四日市ジャスコ誤認逮捕死亡事件は2004年に三重県四日市市で発生した窃盗犯人の誤認逮捕で、冤罪で取り押さえられた男性は死亡しています。この記事では本件の真犯人で怖いと言われる女の顔や、警察官のその後、現在、なんJでの反応を紹介していきます。
この記事の目次
- 四日市ジャスコ誤認逮捕死亡事件の概要
- 四日市ジャスコ誤認逮捕死亡事件の詳細① 事件の発端
- 四日市ジャスコ誤認逮捕死亡事件の詳細② 警察官の到着
- 四日市ジャスコ誤認逮捕死亡事件の詳細③ 杜撰すぎる対応
- 四日市ジャスコ誤認逮捕死亡事件の詳細④ 犯人の女の逃走
- 四日市ジャスコ誤認逮捕死亡事件の詳細⑤ 被害者男性の死亡
- 四日市ジャスコ誤認逮捕死亡事件の裁判・判決
- 四日市ジャスコ誤認逮捕死亡事件の問題点① 行き過ぎた正義感
- 四日市ジャスコ誤認逮捕死亡事件の問題点② 警察官による対応
- 四日市ジャスコ誤認逮捕死亡事件の問題点③ 拘束と死亡の因果関係
- 四日市ジャスコ誤認逮捕死亡事件の女の顔画像が公開・怖いと話題に
- 四日市ジャスコ誤認逮捕死亡事件のその後① 警察官の現在
- 四日市ジャスコ誤認逮捕死亡事件のその後② 時効の成立
- 四日市ジャスコ誤認逮捕死亡事件に対するなんJなどネットでの反応
- 四日市ジャスコ誤認逮捕死亡事件についてのまとめ
四日市ジャスコ誤認逮捕死亡事件の概要
2004年2月17日、三重県四日市市尾平町にあるジャスコ四日市尾平ショッピングセンター(現在のイオン四日市尾平店)で窃盗騒ぎが発生しました。
事件現場となったのは同店内のATMコーナー付近で、当事者となったのは当時68歳だった男性・Aさんです。
AさんはATMコーナー付近で、子どもを連れた若い女性Bに「泥棒!」と突然、言いがかりをつけられ、揉みあう最中に自分の財布を盗まれかけてしまいます。
しかし、Bの「泥棒!」という声を聞いて駆け付けた人たちは、AさんがBの財布を盗ったのだと思い込んでAさんを拘束。
通報を受けて現場にやってきた警察もAさんが窃盗犯だと思い込んで対処し、BがAさんから奪い取ろうとした財布からAさんの免許証などが発見された後も「事実確認を優先しようと考えた」としてBさんの拘束を続けました。
そしてその後、Bさんは嘔吐した後に意識を失い、そのまま死亡。死因は高度のストレスによる高血圧性心不全および不整脈と診断され、誤認逮捕と行き過ぎた拘束が原因で亡くなったことが判明します。
Bさんに窃盗の濡れ衣を着せながら、財布を盗もうとしたAは警察が到着した時にはすでに現場を離れており、現在も足取りがつかめていません。
そのため四日市ジャスコ誤認逮捕死亡事件は現在も未解決のままであり、「日本の犯罪史上稀にみる胸糞事件」と呼ばれています。
四日市ジャスコ誤認逮捕死亡事件の詳細① 事件の発端
2004年2月17日13時10分頃、ジャスコ四日市尾平ショッピングセンター付近を当時68歳だった男性・Aさんが通りかかりました。
Aさんは身長162㎝、体重67㎏と比較的小柄で、孫が買っていたハムスター(一部報道ではモルモットとも書かれていた)の餌を買いに店を訪れていました。
そしてもう1人の事件の当事者となる女性・Bも、Aさんの近くにいました。女性Bは2歳くらいの幼児を抱いており、年齢は20~30歳くらい、身長は約160㎝の瘦せ型だったといいます。
この女性Bは背後からAさんに近づくと、突然「泥棒!泥棒!」と叫び出したのです。
Bは何が何やらわからないAさんの左胸あたりを掴みながら騒ぎ立て、ATMコーナー近くの出入り口から入店した女性客・Fはその瞬間だけを見て「女性が高齢男性に物を盗まれた!」と思い込んでしまいます。
