モスマンはアメリカ合衆国で頻繁に目撃されたUMAです。
その正体や報告例から実在性も否めず、現れた場所には事件が起こる事から「災厄を呼ぶ魔物」の通称を持ちます。写真や動画の手掛かりも残されていますが現在、プッツリとその姿を消しています。
モスマンというUMAとは
モスマンが初めて目にされたのは1966年にまで遡ります。その年の11月12日、アメリカ合衆国ウェストバージニア州の墓地で作業をしていた成人男性5名の前に、その正体不明のUMAは突如として現れます。
木々の間を羽根のような腕部で羽ばたいて飛び回り、その場に居合わせた作業員たちの証言では「明らかに人間ではない」「鳥のような何かだった」というものでした。
それから僅か2日後、若い男女4名が同州の旧火薬実験工場地帯(当時は弾薬保管地域であり、開発兵器にちなみ通称“TNT地帯”と呼ばれていました)を夜更けにドライブしていました。この地帯は夜更けになると人通りも少なく、この様な場所には万国共通で“走り屋”・“恋人たち”そして前述の様な“暇を持て余した若者”の格好の遊び場となっていたようです。
この若者4名を乗せた自動車の前に突如として、身の丈3mはあり闇中でも巨大な赤目を爛々と輝かせる謎の生物が遭遇します。
慌てて踵を返し自動車はその謎の生物から逃れようとします。ただその得体の知れない生物は執拗に若者たちを追いかけ回します。それは自動車が時速160kmを超しても、並走するほどだったそうです。
「キィキィ」という不気味な鳴き声を発っしながら追走する生物を必死で振り払い、そのまま保安官の元に駆け込みます。事情聴取をした保安官はその奇妙な生物を目にしませんでしたが、現場ではカーラジオにひどいノイズが混じり続けていました。
この2回に渡る具体的な目撃情報を皮切りに、ウェストバージニア州一帯はこの得体の知れない未確認生物の目撃情報で溢れかえります。ちなみに地元民は当初この生物を「バードマン(Birdman)」と呼んでいましたが、代表的な呼び名である『モスマン(Mothman)※和訳:蛾人間』は後にUMA研究家であるアイヴァー・サンダーソンが名づけ、当時のマスメディアがこの名で頻繁に報道したことが要因です。
1960年代、米国の健全な少年少女を震え上がらせた怪物がモスマンです。ウェストバージニア州で初めて発見されたというこれは、羽と複眼を持つ蛾のような人間型のUMA。目撃した人に呪いと死をもたらすと言われています。映画「プロフェシー」やゲーム「Fallou76」にも登場しており、ある意味人気者です pic.twitter.com/Irt6J05gcW
— 昔の風俗をつぶやくよ (@LfXAMDg4PE50i9e) April 7, 2022
https://platform.twitter.com/widgets.js
目撃者・地域住民の話では…
- モスマンを目撃し急激に体調が悪化した
- 見ただけで目を怪我してしまった
- モスマンが現れてポルターガイスト現象が起こる様になった
- 追いかけた飼い犬が戻ってこない
- 未確認飛行物体(UFO)と共に表れた
という話が頻出するようになります。
モスマンは実在するのか?
