「検索してはいけない言葉」として知られる「青い鯨」とは、ロシアから世界中に拡散し多くの10代の若者を自殺に導いたとされるゲームです。
この記事では「青い鯨」のゲームの内容、それによって引き起こされた事件と、にじさんじ・郡道美玲の「青い鯨模倣疑惑事件」についてまとめました。
この記事の目次
青い鯨(検索してはいけない言葉)はSNSで流行し社会問題化した自殺ゲーム
出典:https://www.thewindowsclub.com/
「青い鯨」とは、ロシアが発信源とされるSNS上のグループによる自殺や自傷行為をプレイヤーに促すゲーム「Blue Whale Challenge(ブルー・ホエール・チャレンジ)」を日本語に訳したキーワードで、日本国内では「検索してはいけない言葉」としても知られています。
「青い鯨」=「Blue Whale Challenge」のネーミング由来
「青い鯨」=「Blue Whale」のネーミングの由来は不明ですが、「Blue Whale」(=シロナガスクジラ)が集団で陸地に打ち上げられる現象が集団自殺に例えられる事から「Blue Whale Challenge」と名付けられたと言われている説と、ロシアのロックバンド「Lumen」の「Burn」という楽曲の冒頭のフレーズ(巨大なシロナガスクジラが網を突破しようとする様子を表現)がモチーフになっているという2つの説が唱えられています。
ゲームの内容は現実世界で50日間に50のタスクを実行し最後は自殺に至る
ゲームとしての「青い鯨」は、ロシアのSNS上(ロシア版facebookと呼ばれる「V Kontakte」)に複数存在する「死のグループ」に所属した上で管理者からのタスク(命令)をプレイヤーがこなしていくというのが大まかな内容となっています。
このSNS上の死のグループまたはゲームは、「Blue Whale Challenge Dare(青い鯨チャレンジをやってみろ)」、「「f57」」、「A Sea of Whales(鯨の海)」、「Ocean Whales(大洋の鯨達)」、「Wake Me Up At 4:20 AM(午前4時20分に起こして)」、「Silent House(静寂の家)」などの名称で複数存在し、いずれも自殺志願者やこの世を否定する若者が集まるSNSコミュニティとして存在しているようです。
総称として「青い鯨」と呼ばれるこれらのゲームは、アプリをダウンロードするようなものではなく、直接的にSNS上で管理者とプレイヤーがやり取りをし進行すると見られるため、秘匿性が高く詳細は未だわかっていません。また、表面上はSNS上でやり取りをしているだけであるため、その時点で取り締まる事は難しいという側面があるようです。
ただ、ゲーム内容自体はどれも共通していて、管理者から50日間かけて50のタスクを実行する事を促されるというものです。序盤は些細なタスクが指示され、後半に行くにつれてタスクは次第に過激化し、最終的に自殺する事を命じられます。(ゲームの詳細や具体的なタスクの内容は後述)
その内容は、洗脳技術や集団意識を巧妙に利用したもので、実際に「青い鯨」のゲームを行ったと見られる少年や少女が自殺をしてしまうケースが立て続けに発生しました。
2013年に生まれ世界に拡散し2016年から2017年にかけて社会問題化
「青い鯨」のミームは、2013年(Wikipediaの2017年発祥は誤情報)にロシアのSNS(ロシア版facebookと呼ばれる「V Kontakte」)上で拡散され始めたとされ、子供や10代の若者を中心に、ロシアだけでなく、アジア、北アメリカ、ヨーロッパ、南アメリカに広まり、「青い鯨」に関わったと見られる少年少女の自殺が相次ぎ、2016年から2017年にかけて世界的な社会問題となりました。
Since it originated in Russia in 2013, the game has led at least 130 children and teenagers to commit suicide in Russia alone, with many more suicides reported in Asia, North America, Europe, and South America.
