調が良くなると、タクシー運転手として働きだしましたが、死亡事故を起こして失業。青葉真司が21歳の時、1999年12月に亡くなりました。父親が亡くなった時は、離婚した母親が駆けつけ、十数年ぶりに再会しましたが、親子の会話はほとんどなく、青葉は母親を睨みつけていたとのことです。
青葉真司は前科あり
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非正規の仕事を転々としていた青葉真司は2006年、28歳の時に暴行・窃盗容疑で逮捕されました。
そして、青葉被告は事件を起こした。２００６年、アパートのベランダで住人女性の下着を盗み、部屋に入って女性の口をふさいだ疑いで逮捕された。
引用：「全部嫌になった」「底辺に対し面倒見が良いわけない」 中退から退職、そして転落へ 青葉被告の半生ヒストリー【社会人編】｜社会｜地域のニュース｜京都新聞(2/3)
埼玉県越谷市のアパートに侵入して下着を盗み、女性の口をふさいだ容疑での逮捕でした。この時の動機は「性欲に困っていた」、「金欠でヤケになった」と話しています。この事件では懲役2年執行猶予4年の有罪判決を受けました。
執行猶予判決で釈放浚えた後は、母親とその再婚相手の3人で暮らしていましたが、再婚相手とうまくいかずに半年間引きこもり生活を続け、その後に母親宅を出て一人暮らしを再び始めます。
2012年6月20日には茨城県坂東市のコンビニで現金21,000円を奪う強盗事件を起こし、警察署に出頭して強盗と銃刀法違反の容疑で逮捕されました。この時の動機は、「社会で暮らしていくことに嫌気がさした」としています。
裁判記録によると、犯行動機について「仕事上で理不尽な扱いを受けるなどして、社会で暮らしていくことに嫌気が差した」と供述している。
また、「（仕事を）クビになったときは、母を、兄も含めて、ガソリン撒いて燃やしてやろうか、と」とも供述していて、この頃から京アニ放火事件と似たような犯行を考えていたのかもしれません。
青葉真司は京アニ放火事件を起こす前に2回有罪判決を受けていて、3年半も刑務所に服役していたということなんですね。
精神障害と診断されていた
出典：ytv.co.jp
青葉真司は精神障害の診断を受けていました。
中学2年生の頃から幻覚の症状があったようですが、精神科を受診したことはありませんでした。
初めて逮捕された2006年ごろは、本人曰く幻覚がひどかったそうです。
また、2009年ごろからは京都アニメーションのアニメの原作小説に影響を受けて小説を書き始めますが、自分で満足できる作品をかけず、ネットの掲示板でも嘲笑されたことから自殺を試みたこともあります。
刑務所に入っている時には、「闇の人物に」につけられているという妄想を持つなど、幻聴・幻覚の症状が強く出て、「自殺のリスクが高い要注意者」に指定されていました。そして、2015年10月には統合失調症の診断を受けて、障害者手帳を交付され、薬物治療を受けることになりました。
2016年1月には刑務所を出所した後は、さいたま市浦和区の更生保護施設で過ごし、同年7月からは見沼区のアパートで生活保護を受けながら生活をしていました。
ただ、精神疾患の症状はどんどん悪化していったようです。
2018年4月には、訪問看護のスタッフに包丁を突き付けたことがありました。
青葉被告は、主に不眠の影響で精神状態が常に不安定だったとし、2018年5月には、自宅アパートを訪れたスタッフに包丁を振りかざし、「付きまとうのをやめないなら殺すぞ」「今のままでは人を殺してしまう。人間は足を引っ張る人間ばかり信用できない」などと脅したり話したりすることもあったということです。
引用：「1年後に作家デビュー、5年後に家、10年後は大御所」出所後の夢描く青葉被告の部屋に破壊プレステと切り刻まれた革ジャン 弁護側が精神状態を説明【京アニ裁判】 | 特集 | MBSニュース
事件の約半年前の2019年2月には、他人とのかかわりを立つために通院を止め、訪問看護にも居留守を使うようになり、スマホも解約しています。訪問看護側からは、薬を飲めていないから「対人トラブルが起きないか懸念している」という記録もあったとのことです。
2019年6月には刃渡り20cm以上の包丁を6本購入し、大宮駅前で無差別殺人を計画していましたが、未遂に終わりました。そして、2019年7月に京アニ放火事件を起こすのです。
京アニ放火事件の犯人・青葉真司は確保後に高度治療で生還
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京アニ放火事件では、犯人の青葉真司も大やけどを負いました。確保された時、両腕は皮がめくれるほどの火傷で、脚からは炎と煙が出ている状態で、全身にやけどが広がっている状態でした。
