こっくりさんは紙とペン、硬貨を使って行う降霊術で狐狗狸様とも表記されます。この記事ではこっくりさんのやり方やなぜ動くのかという原理、本当に起きた事件や顔が変わるなどの怖い話、正体、こっくりさんを題材にしたアニメや映画を紹介します。
この記事の目次
こっくりさんとは
こっくりさんは狐の霊を呼び出すとされる日本発祥の降霊術です。19世紀に誕生したと言われており、欧米で流行っていた「テーブル・ターニング」という占いに影響を受けたとされます。
テーブル・ターニングは数人でテーブルを囲んで卓上に手を乗せて霊との交信を図るという占い方法で、成功するとテーブルがひとりでに傾く、勝手にテーブルが移動するなどの怪現象が起こるといいます。
哲学者の井上満了氏によると、このテーブル・ターニングをアメリカの船乗りが日本で紹介したことがきっかけとなって、港街を中心として知られるようになっていき、こっくりさんに変化したとのことです。
誕生当時のこっくりさんは現在のように50音を書いた紙を使ったものではなく、おひつを3本の竹で支えてテーブルに見立てて行っていました。
これはテーブルが普及していなかったためで、降霊が成功して簡易なテーブルが「こっくり、こっくり」と傾く様子からテーブル・ターニングを「こっくりさん」と呼ぶようになったといいます。
その後、こっくりという単語に「狐狗狸(きつね、いぬ、たぬき)」という漢字が当てはめられ、狐の霊を呼び寄せる降霊術に変化していきました。
当初、こっくりさんは40〜50代を中心に酒の席での余興として流行していました。
しかし、1970年代に漫画家のつのだじろう氏が『うしろの百太郎』でこっくりさんをテーマにした話を描いたことで小中学生の間でこっくりさんが一大ブームとなり、こっくりさんに興じる少年少女が続出。
後述しますが、この頃にはこっくりさんを巡って事件も起きており、社会問題にもなりました。こっくりさんにまつわる怖い話が生まれたのも、この時代からです。
こっくりさんのやり方
こっくりさんを行うためには、以下の物を用意する必要があります。また、こっくりさんには3人以上の参加者が必要です。
・50音の文字と数字、はい、いいえなどを書いた紙。はいといいえの間に鳥居を描くのが一般的
・10円玉
準備ができたら白い紙を机などの中心に置き、10円玉を紙に描いた鳥居の上に置きます。参加者は紙の周りを囲み、全員で人差し指を10円玉の上に乗せましょう。
そして参加者全員で声をそろえ、「こっくりさん、こっくりさん、おいでください。おいでになりましたら『はい』と返事をしてください」と言います。
紙の上に置いた10円玉が動き『はい』の方向に動いたら、こっくりさんに1人ずつ聞きたいことを質問しましょう。
硬貨が50音の言葉を移動しながら質問への答えを示してくれるので、質問の回答が得られたら「ありがとうございます、鳥居までお戻りください」と声をかけて硬貨が鳥居の絵の場所まで戻るのを待ち、次の質問をします。
なお、10円玉が動かない場合は動くまで「こっくりさん、こっくりさん、おいでください」の台詞を言い続けてください。
これを繰り返して参加者が質問を終えたら、「こっくりさん、こっくりさん、お戻りください」と参加者全員で声をかけて、10円玉が鳥居の絵の場所に戻るのを確認します。
鳥居まで戻ってきたら、「こっくりさん、こっくりさん、ありがとうございました」とお礼を告げてから人差し指を10円玉から離して、こっくりさんを終了しましょう。
こっくりさんが終わったら使用した紙は当日中に必ず48の紙片に裁断して捨て、使った10円玉も3日以内に使用して手元に残さないようにしてください。
こっくりさんの注意点
こっくりさんを行う場合には、以下のことを守らないといけないと言われています。
・途中でやめてはいけない。
・1人でやってはいけない。
・遊び半分でやってはいけない。
・無理やり指を動かしてはいけない。
・こっくりさんはどんな質問にも答えてくれるが、こっくりさん自身に関わることを聞いてはいけない。(例:あなたは誰ですか?どこから来たんですか?など)。
・途中で10円玉から指を離してはいけない。
・10円玉が鳥居に戻らない場合は、戻ってくれるまでこっくりさんにお願いし続けないといけない。
また、こっくりさんで呼び出せるのは狐ではなく周囲にいる低級霊だとされていますが、来てくれた霊には常に敬意を持って接さなければいけません。
気に入らない回答があったなどの理由で適当に扱うと悲惨なことが起きると言われています。
こっくりさんにまつわる怖い話・顔が狐になる?