モスマンの実在性については今なお議論がされています。当初目撃例は数百件にも上りましたが、後に紹介する事件を境に一切の目撃情報が途絶えてしまいます。
実質『モスマン』の目撃期間は1966年11月12日から1967年12月までの約1年間のみになっているのです。ある意味期間限定のUMAということで、信憑性がグッと下がってしまいますね…
ただ、その目撃場所は一局集中であり限定的な地域に限られています。
上記の地図内の赤印部分『ポイント・プレザント』という小さな町に集中しているのです。目撃例も数百に上ると言いましたが、そのほとんどの話に共通項がありモスマンの特徴にブレがないのが気になります。
目撃者達の具体的な情報をまとめて見ると…
・身の丈2m~3m程度
・「キィキィ」とネズミの様なげっ歯類の鳴き声をする
・大きく赤い丸い目を持つ
・褐色または灰色に近い体色を持つ
・なかなか頭部が視認できない
・両目の間隔は約10~20cmほどで、肩の辺りに位置する
・2~3mほどの巨大な翼を持つ
・時速120~200kmほどで羽ばたかず飛行する
・異様な肩幅の広さ
・人間のように二足歩行をする
・その赤い目を見るとまるで催眠術にかかった気分になる
・腕が存在しない
この様にかなりの共通項があり、一概に見間違えとは言い難い証言が羅列します。
モスマンが引き起こした事件
最初の“モスマン目撃例”から約1年後の1967年12月15日、とある事件が起こります。この事件が発端で、モスマンが災厄をもたらすUMAという確たる通説が流布される事になるのです。
その事件とはウェストバージニア州とオハイオ州間にかかるシルバーブリッジが崩壊し、死者46名・負傷者18名を出す『シルバーブリッジ崩壊事件』です。
大変痛ましい事件なのですが、この事件が起こる少し前に橋の欄干にたたずむ“モスマン”が多数の人物に目撃されているのです。かなり有名な写真ですが現存するものがこちらとなります。
この事件の不可解な点はたった一つ、これを境に年間数百件にも上ったモスマン目撃報告がピッタリと止んでしまった事です。
本事件以前はモスマンを目撃し体調不良を起こしたり、ポルターガイスト等の超常現象などが起こるという、小規模な事件?とまではいきませんが不可解な現象が数多く報告されていたはずです。
モスマンはシルバーブリッジ崩落事件を引き起こすためだけに姿を現したのか?それとも集団心理が引き起こした“集団ヒステリー”のような状況だったのでしょうか…?
モスマンの目撃場所
モスマンが目撃された場所は極めて限定され『ウェストバージニア州』の小さな町『ポイント・プレザント』の近隣地域に限定されています。
人気のない森林地帯や、ウェストバージニア州の閑散とした旧火薬実験工場地帯…正確に言及すると“ウエストバージニア州ポイント・プレザントのオハイオ渓谷”一帯で目撃が多発しています。
当時の時代背景ですが、1966年当時は世界各国でUFOの活動・目撃事例が活性化した年でもあります。本場UFOの目撃国と称されるアメリカも例外ではなく、各地で目撃情報が相次いでいたという事情があります。
更に1966~1967年当時は“ポイント・プレザント”自体が人口約6000人の小さな町であり、その様な場所であるにも関わらず教会が22ヶ所もあり、住民は皆信心深く敬虔なキリスト教徒だったそうです。
その信心深さゆえ、キリスト教で言う“神”の相反する存在である“悪魔”こと『モスマン』を集落内の伝聞により信じ切ってしまい、何かしらの生き物を誤認したという説もあります。
2022年現在でも事件の現場となった“ポイント・プレザント”の町には写真の様な像があり、モスマン伝説は今なお語り続けられているようです。
モスマンの写真や動画
モスマンの写真や動画については60年代のUMAであり、目撃期間が約1年間と短期間であるという事から数が非常に少なく、またその真贋性も多分に挙がります。当時は一般家庭にビデオカメラなどは普及しておらず、動画に関してはほぼ0の状態です。
その代わりと言っては何ですが断片的な写真・画像は残っておりますが、現在でもその信憑性については賛否両論です。
こちらは冒頭でご紹介した画像ですが、やや主旨が異なり約60年後の2018年8月27日、ネバダ州の高速道路を走行中だった男性の前に舞い降りた奇妙な生物です。非常に背丈が高く約2m以上あったとされ、モスマンを彷彿とさせる画像ですがフェイク画像という話が先行している状態です。
