自殺の名所であり、テレビの2時間ドラマではおなじみの場所である福井県の東尋坊。ここで、集団リンチによる殺人事件が起こりました。
東尋坊殺人事件の詳細や被害者の嶋田友輝さんの家族や生い立ち、加害者・犯人の動機や現在をまとめました。
この記事の目次
東尋坊殺人事件の詳細
東尋坊殺人事件とは、2019年10月18日に福井県の東尋坊で嶋田友輝さんを飛び降りさせて殺害した事件です。10月19日に東尋坊の崖下20mの海で嶋田さんの遺体が発見され、少年6人と上田徳人が逮捕されました。
被害者の嶋田友輝に犯人Aが憎しみを抱く
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滋賀県東近江市在住の被害者の嶋田友輝さん(当時20歳)とこの事件の主犯である犯人A(当時19歳)は、2019年9月に知り合いました。
そして、2人は意気投合し、嶋田さんは犯人の父親の家で同居するなど、一緒に行動するようになります。被害者と犯人Aは、最初は仲が良かったのです。
しかし、些細なことから、犯人Aは嶋田さんに対して憎悪を募らせていきました。
暴行・リンチを数るようになる
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2019年10月8日、犯人B(当時19歳)は交際相手に誘われて、嶋田友輝さんと犯人Aと一緒にカラオケに行きます。犯人AとBは会うのは二度目、犯人Bと嶋田さんは初対面でした。
4人でカラオケをしていましたが、嶋田さんに対して怒りを持っていた犯人Aは、スパーリングと称して嶋田さんに暴行を加えます。そして、犯人Bもそれに便乗するように嶋田さんに暴行します。
この暴行は10月8日午後11時頃から10月10日の午前0時ごろまで、場所を変えながら26時間も続きました。
さらに、被害者の嶋田友輝さんは10月10日午後1時ごろから10月12日午前3時ごろまでも、犯人A、Bから暴行されています。
この時点で、嶋田さんは全治不詳の顔面打撲とろっ骨骨折の重傷を負っています。
一度は病院を受診させるがリンチ再開
犯人Aは交際相手から注意されたこともあり、数日間は暴行を控え、嶋田さんを病院に受診させたこともありました。
しかし、10月16日午後10時45分ごろに犯人Aの父親の家で、被害者と犯人Aのトラブルの原因の1つだった暴力団関係者に、被害者が犯人Aの居場所を電話で教えたことで、再びリンチが始まります。
最初は犯人の家で暴行を加えていましたが、暴行の音が近所に漏れることを危惧した犯人たちは、被害者をプリウスのトランクに押し込み、場所を移動して、凄惨なリンチを加えました。
10月17日になっても、犯人たちは自分の仲間を呼ぶなどして、被害者に対して断続的に暴行が加えられました。そして、10月17日午後5~6時ごろには、犯人のAの父親の自宅に戻ってきて、さらに暴行は続きました。
犯人たちが被害者の嶋田さんに行った暴力・暴行・リンチには次のようなものがあります。
・足蹴りする
・火のついたタバコを顔につける
・火のついたタバコを鼻の穴に入れる
・火のついたタバコを背中に押し付ける
・柵の上から被害者の腹部に飛び降りる
・車で脚を轢く
・木製バッドやフライパンで殴る
・裸で躍らせる
・自慰行為を命じる
・インパクトドライバーを口の中に入れて作動させる
・ハンマーを口に入れて前歯に引っ掛けて引っ張る
・歯を折る
・のど仏の骨が折れるまで首を絞める
・指を掴んで手の甲側に無理やり折り曲げる
・ティッシュやタバコを食べさせる
・体をライターであぶる
これらの暴行は人間がすることではありません。
10月16日からは暴行を受けても嶋田友輝さんは無抵抗の状態で、犯人たちの言いなりになっていました。
10月18日に通報が入るが発覚せず
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10月18日午前3時ごろ、犯人たちから呼び出されて暴行現場に居合わせた人から警察に「嶋田さんが暴行を受けている」という通報が入り、警察が犯人Aの父親の家に駆け付けました。
