日本最南端の島・沖ノ鳥島は日本の国益や防衛に大きく関わる重要な島です。
この記事では沖ノ鳥島についてどこにあるのかや何圏に属するのか、面積や大きさ、人口、ずるいという意味不明な意見や護岸工事前の昔の姿、護岸工事など多額の費用をかけて守る理由、現在についてまとめました。
この記事の目次
沖ノ鳥島は日本最南端の国境離島で中国・韓国は岩だと主張して日本と対立
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沖ノ鳥島(おきのとりしま)は、太平洋・フィリピン海上に位置する日本国最南端の国境離島です。東京都心から南へ約1700キロメートルの場所に位置しています。
干潮時には、南北約1.7キロメートル、東西約4.5キロメートル、周囲約11キロメートルの大きさのナス型の卓礁(環礁から卓礁へと変化する過程の準卓礁)が海面に現れ、約5.8平方キロメートルにもおよぶ礁内には満潮時でも海面上にある2つの小島(東小島、北小島)が存在し、いずれも護岸工事により周囲を直径約50メートルの護岸コンクリートにより防護されています。
沖ノ鳥島は国際法上(国連海洋法条約)は明確に「島」の定義を満たしていますが、中国や韓国、台湾が、排他的経済水域を設定できない「岩」であるなどと主張しており、対立を生んでいます。
中でも中国は沖ノ鳥島周辺の日本の排他的経済水域(EEZ)内において、日本政府の許可を得ない海洋調査や軍事的活動を行って不法に現状変更を企てており、日本の権利を持つ経済的資源や海洋調査などの管轄権を侵害しているだけでなく安全保障の面でも深刻な問題を引き起こしています。
沖ノ鳥島はどこか場所と地図
沖ノ鳥島がどこかについてですが、場所は「北緯20度25分、東経136度04分」で、太平洋のフィリピン海上に位置しています。
沖ノ鳥島がどこにあるかをイメージしやすくするためもう少し補足すると、東京都心からは南へ約1700キロメートルで船で約4日間かかる距離にあり、滋賀県の琵琶湖のほとんど真南、ハワイ諸島からまっすぐ東、ベトナムのハノイからまっすぐ西に行ったあたりに所在しています。
沖ノ鳥島は近年リゾート地として人気が高まっている小笠原諸島父島からは約910キロメートル離れています。
下は沖ノ鳥島のグーグル地図です。右下の「-」を押して縮小表示すると本土から見てどこにあるかがイメージしやすいかと思います。
沖ノ鳥島は何県か…東京都小笠原村に所属
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沖ノ鳥島が何県なのかもネット上では話題にされています。
一般知識の学習にて…日本の領海、排他的経済水域の面積は447万平方キロメートルで世界6番目で日本の国土面積の約12倍。
日本の最南端は沖ノ鳥島は何県か?
最初は不正解でした😅東京は何気に広いです。おやすみなさい😴#沖ノ鳥島#南鳥島#択捉島#与那国島#波照間島#全国通訳案内士
— 伸衛門 (@nobiemon3776) June 5, 2022
沖ノ鳥島とか南鳥島って何県なの
— ほろちの酢 (@hrc_vinegar) January 2, 2024
沖ノ鳥島が何県かですが、「東京都小笠原村」に所属しています。
沖ノ鳥島は無人島ですが住所が設定されており、郵便番号は他の小笠原村の地域と同じ「100-2100」で、住所は「東京都小笠原村沖ノ鳥島」で、北小島が東京都小笠原村沖ノ鳥島1番地、東小島が東京都小笠原村沖ノ鳥島2番地となっています。
なお、2005年5月20日に国土交通省が沖ノ鳥島の北小島を囲むコンクリート製の護岸上に住所などを刻んだチタン製の銘板を設置しています。銘板は縦1メートル、横1.5メートルの大きさで、「東京都小笠原村沖ノ鳥島一番地」、「日本国最南端の島」、「沖ノ鳥島は、国土交通省が海岸保全区域に指定し、管理しています」などと刻まれ、緯度と経度も刻まれています。
国土交通省は20日、日本最南端にあり、200カイリの排他的経済水域を確保するために重要な沖ノ鳥島(東京都)に住所を示す銘板を17日に取り付けたと発表し、画像を公開した。 銘板はチタン製で縦1メートル、横1・5メートル。横書きで「東京都小笠原村沖ノ鳥島一番地」との住所表示とともに緯度や経度、「日本国の最南端の島」などと刻んでいる。
これには、沖ノ鳥島が日本国の領土であり、日本国政府が管理している事を明確に示すという意図があります。
沖ノ鳥島の面積と大きさ
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沖ノ鳥島の面積や大きさですが、結論から言えばかなり大きいです。