そして両者に状況を確認することなく、Bの加勢に入り、2人がかりでAさんを店のガラス壁に押し付けて拘束しようとしました。
さらにこの声を聞きつけ、少し離れた場所にあった化粧品店の近くにいた男性買い物客・GがAさんとBが1つの黒い財布を引っ張り合っている様子を確認。
「泥棒!」という女性の叫び声を聞いていたGは、財布はBのものでAさんが盗んだのだと思い、背後からAさんに近づいて手首を掴み上げるなどしました。
ここまででも身に覚えのないことで複数人に泥棒扱いされ、圧倒的に不利な状況に追い込まれていたAさんですが、さらに店外にいた男性買い物客・Hもガラス壁越しに騒動の様子を見て、Aさんが窃盗をしたと誤解します。
Hは店内に駆け込むと前の2人と同様に話しを聞くなどせずにAさんの顎を掴み上げ、「何してんじゃ、おら」と脅したとされます。
男性買い物客のGとHは小柄なAさんを押し倒し、さらにHはあろうことか高齢のAさんの首付近を足で踏んで動けないようにしました。
今度は化粧品売り場近くにいたIがAの「泥棒!」という声を聞きつけて現場に駆け付け、GとHがAさんを取り押さえているのを見て加勢し、Aさんをうつ伏せの状態にして抑え込みます。
次いで店内の薬局に勤務していたJも騒ぎを聞いて駆け付け、Aさんの腰付近を押さえつけたのです。
四日市ジャスコ誤認逮捕死亡事件の詳細② 警察官の到着
拘束されたAさんは「離してくれ!」「誤解だ!警察を呼んでくれ!」と必死に訴えました。
この時、Aさんは揉みあいの最中に落ちた黒い財布から飛び出し、破損してしまったキャッシュカードの欠片を握りしめていました。
肝心の財布はAさんがGとH、Jに取り押さえられている途中で、最初にBに加勢した女性買い物客Fが立っていた方向、出入り口の通路方面に向かって飛んでいったといいます。
さて、ここまで騒ぎが大きくなると野次馬も増えてBさんたちの周囲には20~30人の人だかりができており、ジャスコの店員も保安室に窃盗事件発生と通報していました。
この通報を受けて、偶然万引き犯の対応のために保安室にいた三重県警四日市南警察署の巡査部長・Cと巡査・Eが現場となるATMコーナー付近に向かいます。
CとEは現場に到着すると男性客らがAさんを取り押さえているのを確認。そして、あろうことかAさんから話を聞かずに状況だけを見て「Aは窃盗犯」と決めつけ、13時15分頃にAさんの身柄引き渡しを受けたのです。
この引き渡しの際、巡査部長・CがAさんの右側、巡査・EがAさんの左側にいたといい、両手でAさんの肩などを押さえつけて拘束したとされます。そしてAさんの両腕を後ろに回すと、Aさんに手錠をかけました。
さらにAさんを窃盗犯だと決めつけていたCとEは、Aさんのポケットなどを探って凶器を隠し持っていないか確認。Aさんはペットの餌を買いに来ただけであったため当然ながら凶器など所持しているはずもなく、何も出てきませんでした。
四日市ジャスコ誤認逮捕死亡事件の詳細③ 杜撰すぎる対応
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安全を確認した後、巡査・EだけがAさんの拘束を続け、巡査部長・Cは周囲にいた人々に聞き込みを開始します。
まず、巡査部長・Cは近くにいた女性買い物客Fに氏名と住所を聞き、事情聴取を行ったそうです。
Fは、正直に「自分が店に入ろうとしたところで、若い女性の『泥棒!泥棒!』という声を聞いた」「見てみると、子どもを連れた女性がそこにいる男性と揉みあっており、男性が女性の財布かなにか盗んだと思って、男性を取り押さえようとした」と供述。
そして、揉みあっている間にAさんが落とした黒い財布を巡査部長・Cに渡して「男性は、この財布を女性から盗んだのだと思う」と説明したそうです。