この頃には、被害者の嶋田さんの顔が言い訳できないくらいボコボコに腫れてしまっているため、犯人たちは犯行を隠すために、場所を移動することにしました。そして、警察が到着する直前に、嶋田さんを犯人の1人のプリウスに乗せていたため、警察が来ても事件が発覚することはなかったんです。
もう少し早く警察が来ていたら、プリウスの中まで捜索していたら、嶋田さんは殺されずに済んだのに・・・。本当にあと一歩のところで、嶋田友輝さんの運命は悪い方に転がって行ってしまいました。
東尋坊で生きたまま転落させる
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嶋田さんを引き続き暴行を加えながらも、犯人たちは警察が来たことで、事件が発覚することを心配し始めました。そして、被害者の嶋田さんの前で、けがが治るまでかくまうか、殺してしまうかを相談するようになりました。
犯人グループの中には「本人(被害者)が仕事をしたいって言ってるんだから、仕事をさせれば良い」と死なせない方向で提案しますが、犯人Aはそれを拒否します。そして、どうやって死なせるかの話し合いを始めました。
琵琶湖に沈める、ライターのオイルで燃やすなどの案が出ましたが、結局具体的なことは決まらず、車3台に分乗して、被害者を車のトランクに入れ、10月18日の午前中に出発します。
滋賀県の多賀サービスエリアで、どうやって死なせるかを話し合っている時、犯人Aは犯人グループ1人1人に対して体的な暴行内容を指摘し、裏切ったり人のせいにしたりしないように工作するという狡猾さを見せています。
そして、途中で東尋坊に行くことが決まり、10月18日午後6時10分ごろ、東尋坊の駐車場に到着しました。
犯人たちは被害者の嶋田友輝さんを足で蹴りながら、「はよ歩け」と脅して、東尋坊の上まで歩かせました。この時点で、嶋田友輝さんは犯人たちの度重なる暴行・リンチによって、抵抗する気力もなく、犯人たちは完全に嶋田さんを支配下に置いています。
嶋田さんを崖の上に立たせ、背後には犯人たちが立っている状態で、「はよ落ちろや。」などと命じ、飛び降りる以外の選択肢を無くし、嶋田さんを東尋坊の崖の上から飛び降りさせました。
嶋田さんはそのまま20m下まで落ち、頭部打撲による脳挫滅で死亡しています。
「脳挫滅は生きたまま、およそ20メートルの崖から転落して、岩に頭を強く打ちつけて死亡したことによるもの。また、遺体には複数の打撲痕があって、これは暴行によって残ったものと思われます」(捜査関係者)
引用:《監禁転落死事件》東尋坊から生きたまま…命を落とした親友の悲痛な告白 (2019年10月30日) – エキサイトニュース(2/4)
長時間のリンチを受けて、全身ボコボコで、最終的に東尋坊から飛び降りなければいけなかった嶋田友輝さんの心境を思うと、やり切れません。
少年6人+上田徳人が逮捕
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10月18日午前3時の時点で、「嶋田友輝さんが暴行を受け、車のトランクに入れられていた」という通報を受けていた警察は、犯人Aの家に急行するも、直前に犯人たちが場所を移動していたため、犯人たちを捕まえることはできませんでした。
しかし、「嶋田さんが監禁・暴行を受けている」という事実は掴んでいたので、そのまま捜査を続けると、10月18日午後10時半ごろに、多賀サービスエリアに犯人たちの車を見つけ、逮捕しました。
そして、犯人たちが東尋坊に行っていたことがわかり、逮捕翌日の10月19日に東尋坊の崖下で嶋田さんの遺体が発見されました。
東尋坊殺人事件の被害者の嶋田友輝の生い立ちや家族
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東尋坊殺人事件の被害者は、嶋田友輝さんです。嶋田友輝さんは当時20歳でした。
家族は母と兄