なお、この青い鯨に関わった自殺者が130人にのぼるとする上の記事のデータは、ロシアのタブロイド紙「ノーヴァヤ・ガゼータ」が2016年に、2015年11月から2016年4月までの青い鯨に関わる自殺者数が130人を数えたと報じた事を根拠としているようです。
したがって、実際の青い鯨に関わる自殺者数がはっきりとわかっているわけではありません。事実、「ノーヴァヤ・ガゼータ」は後に実際に青い鯨との関連が確認できたのは80人ほどだと訂正しています。
これは、ゲーム「青い鯨」と自殺者との因果関係を証明する事は非常に難しい事を表していると言えます。
青い鯨(検索してはいけない言葉)のゲームの内容
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ゲーム「青い鯨(Blue Whale Challenge)」の内容は、管理者からプレイヤーに50日間にわたって50のタスクが命じられ、プレイヤーは現実世界でそれを実行し、その証拠の画像をSNS上にアップするというものだとされています。
管理者からプレイヤーへのタスクは、前半は「午前4時20分に起きる」、「特定の音楽や指定されたホラー映画を1日中鑑賞する」、「鯨の絵を描く」といった比較的無害なものですが、次第に「腕を切り刻み鯨の形を彫り込む」、「できるだけ高い建物の屋上に登ってその端に立つ」など危険かつ自殺を意識される内容へとエスカレートしていきます。
ただ、序盤にも「手にf57(死のグループの名前)とナイフで刻む」、「カミソリで軽く3カ所リストカットをする」などの軽めながら自傷を含む内容のタスクが含まれます。
また、「青い鯨」のゲームでは、自傷行為を行ったら、証拠としてその写真を撮影して管理者に送信する事を課されます。
これらのタスクを拒否しようとした場合には、管理者は「お前が誰なのか住所も全て知っている、途中でやめれば、個人情報を拡散し家族にも危害が及ぶ」とプレイヤーを脅迫し、やめられない状態にしていたとの情報も報じられています。
以下は、オリジナルとされる「青い鯨(Blue Whale Challenge)」の50のタスクの内容の和訳です。
① 手に「f57」とカミソリで刻み写真を管理者(キュレーター)に送る
② 午前4時20分に起床し管理者が送るサイケデリックで恐ろしい映画を観る
③ 静脈に沿って腕を軽く3カ所切り、写真を管理者に送る
④ 紙に鯨を描き、写真に撮って管理者に送る
⑤ 鯨になる覚悟ができたら、脚に「YES」と彫る、無理なら自分を何度も切る(罰する)
⑥ Task with a cipher.(暗号のタスク、詳細不明)
⑦ 手に「f40」と刻み、写真に撮って管理者に送る
⑧ VKontakte(ロシアのSNS)のステータスに「#i_am_whale」と入力する
⑨ 恐怖心を克服しなければならない
⑩ 午前4時20分に起床し、なるべく高い屋根の上に登る
⑪ カミソリで手に鯨を彫り、写真に撮って管理者に送る
⑫ サイケデリックなホラー映画を1日中観る
⑬ “彼ら”(管理者達)から送られる音楽を聴く
⑭ 唇を切る
⑮ 手を針で何度も刺す
⑯ 何か自分にとって痛い事をする、自分で自分を病気にする
⑰ 見つけられる最も高い建物の屋上へ行き、その端にしばらく立つ
⑱ 橋に行き、その端に立つ
⑲ クレーンに登るか、もしくは登ろうと試みる
⑳ 管理者があなたを信頼できるかチェックする
㉑ Skypeで“鯨”(あなた以外のプレイヤーあるいは管理者)と会話をする
㉒ 屋上へ行って端に座り、足を投げ出すようにぶらぶらさせる
㉓ Another task with a cipher.(別の暗号のタスク、詳細不明)
㉔ Secret task.(秘密のタスク、詳細不明)
㉕ “鯨”とミーティングをする
㉖ 管理人があなたの死亡日を告げるので、あなたはそれを受け入れる
㉗ 午前4時20分に起床して鉄道レールを訪れる(見つけた鉄道ならどこでも良い)
㉘ 1日中誰とも話をしない
㉙ “あなたは鯨だ”と誓いを立てる
㉚〜㊾ 毎日午前4時20分に起床し、ホラー映画を見て“彼ら”が送ってくる音楽を聴く、1日に1度自らの身体を傷つけ、“鯨”に話しかける。(洗脳の最終プロセス)
㊿ 高いビルから飛び降り、あなた自身の命を奪う。
青い鯨(検索してはいけない言葉)の事件① ロシアの少女の自殺中継
ここから、「青い鯨(Blue Whale Challenge)」と呼ばれるゲームが関連していると見られている事件をいくつか紹介していきます。
2015年11月23日、ロシアの南東部に住む16歳の少女、リナ・パレンコワ(Rina Palenkova)が、線路に頭を置き列車によって頭部を切断されるという衝撃的な方法で自殺しました。
