深海には不思議な生物、不気味な生物がたくさんいますが、その中でも現在人気があり、注目を集めているのがダイオウグソクムシです。
ダイオウグソクムシの大きさや生息場所、寿命、絶食できるなどの食生活、古代生物なのかどうか、食べることができるのか?かわいいグッズや飼育している水族館、飼育方法などをまとめました。
この記事の目次
ダイオウグソクムシとは
ダイオウグソクムシとは、カリブの深海に生息しているダンゴムシを巨大化したような見た目をしている海生甲殻類です。
等脚目スナホリムシ科に属し、等脚類としては世界最大の大きさを誇ります。ダンゴムシのような形をしていて、「世界最大のダンゴムシ」と言われることも多いですが、分類的にはフナムシに近いです。
ダイオウグソクムシの特徴を箇条書きでまとめました。
・深海(水深350~2300m)に生息
・背中は十数枚の頑丈な甲羅に覆われている
・腹側は7対14本の歩脚と大きな板状の遊泳脚
・尾部にトゲあり
・2本の触覚
・三角形の複眼を持つが複眼は3,500個の個眼が形成している
ダイオウグソクムシは背中はグソクムシという名前の由来にもなっている具足(兜・鎧)のような硬い甲羅で覆われていて、外敵から身を守っています。腹側には7対14本の歩脚があり、泳ぐ時には板状の遊泳脚と扇型の尾を使って水中を泳ぎます。
ダイオウグソクムシは深海に生息していますので、光に弱いという特徴があり、海面付近の明るさで失明する恐れがあったり、光を分単位で与えるだけで死んでしまうことがあります。
ダイオウグソクムシの大きさ
出典:enosui.com
ダイオウグソクムシの大きさは体長約20~40cm、体重は1kg以上にもなります。過去には体長76cm・重さ1.7kgのダイオウグソクムシが見つかったという記録もあります。
池袋のサンシャイン水族館では、ダイオウグソクムシの大きさを「ネコと変わらない」と表現しています。
体長約45cm、体重は1.7kgに達する個体もあり、猫と変わらない大きさです。
猫サイズのダンゴムシと考えると、ダイオウグソクムシの不気味さ・グロテスクさがよくわかると思います。
ちなみに、ダイオウグソクムシの仲間には「オオグソクムシ」もいます。ダイオウグソクムシとオオグソクムシを分けるのは大きさです。ダイオウグソクムシは体長15cm以下の「大型種」であるのに対し、ダイオウグソクムシは体長17cm以上、最大で40cm以上にもなる「超大型種」に分けられます。ダイオウグソクムシは等脚類としては世界最大となります。
オオグソクムシは最大体長15cm程度ですので、15cmのダンゴムシと考えると、オオグソクムシでも十分に大きくてグロテスクであることがわかりますが、ダイオウグソクムシはそれとは比較にならないほど大きくて、グロテスクなんです。
出典:enosui.com
上の写真で中心にいるのがダイオウグソクムシ。その右に寄り添っているのがオオグソクムシです。大きさが全然違いますよね。ダイオウグソクムシの大きさ・存在感、本当にすごいです。
ダイオウグソクムシの生息場所
ダイオウグソクムシが生息している場所は、メキシコ湾や西大西洋周辺の深海350~2,300m周辺になります。
ダイオウグソクムシが初めて発見されたのは1878年にオスがメキシコ湾の海底から発見され、1891年にメスが発見されました。深海に生息しているので、ほかの海洋生物よりも発見が遅かったのでしょう。
日本から遠く離れた場所、しかも人間が到達できない深海に生息していますので、簡単に捕獲することはできません。日本周辺にはダイオウグソクムシは生息していないのです。
ダイオウグソクムシの寿命
ダイオウグソクムシの生態はまだ解明されていないことも多く、寿命がどのくらいなのかは明確にはわかっていません。しかし、およそ50年程度ではないかと言われています。「寿命が50年」というのは、ほかの等脚目スナホリムシ科の生物の寿命から推定されたと思われます。
日本の水族館で飼育されているダイオウグソクムシは、メキシコ湾や西大西洋で捕獲されたものなので、水族館で孵化・繁殖したものではありません。また、養殖もされていません。
そのため、生まれた時から観察することができておらず、捕獲された時点で何歳なのかが分からないため、ダイオウグソクムシの明確な寿命はわかっていないと思われます。