嶋田友輝さんは母子家庭で育ちます。母と兄の3人家族でした。両親は嶋田さんが5歳の頃に離婚していて、滋賀県大津市の公営住宅に家族3人で暮らしていました。
母親は離婚当初は生活保護を受けていましたが、介護の仕事を始めて、女手一つで男の子2人を育てています。
兄は真面目なタイプで、家を購入して独立しているとのことです。
やんちゃな生い立ち
兄は真面目なタイプでしたが、嶋田友輝さんはやんちゃなタイプでした。嶋田さんは高校2年生の時に高校を中退していて、その後は建設現場の仕事や介護の仕事などしていました。
やんちゃなタイプだったため、あまり人としての評判は良くなかったようです。
・コンビニの前で喧嘩を売って、逆にボコボコにされた
ただ、友達からは優しいやつとの評判でした。
・友達が落ち込んでいると元気づけてくれる
年に1度は地元の友達と集まって遊んでいたとのことです。
ただ、嶋田友輝さんは2019年9月中旬に家族から捜索願が出ています。ちょうど犯人Aと知り合いになったころですね。この事実だけだと、9月中旬から嶋田さんは犯人Aに監禁されていたのか?と思いますが、そうではありません。
嶋田友輝さんは自分の意志で、家族と連絡を取らずに家出をしていたようです。10月にはケンカが原因で警察沙汰になっています。
このころ、嶋田さんの家族からは行方不明届が出されていたのだ。そのため、県警は本人に家族へ連絡するように促していたという。
引用:《監禁転落死事件》東尋坊から生きたまま…命を落とした親友の悲痛な告白 (2019年10月30日) – エキサイトニュース(2/4)
嶋田さんは既に成人していたということもあり、本人の意思を尊重して、家族から行方不明届けが出ていても、家族には知らされなかったのでしょう。
「たられば」で語っても、仕方がありませんが、この時に母親のところに帰っていたら、殺されなかったし、暴行も受けなかったかもしれません。
東尋坊殺人事件の加害者/犯人は合計で7人…主犯は19歳少年で39歳の上田徳人だけ実名報道
東尋坊殺人事件の加害者・犯人は合計で7人。成人していたのは1人だけで、残りは少年でした。
・犯人A(19歳):長浜市在住(とび職)
・犯人B(19歳):彦根市在住(アルバイト)
・犯人C(19歳):彦根市(無職)
・犯人D(17歳):大津市(通信高校生)
・犯人E(17歳):大津市(通信高校生)
・犯人F(17歳):多賀町(とび職)
この7人は仲が良いグループというわけではありません。犯人CDは以前からの知り合い、犯人EFも以前からの知り合いでした。また、犯人と上田徳人も知人という関係でした。
ただ、それ以外は10月以降に初めて知り合ったという程度の関係で、「知人を介しての知り合い」という程度でしかなかったのです。
主犯は19歳少年
逮捕された犯人は合計7人。1人だけ39歳と年齢が上ですので、39歳の上田徳人が主犯だったと思われがちです。でも、実は19歳の少年Aが主犯だったのです。上田徳人は職場での評判も上々でした。
「週に1~2日でひとり親方という形で働いてもらったけれど、アルバイトという形。朝が早い仕事だけど、7時でも8時でもきちんと来るし、性格も穏やかだから、なんでこんなんになったんか、俺もわからんのよ」
引用:《監禁転落死事件》東尋坊から生きたまま…命を落とした親友の悲痛な告白 (2019年10月30日) – エキサイトニュース(3/4)
上田徳人は主犯Aと同じ飛び会社で働いていましたが、主犯Aには逆らえなかったのでしょうか。十代の少年グループの中に、1人だけアラフォーが入り、リーダー格になるわけでもなく、悪さをしても注意もしない。
「穏やかな性格」だったのかもしれませんが、年相応の精神年齢ではなく、親子ほども年の離れた子たちと一緒に遊んでいたということは、上田徳人もヤバい人物だったと言えるでしょう。
東尋坊殺人事件の犯人の動機
東尋坊殺人事件の犯人の動機は、「仲間割れ」のようなものでした。東尋坊殺人事件の動機を詳しく見ていきましょう。
助けてもらえなかった
犯人Aと被害者の嶋田友輝さんは、最初は仲が良かったんです。嶋田さんは犯人Aの父の家に同居していたくらいですから。
