群馬県の歴史ある温泉地である水上温泉ですが、現在は廃墟ホテル群や心霊スポットとしてネット上で話題です。
この記事では水上温泉の廃墟群の場所や、温泉地としての長い歴史、多くの宿泊施設が廃墟化してしまった理由や心霊の噂のある廃墟、地域の現在の動きなどについてまとめました。
水上温泉の廃墟ホテル群が話題に
出典:https://tokyo-sampo.relove.org/
水上温泉(みなかみ・おんせん)は、群馬県利根郡みなかみ町にある温泉地域で、戦後の時代から1990年代頃までは草津温泉や伊香保温泉と並ぶ群馬県有数の温泉街として栄えた場所でした。
しかし、上越新幹線の開通(1982年、客が別の観光地に流れた)やバブルの崩壊などの影響を受けて次第に客足が減少して衰退し、その頃に廃業したホテルや宿泊施設の廃墟が現在も多数残されています。
この水上温泉の廃墟群ですが、廃墟マニアや心霊スポット好きの間で話題になっています。ここでは、この水上温泉の廃墟ホテル群についてを中心に紹介していきます。
水上温泉の廃墟ホテルの場所
廃墟ホテル群がある「水上温泉」の場所ですが、群馬県利根郡みなかみ町湯原付近です。
関越自動車道の水上インターチェンジから車で約5分、JR東日本上越線水上駅から徒歩約10分とアクセスも便利な場所にあります。
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廃墟ホテル群の場所ですが、JR水上駅を降りて温泉街を少し散策すれば、あちこちにすぐに見つける事ができます。(廃墟内への侵入は違法行為であり、建物の老朽化による事故の危険もあるため、外観の鑑賞にとどめましょう)
なお、水上温泉には廃墟群の影響で廃れたイメージがあるものの、現在も営業中の宿泊施設も多くあります。利根川を挟んだ渓谷の只中という雄大な自然に囲まれた立地もあり、美しい景観やスキー、キャニオニング、ラフティング、カヤックやカヌーなどのアウトドアスポーツも楽しめ、自然を堪能できる旅先としてとても魅力的な場所です。
水上温泉の歴史
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水上温泉の歴史についても紹介していきます。
この場所で温泉がはじめて発見されたのは、永禄年間(1558年~1570年)と伝わります。伝承によれば、この地に建明寺という寺があり、そこの海翁という和尚が利根川沿いの崖から煙が立ち上るのを見つけてその場所を調べたところ、崖の中腹の洞窟から温泉がこんこんと湧き出していたとされています。
歌人・若山牧水の「みなかみ紀行」では、1922年頃の水上温泉の様子が描かれており、この当時既に20〜30もの宿があったそうです。当時は渓谷に囲まれ俗世と隔絶された温泉地として知られ、その雄大な自然と温泉情緒が調和した美しい景観が多くの文化人に愛され、太宰治や北原白秋、与謝野晶子なども訪れたそうです。
そして、昭和初期の1931年、に国鉄上越線水上駅が開業すると、関東の奥座敷として注目を浴びるようになり、温泉街が開かれて栄えるようになりました。
その後、1960年代から70年代にかけて、国道が整備され関越自動車道と接続された事などによるアクセスが向上や高度経済成長に伴う好景気もあって多くの団体客が訪れるようになり、同県の草津温泉や伊香保温泉と並ぶ一大温泉地として発展しました。
この頃は、社員旅行などで団体で訪れる男性客をメインターゲットとしていたため、ショーパブやスナックなどが立ち並び、宿泊施設でもコンパニオンを所属させるなど、歓楽街化したようです。
ところが、バブルの崩壊に伴ってそうした団体客は大きく減少し、家族連れなどの新たな顧客のニーズに応える事ができずに急激に衰退していきました。この急激な衰退によって宿泊施設が次々と廃業し、現在も残る廃墟群を形成する理由となりました。
水上温泉のホテルそれぞれの歴史や廃墟化の理由
続けて、水上温泉の廃墟ホテル群それぞれの歴史や廃墟化の理由についてもみていきます。
ホテル大宮の歴史と廃墟化の理由
水上温泉の廃墟群の中でも有名な「ホテル大宮」は、水上駅前の場所にあります。地域住民も「駅前にいきなり廃墟があるのはイメージが良くない」と頭を悩ませているそうです。