巡査部長・CはFから受け取った財布の中身をその場で確認しました。すると、財布の中からAさん名義のキャッシュカードや、Aさん名義の運転免許証などが出てきたのです。
これらは普通に考えて財布の持ち主がAさんであることの動かぬ証拠ですし、Aさんが窃盗の濡れ衣を着せられていたことの重要な証拠にもなります。
ところがこの時点で警察官たちはAさんに氏名や住所などの聞き取りをしておらず、財布の持ち主がAさんだということに気づかなかったのです。
それだとしても、財布から出てきた免許証も高齢男性のもの、現在現場で窃盗犯として取り押さえられているのも同じ年代の男性で、よく見れば顔写真と容貌も似ているとあれば、この時点できちんとAさんから話を聞くべきでした。
しかし、巡査部長・Cは「事件の概要把握が最優先事項」と考えて、Aさんを窃盗犯としたまま聞き込みを続けようとしたといいます。
この時の判断が違うものであれば、Aさんは冤罪で取り押さえられた被害者であることが早期に判明し、命を落とすこともなかったのでしょう。
四日市ジャスコ誤認逮捕死亡事件の詳細④ 犯人の女の逃走
巡査部長・Cは続いて窃盗事件の被害者と想定されるBから話を聞こうとしました。
しかし、この時にBはすでに現場から立ち去っており、B本人も、Bを見たという人さえ現場付近では見つからなかったのです。
そのため仕方なく巡査部長・Cは、事情をしていそうな人に聞き込みを行おうとします。つまり、不審に思ってBの行方を追うなどの行動はとらなかったのです。
しかもこの時、Aさんの拘束に協力していたGとHもいなくなっていました。
このことからGとHはBとグルだったのではないかとも噂されましたが、GとHの2人についてはその後に身元が明かされて裁判でも証言が採用されていることから、3人がグルだったという説はデマと言えるでしょう。
四日市ジャスコ誤認逮捕死亡事件の詳細⑤ 被害者男性の死亡
一方、Aさんは引き続き巡査・Eに拘束されていました。この巡査・Eは当時29歳で、身長181㎝、体重94㎏というかなりの大柄でした。
Eは上司のCが聞き取りにあたるのなら、自分は犯人を見張っておいた方がいいだろうと判断して拘束を続けていたそうです。
13時35分頃、現場に応援の警察官が到着します。そして応援の警察官にAさんを任せようと巡査・Eが押さえつけていたAさんの上体を起こそうとしたところ、Aさんが嘔吐。
そのまま意識を失ってぐったりと倒れこんだため、Eは急いでAさんの手錠を外して救急車を要請します。
しかし救急隊が駆け付けた時、すでにAさんは心肺停止状態で、そのまま死亡が確認されました。
上でも触れましたが、Aさんの死因は高度のストレスによる高血圧性心不全および不整脈。誤認逮捕と、20分間にもわたって屈強な警察官に頭と上半身を床に押し付けられたことによるストレスで亡くなったと見られています。
四日市ジャスコ誤認逮捕死亡事件の裁判・判決
Aさんが亡くなった後、三重県警は窃盗事件について2004年2月18日に「被疑者死亡のまま書類送検」という扱いをしました。
つまり、Aさんが亡くなった後も誤認逮捕を認めずに被害者のAさんを窃盗犯として扱い、書類送検したのです。
その後、2011年5月になってやっとAさんが無罪であると認められ、津地方裁判所が被疑者補償として1日12,500円を支払うことを決定しています。
しかし、当然ながら誤認逮捕で大切な家族を死に追いやられたAさんの遺族は警察の責任や、事件の全貌を明らかにしなければ納得いきません。
遺族は2007年に三重県を相手どって「警察官の対応が原因でAさんが死亡した」と訴えて損害賠償金約5,700万円の支払いを求める民事訴訟を起こしました。
