エイズメアリーの都市伝説!元ネタのメアリーマローンの腸チフス事件も総まとめ

アメリカで生まれ世界中で広まっている「エイズ・メアリー」という都市伝説が話題です。

 

この記事では、エイズメアリーの都市伝説の内容、日本での「ルージュの伝言」、実際におこった類似の事例、元ネタとなった実在人物であるメアリー・マローンの腸チフス事件と死因などついてまとめました。

エイズ・メアリーの都市伝説の海外版の内容

 

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「エイズ・メアリー(AIDS MARY)」とは、エイズ(後天性免疫不全症候群)という病気が初めて見つかった1980年代初め頃に、アメリカで生まれ、世界に拡散されていったとされる都市伝説です。

 

エイズ・メアリーの都市伝説の内容は、ある男性がナイトクラブで知り合った見ず知らずの女性と一夜を共にし、翌朝目を覚ますと、バスルームの鏡に口紅で書かれた「エイズ・クラブへようこそ(Welcome To AIDS Club)」というメッセージが残されていたというものです。

 

この内容が次第に変化し大まかに以下のような物語が付随するようになりました。

 

外国を訪れたある旅行者の男性が、立ち寄ったナイトクラブで1人酒を飲んでいたところ、隣の席に美しい女性が座ってきた。その女性との会話が弾み楽しく飲んでいると、女性の方から「もう遅いから場所を変えない?」と誘ってきた。

 

男性は歓喜して女性を自分が宿泊していたホテルへと連れ込み、一夜を共にした。翌朝、目を覚ましてみると、女性がいなくなっていたので、男性はもしやと思い、身の回りの貴重品を調べてみたが、何も盗られたものはなかった。

 

男性はホッとしつつも、女性は先に帰ってしまったのだろうと思って少し残念な気持ちになり、自分もチェックアウトしようと、身支度を整えるために洗面所へと向かった。すると、そこに設てあった大きな鏡に、真っ赤な口紅で「エイズの世界へようこそ!(Welcome to the world of AIDS!)」と、大きく書かれているのを見つけ、衝撃のあまり絶叫する。

 

このエイズ・メアリーの都市伝説は、海外からの旅行者が見ず知らずの現地の女性と一夜を共にし、その翌朝に自分がエイズ感染した事を知るという内容から、あらゆる国の旅行者バージョンが生まれ、世界中に拡散しました。

 

 

 

エイズ・メアリーの都市伝説の日本版とは

 

日本にも同様の都市伝説が流行っており、日本バージョンは「ルージュの伝言」というタイトルの都市伝説として知られています。日本版の内容はほとんどオリジナルと同じなのですが、舞台が日本国内になっていて、女性側も日本人とされているパターンが多くなっています。

 

なお、松任谷由実さんの名曲「ルージュの伝言」はこの都市伝説が生まれるよりかなり早くに作られた楽曲なので、エイズ・メアリーの都市伝説とは無関係です。歌詞の中に「バスルームにルージュの伝言」という一節がある事から、この都市伝説がアメリカから伝播して初めて耳にした時に、この曲を想起した人が多かったのかも知れません。

 

 

 

エイズ・メアリーの都市伝説にはエイズ・ハリーという男性バージョンも

 

エイズ・メアリーの都市伝説には、「エイズ・ハリー」というタイトルの男性バージョンも存在します。

 

このエイズ・ハリーの方の都市伝説の内容は、海外を訪れたある女性が現地の男性と恋に落ち、一夜を共にする、男性は女性に「帰りの飛行機の中で開けて」と行って、小さな箱をプレゼントする。女性が飛行機の中で箱を開けてみると、「エイズの世界へようこそ!」というメッセージと一緒に、棺桶型のブローチが入っていたというものです。

 

さらに、派生型として、同性愛者の男性に襲われたノーマルの男性が、「僕はエイズだ!」といって逃れようとすると、同性愛者の男性が「俺もそうだ」と返してくるというブラックジョーク的な都市伝説も存在します。これは、エイズという病気が周知されるようになる前に、アメリカのゲイコミュニティでHIV感染が急速に広まった事に関連して生まれたようです。

 

こうした、「エイズ・メアリー」から派生した一連の都市伝説に対しては、エイズ患者に対する差別や偏見、派生型についても同性愛者に対する差別が根底にあるとして否定的にみる声も多くあるようです。

