リンパの流れを促すことでダイエット効果があると注目されているリンパマッサージ。しかし、誤った方法で行うと死亡するとの噂もあるようです。この記事ではリンパマッサージについて副作用やデメリット、事故事例、危険な理由をふくめて紹介していきます。
この記事の目次
リンパマッサージとは…その効果とメリット
体の中には血管のほかに余分な水分や脂質を流すリンパ管という経路が通っており、これは耳の後ろや胸、わきの周辺を中心に体中に広がっています。
リンパ管の中には余分な水分や脂質を含んだリンパ液があり、要所要所に脂肪や疲労物質などの老廃物を集めるとされるリンパ節が存在し、リンパ管とリンパ液、リンパ節の3つをあわせて「リンパ」と呼びます。
リンパ管を刺激してリンパ液の流れを促すリンパマッサージを施すと、むくみを改善する効果や疲労改善効果が期待できるとされています。
また、リンパ管は静脈に沿って走行している箇所もあるため、リンパマッサージを行うと血流もよくなり、冷えや肩こりの改善なども見込めるのです。
リンパマッサージを行うだけで体重が減るということはありませんが、むくみが取れて見た目がすっきりする、代謝が良くなって痩せやすい体になるという意味で、ダイエットに取り入れる方も多いです。
しかし手軽に施術を受けられ、メリットが多いと謳われる一方で、リンパマッサージを受けた後に体調不良を訴える人や死亡事故まで発生しており、その危険性も疑われています。
リンパマッサージが危険とされる理由① 副作用・デメリットがある
リンパマッサージを行った後、施術前と比べて体がだるく感じる、痛みを感じるといった不調を感じる人もいるとされます。
これは副作用ではなく「好転反応」という、体が良くなる前に起こす一時的な反応なのだそうです。
好転反応には以下の4種類があるとされています。ここではそれぞれの好転反応が起きる理由と、対策を見ていきましょう。
弛緩反応
どんどんあがってるー助けてー(>_<。)
もしかして昨日エステ行ったの関係ある…?そういえば前にもリンパマッサージ受けたあと熱がでたんだよね…好転反応??でも喉は関係あるのかな 謎(?_?) pic.twitter.com/cKffAlov8z— えりさ⬛ (@erisa0926) July 26, 2023
弛緩反応は、硬直していた筋肉がリンパマッサージで緩むことで起きると言います。
筋肉が強張った状態では交感神経が優位に働いていますが、リンパマッサージで強張りがほぐれると、副交感神経が優位に働くようになるとされます。
その反動で一時的に眩暈やだるさ、眠気、発熱などが出るとのことです。弛緩反応が出た場合は、無理のない範囲で軽い運動をしたり、しっかりと睡眠をとることが推奨されています。
過敏反応
少しばかり美容に目覚めて、あまりにも身体がダル重だったので、こんな時期に怒られるの覚悟でリンパマッサージを受けてきた!!人生初!
スッキリしたけど、めちゃくちゃな眠気とだるさと痒みと腹痛で体調悪くなった!笑
リンパマッサージってデトックスなんだなと自分の無知を知りました。— ちこ (@chico20co) July 31, 2021
過敏反応は、今まで滞っていた血流や神経の働きが正常化することで起きる反応と言われています。
血行不良などが原因でこれまで感覚が鈍っていた部位が敏感になることから、かゆみや腫れ、肌の痛みなどが起きるとされます。冬場に急に体を温めた際、かゆみを感じることがあるのを想像するとわかりやすいでしょう。
過敏反応が出た場合に痛みがある箇所に湿布などを貼っては安静に過ごすことが推奨されています。
排泄反応
リンパマッサージの好転反応で
肌荒れやばい〜
体重は変わらんけど
むくみ取れてスッキリした感じする— さく (@saku_slave) June 21, 2023
排泄反応は、体内に溜まった毒素を出そうとすることで起きる反応とされています。
老廃物や疲労物質を体の外に出そうとするために排泄機能が活性化することで起き、尿などの排泄物の量や臭い、色に変化が見られると言います。また、発疹や肌荒れなどが見られることもあるとのことです。