すぐに京都第一赤十字病院に搬送され治療を受けることになり、さらに高度な医療が必要だったため、7月20日には近畿大学医学部附属病院にドクターヘリで搬送されました。
犯人は全身の93％がⅢ度熱傷に分類される状態でした。Ⅲ度熱傷が10％以上になると、ICUへの入院が必要になり、熱傷指数が70を超えると死亡率は95～97％とされています。京アニ放火事件の犯人の熱傷指数は93ですから、死亡率はほぼ100％に近い状態で、救命は困難とされていたんです。
主治医の上田医師は初めて青葉真司を見た時に、「ちょっと厳しい」、「予測死亡率は97.45％」、「もうすぐ絶命するだろう」と思ったとのことです。
しかし、医療チームの懸命の治療によって、青葉真司は一命をとりとめます。事件から1ヶ月後に声が出るようになった時には、「世の中には優しくしてくれる人もいるんだ」と涙を流したとのことです。
命の危機を脱し、声が出るようになったのは、約一カ月半後の昨年九月九日。気管切開した部分に取り付ける管を発声できるものに交換すると、青葉容疑者は「こ、声が出る」と驚き「もう二度と出せないと思っていた」と言って涙を流した。
顔をくしゃくしゃにして泣く様子に戸惑って「とにかくリハビリを頑張ろう」と促すと「世の中には自分に優しくしてくれる人もいるんだ」と言ってさらに泣いた。
ただ、この「善良な涙」はこの時だけだったようです。
「どうせ死刑になるのに、リハビリを頑張る気が起こらない」とリハビリをきちんとしなかったり、不満を訴えることもありました。
回復を待って2020年にようやく逮捕
医療チームの懸命な治療によって一命をとりとめ、状態が安定し、高度な治療が終了したため、2019年11月14日に近畿大学医学部附属病院から最初に搬送された京都第一赤十字病院に戻っています。
過激なアニメファンからの報復を防ぐために、犯人の青葉真司は病院の中でも「一般人は自由に出入りできない場所」に収容されました。
そして、2020年5月27日にようやく逮捕されたのです。容疑は殺人や殺人未遂、現住建造物等放火などの疑いです。ここまで逮捕されなかったのは、状態が安定し、きちんと取り調べを受けられる状態になるのを待っていたとのことです。
今も自ら起き上がったり歩いたりはできないが、ある程度の会話ができる状態という。春ごろから容体が安定し、府警は複数の医師から「勾留に耐えられる」との見解を得たという。
事件から10ヶ月以上経って、ようやく京アニ放火事件は犯人を逮捕し、本格的な取り調べを始めることができるようになりました。
京アニ放火事件の犯人・青葉真司の動機がおかしい
京アニ放火事件の犯人の動機は、供述や裁判で明らかになっていますが、理解しがたいおかしいものでした。
犯人の青葉真司はなぜ京アニ放火事件を起こしたのか？その動機を紐解いていきましょう。
小説を書いていてパクられたと主張
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犯人の青葉真司は京アニの原作小説の影響を受けて、31歳の頃から小説を書くようになっていました。その京アニの原作小説とは「涼宮ハルヒの憂鬱」です。
青葉被告はまず、２００９年に京アニ制作の「涼宮ハルヒの憂鬱」に感銘を受け、ＳＦや学園系のライトノベルを書き始めたということです。
引用：執筆きっかけは「涼宮ハルヒ」京アニ”執着した”青葉被告の小説と京アニ3作品「Free！」「ツルネ」「けいおん！」を検察側が比較した【京アニ裁判・証拠調べ】 | 特集 | MBSニュース
この頃、青葉真司は「京アニの女性監督」と恋愛関係にあるという妄想を抱いたり、ネット掲示板で嘲笑されて自殺未遂を起こしたりしています。その後、コンビニ強盗を起こして服役していたため、小説執筆は中断しますが、2016年に出所してからはまた小説を書くようになりました。
2016年の「京都アニメーション大賞」に短編と長編の2作（「ナカノトモミの事件簿」、「リアリスティックウエポン」）を応募していますが、2017年に落選通知が届きました。
この落選に対し、犯人の青葉真司は自分のアイデアを京アニに盗用されたと思い込んだとのことです。
捜査関係者によると、青葉被告は逮捕前の段階から「京アニに小説を盗まれたから火を付けた」と供述しているという。京アニ作品が、自分の作品の盗作だという趣旨の主張をしているとみられる。
応募した小説を落選させて、自分のアイデアを京アニがパクって、作品に盗用した。このような思い込みが青葉真司を事件に駆り立てたようです。
犯人が「京アニがパクった」と主張する作品とシーン
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犯人の青葉真司が、「京アニがパクった！」と主張するシーンは3つあります。
・けいおん!
