韓国のソウルにある九龍村はソウル最大のスラム街です。九龍村の読み方や場所・行き方とタルドンネになった歴史、九龍村(九龍小学校)出身の芸能人やアイドル、事故事件と現在をまとめました。
この記事の目次
九龍村は韓国のソウルにあるスラム街(タルドンネ)
九龍村とは韓国のソウルにあるスラム街(タルドンネ)です。この九龍村はソウル最大のスラム街、韓国最後のスラム街と呼ばれることもあります。
・面積:322,046平方メートル(東京ドーム約7個分)
・世帯数:1,242世帯(2010年12月)
・人口:約2,530人(2010年12月)
この九龍村は1988年のソウルオリンピックが原因でできたスラム街です。低所得の貧困層が住んでいるスラム街で、生活保護受給世帯は約151世帯あります。
また、無許可で土地を占有して家を建てて居住している人もいて、ボロボロのバラック・掘っ立て小屋が建ち並び、一種独特の雰囲気が漂っています。
タルドンネとは?
「タルドンネ」とは韓国語で直訳すると「月の町」となり、スラム街・貧民街を意味します。
韓国では坂を登りきった高台・丘の上のような「月に届くほど高い場所」にスラム街があることが多く、スラム街をタルドンネと呼ぶようになりました。
九龍村の読み方
出典:jp.trip.com
九龍村の読み方は「クリョンマウル(구룡마을)」です。
<韓国語での発音>
・九龍→クリョン
・村→マウル
「九龍」という漢字を見ると、香港の「九龍(クーロン)」を思い出して、「クーロン村」と読みたくなる人が多いと思いますが、韓国語では「クリョンマウル」と読みます。
九龍村の場所
出典:mk.co.kr
九龍村の場所は韓国のソウル市江南区にあります。
住所:韓国ソウル特別市江南区開浦洞567-1番地一帯
地図で言うと、こちらのエリアになります。
九龍村の住所を見るとわかりますが、九龍村はあの「江南区」にあります。ソウルの江南区は東京の港区のような場所で、韓国最高の住居地であり教育·文化中心地、経済活動中心地となっている場所です。つまり、韓国の富が集まる場所です。
そのようなセレブが集まる場所のすぐ近くに、タルドンネ(スラム)の九龍村があるのです。九龍村から漢江方面を見ると、江南区にある最先端の高層ビル群が建ち並んでいます。バラック小屋と高層ビルが同じ景色の中に入るのは、九龍村が江南区にあるからです。
九龍村は、江南区との貧富の差がはっきりとわかるスラム街(タルドンネ)なので、韓国のタルドンネの中でも特に注目される存在と言えるでしょう。
九龍村の行き方
出典:ameblo.jp
九龍村は九龍駅から徒歩で10分程度になるので、アクセス自体は悪くありません。
ソウル駅からだと、東大門歴史文化公園駅で乗り換えて往十里駅に行き、そこからさらに乗り換えて、九龍駅に向かうというルートになります。
徒歩10分の場所まで地下鉄が通っていることを考えても、九龍村は都市中心部に近い場所にある特殊なスラムと言えるかもしれません。
九龍村は観光客でもアクセスしやすい場所にありますが、興味本位で冷やかしには行かないほうが良いかもしれません。
九龍村に行った人が、トラックの運転手から追い出されたということがあったようです。
工事のトラック運転手のアジョシが
🇰🇷「何してるんですか?
この先にもう人はいませんよ。
早く出て行ってください!」
※立ち入り禁止区域というわけではありません
九龍村は治安は悪くないと報告している人もいますが、スラム街に住んでいる人が興味本位の外国人が自分たちの生活エリアにズカズカ入ってきて、写真をたくさん撮っていくのはあまり良い気はしないはずです。
決して極度の貧困ではなく、治安も悪くないしホームレスもいない。今回、新しい形のスラムを見たような気がします。
もし、九龍村に行きたいのであれば、現地事情に詳しい人や観光ガイドと一緒に行った方が安心だと思います。
九龍村の歴史:ソウルオリンピック起因のタルドンネ
韓国ソウルのスラム街である九龍村は、韓国の他のスラム街(タルドンネ)とはちょっと異なる歴史を持っています。
一般的な韓国のタルドンネは1950年~1953年の朝鮮戦争で家を失ったり、その直後のベビーブームで住宅が不足したことで、人があまり住んでいない丘の上(山の上)の土地を不法に占拠して住む人が続出し、それがタルドンネになっていきました。
タルドンネは韓国の社会問題になりましたが、盧泰愚氏は「タルドンネの解消」を公約に掲げ、1988年に大統領に当選しています。
つまり、韓国の多くのタルドンネ1950年代に形成され、1980年代後半~1990年代にかけて解消していきました。
しかし、九龍村は違う歴史を持ったタルドンネなんです。
昔は農村だった
九龍村はソウル郊外に位置していますが、現在確認できている最も古い建物は1925年10月のものです。つまり、1925年10月には人が住んでいて、当時はのんびりとした農村でした。