排泄反応が出た場合には水分をしっかりとって、体の外に老廃物が出やすい環境を作ることが推奨されています。
回復反応
リンパマッサージ受けると必ず
2.3日ぐらい酷い腹痛になるんだけど
これは好転反応なのか…?— あやすけ (@yymt0506) September 21, 2022
回復反応は血液やリンパ液の流れが改善されたことで起きる反応と言われています。
リンパマッサージで血流が整い、体温が上昇することから、一時的にだるさや吐き気、腹痛、下痢、発熱などの症状が見られることがあります。
回復反応が出た場合には休養をとって体を休ませることが推奨されています。
好転反応が続く期間
一般的に好転反応は2〜3日で改善するとされており、場合によっては弛緩反応→過敏反応→排泄反応→回復反応と4つの段階を踏んで発症することもあるとのことです。
しかし、施術に失敗しているにもかかわらず「好転反応なので心配いりません」と説明するサロンや施術者もいないわけではないので、あまりにも体調不良や異変が長引く場合には医療機関に相談するなどしたほうがが良いでしょう。
目安として一週間以上も好転反応とされる症状が続く場合には、施術による副反応が出ているおそれがあると言われています。
また、好転反応という言葉は古くから東洋医学で「瞑眩(めんげん)」という呼称で使われてきた一方で、科学的な根拠はないと厚生労働省がアナウンスしていることも頭に入れておきましょう。
もちろん好転反応という言葉を使う施術者がすべて詐欺というわけではありませんが、サロンや施術者に対して不安なことや信用できない点などがあった場合には、早めにマッサージをやめることも大切です。
「危険なのは実際には病気が進行し悪化しているのに、本人や周囲は『好転反応だ』と信じ続け、効果的な治療を受ける機会を逃したり放棄したりすることです。仮に初動が大切な命にかかわるような病気であれば取り返しがつきません。もし好転反応という言葉を聞いたら、冷静になってまずは医療機関で診察を受けてもらいたいと思います」
リンパマッサージが危険とされる理由② 怪しい情報や施術者も多い?
多くのサロンではリラクゼーション効果やむくみの改善、こりをほぐして体を軽くする効果がある、といったことをリンパマッサージの効果としてあげており、医学的な効果(特定の病気を治せる)などはないと明言しています。
しかし、なかにはリンパマッサージで坐骨神経痛が治る、高血圧症やアトピーが改善する、癌が平癒すると言ったように、現代の医学では治すことが困難とされている症状でもリンパの流れを整えるだけで改善できる、まるで万能であるかのように謳う悪質な施術者もいるとされています。
浮腫を緩和する目的で癌の患者さんへリンパマッサージは病院でも行われていますが、そうではなく、リンパマッサージで「病気そのものが良くなる」と騙る業者も存在するのです。
仮に風邪や捻挫などの軽い症状であったとしても、医師免許を持たないマッサージ師が「マッサージで特定の病気が治る」と宣伝することは医師法・医療法に違反する行為ですし、例外なく詐欺です。
もしもサロンで「リンパケアで病気が治る」という説明があったら、そこに通うのは止めたほうが賢明でしょう。
また、現在はYouTubeなどにもリンパマッサージのやり方を紹介する動画が多数アップされていますが、マッサージの効果を誇張しすぎている動画は参考にしないほうが無難だと思われます。
リンパマッサージが危険とされる理由③ 死亡するおそれがある?
フジテレビ系列で2010年12月8日に放送された『ホンマでっか!?TV』で、「誤った方法でリンパマッサージを行うと死亡する危険性がある」との話を医療評論家のおおたわ史絵さんが紹介し、話題になりました。
おおたわさんによると「喉仏のあたりにある頸動脈洞(けいどうみゃくどう)を左右同時に刺激すると、心停止を引き起こすおそれがある」とのことで、放送後にはネットでも「そんな簡単に心停止にはならない」といった反論も見られました。
しかし、プロレスや柔道などの締め技も頸動脈洞を圧迫して相手の血圧を急激に下げ、失神させるという技です。おおたわさんの指摘は決して荒唐無稽なものではないと言えます。