こっくりさんをしてしまったばかりに酷い目にあった、という怖い話は多く語り継がれており、そのほとんどが上で紹介した注意事項を守らなかったために怖い思いをしたという内容です。
ここではこっくりさんにまつわる怖い話を3個、紹介していきます。
顔が変わってしまった友達
小学生の頃、クラスの女子の間でこっくりさんが流行していた。
私はあまり興味が持てず参加しなかったが、友達のA子は休み時間や放課後にこっくりさんをやっていることが多く、その日も休み時間にA子たちがこっくりさんをしているのを近くで見ていた。
普段なら何度か質問をしてこっくりさんが帰って終わり、という流れ。しかし、この日は何かが変だった。
A子たちが何を質問しても、こっくりさんは「殺す」としか答えなかったのだ。みんなは怖くなってパニックになり、途中で硬貨から指を外して強制的にこっくりさんを中断。
その後、休み時間が終わって普通に授業が始まった。結局、あれは何だったのだろうと思っていると、A子に異変が起きた。
顔色が悪くなって震え始め、保健室に行っても原因がわからない。結局、その日A子は早退し、次の日も、その次の日も学校には来なかった。
心配になった私は学校の帰りに遠回りをしてA子の家に行ってみることにした。すると、家の外にまで響くような大声でA子が叫んでいる声が聞こえてきた。
偶然、玄関の引き戸が少し開いていたため、そこから家の中を覗いて私はギョッとした。
廊下でA子が四つん這いになって獣の唸り声のようなものをあげて暴れまわり、それをA子の親が必死に押さえつけていたのだ。
しかもA子の目は狐の面のように吊り上がり、別人のような恐ろしい顔になっていた。恐ろしさのあまり、私は走って家に逃げ帰った。
この後、しばらくしてA子さんは登校してきたといい、その時は顔も様子も以前のものに戻っていたそうです。
なんでもA子さんはこっくりさんの件があってからお祓いを受けるために学校を休んでおり、再び登校した時には、こっくりさんに失敗してからの記憶がなくなっていたのだとか……。
それだけはやめとき
小学生の頃、クラスでこっくりさんが大ブームになった。
ある日、家に帰ってきて母と祖母に「今日、学校でこっくりさんをしてな」と話をしたら、いつもは温厚な祖母が聞いたこともないような声で「それだけは、やめとき」と突然言ってきた。
私は祖母の異様な雰囲気に気圧されつつも、「こっくりさんのこと?なんで?」と聞いてみた。
すると祖母が、このような話を始めたのだ。
祖母が祖父のもとに嫁いでくる前に暮らしていた熊本の小さな集落でのこと。ある日、住民夫婦が村長のもとに「娘の様子がおかしいんです」と相談に訪れた。
村長が話を聞いたところ、どうやら問題の娘はこっくりさんに興じていたといい、ある時を境に目がどんどん吊り上がっていき、油揚げばかり食べたがるようになったという。
狐の霊に取り憑かれたに違いないと思った村長は、村人全員で娘を囲んでお経や念仏を唱えるという手段を考えつき、祖母も、曾祖母も参加することになった。
除霊当日、夫婦の家を訪れると狐の面のような顔をしてニタニタと笑い、両手を胸の前で曲げた娘が部屋の中で村人に囲まれて座っていた。
段取りどおりに村人はお経や念仏を唱え始めましたが、娘はニヤニヤするばかりで何の変化も見せない。
それどころか村人の1人に向かって急に身体を倒したかと思うと、顔に不気味な笑みを貼り付けたままこう言ってきた。「お前にも、1匹わけてやろうか?」
その後、娘がどうなったのか、村人がどうなったのかは怖くて聞けなかった。ただこの話を聞いてから、こっくりさんで遊ぼうという気にはなれなくなった。
この話は2ちゃんねるの人気スレッド「死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?(通称・洒落怖)」に書き込まれたものです。
『世界仰天ニュース』内でこっくりさんの声が入る
2005年8月に放送された『世界仰天ニュース』の「オカルトミステリースペシャル」という特別企画内で、こっくりさんが取り上げられた時の話です。
番組内で司会者の笑福亭鶴瓶さんが「こっくりさんって、狐の霊やろ?」と何気ないコメントを発したところ、どこからか「ちがいます…」というか細い女性の声が聞こえてきて、「今の、誰?」と出演者がパニックになりました。下の動画は、当時放送された問題のシーンです。
結局、出演者からも観覧者からも「自分が言った」との名のりがなかったため、この件は有耶無耶なまま番組は進みました。
