ヒバゴンは日本に生息するUMAです。広島県比婆山麓が最初の目撃場所となります。
類人猿という特徴を持ち死骸の写真も実在しますが、正体は未だ不明であり、現在は存在が嘘っぱちとも言われ映画などフィクションの世界でも多用されがちです。
この記事の目次
ヒバゴンとはどの様なUMAなのか
ヒバゴンは今から約50年前の1970年7月20日『広島県庄原町(旧比婆郡)西城町の比婆山麓』で目撃された正体不明の類人猿型UMAです。
身長はおおよそ1.6m、顔つきは逆三角形、ゴリラの様な体型をしています。
この奇妙な類人猿?は目撃地にちなみ、比婆ゴン=ヒバゴンと当時中国新聞庄原町局長だった宮尾英夫氏により命名されます。
この奇妙なUMAが初めて報告に上がったのは『広島県比婆郡西城町油木地区』の山間部、ダム付近をトラック運転中の男性から始まります。
地図で分かるように広島県内でもかなりの山奥であり、人の出入りも乏しい区域ですね。
この最初の目撃談は山道を横断した僅か一瞬なのですが、体長1~2mほどのチンパンジー・ゴリラの様な生物だったそうです。
目撃例はこれだけにとどまらず、3日後の7月23日には同じ柚木地区の農家の男性が『成人男性ほどの身長・頭部が異様に肥大・全身が黒色の体毛で覆われている』人型の奇妙な生物と遭遇します。
その時の情報を元に作成した想像図がこちらです。
出典:https://www.shobara-info.com/
この2件の報告以降、当地区のダムを中心に次々と「ヒバゴン報告」が相次ぎます。主要な発見例を時系列順に書き出してみましょう。
- 1970年(昭和45年)12月、今度は比婆山系の『吾妻山』で、雪上に奇妙な足跡が発見されます。合計12件の足跡報告例がありました。
出典:https://www.chugoku-np.co.jp/
- これ以降しばらくの間ヒバゴン報告例は途絶えますが…その4年後の1974年(昭和49年)6月20日、再び『庄原市川北町須川』の山道で『全身毛むくじゃら・身長は成人男性ほどの奇妙な生き物』を男性が目撃します。胴体は人間の1.5~2倍ほどあり、怪物は男性の乗った車に驚きすぐにその場から立ち去ります。
- 1974年(昭和49年)7月15日『比和町』で自宅前を通る県道沿いに茶色い体毛・足はまるで人間のような1.6~1.7ほどの「巨大猿」が直立しているのを女性が目撃。その歩行も猿と瓜二つでした。ただこの時、目撃者はこの生物を「老齢の大猿」と捉えたそうです。
- 続いて1974年(昭和49年)8月15日…今度は『庄原市濁川町』でヒバゴンが目撃されます。またも県道付近で四足歩行・二足歩行を繰り返しており、車で近づくとヒバゴンは山中の柿の木に飛びつきます。この時男性はその瞬間を遂に写真に収めます。身長は約1.5m、今度は灰褐色の体毛で身を包み、首周りは白かったそうです。
- 1974年(昭和49年)10月11日には、この写真が撮影された現場近く『濁川町』の県道で目撃されたのを最後にヒバゴンの目撃報告は途絶えてしまいます。
この様に1970年の目撃報告が2件、そして1974年に数例が報告されたのみで、ヒバゴン騒動は終息するという結果になるのです。
ヒバゴンを収めた写真たち
後に取り上げる『ヒバゴンの死骸写真』以外、生きているヒバゴンを収めた写真は1974年(昭和49年)8月15日『庄原市濁川町』で目撃されたヒバゴンのみです。
その写真がこちらです…
出典:https://www.chugoku-np.co.jp/
残念ながら撮影された写真は非常に不鮮明で、専門家は猿・ツキノワグマではないかと鑑定しています。そもそもが目撃者自身も「撮影したのはヒバゴンではない。サルだ」と後に否定的な態度を取るという顛末になります。
ヒバゴンの写真と言えばこの写真のみと思われがちですが、実は2枚目の写真も存在します。
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またヒバゴンと思しき足跡も数多く見つかっています。
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そしてこちらは『西城町役場』に実際に掲載されている「ヒバゴンの足跡」の説明図となります。
ヒバゴンの目撃は比婆山麓で相次ぎ、一躍全国ニュースにも流されたました。そして1971年には何と西城町役場に『類人猿係』という部署が大真面目に設置された経緯があります。1974年を境にヒバゴンの目撃がプッツリ途絶え、4年後の1975年にはこの『類人猿係』は呆気なく廃止されます。