一審を担当した津地方裁判所は、警察官の行き過ぎた対応を認めつつも「男性の死亡と拘束に因果関係はない」として、三重県に遺族へ880万円を支払うように命じます。
遺族はこの判決を不服として控訴し、2011年9月に名古屋地方裁判所は一審の判決を変更してAさんの死亡と警察官による拘束の間に因果関係があった、と判断。三重県に遺族へ約3,644万円を支払うように命じました。
以下の「四日市ジャスコ誤認逮捕死亡事件の問題点」の項では、遺族による民事訴訟で争点になった問題点と、裁判所の判断について紹介していきます。
四日市ジャスコ誤認逮捕死亡事件の問題点① 行き過ぎた正義感
四日市ジャスコ誤認逮捕死亡事件で最悪の事態を招いてしまった原因の1つにあげられるのが、買い物客ら第三者による過剰なAさんへの対応です。
日本では、以下の場合に限って、犯人が犯行におよんだ現場を見ていなくても逮捕ができる、準現行犯逮捕というものが認められています。
・犯人が特定の罪を犯している。
・犯行から間もない。
・刑事訴訟法212条2項に該当する。
最後の刑事訴訟法212条2項に該当するとは、主に犯人であると追呼されている、逃亡のおそれがある時、犯罪に使った凶器を所持している時、被服や身体に犯罪の痕跡が見られる時などです。
これらの条件にあてはまれば、特定の人物を起きてしまった犯罪の犯人とみなして正当に逮捕できるとされており、これは私人逮捕にも適用されます。
さて、四日市ジャスコ誤認逮捕死亡事件ではAさんに対して過剰な拘束が見られましたが、この行為が準現行犯逮捕にあたるのか否か、というのが争点になりました。
・BはAさんに対して「泥棒!」と叫んでいた。
・女性買い物客・Fが最初に現場に来た際、BはAさんのシャツを掴んでいた。
この点から、FがAさんの取り押さえにかかわったことについては、犯人であると追呼されている、犯行から間もない、犯人が特定の罪を犯しているという要件に該当しているとして、合法と判断されました。
では、Aさんを「何してんじゃ、こらあ!」と恫喝し、押し倒して首の後ろを踏みつけるという行為をした男性買い物客・Hはどうなるのでしょうか?
事件の詳細を知った人からにも「明らかに行き過ぎた」「人の首を踏むなんてあり得ない。ただの暴行だ」と指摘されることの多いHの行動。B、警察に続いてこの事件で批判されることが多いです。
しかし、男性の遺族が三重県を相手どって起こした民事訴訟では、HのAさんへの行為も準現行犯逮捕にあたり、合法と判断されています。
そのため四日市ジャスコ誤認逮捕死亡事件でAさん拘束にかかわった市民については、問題がなくお咎めなしとされました。
四日市ジャスコ誤認逮捕死亡事件の問題点② 警察官による対応
四日市ジャスコ誤認逮捕死亡事件の問題点として2つ目にあげられるのが、現場で対応した2人の警察官の対応が適切だったかという点です。
まず、巡査部長・Cは盗まれたとされる財布からAさんの運転免許証を確認していましたが、何も対処せず、部下の巡査・Eに拘束を解くように命じることもありませんでした。
この対応はあまりにも杜撰な気がしますが、裁判では「仮に運転免許証とAさんが同一人物だと確認できても、このことによってAさんの嫌疑が貼れるわけではなく、拘束を解けば逃亡する可能性もあった」として、問題はなかったと判断されています。
これは警察に取り押さえられる際に、Aさんが「放せ!」と叫び続けていたことが悪い方向に影響してしまったのではないかとも言われています。
この裁判所の判断も釈然としないものがありますが、では巡査・Eによる拘束には問題はなかったのでしょうか?
