人面犬とは人間の顔と犬の体を持つ怪異で、都市伝説的な存在です。妖怪ウォッチにも登場するため、若い世代でも知っている方は多いでしょう。
この記事では人面犬の目撃情報や正体の考察、本物の画像や怖い映像、人面犬の夢の意味についてまとめます。
この記事の目次
人面犬は子どもに人気の都市伝説だった
人面犬は犬の姿をした怪異で、顔面のみが人間という特徴を持ちます。目撃情報やイメージイラストなどでは小型〜中型犬程度の大きさの体に、中高年の男性の顔がついているケースが多く見られます。
見た目以外の人面犬の特徴としては、以下のようなものがあげられます。
・深夜の高速道路を時速100kmで走る。人面犬に追い越されると事故に遭う
・ゴミを漁る。人間と目が合うと「ほっといてくれよ」と言う
・跳躍力があり、6m程度ジャンプできる
・人面犬に噛まれた場所は腐る
・人面犬に噛まれた人は人面犬になる
人面犬の目撃情報
人面犬がブームになったのは、上で紹介した『ポップティーン』9月号が発売された後ですが、その前から「人間の顔をした犬を見た」という目撃情報はポツポツと出ていました。
最も古くメディアで人面犬が取り上げられたのは、1982年に遡ります。同年の7月19日に発売された隔週刊女性誌の『微笑』で、「私は見た! 恐ろしい“人面の犬”」という特集が組まれました。
この記事では伊豆や湘南、南房総、館山など、千葉から静岡にかけての湾岸に人面犬(当時はまだ人面犬という名称はついていなかった)の目撃情報が集中していると書かれています。
また1987年には『女性自身』や『プレイボーイ』でも人面犬(この時もまだ、“人面の犬”“人間顔の犬”という表記だった)が特集されたのですが、箱根新道、御殿場IC付近と神奈川・静岡周辺での目撃情報が寄せられました。
人面犬の正体と人面犬ブーム
人面犬の正体には、いくつかの説がありました。
- 人面犬は筑波大学の研究室から逃げ出した実験動物
- 湘南で死んだサーファーの怨霊が犬に取り憑いたもの
- 暴走族に轢き殺された飼い主と犬の怨霊
- 環境汚染で生まれた突然変異生物
- 中絶された犬の水子の霊
これらの説のなかでとくに有名なのが「研究所から逃げた実験動物」説と「サーファーの怨霊」説です。
この2つの説がなぜ生まれたのかを中心に、人面犬ブームの発生から終焉までを見ていきます。
人面犬は作られた都市伝説だった?
人面犬はメディアによって仕掛けられた都市伝説だとも言われています。というのも、上述の『ポップティーン』9月号で人面犬の目撃談を取り上げたのライターの石丸元章さんが、人面犬ブームを意図的に引き起こしたと暴露しているからです。
石丸さんは1993年7月発売の『Quick Japan』の創刊準備号で、「人面犬はいない。自分たちが作り出したウソ」と明かしています。
確かに石丸さんは8月1日発売の『ポップティーン』での人面犬の反響を見た後、9月20日に『パラダイスGoGo!!』の「噂の珍相」コーナー、10月10日には『スーパーギャング・ティーンズダイアル』の街のウワサコーナーで人面犬の話を取り上げ、その後も数回に渡って特集を組んでいました。
また自身が仕事をしていた『投稿写真』などの雑誌でも、同時期に人面犬を取り上げています。
人面犬は研究所から逃げ出した実験動物だったという噂の真相
石丸さん以外にも「自分が人面犬を作った」というメディア関係者がいます。爆笑問題のラジオ番組などを手掛けたことで知られる放送作家のYAS5000さんです。
YAS5000さんは、大学生時代に友人と一緒に「噂がどこまで広がるかの実験」として、白衣を着て小学生が多く集まる場所に出向き、「人間の顔をした犬が実験室から逃げてしまったんだけど、君たち見なかった?」と聞いてまわっていたそうです。
YAS5000さんは自分の生年月日を公表していないため、彼の大学生時代というのが具体的に何年になるのか、人面犬ブームの前なのか、それとも最中だったのかは不明です。