これは当時の『町役場の写真』です。『類人猿係』は情報提供や目撃情報を募ります。
その後もヒバゴンは相次ぎ全国ニュースにも流されたことで。かなりのヒートアップの様相を示します。下記は当時の読売新聞の記事です。
結果として類人猿係には全国各地のマスコミが話を聞こうと殺到する羽目になってしまいます。初期の目撃者の方もマスコミの強烈な取材で、日常生活に支障をきたすほどでした。すると町役場は迷惑料として目撃者に、当時のお金5000円を支給します。
当時の町役場の初任給は1万4900円だったというから、5000円という迷惑料は破格の金額ですね。
行政がツチノコなどに懸賞金をかけたという話題はありますが、実際にUMA関係で行政からお金が動いたのは確認できるだけでこれが最初で最後です。
余談ですが4年後の1975年3月に類人猿係はあっさり廃止されます。と同時にこの「ヒバゴン騒動」の「終結宣言」をこれまた行政が異例の形で宣言しています。
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この類人猿係が作成した冊子が今もなお『西城町役場 企画振興課』にコピーが保管されており、数々の写真や情報なども掲載されています。
冊子に掲載されている当時の“ヒバゴン”の特徴は以下のものです。
○身長は1.5~1.6メートル
○足跡は27~30センチメートル
○体重は80~90キログラム
○顔は逆三角形で、人間によく似ているしかし全体に
薄い黒にちかい茶かっ色の毛に覆われて目が鋭く
ギョロッとしている
○頭には5.0センチメートルほどの黒にちかい茶かっ
色の毛が逆立っている
○身体全体も黒にちかい茶かっ色の薄い毛で覆われ
た胸には白っぽい毛がみられる
○動作はにぶく、人を恐れる様子はない引用元:広島県比婆郡西城町西城町役場
繰り返しますが現在『類人猿係』は廃止されており、現存する資料が観たい方は『西城町役場 企画振興課』に問い合せてみるのが最も手っ取り早い手段でしょう。
以下は当時のヒバゴンブームに乗り作成された『冊子』の画像となります。降順で1~5ページ目まで存在しました。
○冊子表紙
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○冊子2ページ目
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○冊子3ページ目
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○冊子4ページ目
出典:https://www.chugoku-np.co.jp/
○冊子5ページ目
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いわゆる中国地方の山岳地帯である『西城町』です。ある種の村おこし・町おこし的な意味合いも兼ねているような気がしますね。
ヒバゴンの目撃場所や特徴 – 広島以外の目撃例はあるのか –
ヒバゴンの目撃情報については既に列挙しましたが、それ以外にも多くの部外者がこぞって「ヒバゴンブーム」に乗り、その生け捕りに臨みます。
写真は当時の神戸大生の“ヒバゴンサークル”を写したものです。
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目撃情報は数えきれないほど西城町役場に寄せられます。しかし肝心のヒバゴン本体は一向に捕獲・観察できないという膠着状態が続くのです。
ヒバゴンの過去の目撃場所を「ヒバゴン~比婆山・帝釈狭~庄原観光ナビ」さんのHPで紹介されていましたので、図をお借りしてご紹介します。ただ目撃総数は20例にとどまり、
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当たり前ですが『比婆山山麓』に目撃情報は集中していますが、時折“JR芸備線”の線路伝い・比婆山駅・備後落合駅周辺にも出没しているのが見て取れます。
話題に挙がったのも1970年~1974年の僅か約4年間であり、現在は寧ろ“ヒバゴンの里”といったようなニュアンスで観光誘致にも役立っています。
この5年間の間に未知なる類人猿は絶滅してしまったのか?それとも遥か人里離れた山奥の僻地で、息を潜め生息し続けているのか?そもそも“ヒバゴン”は何らかの野生動物(※比婆山地帯はニホンザル・ツキノワグマなどの野生哺乳類が豊富な地域です)の見間違いなのか?
