最近、昆虫食が注目されていますよね。昆虫食の注目で脚光を浴びるようになったのがミルワームです。ミルワームは以前から小動物の餌として販売されていました。
ミルワーム(幼虫)の飼育や繁殖方法、ミルワームの餌や保存方法、販売場所や餌として与える時の注意点などをまとめました。
この記事の目次
ミルワームはゴミムシダマシ科の幼虫
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ミルワームとは飼育動物の餌にするために飼育・繁殖されているゴミムシダマシ科の幼虫のことです。英語で書くと、「Mealworm」。つまり、食事用の幼虫になります。ミールワームやミルウォームとも呼ばれています。
元々ミルワームの成虫であるゴミムシダマシのいくつかの種類は、穀物倉庫で貯穀害虫となっています。ミルワームの成虫は穀物を食べてしまう害虫なんです。
これらミルワームの成虫のゴミムシダマシは本来は乾燥した土地(農地など)でイネ科の植物の種子や腐植質、動物の死体などを食べていて生活していたと思われます。人間が穀物を倉庫などに貯蔵するようになってから、その穀物にくっついて倉庫や屋内に生活圏を広げていきました。
そして、ミルワームはこの屋内生活に適応してきました。そして、小動物の餌として飼育・繁殖されるようになっていきます。小動物の餌として飼育・繁殖されるようになった理由には次のようなものがあります。
・人工的な飼育環境に適応している
・簡単に大量増殖が可能
・小鳥や爬虫類、両生類の餌として適した大きさ
・幼虫期間が長いので一年中餌として供給できる
そのため、ミルワームは小動物の餌として飼育・繁殖されるようになったのです。ミルワームを餌とする小動物には次のようなものがあります。
・ハリネズミ
・小鳥
・爬虫類
・両生類
・熱帯魚
これらのペットを飼っている人には、ミルワームは「お馴染み」の餌だと思います。
また、ミルワームはペットの餌だけではなく、動物園や動物実験を行っている研究施設でも飼育・繁殖されています。
ミルワームには種類がある!
ミルワームとは、ゴミムシダマシ科の幼虫の総称です。「総称」なので、ミルワームは1種類ではありません。ミルワームにはいろいろな種類があるのです。
日本のミルワームは、主に次の3種類があります。
・コメノゴミムシダマシの幼虫
・チャイロコメノゴミムシダマシの幼虫
・ツヤケシオオゴミムシダマシの幼虫
■コメノゴミムシダマシの幼虫(体長17mm)
コメノゴミムシダマシは高温に強いという特徴があり、熱帯から温帯に広く分布しています。
日本では貯穀害虫として野生化していますが、ペットの餌としては流通していません。
幼虫の色が少し暗い褐色であるため、「ダーク・ミルワーム」と呼ばれています。
■チャイロコメノゴミムシダマシの幼虫(体長17mm)
低温に強く、温帯の涼しい地域に生息しているミルワームです。
このミルワームが、現在の日本で主にペットの餌として流通している種類で、色は黄色がかっているので、「イエロー・ミールワーム」と呼ばれています。
■ツヤケシオオゴミムシダマシの幼虫(体長40mm)
ツヤケシオオゴミムシダマシの幼虫は1990年ごろに中国の業者を通じて日本に持ち込まれ、1995年ごろから大量に流通するようになったミルワームです。
このミルワームの特徴はとにかく大きいことです。
旧来のミルワームが体長17mm程度であるのに対し、ツヤケシオオゴミムシダマシの幼虫(ミルワーム)は体長40mmにもなります。
そのため、旧来のミルワームと区別するために、次のような名前で呼ばれることが多いです。
・ジャンボミルワーム
・ジャイアントミルワーム
・キングミルワーム
・スーパーミルワーム
これら3種類のミルワームが日本の主なミルワームですが、これ以外に似たような昆虫であるコクヌストモドキやガイマイゴミムシダマシも動物園等で飼育・繁殖されていますが、一般には流通していません。
ミルワームの飼育・繁殖方法①:餌は何を与える?