1970年代~1980年代に江南地区の開発が行われた時期でも、九龍村はその開発地域に入らず、1980年代初頭までは閑散とした農村だったことがわかっています。
つまり、九龍村は他のエリアのタルドンネができた時期にはまだのんびりとした農村であり、スラムは形成されていなかったのです。
ソウルオリンピックに向けて立退きの人たちが集まる
九龍村がタルドンネになっていったきっかけは、1988年のソウルオリンピックです。1981年9月に1988年の夏のオリンピックを韓国のソウルで開催されることが決まり、ソウルはオリンピックに向けて開発が始まりました。
このソウルオリンピックに向けて、ソウルは開発が進み、さらに都市景観の問題で、ソウル周辺のタルドンネ(スラム街)は強制的に撤去していきました。スラム街を強制撤去されても韓国政府はきちんとした補償をしたわけではないので、撤去されたタルドンネに住んでいた人たちは農村だった九龍村に流れ着きます。
1980年代半ばには、スラム街としての九龍村が形成されたと言われています。
また、ソウルオリンピック開催に加えて、韓国の経済発展・ソウルの発展に伴い、ソウルの賃貸料・家賃が上昇したことで、住宅難民が生まれ、その人たちも九龍村に流れ着いて、九龍村が形成されていったと言われています。
2000年代には投機目的の人が転入
1980年代半ばからどんどん人口が流入し、タルドンネを形成していった九龍村ですが、2000年代に入ると、一般的なスラム街から少し様子が変わっていきます。
変化のきっかけになったのは、近くにある江南区の発展です。ソウルオリンピックの頃から江南区は高級な繁華街になっていきましたが、2000年代に入ると大企業・IT企業が江南区に本社を置くようになり、韓国の最先端地区・富の象徴として一気に発展していきました。
すると、その江南区近くにある九龍村の土地の値段が上がるのではないかと見込んで、不動産投資目的で九龍村に転入する人も出てきました。つまり、この頃から九龍村はスラム街なのに貧困層以外の人も出入りするようになったのです。
再開発計画があるが・・・
2010年代に入ると、江南区の発展に伴い、九龍村の再開発計画が持ち上がります。2012年にはソウル市は九龍村の再開発計画を可決し、住民は移住することが決定しました。
しかし、ソウル市・江南区・九龍村の住民が対立し、再開発計画はなかなか進行していません。
ソウル市はこの九龍村に約4000世帯が入居できる公共賃貸住宅を建設し、九龍村の住民の賃貸料は激安にして再入居できるように計画しましたが、なかなか立ち退きが進んでいません。
当初の目標としては2018年に撤去、2022年に着工、2025年下半期までに事業完了でしたが、この記事内の画像を見るとわかるように、2025年時点でもまだ撤去は進んでいません。
九龍村出身の芸能人やアイドル
出典:khan.co.kr
九龍村は韓国ソウル最大のスラム街(タルドンネ)ですが、九龍村出身の芸能人やアイドルはいるのでしょうか?
韓国語のサイトなどもいろいろ調べてみましたが、九龍村出身であることを明かしている芸能人やアイドルはませんでした。
ただ、九龍村が学区内に入っている小学校「九龍小学校」出身のアイドル・芸能人・有名人はいます。
今から九龍小学校出身のアイドルや芸能人・有名人をご紹介していきます。
あくまで「九龍小学校出身」というだけなので、九龍村出身かどうかは不明です。九龍村ではなく、近隣の住宅街出身の可能性も十分にあります。
ソンチャン
出典:natalie.mu
ソンチャン
生年月日:2001年9月13日
出身:ソウル市江南区開浦洞
身長:185cm
所属:SMエンタテインメント
活動:アイドル
K-POPグループのRIISZEのメンバーのソンチャンさんは九龍小学校出身です。九龍小学校ではサッカーをしていたことがわかっています。
ソンチャンさんは2020年にNCTでデビューして、2022年に脱退後、RIIZEのメンバーとして2023年に再デビューしました。2024年9月には日本でのファーストシングルをリリースし、日本デビューも果たしています。
チョン・ソヨン
出典:mdpr.jp
チョン・ソヨン
生年月日:1998年8月26日
出身:ソウル市江南区
活動:アイドル、プロデューサー
5人組アイドルグループの(G)I-DLEのリーダーであるソヨンさんは、九龍小学校出身です。BIGBANGに憧れてアイドルを志し、2018年にはガールズグループの(G)I-DLEのメンバーとしてデビューしました。
2022年からは(G)I-DLEの総括プロデューサーを務めていて、音楽・プロデュースの才能も発揮しています。
チェ・ウンジョン
出典:kstyle.com
チェ・ウンジョン
韓国ソウル市江南区