リナ・パレンコワは、自殺の直前に自撮り写真をロシアのSNSに投稿していました。そして、リナ・パレンコワの頭部が切断された遺体画像もこのSNS上に拡散されます。(現在も検索すればリナの遺体の画像を確認できるが刺激的な画像なので閲覧注意)
事件後、彼女の部屋から青い鯨の絵が見つかり、彼女は「Blue Whale Challenge」の最初の犠牲者と認識されるようになります。
同時に、リナ・パレンコワは「青い鯨」のゲームの参加者達のシンボル的存在となり、神格化されていきました。
「青い鯨」のゲームに参加して自殺をしたと見られる何人かの犠牲者が、リナ・パレンコワをイラストを描いていた事も確認されています。
青い鯨(検索してはいけない言葉)の事件② 死のグループに関わる10代少女が相次いで自殺
出典:https://i2-prod.mirror.co.uk/
リナ・パレンコワの自殺から1ヶ月後の2015年12月25日、ロシア・リャザンの12歳の少女、アンジェリーナ・ダビドア(Angelina Davydova)が、ビルの14階から飛び降り自殺しました。
さらにその2週間後、2016年1月半ばには、同じくロシア・リャザンの16歳の少女、ダイアナ・クズネツォワ(Diana Kuznetsova)が9階のビルから飛び降りて亡くなりました。
出典:https://i2-prod.mirror.co.uk/
彼女達は2人とも同一のSNSグループ「Wake Me Up At 4:20 AM」に所属しており、そのグループではリナ・パレンコワの自殺についてや「Blue Whale Challenge」についての話題が言及されていました。
2016年には「青い鯨(Blue Whale Challenge)」のゲームを主催した首謀者だとしてフィリップ・プデイキン(Philipp Budeikin)という元心理学の学生で当時21歳のロシア人の男が逮捕されます。
しかし、「青い鯨(Blue Whale Challenge)」が絡んだと見られる10代の自殺は止まらず、2017年2月には「青い鯨」のゲームに関わったと見られる15歳のユリア・コンスタンティノワ(Yulia Konstantinova)と16歳のベロニカ・ヴォルコバ(Veronika Volkova)がロシア・イルクーツク州ウスチ・イリムスクの14階建の集合住宅の屋上から2人で飛び降り亡くなりました。
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この月には、他にもロシア・チタの14歳の少女が電車のホームに飛び降りて轢かれて死亡し、クラスノヤルスクの15歳の少女が5階建てのアパートから飛び降りて重傷を負い、いずれも「青い鯨」のゲームと関連があった事がわかっています。
青い鯨(検索してはいけない言葉)の事件③ 2017年には世界中に拡散
2017年7月8日、アメリカテキサス州の15歳の少年、アイザイア・ゴンザレス(Isaiah Gonzalez)が自宅で首を吊って亡くなっているのが見つかり、その死の模様をSNSで生配信していた事も判明。そして、少年の両親は彼が「青い鯨」に関わっていた証拠(タスクをこなした証拠写真を送信していた)を見つけたと訴えました。
2017年10月には、バングラディッシュのチッタゴンで、「青い鯨」のゲームに関連して自殺未遂をしたとして、チッタゴン大学に通う学生が拘束されました。(同国では自殺未遂は違法行為)
また、インドやエジプトでも、2017年に10代の若者が「青い鯨」のゲームに関わって自殺をしたとの数件の事件が報道されています。
このように、2017年頃から「青い鯨(Blue Whale Challenge)」と総称されるゲーム(ネットミーム)は一気に世界中に拡散され、各国政府が警鐘を鳴らすほどの社会問題へと発展しました。
青い鯨(検索してはいけない言葉)と「にじさんじ」の郡道美玲の事件とは
出典:https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/
ロシアに端を発し、アメリカや中国、ヨーロッパ、中東など世界中に拡散した「青い鯨(Blue Whale Challenge)」ですが、日本では「青い鯨」に関連した自殺者が出たという事件は現在のところ報じられていません。
日本で「青い鯨」というワードが知られるようになった大きなきっかけは、VTuber、バーチャルライバーのグループである「にじさんじ」に所属していたVtuberの郡道美玲の起こした炎上事件でした。