沖ノ鳥島は満潮時でも海面上に出る部分は東小島と北小島の先端部分のみで、その大きさや面積は合計で9.44平方メートルほどですが、干潮時に現れるナス型の卓礁(環礁から卓礁へと変化する過程の準卓礁)は干潮時に姿を見せる事から国際法上「これが海岸線となり、その内側が領土」と定義されます。したがって、その卓礁とそれに囲まれた部分が、沖ノ鳥島の面積と大きさになります。
この沖ノ鳥島の卓礁は東西約4.5キロメートル、南北約1.7キロメートル、周囲の長さは約11キロメートルにもおよびます。この礁内の面積から、沖ノ鳥島の面積と大きさは約5.8平方キロメートルです。これは、東京ドーム約107個分の面積、大きさとなります。
沖ノ鳥島周辺の排他的経済水域の大きさや面積は日本全体の約1割を占めている
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排他的経済水域は自国の領海基線から200海里(約370キロメートル)を超えない範囲で設定できると国際法(国連海洋法条約)で定められていて、日本国政府は「排他的経済水域及び大陸棚に関する法律」という国内法で排他的経済水域を定めています。
日本の領土である沖ノ鳥島は国際法の定義上間違いなく「島」なので、その周辺には日本の排他的経済水域が設定されています。この沖ノ鳥島周辺の排他的経済水域の面積や大きさは約40万平方キロメートルにもおよび、日本の国土全体の面積と大きさ(約38平方キロメートル)を上回っています。そしてこれは、日本全体の排他的経済水域の面積や大きさのうち約1割を占めています。
排他的経済水域とは、水域内にある水産や鉱物資源を調査、開発、保存、管理する排他的な権利が国際的に認められる領域です。つまり、日本がこの領域内の海産資源や石油・天然ガスやレアメタルなどの資源の独占的な権利を有するという事です。
沖ノ鳥島の周辺海域は、カツオやマグロなどの回遊魚の産卵場所であり豊富な水産資源を有し、海底にはメタンハイドレードや銅などを含むマンガンなど貴重な鉱物資源も大量に存在すると分析されています。
つまり、沖ノ鳥島の排他的経済水域を失うことは、日本国にとって国益を大きく損なう事となり、日本政府は沖ノ鳥島を保護するために護岸工事、港湾建設事業などに総額で750億円以上費用を投じています。
沖ノ鳥島の人口は0人(無人島)だが、引越しを試みる動きも存在
沖ノ鳥島の人口は「0人」、つまり無人島です。
沖ノ鳥島には過去の歴史的にも人が住んだ事はなく、ずっと人口は0人です。
国連海洋法条約に「人間の居住や独自の経済的生活を維持できない岩は、EEZや大陸棚を持たない」という条項があるため、中国や韓国などは、沖ノ鳥島で経済的生活は維持できないため、岩であると主張しています。
これに対し、沖ノ鳥島は住所が設定されているため、理屈の上では引っ越し可能であるとして、経済的生活を維持できる事を示すために引越しを試みている方もいるようです。
ただし、現状では沖ノ鳥島に居住する事は難しそうです。しかし、日本国政府は沖ノ鳥島に港湾設備の建設を進めており、将来的には周辺海域の調査拠点なども設置する可能性があります。こうした動きを見るに、現在は人口0人である沖ノ鳥島ですが、いずれは居住が可能な状態に整備されるのではないかと思います。
また、過去には、沖ノ鳥島に日米共同の浮体基地を建設する構想が持ち上がった事がありました。現在の国際情勢でこれを実現する事は難しそうですが、沖ノ鳥島は、日米にとって中国の太平洋進出を防ぐ上で重要な軍事的要衝であるため、そうした構想が再び持ち上がっても不思議ではありません。
沖ノ鳥島の護岸工事がずるいという意見もあるが領土を保護するのは当然
日本政府は、沖ノ鳥島が存在する事によって設定されている排他的経済水域を保持するために、沖ノ鳥島で満潮時にも海面上に出ている「北小島」と「東小島」の護岸工事を実施し、それぞれコンクリート製の直径50メートルの円形の護岸で防護しています。
これに対して、小さな島を人工物で覆うのはずるいのではないかといったわけのわからない意見があるようです。
まず、沖ノ鳥島は国際法上、完全の島の定義を満たしています。
1994年11月16日に国連発効の海洋法に関する国際連合条約(国連海洋法条約)では以下のように定義されています。
第121条 第1項:島とは、自然に形成された陸地であって、水に囲まれ、高潮時においても水面上にあるものをいう。
沖ノ鳥島の「北小島」と「東小島」は自然に形成された陸地であり、満潮時も水面上にしっかりとあるので、「島」の要件を満たしています。