 

ただ、それだけ、エイズという未知の病気の存在が知られていく中で、当時の人々が強い恐怖心を抱いていたという事なのかも知れません。

 

 

 

 

エイズ・メアリーの都市伝説に似た実際の事例

 

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エイズ・メアリーの都市伝説は、リアリティを感じる話ですが、実際にこの都市伝説と似たような内容の事件が発生した事例もあります。

 

2009年には、アメリカのテキサス州でPhilippe Padieuという男が、少なくとも10名の女性に意図的にHIVを感染させたとして、懲役45年の有罪判決が下されています。

 

2017年にはHIV感染者である事を隠したまま、50人以上の女性と関係を結び、そのうちの32人の女性及び、その後にその女性のパートナーとなった男性にも間接的にエイズを感染させたとしてイタリア人の男が懲役24年の判決を受けています。

 

同じく、2017年には、未成年者を含む数十人の男性に意図的にHIVを感染させたとして起訴された後に国外逃亡していたズデネク・ファイファーというチェコ人の男が、逃亡先のタイで逮捕されたという事件が報じられています。

 

このように、実際にあった事例では、エイズを感染させるのは女性ではなく、男性が他者に意図的にうつすという例の方が圧倒的に多くなっています。

 

 

 

エイズ・メアリーの元ネタはメアリー・マローンの腸チフス事件

 

出典:https://upload.wikimedia.org/

 

元々の「エイズ・メアリー」という都市伝説の名称も、過去のメアリー・マローン(Mary Mallon、1869年9月23日 – 1938年11月11日)という女性に関わる事例がもとになっています。

 

メアリー・マローンはチフス菌の健康保菌者でしたが、それを知らないまま、住み込みの料理人として働いていたため、周囲の人々に次々と腸チフスを感染させてしまい、死亡者も発生しました。

 

この事実が判明した後も、メアリー・マローンは偽名を使って、料理人として働き続け、多数の腸チフスの感染者と死亡者を発生させました。この事件からメアリー・マローンは「腸チフス・メアリー(Typhoid Mary)」と呼ばれるようになり、「エイズ・メアリー」という名称はこれにかけたものでした。

 

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エイズ・メアリーの元ネタのメアリー・マローンの生い立ちから死因

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メアリー・マローンの生い立ち

 

メアリー・マローンは1869年9月23日、イギリス統治下のアイルランド島(現在の北アイルランドティロン県)クックスタウンに生まれました。

 

当時のアイルランドは1840年代後半のジャガイモ飢饉に端を発した食糧難と貧困からアメリカへ移住する人が多く、メアリー・マローンは1883年に単身でアメリカに移住しています。

 

 

メアリー・マローンの周辺で腸チフスが流行

 

メアリー・マローンはニューヨーク周辺で家事使用人として働いていましたが、料理の才能に目覚め、1900年頃までには「子供のように善良な」と評される人柄とその腕の良さから信頼を集め、住み込み料理人として富豪宅に雇われ、他の使用人よりも高給を得ることができる身分になりました。

 

1900年から1907年の間、ニューヨーク周辺では腸チフスの小規模な流行が散発的に発生していました。メアリー・マローンが雇われていた家の住人もこの疫病の被害に見舞われ、メアリー・マローンは何回か勤め先を変えましたが、その間わかっているだけでメアリー・マローンの身近で22人の患者が発生し、そのうち洗濯婦をしていた若い女性1人が死亡しました。

 

 

メアリー・マローンが腸チフスの所持者と疑いをかけれれる

 

その後、富豪の一人は衛生士ジョージ・ソーパーに腸チフスの原因を解明する仕事を依頼しました。ジョージ・ソーパーは疫学的な調査を地道に行い、その結果一つの事実を見出しました。

 

それは、メアリー・マローンがやってきた直後に腸チフスが発生しているということでした。この結果から、ジョージ・ソーパーはメアリー・マローンがチフス菌の保菌者ではないかと疑いました。

 

ジョージ・ソーパーは1907年にメアリー・マローンが雇われていたニューヨーク近郊の富豪宅を訪れました。

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ジョージ・ソーパーは感染源がメアリー・マローン自身であることを告げ、調査のために尿と糞便のサンプル提出を求めましたが、メアリー・マローンは激怒して追い返しました。