2023年3月、にじさんじのVtuber・郡道美玲さんが「青い鯨」を模倣したようなミッションを、自身のメンバー限定コミュニティで行なっていた事が暴露され炎上しました。
【郡道美玲 青い鯨模倣事件】
今炎上中のにじさんじ所属のVTuber、郡道美玲が数年前、東欧で問題視された「青い鯨」という洗脳を用いた自殺教授ゲームを真似た「郡道先生のミッション」なるものをメンバー限定の閉鎖コミュニティで行っていたことが分かった
↓
公式は動画を消して隠蔽を図ったとのこと pic.twitter.com/CI7TjuZ7Q4— AzRail (@twittelands) March 29, 2023
拡散された情報によれば、にじさんじの郡道美玲さんが行なっていた「青い鯨」を模倣したような行為というのは、自身の熱心なファンであるコミュニティのメンバーに対し「真冬の公園の噴水に入る」、「土を食べる」、「リンスを舐める」、「カツアゲをする」などのミッションを課し、実行したら報告させていたそうです。
郡道美玲さんが「青い鯨」のように、最終的に自殺をさせる事が目的だったとは思えませんが、閉鎖的なコミュニティ内で、自身のメンバーになるほどのファンに対して過酷なミッション(「カツアゲ」が事実だとすれば犯罪教唆)を行わせた行為は「青い鯨」の事件と構造が似ているとして炎上に発展しました。
これは「郡道美玲青い鯨模倣事件」などとも呼ばれています。
ただ、郡道美玲さんが本当にこのような行為をコミュニティのメンバーに課していたのかは分かりません。証拠の画像としてミッションを実施したメンバーの投稿は上げられているものの、郡道美玲さんが直接的にそれを指示した事を示す証拠はなく、アンチによる捏造ではといった声も見られます。
郡道美玲の「にじさんじ」の卒業理由と「青い鯨」は無関係
「青い鯨」を模倣したのではと炎上した郡道美玲さんですが、2023年6月に「にじさんじ」からの卒業が発表されています。
ただ、郡道美玲さんのにじさんじからの卒業は「青い鯨」を模倣して炎上した事とは無関係で、同時期に開催されていた野球の国際大会「WBC」に関連した不適切な発言が原因になったと見られています。
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郡道美玲さんは、2023年3月22日にWBCの決勝戦をテレビ観戦している事をTwitterで実況されていましたが、その際に「これ玉投げる人、強い人が立った時に頭か身体に投げちゃえば出場停止にできるんじゃないの?」と投稿。
プロ野球でのデッドボールは大怪我になる可能性が高く、特に頭部への死球は最悪の場合死亡したり、身体的な傷害をもたらす恐れもあって極めて危険なものです。
当然ながら、郡道美玲さんのこの不謹慎な発言は野球ファンを中心に大炎上に発展しました。
この発言後、郡道美玲さんは謹慎処分となって活動を停止。そのまま復活する事なく「にじさんじ」からの卒業が発表されたため、郡道美玲さんの「にじさんじ」卒業の理由は、「青い鯨模倣疑惑事件」での炎上ではなく、WBCに関連する不適切発言であると見られています。
まとめ
今回は、ロシアのSNS上で生まれ世界中に拡散されて多くの10代の若者の自殺に関連したと言われるSNS上のゲーム「青い鯨(Blue Whale Challenge)」についてまとめてみました。
「青い鯨」とは、SNS上で管理者の命じる50のタスクを50日間かけてクリアし、最終的に自殺を支持されるという内容のゲームで、洗脳と集団意識を巧みに利用したものです。
ロシアでは2015年頃から「青い鯨」が絡んだとする10代の若者の自殺が相次ぎ、2017年までに、アメリカやヨーロッパ、中東、アジア、南米など世界中に拡散し各国で自殺者も出て、各国当局が警鐘を鳴らすほどの社会問題にまで発展しました。
「青い鯨」のゲーム内容は、50日間かけて現実世界で50のタスクを達成していくというものですが、最初は簡単内容のタスクだったものが、後半にいくについて自らを傷つけたり、危険に晒したりするような過激な内容へとエスカレートしていき、最終的に自殺を指示されるというものです。
日本では、「青い鯨」はそこまで影響を与えず、これに関連して自殺をした若者が出たという事件は報道されていません。
日本でこの「青い鯨」が知られるようになったきっかけは、2023年に「にじさんじ」所属のVtuber・郡道美玲さんが、「青い鯨」を模倣したようなミッションを自身のメンバー限定配信で行なっていたと暴露され炎上した事でした。
なお、郡道美玲さんは2023年6月に「にじさんじ」からの卒業が発表されましたが、これは「青い鯨模倣疑惑事件」が原因ではなく、2023年3月にWBCをめぐる不適切発言をして大炎上に発展したのが原因だとみられています。