この写真はシルバーブリッジ崩落前に実際に現場でフィルムに収められたという“モスマン”です。60年代の画質なのでかなり不鮮明ですが…欄干に腰かけた人に見えなくもありませんよね…。
出典:https://www.thedailybeast.com/
この衝撃的な写真は2010年撮影され、ネット上で「モスマンの画像」として広く拡散されましたが、実は同年作の映画『The Mothman Legacy』の宣伝トレーラーの一コマに過ぎません。
打って変わりこちらは飛行する“モスマン”を写真に収めた瞬間です。匿名希望のアメリカ人ハンターが投稿したものと言われており、実際は2016年11月20日の夜中に木から木へと飛び移る“謎の生物”を撮影したそうです。
場所が今までの写真とは違い、モスマンが初めて発見されたポイントプレザントの町の近く、オハイオ川と平行に走る米国のウェストバージニア州の高速道路付近で偶然出会いシャッターを切ったそうです。
出典:https://commons.wikimedia.org/
こちらは珍しく白昼堂々と撮影されたモスマンです。限りなくハリボテに近い気がしなくもないのですが、一先ず真偽のほどは不明なので“モスマン”写真の事例として掲載させて頂きました。
この様に2000年代以降のモスマン撮影事例がかなり多く、その出現事例と撮影された写真にはかなりの波があるのが事実です。モスマン伝承自体が近年、アメリカ国内の映画の題材にされる事が多く…おそらくですがかなりの数のフェイク画像が混入しているのでは?とも勘ぐってもしまいますね。
モスマンの正体
モスマンの正体ですがこれについてはかなり諸説があります。
一つは猛禽類、即ち「アメリカミミズク」「アメリカコノハズク」「アメリカフクロウ」などの誤認説です。
モスマンの正体はただのフクロウだったと言うものがあるが。
本当にそれだけなのだろうか、だってそれだけじゃ、他のUMAオウルマンと被るからね。 pic.twitter.com/AqxHseCPwO— てほろう【初代】 (@4XkwKgCSrzg88qG) September 10, 2019
https://platform.twitter.com/widgets.js
Twitter上では疑問の声を呈していますが、確かに現在の様に情報が流通していない1960年代、当然ですがインターネットはおろかパソコンなどは一般家庭に流通しているはずもありません。せいぜい富裕層がラジオを所有しているくらいの時代です。
ただでさえ信心深い住民6000人を抱える小さな町、それが『ポイント・プレザント』という町です。
またこちらは正確にはウェストバージニア州に生息しない動物ですが、未発見のオオコウモリであるという説もまことしやかに囁かれています。
コウモリというとにわかには信じ難いでしょうが、上記の写真を見れば納得する方も多いのではないでしょうか?
2003年には橋から飛び立つモスマンの決定的な映像が公開されました。この映像では何かが橋の欄干を飛び越え、空高く舞い上がる姿が写っています。真実でしたら正にモスマンそのもの!ですが、この映像を著名なテレビ番組「ディスカバリー・チャンネル」が調査分析しました。
その結果として何と『黒いゴミ袋』である…と結論付けられてしまったのです。
他にも『先住民族の呪い』『地球外生命体』『並行世界の生物』説など、かなり話が飛躍し現実的ではありません。
これらを総括すると、やはり何らかの鳥類などの誤認説が今のところ有力説なようですね。
まとめ
今回は1966年から67年にかけてアメリカ・ウェストバージニア州ポイント・プレザントという小さな町に突如として現れ、住民を恐怖のどん底に落としこんだ未確認生物こと『モスマン』について取り上げました。
「死を運ぶ不吉な生物モスマン」そんな話が先行しますが、件のシルバーブリッジ崩落事件とは少しこじつけが過ぎるような気もしますね。
証拠となる写真もその信憑性がないとは言い切れませんが、かなり多方面で根拠が薄いと言われています。今やアメリカ合衆国内では完全な都市伝説化しており、その話には色々と尾ヒレが付きまとっています。
現在発見報告のあるモスマンは信憑性が薄いのですが、事件が起こるまでの1年間…確かにその存在に現実味が高かったのは確かです。今となっては確かめようもありませんが、一連のモスマン騒動はもしかして何かしらのUMAが関わっていたのかもしれません。