ただ1998年に放送されたTBSラジオの深夜番組『爆笑問題カーボーイ』で、田中裕二さんがこの件について触れ、「この1年後に人面犬は全国的なブームになった」と話していたため、1988年か1989年あたりの出来事だったと予想されます。
人面犬のブームそのもの、人面犬という都市伝説そのものをYAS5000さんが作った、というのは言い過ぎに感じられます。
しかし、人面犬の正体の一つとして囁かれた「人面犬は筑波大学の研究室から逃げ出した実験動物」というのは、YAS5000さんが大学生時代におこなった「噂がどこまで広がるかの実験」をルーツにしている可能性が高いでしょう。
メディアが仕掛ける前から人面犬の噂は存在した
では人面犬はメディアがゼロから創作した都市伝説だったのかというと、それは違います。上述のように人面犬の話題は1982年から雑誌に取り上げられていました。
出典:https://www.mandarake.co.jp/
また、つのだじろうさんの漫画『うしろの百太郎』(1973年〜)や、SF映画『SF/ボディ・スナッチャー』(1978年)には、すでに人の顔を持った犬が出てきていたのです。
とくに下の『SF/ボディ・スナッチャー』に出てくるキャラクターは、人面犬ブームの際によく画像が使用されていました。
さらに古く、日本では江戸時代から人間の顔を持った犬の怪異は存在していました。見世物として興行に連れて行くと大人気だったそうです。江戸時代には町民の間で「雌犬と性交すれば梅毒が治る」という噂があったといい、その噂に従った末に生まれたのが人間の顔を持つ犬だと考えられていたようです。
これらのことから考えて人面犬が大々的なブームになる前から、人間の顔を持つ犬の怪異は存在していたと言えます。
さらに面白いことに、ブームになってから『スーパーギャング・ティーンズダイアル』や『ポップティーン』に寄せられた人面犬の目撃情報は、「友達のお姉ちゃんから聞いた」「友達が友達から聞いた」といったように噂の出どころのわからないものが目立つのですが、ブーム以前に『微笑』や『女性自身』に寄せられた目撃情報は「自分が見た」というものばかりなのです。
しかもブーム以前の人面犬の目撃情報は、日時や場所などがやけに細かく報告されていて、ブーム以降のぼんやりとした情報とは明らかに異なります。そして多くの目撃情報が湘南、箱根、伊豆近辺に集まっているのです。
このことから作家でオカルト研究家の吉田悠軌さんは、「神奈川から静岡にかけて活動するサーファーたちの間で広まった、土着の怪談のようなものが人面犬のルーツの可能性がある」と指摘しています。
「海で死んだ人の怨霊が取り憑いた怪異がいる」というありふれた怪談話が人面犬のブーム以前から神奈川・静岡の沿岸部では囁かれており、それが「湘南で死んだサーファーの怨霊が犬に取り憑いたもの」という人面犬の正体の元になった可能性が考えられるのです。
人面犬ブームの終わり
人面犬の都市伝説の一つに、「霊感が強い人にしか見えない」というものがあります。これは1990年3月7日発売の『ポップティーン』4月号の特集、「最後の人面犬リポート」に書かれていた情報です。
これ以降、『ポップティーン』では人面犬を扱わなくなり、同時にブームも終わりを迎えます。
「霊感が強い人にしか見えない」とされてしまうと、大勢の人がいても霊感が強いと主張する人だけ人面犬が見えるということになり、人面犬の正体や存在もあやふやになります。
人面犬の正体は実験生物、突然変異といった話にロマンを感じていた人たちも白けていったのでしょう。ここから徐々に人面犬の話題は減っていきました。
人面犬はやはり実在した!?本物と騒がれた画像と怖い映像
2013年5月3日、アメリカのオンラインメディア「buzzfeed」に“This Dog Has A Man Face”というタイトルの記事が投稿されました。
この記事で紹介された犬があまりにも人間そっくりの顔をしていたため、日本のメディアで取り上げられると「リアル人面犬だ!」「やっぱり人面犬は実在してた!」と、話題になったのです。
この犬はトニックという名前のシーズーとプードルのミックス犬で、ペットファインダーという里親募集サイトに登録されていました。