寿命が数年程度なら、すぐに寿命がわかるのですが、ダイオウグソクムシは長生きなので寿命がなかなか分からないのでしょう。
鳥羽水族館の飼育員も、ダイオウグソクムシの交尾行動を見たことがないとブログに書いていました。
どうも、オスは生殖突起から出た精子を、交尾針を使ってメスに受け渡すようなのですが、このあたりは私も実際に交尾行動を見たことがないので詳しくはわかりません。
もし、水族館で孵化・繁殖に成功すれば、ダイオウグソクムシの寿命も明確にわかるようになると思うのですが、それでももし寿命が50年だと仮定した場合、寿命が明確にわかるのは繁殖成功から50年後になります。ダイオウグソクムシの生態・寿命が判明するのは、まだまだ先のことになりそうです。
ダイオウグソクムシは死骸を食べる海の掃除屋
ダイオウグソクムシの食生活についてみていきましょう。ダイオウグソクムシは「海の掃除屋」・「深海の掃除屋」と呼ばれています。
ダイオウグソクムシが住んでいる深海に沈んできた大型魚やクジラなどの死骸や弱った生き物などを食べて生きているんです。水中の有機物なら何でも食べてしまうので、「掃除屋」と呼ばれているんですね。
水族館ではダイオウグソクムシにアジやイカなどを餌として与えているようで、食事のスピードはかなり速いようです。
この時は約4分ほどで、イカのゲソを3本ほど食べてしまいました。驚異のスピードです。
ダイオウグソクムシがもしも人間なら、早食い選手権王者間違いなしです。
深海の底で上から落ちてきた死骸や弱った生物を食べてしまうダイオウグソクムシですが、ほかの等脚類と同じように共食いをしている可能性もあります。
ダイオウグソクムシは絶食OK?食べる量が少ない
ダイオウグソクムシは体長40cm以上になることもありますし、水中の有機物なら何でも食べてしまう「深海の掃除屋」ですので、「大食いで目の前にあるものはどんどん食べる」というイメージがあるかもしれません。
でも、ダイオウグソクムシは長期間絶食できるという生物であることがわかっています。
鳥羽水族館にいたダイオウグソクムシ「No.1」は2009年1月にアジを食べてから2014年2月に死亡するまで5年1ヶ月間、ずっと絶食していました。しかも、死んだ後に解剖して見たら、5年以上何も食べていなかったのに、餓死は否定される状況だったんです。
No.1の消化管全体に炎症や変色はなく、過去に解剖した個体よりも状態がよかった。甲羅の裏側などの肉も痩(や)せているように見えなかった。捕食している個体と同様に長期間の絶食を経たとは思えないような健全さをうかがわせた。こうした状態から、森滝さんは「直接の死因はわからないが、餓死したという状況ではない」と判断。
引用:【関西の議論】5年絶食の深海生物「ダイオウグソクムシ」衝撃、死因は「餓死」ではなかった…胃に謎の液体・菌、「食べなくても生きる」秘密か(3/4ページ) – 産経ニュース
死因は分かりませんが、瘦せ細っている様子はなかったために餓死ではないということです。
ダイオウグソクムシは深海で生活しているため、あまり餌を食べる機会がなく、それでも生息できるように進化していったのではないか?と言われています。
長崎大水産学部の八木光晴准教授らの研究グループによると、ダイオウグソクムシの仲間であるオオグソクムシは1回の食事で6年分のエネルギーを摂取していることがわかりました。
1年間に消費するエネルギーは約13キロ・カロリーで、1度の食事で体重の45%に当たる量の餌を摂取することがわかった。仮に海底に沈んだ鯨の脂身を体重の45%分食べたと計算すると、約6年分のエネルギーに相当するという。
ダイオウグソクムシよりは体が小さいとはいえ、1年間に消費するエネルギーは13kcal!これなら、数年間は絶食しても生きていけますね。おそらくダイオウグソクムシも同じようなエネルギー摂取状況と思われます。
なんでも食べる海の掃除屋だけど、絶食しても生きていけるというのは、本当に不思議な生物です。
ダイオウグソクムシのその他の特徴
出典:enosui.com
ダイオウグソクムシはとても不思議な生物ですが、その他の特徴を見ていきましょう。
泳ぐときは背泳ぎ!