日本政府としては、自国の領土である「島」を風化などから保護するために、護岸工事を行ったに過ぎず、何がずるい事なのかよくわかりません。自国の領土を保護するのは国家として当然の権利であり、政府にとっては国民に対する義務です。
「 #沖ノ鳥島 」でGoogle検索をしたら、第二キーワード候補に「ずるい」って…おかしいとちゃう?別に国際法上認められた権利を行使して何が悪いのやら。これも、もしかしたら特定アジアやそれを支持する内外勢力からの工作行為かい? pic.twitter.com/raF562Gt2p
— さいど@英国面🇬🇧 (@hunter_sbs) July 22, 2020
沖ノ鳥島ずるいという気持ちはわかるがww
国際的なルールに基づいてなおかつ世界的に認められているからええやろと思う— 都築孝太 (@koyuchi6174) February 24, 2021
沖ノ鳥島の昔の姿について
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沖ノ鳥島の昔の姿も話題になっています。
上の画像はインターネットの匿名掲示板に投稿されて話題になった沖ノ鳥島の昔の姿ですが、マッシュルーム形状をした北小島と現在は消失したという南小島(実際にはそんなものはなく実際には現在は東小島に名称が変わっただけであり消失もしていない)とのキャプションが付けられています。
上の沖ノ鳥島の昔の姿の画像ですが、満潮時のものではなく、護岸工事が行われる前の様子を撮影したものです。沖ノ鳥島の海岸線を構成する卓礁の内側は浅瀬になっており、水深は3メートルから5メートルです。
沖ノ鳥島の昔の姿としては、1987~1988年の新聞に当時の北小島、東小島(南小島と呼称されていた)の断面図のイラストや、護岸工事の完成予想図などが掲載されていたので紹介しておきます。
出典:https://www.oceandictionary.jp/
上の沖ノ鳥島の昔の姿の画像は、1987年に新聞掲載された沖ノ鳥島の断面図です。左が北小島、右が東小島(当時の名称は南小島)です。
出典:https://www.oceandictionary.jp/
上の画像は沖ノ鳥島の護岸工事前に新聞掲載された護岸の完成予想図です。
沖ノ鳥島で護岸工事を行った理由は排他的経済水域を維持し国益を守るため
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ここまででも書いているように、沖ノ鳥島は国際法上れっきとした「島」なので、周辺に排他的経済水域が設定されています。
日本政府が巨大な国費を投じて、護岸工事を行うなど沖ノ鳥島を防護している理由は、この排他的経済水域を維持して国益を守るためです。
沖ノ鳥島で満潮時に水面上に出ているのは、現在、北小島と東小島だけで、この2つが風化で削られたり温暖化による水面上昇によって水没した場合、国際法での「島」の要件を満たさなくなり、同時に排他的経済水域も消失してしまいます。
そうなると、日本は日本の国土よりも広い排他的経済水域を失う事になり、その水域にある水産資源、海洋資源の権利を全て失う事になります。日本政府が大きな国費を投じて護岸工事や港湾設備の建設などを進めている理由はそうした国益を守るためです。
また、中国はアジア諸国への支配力の強化や太平洋の資源の獲得のために太平洋方面への進出を狙っていますが、その意味で沖ノ鳥島と周辺海域は軍事的な要衝です。仮に沖ノ鳥島が島でない事になって排他的経済水域が消失すれば、その水域は公海として扱われる事になるため、中国の進出を抑止する法的な根拠を失う事になり安全保障の意味でも大きな脅威となります。
例えば、中国軍の潜水艦が沖ノ鳥島の周辺海域に自由に進出できるようになれば、仮に有事となった場合にアメリカ軍と自衛隊との連携が阻害されたり、民間のタンカーや輸送船が攻撃されたりする恐れがあります。
これも、沖ノ鳥島を絶対に「島」として維持しなければならない重要な理由です。
沖ノ鳥島の現在① 中国の調査船による挑発行為が続いている
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海上保安庁の第3管区海上保安本部の発表によれば、2024年1月1日に中国の海洋調査船「大洋号」が、沖ノ鳥島の南南西約277キロメートルの日本の排他的経済水域内で、船尾からワイヤーのような物を海中に伸ばしているのを、海上保安庁の航空機が確認したという事です。