次項で言及していきましょう。
ヒバゴンの死骸とその正体
昨日やってた「世界の何だコレ!」見てたらヒバゴンの死体の写真ってゆーのがあったんやね~。ヒバゴン宇宙人説とかは知ってたけど(笑)これは知らなかったヨ( ̄▽ ̄) pic.twitter.com/ZmMKDffLVz
— わるだ久美 (@warudarake) May 18, 2017
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実はヒバゴンの死骸は実際に写真に収められています。
しかしこの記事は実はかの有名な『月刊ムー』紙上に記載されたもので、ソース元がショックサイエンスで知られる『飛鳥昭雄』氏であるので、イマイチ信憑性に欠ける部分があります。
一概に否定はできないのですが……UMAや超常現象に詳しい方なら本書の信頼度の高さがある程度はかれることでしょう。
その後の学識者による解剖や細かな詳細も語られておらず、この写真以外は一切の音沙汰がないのが現状となります。
ヒバゴンは実在するのか?それとも嘘!?
ヒバゴンの信憑性については『短期間の目撃』『不明瞭な写真』『土着の山神の祟り』など、様々な要素が絡み合い話が膨れ上がってしまった感が否めないことと思います。
ただ狭い集落という事もあり隣近所両隣は見知った顔であり、目撃した人はとても嘘を吹聴するような人物ではなかったという話です。
実際に当時テレビの電波も届かなかった西城町。役場でヒバゴン騒動の5年間『類人猿係』を任された恵木剋行さん(76)は、目撃した人物たちと顔見知りですが「嘘を言うような人たちでは決してなかった」と断言しています。
先ほど紹介したヒバゴンの死骸もすぐさま埋葬し、埋葬場所は祟りを恐れ決して口外しなかったという、やや眉唾な情報が付け足されるのです。
証言と足跡しか物的証拠はなく、生物学的にも実在の立証ができません。
しかも公式に『ヒバゴン終息宣言』が赤代町役場から出されているので、何とも難しい所です。
ただ…真っ先に上がったのは『老齢ニホンザルの見間違え』若しくは『ツキノワグマとの誤認』です。
こちらは飼育下日本最高齢と言われている「多摩動物公園」のメス“ミドリ”です。年齢は2022年で何と35歳!よく見るとニホンザル本来の毛色もぬけ、所々脱毛も見えます。
ただ大きさは成人男性ほどではなく、目撃者の見間違いにどうしても偏ってしまいますね。
次は「森の人」こと『オランウータン』の国内最高齢個体です。1970年代は動物園もまだメジャーではなく、実際にオランウータンを目にした人は皆無であったでしょう。
提唱するのは動物園…あるいは富裕層などが密輸個体を脱走させた説です。やや無理がある説ですが、動物園ならともかく密輸では公的機関に通報もできないでしょう。その巨大な頭部と初めて見る人には異業の生物に見える事から、ヒバゴンを調べた際に真っ先に浮かんだのが『オランウータン』でした。
ただ中国新聞ではヒバゴンの足跡の形からオランウータンの可能性に触れる研究者のインタビューを抜粋し、かつて実際に密輸された約30頭のオランウータンが行方不明になったとの逸話を紹介しています。
しかしその行動範囲や日本の気候から可能性の低さを指摘しています。また戦時中、とある家に毛深く猿のように跳ね回る子どもがいたが、いつの間にかその姿を消したという地元住民たちの伝承も拾い上げています。