[youtube https://www.youtube.com/watch?v=ikmXXu8WQh8]
上の2007年に投稿された動画も本物の人面犬を映したとして話題になったもので、2022年時点では1300万回以上再生されています。
トニックくんは人間に似ていても可愛らしい犬なのですが、こちらの映像に収められた謎の動物は「本当に怖い」「これって人面犬なの…思ってたよりずっと気持ち悪い」と恐怖を呼びました。
タイトルも音声もアラビア語なのですが、タイトルが「動物の女の子」であることから、この生き物は雌であると思われます。
床に穴が空いていて、そこから人間が顔を出して人面犬のように見せているだけ、とも指摘されていますが、種明かしをされても不気味に感じられる映像です。
人面犬は妖怪ウォッチでも人気キャラ
出典:https://www.tv-tokyo.co.jp/
人面犬は人気ゲーム「妖怪ウォッチ」にも登場しています。強さはEランクで種族はブキミー/モノノケ族。最序盤で仲間にできる妖怪のため、愛着があるというプレイヤーも多いでしょう。
アニメ「妖怪ウォッチ」でも第3話に登場しており、リストラされた中年サラリーマンが帰宅途中に近くにいたトイプードルと一緒に事故に遭って生まれた妖怪と説明されています。
また、アニメでは主人公のケータのトモダチ妖怪になっているためその後も頻繁に登場しており、人面犬が主人公を務めるシリーズもシーズン2まで作られました。
人面犬の夢占いでの意味
悪夢見て毎朝同じ時間に飛び起きる。今日はぐにゃぐにゃした空間で人面犬に追いかけ回されて小型犬に群がられて死を覚悟したら目が覚めた。昨日は海辺を歩いてる時に波を頭から被ったら目が覚めた。なんだこの変な夢…。
— まゆ.。❁*.:。❁ ♡ (@mayuko_83) May 30, 2022
人面犬が出てくる夢を見た、という人も少なくないようです。少し変わった夢ですので、目が覚めてから「なにか特別な意味がある夢なのだろうか」と不思議に思う人もいるでしょう。
夢占いでは人面犬が出てくる夢は、そのシチュエーションごとに違った意味を持つとされています。
- 人面犬を見て怖い、気持ち悪いと思った
人間関係でよくないことが起きる前兆と考えられます。もしも人面犬の顔が友人や知人などに似ていた場合は、その人との間にトラブルが起きる可能性があるため、慎重に接したほうがよいでしょう。
- 人面犬と会話をする夢
言葉を話す人面犬が出てくる夢は、誰かがあなたを陥れようとしている、騙そうとしているという警告です。
夢のなかで人面犬が話した言葉のなかに実際にあなたが騙される言葉が入っていることもあるため、何を話していたか、可能な限り覚えておくとよいでしょう。
- かわいい人面犬が出てくる夢
人面犬といっても上で紹介したトニックくんのように可愛い見た目の犬が夢に出てくると、吉夢に感じるかかもしれません。
しかし可愛い人面犬が出てくる夢は、問題が発生する前兆とされています。
- 人面犬に変身する夢
自分が人面犬の姿になっている、という夢は現実の世界でストレスや疲れが溜まっていることを示します。
- 人面犬に追われる夢
人面犬に追われる夢は、ストーカーに遭う、もしくは好意のない異性に付きまとわれることの予兆とされています。
この夢を見た後に好きではない相手から告白される、遊びに誘われるなどがあった場合は、きっぱりと断るように注意しましょう。
人面犬のまとめ
今回は1989年から1990年にかけて大ブームを起こした都市伝説・人面犬について、目撃情報や正体の考察などを紹介しました。
あまりにも大きなブームが来てあっという間に消費されてしまったせいか、人面犬はほかの都市伝説に比べるとどこか安っぽいというか、魅力にかける印象を持たれることもあります。
しかし瞬く間に流行りが去って世間から見向きもされなくなったという現実が、ゴミを漁りながら「ほっといてくれよ」と言う、という都市伝説に妙にマッチして、人面犬をいっそう哀愁漂う趣深い存在にしているような気がします。