早い段階で巡査・EがAさんの異変に気づいて救急車を呼んでいれば、命を落とすことはなかったはずです。
上述しましたが、Aさんの拘束にあたった巡査・Eは身長181㎝、体重94㎏で剣道の達人でした。
この大柄な警官がコンクリートの床にうつ伏せにさせられたAさんの肩甲骨あたりに右膝を乗せ、体重をかけて逃げないように20分間も拘束していたそうです。
仮にAさんが窃盗犯だったとしても、手錠をかけられて反抗もできない高齢の男性に対してやりすぎなのではないか?という印象を受けます。
裁判でこの点を指摘された巡査・Eは「拘束中もAさんの呼吸を確認していたし、無理のある体重のかけ方はしていない」「抵抗に応じて力のかけ方は加減していたし、体重の半分もかけていなかった」と反論していました。
さらに巡査・Eの裁判での供述によると、「上体を起こすまではAさんは元気だった」「起こしてみたら吐しゃ物が床にあり、本人もぐったりしていた」とのこと。
また、この時点では意識はないもののAさんの脈も、呼吸も確認できたそうです。
三重県警も巡査・Eが2000年の4月に警察官になったばかりで、今回が四日市南署に配属して初めての窃盗事件だったため不慣れだった可能性はあるとして、Eを擁護します。
浮かび上がる不審点
しかし、裁判ではこの巡査・Eの供述や対応について整合性の取れない点があぶり出されていきました。
まず、上述のようにE本人はAさんの拘束について「肩甲骨あたりに右膝を乗せ、体重をかけて逃げないよう」と供述していました。
ところが、最後にAさんの拘束に加勢した薬局店員のJは警察が到着した後も現場に残っていたといい、「大柄な警察官がAさんの背中の上に馬乗りになっていた」と証言。
右膝だけ乗せていたのと馬乗りとでは、かかる体重も大違いですし、馬乗りになっていたというのが本当ならば「Aさんの抵抗や呼吸の様子を見て、かける体重を加減していた」というのも疑わしくなります。
また、ずっと元気だったAさんが上体を起こしたら嘔吐しており、意識不明になったという説明もよくわかりません。
この点について追及されると巡査・Eは「犯人が逃げないように対応するのにいっぱいいっぱいで覚えていない」と、供述を翻すような発言をしました。
四日市ジャスコ誤認逮捕死亡事件の問題点③ 拘束と死亡の因果関係
検死解剖の結果により、Aさんの遺体には至る所に打撲痕が見られ、眼瞼結膜や頭蓋底中頭蓋窩にうっ血の痕、大脳白室内出血も確認されたといいます。
解剖を担当した医師によると、打撲は圧迫により生じたもので、胸腹部が強く圧迫されたために頭部や顔面がうっ血した可能性が高いとのこと。これにより呼吸停止状態に陥り、亡くなったのではないかとされました。
打撲は巡査・Eが到着する前に複数の民間人がAさんを取り押さえて、肩や頭、首などを手分けして取り押さえたために負ったと思われるものもありました。
しかし、民間人は手分けをしてAさんを拘束しており、誰か1人がAさんの胸部にのしかかるということはしていなかったために、遺体に見られた胸腹部の圧迫は巡査・Eの拘束が原因の可能性が高いと判断されます。
また、巡査・Eは「拘束中にAさんは大声をあげて騒いでいたから、元気だと判断した」と供述していましたが、これに対しても周囲にいた人から「大声というか、『うう』とか『ああ』といった大きなうめき声だった」という証言があがりました。
おそらくAさんは抵抗するために大声を出していたわけではなく、胸を圧迫され、呼吸も困難になって苦しくて「助けてくれ!」という意味でうめき声をあげていたのでしょう。本当に痛ましい話です。
一審では否定された巡査・Eの拘束とAさんの死の因果関係
裁判では検死解剖の結果を踏まえて、巡査・Eの拘束とAさんの死に因果関係があったのか再確認されました。