身長:168cm
所属:スターメイドエンターテイメント
血液型:A型
活動:歌手
チェ・ウンジョンさんは1999年にデビューした3人組の女性アイドルグループ「クレオ(CLEO)」のメンバーで、九龍小学校出身です。
第1世代アイドル戦国時代として人気になったクレオでしたが、2005年には解散しています。その後も芸能活動・歌手活動を続けていましたが、2023年にはチェ・ウンジョンさんは新メンバーと共にクレオを再結成しています。
その他の九龍小学校出身者
九龍小学校出身者は、そのほかにもいます。
・キム・ソンフン:野球選手
・ミンサンギ:サッカー選手
・ジュ・ダヨン:俳優
・パロアルト:ラッパー
・ハ・ミンホ:トライアスロン選手
この人たちは九龍小学校出身であることがわかっています。
九龍村の現在:事件事故が多発
火災事故が頻繁に起こっている
出典:khan.co.kr
九龍村は現在、火災事故が多発しています。
・2014年11月9日:1人死亡・住宅16棟全焼
・2017年3月29日:約30人が避難、1人が病院に搬送
・2022年3月4日:5人避難、住宅3棟全焼
・2023年1月20日:500人が避難、60棟が全焼
これだけ立て続けに火災が起こっているのはちょっと怖いですね。バラック小屋が密集している地域なので、空気が乾燥している時期に火災が起こると、一気に燃え広がってしまうのだと思いますが、後述の再活溌難航の事情を考えると、住民を立ち退かせるために火事を起こしている、つまり放火の可能性もあるのでは?と思えてしまいます。
実際に2023年の火事で家が全焼した人のうち、12世帯は賃貸住宅に移住しています。
ここまで火事が頻回に起こっていると、何かしら裏の黒い力が働いているのかもしれません。
火災で芸能人が支援表明
出典:kstyle.com
頻回に起こる九龍村の火災ですが、2023年の火災は特に被害が大きかったこともあり、この火災の後に芸能人が九龍村の支援を表明しました。
女優のイ・ヨンエが、大規模な火災が発生した九龍(クリョン)村の被災者を支援した。
22日、韓国障がい者財団によると、イ・ヨンエがソウル市江南(カンナム)区九龍村で発生した火災被災者たちのために、5,000万ウォン(約500万円)を寄付した。
女優のイ・ヨンエさんは九龍村の火災の被災者への支援を表明しています。
また、2023年12月には韓流スターたちが九龍村に暖を取るための練炭を運ぶボランティアに参加しました。
ボランティア団体「道連れ」と国際救護団体「韓国JTS」は、ソウル・江南(カンナム)区九龍(クリョン)村で練炭ボランティアを行い、俳優のチョ・インソンやハン・ジミン、イ・シオンなど多くの芸能人が参加したと明らかにした。
彼らは約2時間、計4千個の練炭をエネルギーが足りない社会的弱者に伝達した。
九龍村はソウル最大のタルドンネということで、話題性があるから、芸能人たちはボランティアをしているのかもしれません。
高級車が停まっている
九龍村はバラック小屋が建ち並ぶスラム街ですが、現在はバラック小屋の前に高級車が停まっていることもあるようです。
だが、それ以上に驚いたのは、このエリアの住人たちが、必ずしも貧困層というわけではないということである。その証拠に、住宅前に高級車が駐車されていたりする。
再開発のための地価・立ち退き料を得るために、貧困層でなくてもこの九龍村の土地を買い、バラック小屋を建てている人もいるのでしょう。普段は他の場所に住んでいて、時々この九龍村に立ち寄っているのかもしれません。
九龍村は現在、バラックが建ち並ぶスラム街なのに高級車も見かけることがある不思議なエリアになっているのかもしれません。
再開発は難航
九龍村は再開発が難航していますが、居住者たちはソウル市に土地優先購入権などを求める座り込み運動を行ってます。
ソウル市江南区開浦洞(カンナムグ・ケポドン)の九龍(クリョン)村の住民が、村の入り口に高さ5階相当の鉄塔を設置し、ソウル市に「居住事実確認書」の発行と土地優先購入権の付与を要求する活動を始めた。
引用:ソウル最後の貧民街、無期限座り込み…鉄塔上に電気毛布「居住事実確認書を発行せよ」(KOREA WAVE) – Yahoo!ニュース
再開発のために立ち退くのなら、自分たちへの補償をしっかり求めるのは当然のことです。計画では2025年下半期までに約4000世帯が入居できる集合住宅が完成することになっていますが、この計画は一向に進んでいません。
九龍村はいつまで残るのか、本当に再開発されるのかは誰にもわからないかもしれませんね。
九龍村のまとめ
九龍村の韓国のソウルにある九龍村の読み方や場所、行き方やタルドンネ(スラム街)になった歴史、九龍村(九龍小学校)出身の芸能人・アイドルや事件と現在をまとめました。
九龍村は今後どうなっていくのか注目したいです。