・ツルネ
・Free!
| 京アニのシーン | 青葉真司の小説のシーン | |
| けいおん! | 主人公が後輩に「私留年したよ。これからは同級生だよ」と告げるシーン | 男子高校生が担任から「このままだと留年だぞ」と言われるシーン |
| ツルネ | 2割引きの肉を買うシーン | ヒロインが5割引きの総菜を買い漁るシーン |
| Free! | 校舎に垂れ幕がかかっているシーン | 学校に期限の切れた垂れ幕が下がっているシーン |
これで、「京アニがパクった」と言われてしまったら、何でもありになると思います。確かに、「留年」、「割引」、「垂れ幕」というキーワードは同じですが、それでパクったことになるなら、世の中パクっていないものは何もないという状態になります。
こんなおかしい動機で36人の命を奪ったと考えると、やり切れないものがありますね。
やられたらやり返すとして犯行を決意
小説が落選し、その後に自分のアイデアをパクられたと思い込んだ犯人の青葉真司は、「やられたらやり返す」という考えから、京アニ放火事件を起こすことを決意しました。
被告は「やられたらやり返す」との考えから、盗用された仕返しとして報復を決意。「言っても無駄だ」「知らないのは悪だ」との考えから、抗議するなど合法的な手段を検討せず、盗用を知らない従業員も全員連帯責任を負うものとして京アニを狙うことにした。
勝手に自分のアイデアを京アニに盗用されたと思い込み、京アニ全体に恨みを向け、放火殺人を起こすことにしたということになります。あまりにもおかしい動機のために、理解不可能と言えるでしょう。
京アニ放火事件の被害者（生存者）には体を切断した人も・・・
京アニ放火事件では被害者は全部で69人で、そのうち36人が死亡し、33人が負傷しました。負傷した生存者の中には大やけどを負い、事件から3年半以上経った現在でも苦しんでいる人もいます。また、重度の火傷から指や四肢を切断した人もいました。
９月２９日に目が覚めると、熱傷は合計で（全身の）９４％になっていました。ＩＣＵ（集中治療室）で５カ月過ごしました。２０回皮膚移植をしました。
痛覚を感じないことが多く、もろいところはちょっとしたことで血が出ます。
奇跡だと言われました。手術を４９回受けました。今後も増えていくかもしれません。右手人差し指を切断しました。手足切断の可能性もあったので、不幸中の幸いでした。
9月29日に目が覚めたということは、2ヶ月以上も意識不明（もしくは麻酔薬で鎮静）だったということです。そして、3年半で49回の手術。さらに人差し指の切断・・・。やけどにより汗腺がなくなったため、体温調節がしにくくなり、あまり外に出ることができなくなった。全身94％が火傷なら、外見も大きく変わってしまったことでしょう。
また、生存者の中には下半身を切断することになった人もいたようです。
死者だけでなく生存者の中にも、想像を絶する苦しみを一生背負い続けなければいけなくなってしまった人もいます。犯人が犯した罪はあまりにも多いと言わざるを得ません。
京アニ放火殺人事件の犯人・青葉真司の判決は死刑
京アニ放火殺人事件の裁判は2023年9月5日に初公判が開かれました。逮捕から結審までの日程を簡単に振り返っておきましょう。
・2019年7月18日：京アニ放火事件発生
・2020年5月27日：犯人逮捕・送検
・2020年6月9日：鑑定留置
・2020年12月16日：京都地検が起訴
・2022年3月：弁護側の精神鑑定終了が判明
・2023年5月8日：公判前整理手続き
・2023年9月5日：初公判
・2023年12月7日：結審
・2024年1月25日：判決
犯人の回復を待っていたため、逮捕までも長かったですが、起訴から初公判までも非常に長い時間がかかりました。
検察は死刑を求刑・弁護側は無罪を主張
裁判の中で、検察側は「死刑」を求刑しています。
被告の刑事責任能力を巡り、検察側は「動機は理不尽かつ身勝手極まりなく、妄想が影響した程度も限定的」と指摘。「極刑を回避すべき事情はない」として死刑を求刑した。