まず、Aさんの死因はストレスによるものと診断されています。亡くなる前のAさんは激しいストレスにさらされて交感神経が刺激されて血圧が上昇し、心拍も上昇。
Aさんには高血圧症心肥大という持病があったといいます。この病気は高血圧が原因で血管が硬くなり、その硬い血管に血液を送り出すために心臓の筋肉が発達して肥大化するというもので、心臓病や不整脈を引き起こすリスクがあります。
血圧の上昇と心拍の上昇という急激な負荷がくわわったことで、もともと既往症を持っていたAさんの心臓に過剰な負荷がかかって、心不全を起こしてしまったのではないかと診断されました。
ここで問題になったのが、心不全を引き起こした要因であるストレスについてです。
状況だけを見れば身に覚えのないことで捕まり、自分の言うことは誰も聞いてくれず、力づくで取り押さえられてその様子を周囲の人もただただ見ているだけ、という状況はAさんに多大なストレスを与えて当然だと思われます。
しかし、医学的に「死因がストレス」というあいまいな説明は認められづらく、医師からも「ストレスから心不全という死因はおかしい」との指摘があったといいます。
Aさんの心拍数が上昇し、心臓に急激な負荷がかかって心不全を引き起こしたというのは事実ではないか、心拍数が上がった理由は間違いなく身に覚えのない窃盗で周囲にいた客に拘束されて脅され、警察にも申し開きの場すら与えられずに馬乗りになられたことではないか、と憤る方も多いでしょう。
ところが遺族からの訴えを受けた津地方裁判所は、医師の提出した検死結果にあった「ストレス」という言葉だけをあげて、「この検死は信用できない、よって警察官の拘束とAさんの死に因果関係はない」と極めて理不尽な結論を出したのです。
二審でやっと認められる
Aさんの死と巡査・Eの過剰な対応に因果関係があった、とやっと認められたのは名古屋高等裁判所で行われた控訴審でした。
裁判長は「強度の制圧行為を長時間にわたって続ければ、命にかかわる結果になることは予見できた」と指摘。
一審のように「ストレス」という言葉だけをとって検死結果を無効とすることなく、警察の過失を認めて一審の約4倍もの賠償金を遺族に払うように命じました。
その後、三重県警側は上告を検討しましたが「上告すべき理由が見つからない」として断念。名古屋高裁の判決をもって、四日市ジャスコ誤認逮捕死亡事件の損害賠償請求訴訟は終わりました。
四日市ジャスコ誤認逮捕死亡事件の女の顔画像が公開・怖いと話題に
四日市ジャスコ誤認逮捕死亡事件が起きた元凶であるBは、虚偽告訴罪と窃盗未遂容疑で警察の捜査対象になっています。
2005年には三重県警が情報を募るために防犯カメラに映ったBの顔を公開したのですが、この顔が非常に怖い、人間に見えないと現在もネット上で話題になることがあります。
三重県警が公開した女性の顔画像が上のものです。防犯カメラの性能の問題で画像の解像度が低いことから上のような顔写真しか公開できなかったそうですが、これで犯人の特定は難しく、有力な情報は集まらなかったといいます。
なお防犯カメラをチェックしたところ、この女はAさんが来る前からATMコーナー前にいてターゲットを探すようにうろうろしていたことが明らかになったそうです。
女はATMでお金を引き出す人がいたら、その人の財布を盗もうと計画していた様子で、AさんがATMに近づいたところを狙って接触したものと思われます。
四日市ジャスコ誤認逮捕死亡事件のその後① 警察官の現在
民事裁判で自分の過度な拘束が善良な市民であったAさんの死を招いたと言い渡された巡査・Eや、三重県警は四日市ジャスコ誤認逮捕死亡事件について反省したのでしょうか?