そのため、整体師やエステティシャンの方々からも「力加減のわからない素人が、自己流で首のリンパを流そうとした場合には、死亡につながる危険性もあるのでは?」という意見も出ることになりました。
ただ、頸動脈洞を左右同時に5秒以上圧迫すると失神する、その後も圧迫を続けると死に至るおそれがあるという話ですから、リンパマッサージが死を招くというわけではありません。
リンパマッサージが危険とされる理由④ 事故報告がある
直接、死亡につながるような危険性は低いものの消費者庁からもリンパマッサージを受けてから体の調子がおかしい、施術が原因で骨折したという事例も報告もされています。
ここではリンパマッサージが原因で起きた事故について紹介していきます。
全治1ヶ月の重傷を負う
「強力マッサージ」をウリにしているサロンでリンパマッサージを受けたところ、腹部に痛みを覚えるようになったという20代の女性。
彼女は初めて本格的なマッサージを受けたこともあり、痛みに対しても「施術後はみんな、こんな感じなのだろうか」と思ってしまったといいます。
ところが日数が過ぎても腹部の痛みが治まらなかったことから病院に行ったところ、肋骨が折れていたことが発覚したそうです。
骨折箇所が一ヶ所であれば1ヶ月ほどで痛みが和らぎ、骨の癒合も進むとのことですから、彼女が施術で折られたのは幸いにも一ヶ所だけだったのではないかと思われます。
リンパ腺が腫れる
顎の下の肉をスッキリさせたくて、脚用のローラーを使って顔周りのリンパマッサージを我流で行っていたという女性。
痛みを我慢してマッサージを続ければ効果が見込めると思っていたそうですが、翌朝にはリンパ腺が腫れあがって激痛に襲われたといいます。
同じくエステサロンで首横のリンパを流してもらったという20代の女性も、施術中に痛みを感じたものの「こういうものなのだろう」と思って我慢していたところ、翌日にリンパ腺が腫れあがり、耳鼻科を受診したといいます。
痣だらけになった
CMや雑誌広告も出すような大手のエステサロンでリンパマッサージを受けたという女性。
施術者から「深部のリンパを刺激します」「お客様はリンパが詰まっている」と説明の後に強めのマッサージをされて、体中が痛くなったといいます。
翌日、鏡を見ると全身が痣だらけになっており、痛みが引くまで辛い思いをしたそうです。
数年後、ほかのサロンで施術を頼んだところ「浅層リンパに働きかけます」と説明を受けて撫でるような優しいマッサージを受け、「あの痛みはなんだったのだろう」と思うほどの効果があったとのことです。
施術後に不調が出ても治療費の請求は難しい
実は医療用リンパドレナージ以外の美容目的のリンパケアは、無資格でも行えます。
リンパケアは厳密にマッサージに含まれないため、あん摩マッサージ指圧師の国家資格も必要ないのです。
資格が必須でない以上、施術者が有資格者でなくても、技能や知識がたしかなら問題ないではないかと考える方もいるかもしれません。
しかし、あん摩マッサージ指圧や鍼灸院などの国家資格がなければ開業できない施術院と違い、リンパケアやカイロプラクティック、整体などの無資格者でも施術ができるマッサージ店では、施術後のケアに大きな差があるのだといいます。
例えば、有資格施術所でケガを負った場合、病院の診断書を提示すれば、その店舗が加入している損害保険によって保険金が出る。一方、無資格施術所は保険に加入することができないため、利用者が被害を訴えても治療費を得ることは極めて難しいという。
施術が原因で負傷してしまった場合でも、「因果関係が証明できない」という理由で治療費を支払わないサロンが多いと指摘されているのです。
なかには施術前に「不調が起きても治療費を請求しない」という同意書にサインを求める店もあるといいます。
そのため泣き寝入りになるケースも多く、実際には消費者庁に報告されているより多くの事故が、リンパマッサージを含む無資格マッサージ店で起きているのではないか?と考えられています。
あん摩マッサージ指圧の国家資格を持つ施術者がリンパマッサージを行っているサロンもありますから、心配な方は有資格者のいるお店を探すとよいでしょう。
リンパマッサージが危険とされる理由⑤ やりすぎるとデメリットがある?