ミルワームの飼育・繁殖方法をご紹介していきます。まずは、ミルワームの餌からです。ミルワームを飼育・繁殖させる場合は、どんな餌を与えれば良いのでしょうか?自分のペットの餌のために、ミルワームを増やしたい人は、飼育・繁殖方法を確認しておきましょう。
ミルワームは一般的には小麦のぬか(ふすま)やパン粉を餌として与えます。飼育容器の中にふすまやパン粉を敷き詰めて、そこでミルワームや成虫を飼育すると、それを餌として食べながら、繁殖していきます。ただ、ミルワームを飼育している人の話によると、ミルワームにも動物性たんぱく質は必要とのこと。
ミルサーなどで砕いたペレットは腐りやすいので、新鮮な物を利用します。ミルワームにも動物性タンパク質は必要なので、ペレットなら何でも良いわけではありません。タンパク質が足りないと、脱皮に失敗して死んだり共食いの原因になります。
ちなみに、ミルワームは動物性たんぱく質は大好きなようです。
本気でミルワームを飼育・繁殖させるなら、ふすまやパン粉を主食にしつつ、ハムスター用のペレットなどを与えるようにすると良さそうです。
ミルワームの飼育・繁殖方法②:環境
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ミルワームの飼育・繁殖方法、次は飼育環境についてです。
ミルワームを飼育・繁殖するためには、多湿の環境は避けましょう。湿度が高いと真菌が繁殖し、ミルワームが真菌に感染して死亡します。真菌に感染して死亡したミルワームをそのままにしておくと、ほかのミルワームがその死体を食べてそこから感染が広がっていき、飼育容器の中のミルワームが全滅しますので、注意が必要です。
また、ふすまやパン粉を敷き詰めた環境はダニが発生しやすくなるので、こまめな掃除が必要です。
さらに、成虫は産卵する時に、ふすまの中に卵を産みつけます。そこから孵化してミルワームになり、蛹になって成虫になるのですが、蛹になったものはすぐに飼育容器からほかの容器に移す必要があります。蛹をそのままにしておくと、幼虫のミルワームが食べてしまうことがあるのです。
ミルワームの飼育・繁殖には、温度管理も重要です。室温が25度以上になると、ミルワームの成長は早くなり、寒くなると成長は遅くなり、死亡するミルワームも出てきます。
ミルワームはどのくらいで成虫になる?
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ミルワームはどのくらいで成虫になるのでしょうか?
ミルワームは一般的な環境で飼育していると、1~2月間は幼虫のままで、そこから蛹になり、1~2週間で成虫になります。1~2ヶ月間も幼虫でいてくれるので、飼育しやすいですし、ペットの餌にも適しているんですね。(※室温によって期間は異なります)
ミルワームを飼育している人は、ペットの餌のために飼育している人が多いと思いますので、基本的に成虫にさせずに、幼虫や蛹の状態でペットに与えていると思います。でも、うっかり気づいたらミルワームが成虫になっていた場合、どうすれば良いのでしょう?
ミルワームの成虫はミルワームの繁殖のために利用することはできますよね。では、餌としてはどうでしょう?イエロー・ミルワームであるチャイロコメノゴミムシダマシの成虫はお尻から悪臭を放つために、餌としての価値はなくなってしまいます。また、ミルワームの成虫は甲虫ですので、成虫は消化に悪いんです。
成虫をラットに餌として与えたら食べたという体験談を書いている人もいましたが、その人も「デメリットはあるが、メリットはない」と結論付けていました。
ミルワームをペットの餌のために飼育するなら、幼虫のうちにペットに与えて、成虫は繁殖用にした方が良さそうです。
ミルワームの保存は冷蔵庫
ミルワームは卵から孵化すると、1~2ヶ月間かけて脱皮を繰り返し、蛹から成虫へと成長していきます。ミルワームをペットの餌のために飼育している人は、蛹になってほしくない。ずっと幼虫のままでいてもらいたいと思うものですよね。
しかも、生きたままペットに食べさせたいから、できるだけ幼虫の期間を長くして保存したいと考える人は多いと思います。
もし、できるだけミルワームを生きたまま長く保存したいなら、ミルワームを冷蔵庫に入れましょう。もちろん、飼育容器ごとです。
ミルワームは温かい環境(25~30℃)だと成長速度が速くなります。逆に、室温が低くなると、成長速度が遅くなるのです。
10℃以下で保存すると、成長速度が遅くなり、蛹にならずに長く幼虫のままで飼育することができます。ただ、寒すぎると発育不全を起こして、ミルワームは死亡してしまいますので、注意が必要です。
これらのことを考慮すると、ミルワームを幼虫のまま保存するのに一番適しているのは、冷蔵庫の野菜室です。冷蔵庫の中でも、野菜室は一番温度が高い(3~8℃)なので、成長不全で死亡する確率を減らすことができます。
ミルワームを餌にする時の注意点①:栄養バランスに注意
ミルワームを餌にする時の注意点、1つ目は栄養バランスです。ミルワームは小動物のペットの餌としてよく用いられていますが、実は栄養バランスが悪いんです。
ミルワームはカロリーは高いのですが、カルシウムが少なく、リンが多いという特徴があります。一般的には栄養バランスとしてはリン:カルシウム=1:1.5のバランスが良いとされています。しかし、ミルワームはリン:カルシウム=14:1なんです。
そのため、ミルワームを餌の主食にしてしまうと、カルシウムの吸収が阻害され、骨に異常が出る可能性があります。特に、両生類や爬虫類の場合にミルワームだけを餌として与えてしまうと、異常が出やすくなるようです。