おそらく、三重県警側は誤認逮捕によって人の命を奪ってしまったことについて特段の反省はしていないと思われます。
その根拠となるのがAさんの甥のブログです。Aさんの甥は四日市ジャスコ誤認逮捕死亡事件の裁判や、その後の警察の対応などをブログに綴っていました。
Aさんの甥によると、三重県警は新聞の取材には「今後はこのような事件が起きないように全力を尽くす」とコメントしていたものの、三重テレビのニュースでは「制圧行為は必要で正当という認識」と語っていたそうです。
さらに2005年8月15日に四日市南署の署長と面会した時にも、「警察として反省点があるのなら公表してほしい」という遺族の要望に対して「警察が今までにそんな対応をしたことがありますか?反省点なんて絶対に公表しませんよ」と突っぱねられといいます。
このAさんの甥の甥の文章から察するに、三重県警も四日市南署もAさんの死は誤認逮捕事件によるものではなく、不運な事故だった程度にしか考えていないことが窺えます。
また、現場でAさんに対応した巡査部長・Cと巡査・Eについても、何らかの処分があったという報道は出ていないため、事件後も警察官として勤務を続けたと思われます。
四日市ジャスコ誤認逮捕死亡事件のその後② 時効の成立
虚偽告訴罪と窃盗未遂容疑として捜査が続けられていたという四日市ジャスコ誤認逮捕死亡事件ですが、2011年に時効が成立しています。
犯人の女は逃げ切ったことになるのですが、犯行時に幼児を連れていたわけですから、この女は事件現場からそう遠くない場所に住んでいたのではないでしょうか。
いくら防犯カメラの画像が荒かったとはいえ、女性客・Fをはじめ女の顔を見た人はいるわけです。また、Aさんの財布にも犯人の指紋が残っていたはずです。
ジャスコ四日市尾平ショッピングセンターが生活圏に含まれる世帯で、かつ幼児がいる家庭を洗い出していけば犯人に辿りついてのではないか?と思ってしまいます。
四日市ジャスコ誤認逮捕死亡事件に対するなんJなどネットでの反応
四日市ジャスコ誤認逮捕死亡事件は、事件発生から20年近くが経った現在でもネット上で話題になることが多く、なんJにも頻繁に事件について語るスレッドが立てられています。
なんJなどでは、警察が非を認めて、すぐに犯人の女を探していれば解決できた事件ではないのか?、いつまでも自分たちを正当化するため、亡くなったお爺さんを窃盗犯に仕立て上げる方法だけを探していて、真剣に捜査に取り組まなかったのでは?と、四日市ジャスコ誤認逮捕死亡事件が発生した原因だけではなく、未解決となった理由も警察にあると批判する声が見られました。
また、誰もが被害者になり得る事件ということもあって、「同じように濡れ衣を着せられた時、どう対処するのが正解なのだろうか?」という議論も盛んにされています。
四日市ジャスコ誤認逮捕死亡事件についてのまとめ
今回は2004年2月に発生した四日市ジャスコ誤認逮捕死亡事件について、事件の詳細や警察官の対応など問題点、犯人の女の顔画像やその後を中心に紹介しました。
ネットでは犯人の女の顔写真が有名になってしまい、「女の顔が不気味な事件」として知られるこの事件ですが、実際は事件内容の方がずっと恐ろしく、そして不快です。
行き過ぎた取り押さえをした男性客らも悪気があったわけではなく、その場では善行をしたつもりだったというのが、なおさらやる瀬ない気持ちにさせます。
このようなことが起きた場合、もし自分が通りすがりの客だった場合、言いがかりをつけられた当事者だった場合、それぞれどのように対応するのが正解なのでしょう。悲しい事件であるとともに、考えさせられる事件でもあります。