海上保安庁は発見した航空機より無線で「我が国の同意を得ない調査活動は認められない旨の中止要求」を実施したという事です。
本日午後1時13分頃、当庁航空機が沖ノ鳥島の南南西約277キロメートル の我が国排他的経済水域内において、中国海洋調査船「大洋号」が船尾側 からワイヤー様のものを海中へ延ばしているのを確認しました。 このため、当庁航空機から中国海洋調査船「大洋号」に対し、我が国の 同意を得ない調査活動は認められない旨の中止要求を無線にて実施しました。
元自衛隊幹部(元一等陸佐)の参議院議員・佐藤正久さんもこれについてXで言及されています。
【元旦から #中国海洋調査船「大洋号」が、沖ノ鳥島の南南西約277キロメートルの我が国排他的経済水域内で、船尾側からワイヤー様のものを海中へ延ばしている行為を確認】
元旦から挑発行為を行う中国、目的は対米潜水艦か?…— 佐藤正久 (@SatoMasahisa) January 1, 2024
沖ノ鳥島の周辺海域の日本の排他的経済水域では、中国によるこうした挑発的行為が長年執拗に続けられています。
中国政府は、沖ノ鳥島は「島」ではなく、「岩」である、したがって排他的経済水域ではなく公海であると主張して、日本側からの抗議を無視し続けています。
沖ノ鳥島の現在② 日本政府は港湾施設の建設整備を進めている
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沖ノ鳥島に関する日本政府の現在の動きですが、北小島沖で桟橋と荷捌き施設など、港湾施設の建設整備が進められています。予算は88億円が充てられており、完成予定は2027年と発表されています。
国土交通省関東地方整備局特定離島港湾事務所は2023年4月14日、2023年度の事業概要を公表。「沖ノ鳥島における活動拠点整備事業」に88億円を充て、船舶の係留や停泊、荷捌きなどが可能になる港湾施設の整備を進める方針です。
沖ノ鳥島の現在③ サンゴ増殖により島の水没を防ぐプロジェクトも開始
沖ノ鳥島は、満潮時に水面上に出ている部分がわずかで、今後の地球温暖化によって海水面が上昇すれば完全に水没し、「島」の要件を満たさなくなる恐れがあります。
これを防ぐ試みとして、東海大学や政府が共同したサンゴ増殖による陸地化のプロジェクトが進められています。沖ノ鳥島はサンゴが積み重なってできた島であるため、そのサンゴの成長を促す事により、海面上昇による水没を防ぐ試みとなっています。
まとめ
今回は、日本の最南端の島である「沖ノ鳥島」についてまとめてみました。
沖ノ鳥島はどこかというと、東京都心から南へ約1700キロメートルの太平洋・フィリピン海上で、「北緯20度25分、東経136度04分」に位置しています。滋賀県の琵琶湖のちょうど真南、船で大体4日の距離です。
沖ノ鳥島が何県かですが、これは「東京都小笠原村」に所属しています。住所も割り当てられていて「東京都小笠原村沖ノ鳥島1番地と2番地」となっています。
沖ノ鳥島の面積や大きさは、東西約4.5キロメートル、南北約1.7キロメートル、周囲の長さは約11キロメートルです。沖の島の海岸線は、干潮時に海面上に出る珊瑚礁の卓礁でその礁内の面積は約5.8平方キロメートルです。これは、東京ドーム約107個分の大きさとなります。なお、満潮時に海面に出ているのは北小島と東小島の2ヶ所のみでこの大きさと面積は、合計で約9.44平方メートルです。
沖ノ鳥島の人口は「0人」の無人島で、歴史的にも人が住んでいた時期はありません。
沖ノ鳥島は、満潮時に海水面に出る2つの小島の風化を防ぐために護岸工事を行なって周囲に直径50メートルのコンクリート製の護岸壁を建設して防護しています。これをずるいという意見があるようですが、日本政府は領土である島を保護しているだけであり、何がずるいのかよくわかりません。沖ノ鳥島の護岸工事前の昔の姿を撮影した写真もネット上では話題になっています。
沖ノ鳥島に護岸工事をしてまで保護する理由は、沖ノ鳥島が国際法上の「島」である条件を満たすように保護するためです。「島」である条件を満たしている限り、日本政府は排他的経済水域を設定でき、その水域の水産資源と海洋資源の権利を有する事ができます。沖ノ鳥島の2つの小島が完全に水没した場合、島の条件を満たさなくなるため、排他的経済水域も消失し日本国の国益を損なう事になるためです。また、沖ノ鳥島は軍事的にも重要な場所にあり、中国の進出を防ぐためというのも大きな理由です。
現在、沖ノ鳥島の周辺では、中国の海洋調査船が挑発的な行為を繰り返しています。日本政府は沖ノ鳥島での港湾設備の整備を進めています。