ダイオウグソクムシには7対の歩脚と泳ぐための遊泳脚の2種類の足を持っています。
地面(海底)にいる時には甲羅(背側)を上にして、ダンゴムシのように7対の歩脚を使って歩きます。しかし、泳ぐ時には腹側を上にします。つまり、人間で言うと背泳ぎの状態で飛ぶように泳いでいきます。体をくねらせながら背泳ぎで移動しますが、外敵に襲われた時には背を上にしたまま泳いでいくこともあるそうです。
水深1,000mの海底で腹を上にしてくねくねしながら泳いでいるダイオウグソクムシ。かなりシュールな光景ですよね。
完全には丸まらない!
ダイオウグソクムシはダンゴムシを巨大化させたような見た目をしています。ダンゴムシと言えば、くるっとボールのように丸まって、「ダンゴ」のようになって身を守ろうとします。
では、ダイオウグソクムシはどうなのか?というと、外敵から身を守る時には背中にある甲羅を丸めます。でも、ダンゴムシのように完全には丸まりません。
しかし、ダイオウグソクムシは体全体をきれいに丸めることはできません。一方で、ダンゴムシと同様に、ダイオウグソクムシも脱皮します。
あの大きさできれいに丸まったら面白いのですが、さすがにそれはできないようです。
ダイオウグソクムシは古代生物?
出典:kaiyukan.com
ダイオウグソクムシは古代生物のような見た目をしていますよね。
オウムガイとかカブトガニなど、現代でも生き残っている古代生物と似たような見た目をしています。
神秘に満ちた深海生物「オオグソクムシ」。古代生物を彷彿とさせ、巨大なダンゴムシのようなインパクトのある外見だが、正面から見ると意外と愛らしい顔に和む。
でも、ダイオウグソクムシは古代生物かどうかはまだわかっていないようです。
・カブトガニ:4億4500万年前
・カブトエビ:2億年以上前
・オウムガイ:約5億円前
何億年前に生存していてその時から姿を変えていなければ古代生物と定義されるのかは不明ですが、現在確認されている最古のダイオウグソクムシの化石は800万年前です。
化石は約800万年前の地層から十数年前に見つかった。脱皮した殻の後ろ半分で全長は24センチ以上と推測される。尾部の形やとげの数などから新種と判断した。
このことから800万年前にはダイオウグソクムシは生息していたことがわかっていますが、それよりもっと前にもダイオウグソクムシがいたのかどうかはわかっていません。
二足歩行の猿人が出現したのは約700万年前ですから、それより100万年前に生息していただけでは古代生物とは言えませんね。ただ、もっと前にダイオウグソクムシが生息していた可能性はありますので、古代生物ではないと否定することはできません。
ダイオウグソクムシを食べることができる?
ダイオウグソクムシは食べることができるって知っていますか?大きなダンゴムシのような見た目をしたダイオウグソクムシを食べるなんて、あり得ないとも思うかもしれません。
台湾ではダイオウグソクムシが丸ごと一匹乗っかったラーメンが販売されました。
等脚類としては世界最大で、そのビジュアルは古代生物を彷彿とさせる「ダイオウグソクムシ」がまるごと1匹のっかったラーメンが台湾のラーメン店で限定販売が開始されたという。
ダイオウグソクムシは肉が少なくて臭みがあるため、食用には適さないものの、内臓を取り除いて調理をするとエビのように美味しくラーメンに合うのだそうです。
ちなみに、ダイオウグソクムシラーメンのお値段は1杯約6,780円。思ったよりも安いかも・・・。でも、食べたいかというと・・・、ですよね。
日本ではダイオウグソクムシは食べられないものの、それよりも小さいオオグソクムシを食べることはできます。
福岡市東区の水族館「マリンワールド海の中道」のレストランで、深海に生息するダンゴムシの仲間、オオグソクムシを食べることができるという。
東京の渋谷でも、オオグソクムシをメニューに載せているお店はあります。ニッポン放送のアナウンサーの内田さんが食べてみたところ、おいしかったそうです。
ボリュームのあるエビフライのエビのしっぽを食べている感じ…
飲み込むと、シャコとかに近い独特のコクがあり、甲殻類独特の香りが鼻を抜けます。
普通に、美味しい!!!