それに対し、弁護側は心神喪失を理由に、無罪か減刑を主張しました。
１１月２７日にあった量刑を巡る３回目の冒頭陳述では「人を殺すことは悪いことなのに、なぜ死刑は正当化されるのか」と、死刑制度を問う場面も注目を集めた。
弁護側は死刑制度そのものを問題視して死刑回避を狙ったり、建物の構造が悪かったから36人もの人が亡くなったと主張して、何とか犯人の減刑・死刑回避を主張していました。
この弁護側の主張はあまりにも身勝手なものだったために、被害者や遺族の感情を逆なでし、怒りの声が聞かれました。
判決は死刑
2024年1月25日、京都地裁は京アニ放火事件の犯人の青葉真司に対し、死刑判決を言い渡しました。
裁判では冒頭で主文（死刑判決かどうか）を述べずに判決理由を先に読み上げるという異例の流れで行われました。そして、最後に「被告人を死刑に処する。」と死刑判決を述べたのです。
尊い命を顧みず３６人の命を奪った罪責は極めて重く、動機の形成に妄想性障害が影響していること、犯行に至る経緯・背景に、被告に帰責できない面があることを考慮しても、死刑をもって臨むほかない。
被害者遺族はこの判決を受けて、「控訴はせずに、今回の判決を受け入れてほしいと思います」と話しました。
責任能力は認められた
出典：ktv.jp
京アニ放火事件の裁判で、最大の争点になっていたのは、犯人の青葉真司の責任能力です。
青葉真司は統合失調症であると診断されていましたし、犯行動機があまりにもおかしいものだったため、心神喪失・心神耗弱状態だったと認定される可能性があったのです。実際に、弁護側はそのように主張しています。
しかし、裁判では青葉真司の責任能力は認められました。
責任能力を巡り、「被告は妄想性障害に罹患していた」と認めた一方、放火殺人を選んだことへの妄想の影響は「ほとんど認められない」と判断した。
精神疾患はあったものの、放火殺人をするうえでその影響はほとんどなかった。つまり、この京アニ放火事件は犯人自らが考え選択して実行したものであり、この責任は犯人自身が負うべきものであると裁判で認められたということです。
心神耗弱と認定されてしまったら無罪判決もあり得ますので、青葉真司の責任能力が認められて本当に良かったと思います。
京アニ放火事件の現在：犯人は控訴
出典：ytv.co.jp
京アニ放火事件の犯人は、現在控訴しています。2024年1月25日に死刑判決が出ましたが、青葉真司と弁護側は判決を不服として控訴しました。
まず、死刑判決が出た翌日に青葉真司の弁護士が控訴していて、それから約2週間後の2月7日に青葉真司本人も控訴手続きを行ったとのことです。つまり、弁護士が勝手に控訴したのではなく、青葉真司自身も「死刑判決はおかしい！不服だ！」と考えているということですね。
控訴した理由は「すべて妄想だとされたから」とのことです。
その際、控訴について「精神鑑定ですべて妄想だとされたことについて、発信したいことがあった」などと話していたということです。
自分のアイデアを京アニにパクられたという「妄想」は、真実であると主張したいがために、控訴したようです。控訴する権利はありますので、控訴することには何の問題もありません。判決が不服なら、きちんと最高裁まで争うべきです。
ただ、「青葉真司が身勝手に放火して、36人を殺害し、33人を負傷させた」という事実は変わりません。最高裁まで争った場合、判決確定は一体何年後になるのか・・・。被害者と遺族の心が少しでも休まる方向に進むことを祈らずにはいられません。
京アニ放火事件のまとめ
京アニ放火事件の概要や状況、場所や被害者（死者・負傷者）、犯人の経歴や前科・精神疾患、おかしい動機、生存者の身体の切断など辛い現状や死刑判決と現在をまとめました。
京アニ放火事件は本当に恐ろしく、残忍な事件でした。高裁・最高裁での判決は被害者・遺族に寄り添ったものになることを願います。