 

その後、ジョージ・ソーパーはニューヨーク市衛生局、医師、警察に協力を求め、何度もメアリー・マローンを説得しました。

 

しかし、メアリー・マローンが大きな金属製のフォークを振り回して激しく抵抗したため、三度目には五人の警官が現場に赴き、5時間の探索の末にクローゼットに身を潜めていたメアリー・マローンを見つけ出し、強制的に身柄を確保しました。

 

 

メアリー・マローンからチフス菌が検出

 

ニューヨーク市衛生局で細菌学的な検査が行われた結果、メアリー・マローンの便からチフス菌が検出されました。このためメアリー・マローンはノース・ブラザー島の病院に収容、隔離されました。

 

メアリー・メローンはこれまで腸チフスを発症したことがなく、チフス菌の保菌者であるという自覚のないまま、周囲の人に感染を広げる健康保菌者(無症候性キャリア)でした。

 

しかし、検査結果を突きつけられてもメアリー・マローンは納得しませんでした。むしろ「いわれのない不当な扱いを受けている」という思いを募らせるばかりでした。

 

メアリー・マローンは自分が不当な扱いを受けているという確信を強め、隔離から2年後の1909年に、ニューヨーク市衛生局を相手に隔離の中止を求めて訴訟を起こしました。

 

この訴訟の間も、メアリー・マローンは隔離されたままであり、病室のガラス越しに新聞記者の取材を受けました。これが世間の注目を集め“Typhoid Mary”の名を広めるきっかけになったと言われています。

 

訴訟はニューヨーク市衛生局側の勝訴で終わりましたが、この訴訟によってメアリー・マローンには隔離から解放されるきっかけが与えられることになりました。

 

そして1910年、(1)食品を扱う職業には就かないこと、(2)定期的にその居住地を明らかにすること、という2つの条件を飲むことで、メアリー・マローンは隔離病棟から出ることを許され、再び自由を得ました。

 

 

メアリー・マローンの再隔離と死亡まで

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出典:twitter.com

 

釈放から5年後の1915年、再び腸チフスが流行しました。そのときメアリー・マローンは調理人として、しかもニューヨークの産婦人科病院で、偽名を使って働いていました。そこで引き起こした腸チフスで25人の感染者と、2人の死者を出しました。

 

この事件をきっかけに、メアリー・マローンは再びノース・ブラザー島の病院に隔離され、亡くなるまでの23年間そこから出ることはありませんでした。

 

普段は健常者と何ら変わらないままに隔離されたメアリー・マローンの、その後の人生を知る手掛かりは少ないのですが、病院内で看護師、介護人、研究室の技術補佐員としての仕事をしていたことが記録に残っています。

 

メアリー・マローンは1932年に心臓発作から身体麻痺になり、その6年後の1938年、子供たちの声が聞こえる小児科病棟の近くに移されたベッドで息を引き取りました。

 

メアリー・マローンの死因は公表されていません。ただ、身体麻痺になっていたことから、多臓器不全とみられています。

 

 

 

メアリー・マローンの病理解剖と「メアリーの腸チフス」の正体

 

メアリー・マローンの死後、病理解剖の結果から、胆嚢に腸チフス菌の感染巣があったことが判明しました。

 

メアリー・マローンの症例では、最初のチフス菌による胆嚢の感染が弱く、本人の抵抗力がそれに勝ったため症状が現れず、また同時に腸チフスに対する抗体などの免疫を獲得したために、本人には症状が現れることがなかったとみられています。

 

便に混じって排出されつづけたチフス菌は、目に見えないもののメアリー・マローンの手指などに付着しており、本人に自覚がなかったために手洗いを油断した際に食事に混じり、周囲の人間に感染したのだと考えられています。

 

 

 

まとめ

 

今回は、1980年代はじめ頃にアメリカで生まれ、世界中に広まった都市伝説「エイズ・メアリー」についてまとめてみました。

 

エイズ・メアリーの都市伝説の内容は、ナイトクラブで、行きずりの女性と一夜を共にした男性が、翌朝に洗面所の鏡に「エイズの世界へようこそ!」と真っ赤な口紅で書かれているのを見つけるというものです。

 

エイズ・メアリー事件に似た事例も実際に世界中で起こっており逮捕者も出ています。

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