でも、犯人Aがブラジル人に絡まれた時に、嶋田さんが助けなかったことがありました。このことをきっかけに、犯人Aは嶋田さんに憎悪を抱くようになります。
また、事件直前の10月7日には、犯人Aと被害者が暴力団関係者とトラブルを起こしています。これはコンビニの前で起こったケンカで、嶋田さんが暴力団関係者に喧嘩を売って、嶋田さんや犯人Aがボコボコにされてしまい、警察沙汰になりました。
この暴力団関係者とのトラブルを、犯人Aは嶋田さんのせいだと腹を立てていたんです。そして、10月8日に嶋田さんに暴行を始めました。
犯人Aはリンチしている時も、執拗にブラジル人や暴力団関係者とのトラブルについて、執拗に嶋田さんに問い詰めています。
また、10月16日に嶋田さんがその暴力団関係者に犯人Aの居所を教えてしまったことにも立腹して、リンチが過激化しています。
この動機を考えると、「不良少年同士の仲間割れ」という側面が動機として強いのかなと思います。もちろん、仲間割れをしたからと言って、「喧嘩両成敗」と言うつもりはありません。この事件は完全に100%、犯人たちが悪く、嶋田さんの責任はゼロです。
集団心理が働いた
被害者の嶋田友輝さんに対して、主犯の犯人Aは仲間割れが原因で一方的に憎しみを抱いていました。だから、犯人Aが嶋田さんを暴行して、リンチをするのはまだわかります。
でも、ほかの犯人たちは嶋田さんにほとんど面識はなく、恨み・憎しみも抱いていませんでした。では、なぜ主犯の犯人A以外の6人の犯人たちは、暴行・監禁に加わったのでしょうか?
裁判では犯人Aに従属的な立場だったと認定された部分もありますが、仲が良い関係ではなかったからこそ、その場のノリで行ってしまい、流れに乗ってしまったのではないか?変な方向に集団心理が働いてしまったのではないか?と推測できます。
新潟青陵大の碓井真史教授(社会心理学)は「濃密な人間関係がないからこそ、ノリでその場が盛り上がる道具として暴力が用いられた。最近の少年グループは、ボスが仲間の行動を止めるリスクを取らず、誰も流れに逆らえなかったのでは」と、少年特有の衝動性の高さも影響した可能性を指摘する。
引用:凄惨な東尋坊殺人、少年ら7人全員に実刑判決 空気に流され暴行エスカレート 問われる矯正教育|社会|地域のニュース|京都新聞
最初はその場のノリで、いじめの延長のような気軽な気持ちでやっていたけれど、だんだんエスカレートしてきて、主犯の犯人Aにそれぞれの暴行も指摘されてしまい、、自分1人だけ抜けることもできなくなってしまったのかもしれませんね。
東尋坊殺人事件の犯人の判決と現在
東尋坊殺人事件は2019年10月20日に少年6人と上田徳人が監禁容疑で逮捕され、その後殺人の容疑で再逮捕されています。
主犯の少年Aは次のように供述しています。
被告人質問で、元少年は、事件でほかに起訴された少年ら6人との関係について「けんかの強さによる力関係があり、格闘技経験がある自分の意見は通りやすかった」と述べ、「(嶋田さんを連れ)東尋坊に行くことを決めたのは自分だ。殺害することや、暴力を止められたのも自分だと思う」などと証言した。
そして、2021年7月17日に大津地裁で7人に判決が言い渡されました。
・犯人B(当時19歳):懲役10~15年
・犯人C(当時19歳):懲役5~10年
・犯人D(当時17歳):懲役6~12年
・犯人E(当時17歳):懲役5~9年6ヶ月
・犯人F(当時17歳):懲役5~9年6ヶ月
・上田徳人(当時39歳):懲役10年
犯人たちは1人を除いて、少年のため実名・顔写真が出ません。最短の刑期で終われば、20代半ばで出所でき、また自由に生活していくことができると思うと、やりきれないものはあります。
東尋坊殺人事件のまとめ
東尋坊殺人事件の詳細や被害者の嶋田友輝さんの家族や生い立ち、加害者・犯人の動機や現在をまとめました。
東尋坊殺人事件は、本当に胸くそが悪くなる事件でした。この事件で、再び少年法の意義などが問われるようになっていますので、今後少年法がどうなっていくのかを注目しいていきたいですね。