次に有力な説は『ツキノワグマ』の誤認です。
ヒバゴンの特徴である全身を覆う黒い体毛は「ツキノワグマ」に合致しており、二足・四足歩行…そして山間を機敏に動くのはヒバゴン・ツキノワグマに共通する特徴です。
また立ち上がった身長?は120~180cmほどであり、ヒバゴンの体長に酷似しています。
現在最も有力な説はこれらの哺乳類群との見間違いです。
補足ですが『ヒバゴン移動説』も提唱されていますが、よその土地での目撃例がないのもおかしな話で、1975年以来約50年間全く音沙汰がないのも『見間違い説』を加速させています。
残念ながら、今後のヒバゴン発見報告は上がらなそうな気配がしますね。
ヒバゴンを題材にした映画
ヒバゴンを題材にした映画は実は調べた限り一作しかなく、題名を『ヒナゴン』と言います。
ロケはリアリティを追及するためにヒバゴン発見の町『西城町』で撮影されました。ストーリーはホラー映画ではなく“広島県の山あいの田舎町・比奈町で30年ぶりに目撃された謎の生物・ヒナゴンをめぐるヒューマン映画”です。重松清さん原作の『いとしのヒナゴン』 、監督は渡邊孝好さん、キャストは主演・井原剛志さん、ヒロインは井川遥さんです。
キャストは…
五十嵐一郎 比奈町長・イナゴのイッちゃん・・・・・・・伊原 剛志
石井 信子 比奈町役場類人猿課臨時職員・・・・・・・・井川 遥
吉岡 純平 一郎の仲間ドベ・比奈町役場総務課長・・・・上島 竜兵
南波 大助 一郎の仲間ナバスケ・怪しげな販売業・・・・嶋田 久作
橋本 勝 一郎の仲間カツ・反町長派町議・理容業・・・鶴見 辰吾
島本 順平 信子の同級生・小学校教師・・・・・・・・・松岡 俊介
西野 俊彦 信子の同級生・比奈町教育委員会職員・・・・柳家 花緑
宮本 恭子 一郎や信子たちの元担任教師・・・・・・・・馬渕 晴子
荒川 達吉 ヒナゴンの目撃者・・・・・・・・・・・・・佐藤 允坂本 美穂 「週刊文鳥」編集者・・・・・・・・・・・・永田めぐみ
荒川 新吉 達吉の息子・・・・・・・・・・・・・・・・田中 要次
石井 友子 信子の妹・・・・・・・・・・・・・・・・・居升 悠
平野 彩花 比奈小学校5年生・・・・・・・・・・・・・大倉 綾華片山 憲吾 備北市長・・・・・・・・・・・・・・・・・豊原 功補
石井 絹代 信子の祖母・・・・・・・・・・・・・・・・雪村いづみ
石井 健作 今は亡き信子の祖父・ホラ健・・・・・・・・夏八木 勲引用元:映画「ヒナゴン」公式HP
2005年に劇場公開されましたが、残念ながらヒットはしなかったようですね…
まとめ
今回は広島県比婆山麓に生息すると言われた未確認生物『ヒバゴン』について取り上げました。
UMAながら行政機関が関与し期待が寄せられましたが、目撃例が僅か20件・しかも他に例を見ない期間限定・終息宣言まで出されているUMAであり、その存在がプッツリと途絶えていることから、個人的にかなり今後の発見の望みが薄い…?と思いました。
ただ幸運なことに『ヒバゴン』は2022年の今日でも町おこしや観光に役立っており、今でも比婆山系を訪れる観光客は少なくないようです。
その様な点でも、かなり風変わりな昭和時代を賑あわせたUMA『ヒバゴン』と言えるでしょう。