ネット上でも話題になり「観覧者がつい独り言で『ちがいます』って否定したのを、観覧席のマイクが拾ってしまっただけではないか?」と結論づけられます。
たしかに、この結論が一番自然です。しかし、こっくりさんは狐の霊ではなく低級な動物霊を呼び出すことが多いと言われていますが、わざわざ声に出して「ちがいます」と否定したい観覧者も少し変わっていますよね。
こっくりさんが原因で本当におきた事件
怖い話だけではなく、こっくりさん絡みで実際に事件も起きており、1980年代と1990年代では小学校を中心に「こっくりさん禁止」が訴えられたこともありました。
本当に起きた事件の一例としては以下のようなものが有名です。
・1973年。群馬県の中学校でこっくりさんをしていた女子生徒が集団パニックを起こす。
・1985年。静岡在住の主婦(29歳)が自宅で1人こっくりさんをしていたところ錯乱状態に陥り、通報される。救急搬送される。
・1989年。福岡の中学校で、授業中にこっくりさんをしていた生徒数名が放心状態になり、授業が中断される。
ブームが去った後の2000年代に入っても、こっくりさんに関連する事件は起きています。
少し毛色が違いますが、2005年には「こっくりさんに使う紙が欲しかった」という理由で少女数名が交番に虚偽の通報をして警官を外におびき出し、その隙に交番内の紙を盗むというなんとも言えない事件も起こりました。
また、2013年にもこっくりさんと関連しているのではないか、と疑われている怪事件が起きています。
2013年6月19日、兵庫県上郡町の県立上郡高校で同校1年生の女子生徒が体調不良を訴えました。
この女子生徒は次第にパニック状態になって泣きわめくなどの奇行を見せはじめ、過呼吸症候群に陥ったといいます。
さらにその様子を見た周囲の女子生徒も同様の症状を見せ、最終的に21人が過呼吸を訴えて18人が病院へ搬送、3人が入院になるという事態に発展。
初期の報道では「数日前から女子生徒らがこっくりさんをしていた」と報じられたこともあったことから、ネットでも話題になりました。
結局、校長が以下のような発表をしてこっくりさんと女子生徒の集団パニックの関係は否定されたのですが、生徒がパニックに陥った原因は明かされていません。
霊感が強かったとの報道については、聞いていないので分からないとのことだった。生徒らがコックリさんをしていたかについては、「それはありません」と明確に否定した。
現代版こっくりさんによる事件も
2015年頃に中高生を中心に「チャーリーゲーム」というこっくりさんに似たゲームが流行り、TVでも報道されるなどして話題になりました。
チャーリーゲームはメキシコの民間伝承に登場するチャーリーという悪魔を呼び出し、YES、NOで質問に答えてもらうという占いのようなものです。
このチャーリーゲームをやると怪奇現象が起きるなどの噂も、こっくりさん同様に囁かれるようになりました。
熊本県のある中学校も「(校内で)流行っている」と明かす。この学校では「子どもたちが落ち着かなくなった」「やっている子達の周りで嫌な思いをする子がいる」として生徒全員に注意したという。
さらにこのゲームの流行とともにこっくりさんが流行りだしたという学校もあったといい、山梨県の中学校ではこっくりさんをやった生徒が体長を崩すなどの問題が起きたといいます。
こっくりさんの正体・なぜ動くかの原理
引用:https://www.kinokuniya.co.jp/
こっくりさんの正体やなぜ動くのかについては、明治時代に哲学者で妖怪研究でも著名な井上円了氏によって解明されています。
井上円了氏は実際にこっくりさんをやっている被験者たちをさまざまな環境下で観察し、結果、「感受性が強く、信じやすい」という人の性質そのものがこっくりさんを動かしていることに気づきました。
そして、こっくりさんを動かしているものの正体は予期意向と不覚筋動という現象だと指摘します。
予期意向とは自分の知識や経験、願望に基づいて「こうなってほしい、こうなるだろう」と予測を建ててしまう現象のことで、不覚筋動とは本人の意識の外でかすかに筋肉が動く現象のことです。
こっくりさんを信じている子どもがこっくりさんをする場合、子どもは頭の中で「10円玉は動く」と無意識に信じているものと考えられます。(予期意向)
そしてこっくりさんに対する期待度が高く、強く信じていればいるほど「10円玉は動く」という思い込みは強くなって、自分でも気づかないくらい僅かに筋肉が動き、それが人差し指の先に伝わって無意識のうちに10円玉を動かしてしまうのです。(不覚筋動)