それを避けるためには、カルシウムを餌の中に混ぜたりする必要がありますが、ミルワームは主食ではなくおやつ程度にしておけば、このリンが多くカルシウムとのバランスが悪いという問題は、それほど気にしなくて大丈夫です。
ミルワームを餌にする時の注意点②:頭をつぶす
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生きたミルワームをペットの餌にする時には、頭をつぶしてから与えるようにしましょう。
哺乳類や鳥類は咀嚼したり啄んだりして食べますので、それほど問題にはならないのですが、両生類や爬虫類に生きたミルワームを与える場合には、頭をつぶしてから与えたほうが良いです。
なぜなら、生きたミルワームは体内で内臓を食い破ってしまう可能性があるからです。特にジャイアント・ミルワームを両生類に与える時には注意が必要です。
ジャイアント・ミルワームは大きいですし、両生類は獲物を丸呑みする性質があります。つまり、ミルワームが生きた状態で飲み込まれるということです。大きなミルワームだったら、生きた状態でその両生類の内臓を食い破るリスクは十分にあります。
ミルワームは共食いをするような食欲旺盛な幼虫ですから、愛するペットが喜ぶと思って大きなミルワームを生きたまま与えたら、そのミルワームに体内から食い破られてしまった・・・。なんてことになりかねないのです。
もちろん、生きたミルワームを与えたら、必ず内臓を食い破られるとは限りませんが、頭をつぶしてから餌をあげるようにしましょう。
ミルワームを餌にする時の注意点③:消化不良を起こす
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ミルワームは消化に悪い餌なんです。ミルワームの幼虫はなんとなく、栄養価が高いし、消化が良さそうなイメージがありますよね。でも、そんなことはありません。
ミルワームの外皮にはエビやカニの甲殻類の殻やカブトムシなどの甲虫の外骨格に含まれるキチン質が含まれています。このキチン質を爬虫類は消化できません。(人間もキチン質は消化できません)そのため、ミルワームを爬虫類や両生類が食べてしまうと、体調不良を起こすことがあるようです。
うちもウパではないですが、サラマンダーを飼ってます。うちの子はほぼ100%の確率でミルワームを消化できずに数日後に吐き出します。吐き出した後は弱って死んでしまいました。爬虫類飼育初心者の頃の話です。3匹飼い始めてミルワームで2匹死にました。
消化不良を起こさずに、おやつとして問題なく食べるケースもありますが、消化不良を起こすケースもありますので、様子を見ながら餌をあげるようにすると良いでしょう。
ミルワームの販売場所
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ミルワームはどこで販売されているのでしょうか?
・ホームセンター
・インターネットショップ
・ペットショップ
・熱帯魚ショップ
・釣り具屋
これらのお店で購入することができます。
ミルワームはペットの餌として購入するなら、乾燥タイプや缶詰に入った生タイプがおすすめです。自分でペットの餌のために飼育するなら、生きているものを購入するようにしましょう。
ミルワームは食べることができる
両生類や爬虫類、鳥類、ハムスターなどの小動物のペットの餌として重宝されているミルワームですが、ミルワームを食べるのはペットだけではありません。人間もミルワームを食べることができます。
近年、昆虫食に注目が集まっています。昆虫食と言えば、日本だとイナゴやハチの幼虫などが古来から食べられてきました。昆虫の血液に含まれるアミノ酸は哺乳動物の肉のアミノ酸の構成に似ているし、栄養価が高いし、昆虫の脂肪は日常的に食べる油と近く、さらに人間が必要とするビタミンのほとんどが含まれていることがわかっています。
昆虫食は:国際連合の専門機関の一つ「国際連合食糧農業機関(FAO)」もタンパク源として世界的な人口増加による食糧難対策の一端を担う食文化として評価しています。
引用:Amazon | 食用 Mealworms15g(ミルワーム10g)昆虫食 | JR Unique Foods | おつまみ・珍味 通販
つまり、昆虫は人間にとって栄養価が高い食べ物であると言えるのです。そして、ミルワームも例外ではありません。人間が食べるためにミルワームを加工した商品も販売されています。こちらはミルワームを加熱処理した後、高温で乾燥させた物です。ミルワームのローストのような状態ですね。
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こちらは、ミルワームを使ったプロテインバーです。
出典:prtimes.jp
ミルワームは癖が少なくて、食べやすいようです。
癖が少なくどんな食材ともマッチし、環境にやさしいタンパク質が摂取できる次世代タンパク原料ミルワームを一足早く体験しよう!
引用:EUで食用として認可された注目昆虫食材"ミルワーム"配合のプロテインバー日本初上陸。|株式会社アールオーエヌのプレスリリース
ただ前述のようにミルワームの外皮(外殻)にはエビやカニの甲殻類と同じキチン質が含まれていますので、エビアレルギーやカニアレルギーの人は食べるのはやめた方が良いでしょう。
ミルワームのまとめ
ミルワームとは何か?その詳細や飼育・繁殖方法、成虫について、保存方法や餌としてあげる時の注意点などをまとめました。
ミルワームは飼育しやすいペットの餌ですが、餌をあげる時には注意点を読んでからあげるようにしてください。