リンパマッサージをすると小顔になる、と主張する施術者やサロンも存在します。
たしかにリンパマッサージでむくみがとれると顎のラインがシャープになり、顔が小さくなったように見えるのですが、これはあくまでもマッサージをした当日にのみ現れる変化であり、実際に顔が小さくなったわけではありません。
そのためダイエットではなくリンパマッサージでシャープな顔を保つためには、マッサージを続ける必要があるのですが、これには大きなデメリットがあると指摘されています。
皮膚を刺激し続けるために肝斑やシミができやすい肌を作り、数年後には皮膚がのびてたるんでしまうというのです。
上の動画ではTV出演もしている美容外科・美容皮膚科医の上原恵理さんが、なぜマッサージで小顔にならないのかについて、頭蓋骨の構造からわかりやすく説明しています。
顔がすっきりするのが嬉しくてついつい毎日リンパマッサージをしてしまうという方にとっては怖い内容ではありますが、知っておくとよい話かもしれません。
リンパマッサージの注意点
家でリンパマッサージをする場合やサロンを探す際、どのようなことに気をつければよいのでしょうか。
ここでは安全にリンパマッサージを受けるための注意点について紹介していきます。
力を入れすぎない
マッサージは痛いくらいがちょうどいい、痛いのは効いている証拠と思っている方も少なくないかもしれません。
しかし、リンパ管は皮膚のすぐ下、浅い部分に流れているものが全体の7割、深い部分に流れるものが3割とされており、深部のリンパを外から刺激するのは難しいと言われています。
よほど熟練した施術者でない限り、強い力で刺激を与えることから打撲や骨折などの怪我をさせてしまう危険性があるのだそうです。
また、浅い部分のリンパを痛みを感じるほど強く刺激してしまうと、リンパ管やリンパ節を傷めるおそれがあるとされます。
そのため施術者のなかには「リンパマッサージは優しく行うべき、痛いリンパマッサージは危険」と訴える人も多く、自分で行う場合でも力は入れないように注意喚起しています。
これからサロンでの施術を考えているという方は、口コミやお店のサイトなどを見て「痛みのないリンパマッサージ(リンパドレナージ)をしている」と明記しているサロンを選ぶとよいでしょう。
禁忌症状に注意する
力を入れずに優しく撫でるだけのリンパマッサージ(リンパドレナージ)であっても、以下の持病がある方についてはマッサージを受けるべきではないとされています。
・血栓症…リンパマッサージで血流が良くなることで、血栓が浮遊して心臓に運ばれてしまう危険性があるため、治療後6ヶ月が過ぎるまでは危険。
・心臓浮腫…リンパ液は最終的に静脈に合流し血管系に吸収されるため、リンパマッサージをすることで血液量の増加が促される。そのため、心臓へ負担をかけてしまうおそれがある。
・心臓病…マッサージの結果、リンパ液が一気に流れると左心室、左心房に疾患がある場合には処理しきれなかったリンパ液が肺に流れ込んでしまうおそれがある。
・感染症…リンパ節で侵入を防いでいた細菌やウイルスなどが、リンパ液の循環が活性化することで体内に流されてしまうおそれがある。
ほかにも悪性浮腫のある方や低血圧症の方も、リンパマッサージは避けたほうが良いとされています。
妊娠中は流産のおそれがある?
妊娠初期(妊娠4カ月まで)のお客様には施術ができません、としているサロンもあります。これは妊娠初期にリンパマッサージを受けると、母親の体が胎児を異物と勘違いして体外に排出しようとする危険性があるためだそうです。
妊娠中は浮腫みなどのマイナートラブルが出やすく、飲めない薬も増えるためにリンパマッサージを試したい、と考える女性も少なくないでしょう。
しかし、胎児の安全を考えて妊娠初期のリンパマッサージは避けることが望ましいとされています。
ほかにも体調に不安がある時はマッサージは中止する、施術を受けても大丈夫か相談するなどしましょう。
過大な効果を期待しない
リンパを刺激すると余分な脂肪や老廃物が排出されやすくなる、というリンパマッサージの効果そのものも、医学的に証明されているわけではありません。
そのためリラックス目的でリンパマッサージを受けるのであれば問題ないのですが、「太ももを〇㎝細くしたい」「血圧を下げたい」といったような目的でマッサージを受けても、期待しただけの効果は得られない可能性が高いのです。
上の動画では形成外科医の北條元治さんが、医学的にリンパとはどういうものなのか、期待してはいけない効果について解説しています。
医師から見たリンパマッサージはどのようなものなのかが学べ、怪しいサロンの見分け方の参考になうような情報も含まれているため、リンパマッサージについて興味がある方にとっても、懐疑的な方にとっても興味深い内容です。気になる方は視聴してみてください。
リンパマッサージについてのまとめ
今回はリンパの流れを刺激してむくみをとる、代謝をアップさせるというリンパマッサージについて、その危険性や注意点を中心に紹介しました。
消費者庁には、リンパマッサージ以外のマッサージで起きた事故事例も複数報告されていますが、事故事例に共通しているのは「施術中に激しい痛みを感じる」という点です。
リンパマッサージが怪我や危険を伴うマッサージというわけではないのですが、正しく施術や説明をしてくれるサロンを選ぶこと、自分で行う場合も力を入れすぎず、やりすぎないことが大切だと言えるでしょう。