また、こっくりさんをする際の注意事項としてあげられている「10円玉から指を離さない」というルールも、自動的に硬貨が動いたように感じられる原因とされています。
ずっと同じ体勢で10円玉の上に指を置き続けていれば、自然に筋肉は疲労します。すると無意識に硬貨の上に置いた指先に力がこもってしまい、その影響で10円玉が勝手に動いたように感じるというわけです。
パニック状態に陥る人が多い理由
こっくりさんをして体調を崩す人や情緒不安定になる人が多い理由については、精神科医の森田正馬氏によって集団催眠状態になるからではないのか、という見解が示されています。
前述のようにこっくりさんをするうえでのルールとして、最初に「こっくりさん、こっくりさん、おいでください」と参加者全員で声を揃えて言うというものがありますが、これで催眠状態になるのではないかと指摘されてるのです。
もともと、大ブームになった時期にこっくりさんに挑戦したのは感受性の強い少年少女が多かったこともあり、簡単に催眠状態になってしまったのではないか?とも指摘されています。
一応、「こっくりさん、こっくりさん、ありがとうございました」と最後に声を揃えて言うことで催眠状態が解ける、という設定にはなっているようですが、中途半端に催眠状態のままになってしまうこともあるため、パニック症状などの異変が出てしまうと言われています。
このことが「こっくりさんは危険」「やってはいけない」と禁止令が出され、社会問題になった理由と言えるでしょう。
こっくりさんを主題にした映画やアニメ
こっくりさんを主題にした映画やアニメも作られています。ここではこっくりさんをモチーフにした映像作品を4作紹介していきます。
①映画『こっくりさん 劇場版』
映画『 こっくりさん』は 2011年11月26日に公開された作品で、『トモダチゲーム』や『きさらぎ駅』の永江二朗監督作です。
あらすじは鈴木まりやさん演じる主人公が、母の突然の死をきっかけに母の同級生も不審死をしたことを知り、調べていくうちにこっくりさんの呪いに関係あるという少年の遺体にたどり着くというものです。
②映画『ひきこさんVSこっくりさん』
『ひきこさん VS こっくりさん』は2012年制作の永岡久明監督作品で、『ひきこさんVS貞子』『ひきこさんVS口裂け女』のシリーズ作の1つです。
あらすじはタイトルからも想像がつくように、ひきこさんとこっくりさんという2大怪異の争いに人間が巻き込まれるというもの。
口裂け女やひきこさんと違い、パワー系でもなければ実体もないこっくりさんをどう扱うのかが注目されましたが、「そう来たか!と意外な感じ」「弱い、こっくりさん弱すぎる。もう少しうまく扱ってほしかった」と賛否両論あるようです。
②映画『コックリさん』
映画『コックリさん』は韓国で制作された作品で、監督は『ボイス』で知られるアン・ビョンギ監督です。現代は『分身娑婆』。
あらすじは韓国の閉鎖的な村で暮らす少女が、いじめに耐えかねて「こっくりさん」として伝わる30年前に自殺したとされる女子生徒の霊を呼び出してしまい、いじめっ子への復讐の代償として取り憑かれてしまうというもの。
こっくりさんとなった霊にも悲しい過去があり、その辺りの描写が容赦ないことから観る人を選ぶ作品とも言えます。
③アニメ『繰繰れ!コックリさん』
アニメ『繰繰れ! コックリさん』は、『月刊ガンガンJOKER』に連載されていた遠藤ミドリさんの同名作品をアニメ化したものです。
あらすじは1人ぼっちの主人公、市松こひながこっくりさんで呼び出してしまった狐の妖怪コックリさんが彼女を心配して身の回りの世話をするというもの。
放送は2014年12月に終了しましたが、当時のレコチョクのアニメ人気ランキングでは第2位に輝くほどの人気作でした。
こっくりさんについてのまとめ
今回は1970年代から1990年代にかけて社会位問題にもなったこっくりさんについて、怖い話や本当にあった事件、なぜ動くのかの原理をふくめて紹介しました。
こっくりさんの正体については科学的に説明がされていますが、それでも集団催眠状態などを引き起こすことから危険、やってはいけないとされています。
こっくりさんは参加者がわからないようなこと(専門的な知識が必要な質問や、難解な数式など)には答えられなかったという報告もあり、遊びでやるにはデメリットしかないのかもしれません。
それでも挑戦したいという場合は、くれぐれも気をつけて、心身の状態が良い時を選んで行うことをおすすめします。