引用:【!画像アリ!】海の掃除屋オオグソクムシを食べてきた!! | おもカジ いっぱい | ニッポン放送 ラジオAM1242+FM93
ダイオウグソクムシは無理でも、オオグソクムシは日本で食べることができますので、興味のある人は挑戦してみてはいかがでしょうか。
ダイオウグソクムシはかわいい?
出典:prtimes.jp
ダイオウグソクムシは「かわいい」とか「キモかわいい」と人気になっています。
ダイオウグソクムシはYoutubeにアップされた鳥羽水族館のダイオウグソクムシの動画がバズって人気となりました。鳥羽水族館のほかの動画は再生回数1万回未満のものも多い中、2012年12月にアップされたダイオウグソクムシの餌やり動画の再生回数は81万回超(2023年6月時点)!ニコニコ生放送でも連続中継され話題になりました。
この動画がバズったことで、ダイオウグソクムシに対する世間の認知度が上がり、「キモかわいい」と言われるようになっています。そして、ぬいぐるみやストラップなどダイオウグソクムシのいろいろなグッズが作られるようになりました。
確かに、ダイオウグソクムシは見慣れてしまえば、「キモかわいい」と言えるかもしれませんが、初めて見ると、やっぱりギョッとする人が多いと思います。
ダイオウグソクムシがいる水族館
日本でダイオウグソクムシに会いたいなら、水族館に行くしかありません。ダイオウグソクムシがいる水族館は2023年6月時点で、ダイオウグソクムシが飼育されている水族館は11ヶ所あります。(日本動物園水族館協会データベースより)
・登別ニクス(北海道)
・サンシャイン水族館(東京都)
・葛西臨海水族園(東京都)
・八景島シーパラダイス(神奈川県)
・上越水族博物館(新潟県)
・名古屋港水族館(愛知県)
・鳥羽水族館(三重県)
・大阪海遊館(大阪府)
・須磨水族園(兵庫県)
・玉野海洋博物館(渋川マリン水族館・岡山県)
・大分マリーンパレス(大分県)
上記の水族館に行けば、日本でもダイオウグソクムシを見ることができます。特に、鳥羽水族館はダイオウグソクムシのブームの火付け役とも言える水族館ですのでおすすめです。
ダイオウグソクムシは飼育できる
出典:agara.co.jp
ダイオウグソクムシは自宅で飼育することができます。一般的には販売されていませんが、マニアックな生物を扱っているペットショップだと、販売していることもあります。1匹あたり15~20万円とのことです。
ただ、ダイオウグソクムシを自宅で飼育するのはかなり大変です。
・広い水槽が必要
・光に弱いので暗くする
・水温は0度に近い状態を保つ
深海生物なので光に弱く、分単位で光を与えるだけで死んでしまうことがある。大きい水槽がいるし、水温が0度近くじゃないといけない。『その環境は作れないしなぁ。研究は無理か』と諦めかけたんです」
研究者でさえ、飼育の難しさからダイオウグソクムシの研究を諦めたことがあるようです。
ダイオウグソクムシの飼育で定評がある鳥羽水族館でさえ、現時点で10年飼育できたダイオウグソクムシはいません。また、脱皮するとその後すぐに死んでしまうという事例が多いです。
だから、ダイオウグソクムシを飼育するなら、かなりの労力とお金が必要です。
オオグソクムシなら、ダイオウグソクムシよりは飼育しやすいとのことですので、まずはそちらから始めてみると良いかもしれません。
ダイオウグソクムシのまとめ
ダイオウグソクムシの大きさや寿命、生息場所、食事や絶食について、食べることができるのか、かわいいグッズやダイオウグソクムシに会える水族館と飼育方法などをまとめました。
ダイオウグソクムシは、確かに気持ち悪くて不気味なんですが、見ているとなんだかかわいく見えてくる、まさに「キモかわいい」生物です。絶食OKとかそういう不思議なところが多いのことも魅力の1つかもしれませんね。