このホテル大宮は、田中角栄元首相の側近であった谷古宇甚三郎を総帥とする谷古宇産業グループ経営のホテルとして1964年に開業しました。1966には新館を増築するなど、当初は経営は上手くいっていたようです。
ところが、1974年に田中金脈問題がきっかけとなって田中角栄が首相辞任に追い込まれ、その側近であった谷古宇甚三郎も愛人の不動産会社の問題、埼玉銀行問題などが浮上して追求を受け、その影響を受けてホテル大宮も資金繰りが厳しい状況に追い込まれました。
その後、バブル景気もあり、一時は経営を盛り返しますが、その矢先の1989年4月にエレベーターに乗り込もうとした宿泊客が5階から15メートル下に落下して全治6ヶ月の重傷を負う事故が発生。
警察の捜査により、ホテル大宮がエレベーター設置時の建築確認申請を行なっておらず、年1回の提出が義務となっている定期点検報告書も5年間にわたって提出していなかったなどの不祥事が発覚し、建築基準法違反と業務上過失傷害容疑で取り調べを受ける間、ホテルの営業停止命令が下され、宿泊予約のキャンセルなども相次いで1991年に廃業へと追い込まれました。
ホテル大宮の建物は廃業後もそのまま放置され廃墟化しました。
蒼海ホテルとクラブ・ラヴィリンスの歴史と廃墟化の理由(解体済)
「蒼海ホテル」も水上温泉の廃墟群の中でも有名な廃墟の1つでしたが、2021年に解体が完了しています。「クラブ・ラヴィリンス」はこの蒼海ホテルの関連施設で通りを挟んで向かい合った場所にあり、営業当時は地下通路で連結されていました。
蒼海ホテルは1903年創業の老舗で当初は割烹旅館として経営されていました。全盛期は4棟、収容人数450人、客室84室、浴場3施設を備えた大規模宿泊施設でした。
コンパニオンによるシースルー衣装での接客プランがあるなど、男性向け団体客をターゲットに経営していましたが、時代の変化に対応できずに経営不振に陥り2005年4月に閉館しています。(新潟中越地震の影響で廃業したのは新潟県柏崎市にある同名の別ホテルで誤情報)
その後、長らく廃墟として放置されていましたが、2021年に解体が完了しています。
水上観光ホテルの歴史と廃墟化の理由(解体済)
「水上観光ホテル」は、1953年創業の老舗宿泊施設でした。
プールも完備した大型レジャー施設として全盛期は年間5億円を売り上げていましたが、バブル崩壊に伴う団体客の激減や2004年に発覚した温泉偽装問題(水上観光ホテルは温泉水を使用しない浴場を温泉と偽っていた)で名前が上がった事もあって売り上げが激減の一途をたどり、2007年10月に廃業しています。負債額は約6億円でした。
建物は廃墟化しましたが、2012年に解体されています。
ホテル藤屋(藤屋旅館)の歴史と廃墟化の理由
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「ホテル藤屋(後に藤屋旅館)」は、1875年創業の老舗宿泊施設でした。水上温泉の発展に伴い1971年に新たに大規模建物を新築するなどして全盛期には10億円を超える売り上げがありました。
しかし、建物の減価償却費による赤字経営に加えて、バブル崩壊による景気の低迷と建物の老朽化によって売り上げが2億円規模にまで大幅減少し、2008年5月の行政による差し押さえを経て、2009年2月に負債総額22億円で民事再生法の適用を申請し倒産しています。
その後、廃墟化していましたが、現在は別オーナー会社による再開業に向けたリニューアル工事が進んでいます。
ホテル藤原郷の歴史と廃墟化の理由
心霊スポットとしても有名になっている廃墟「ホテル藤原郷」は、1959年に「藤原湖温泉」の名前で創業の宿泊施設で、全盛期には温泉と料理を売りに年間2億円の売り上げていました。
しかし、2004年の温泉偽装問題発覚時に、不正ホテルのリストにホテル藤原郷の名前も上がり、売り上げが激減し2007年9月に閉館に追い込まれました。廃業時の負債総額は約1億2000万円でした。
水上温泉の廃墟ホテルの心霊の噂
水上温泉の廃墟群の中には、心霊スポットとして噂になっているものもあります。順番に紹介していきます。
ホテル藤原郷の心霊の噂
水上温泉の廃墟の中で最も有名な心霊スポットが「ホテル藤原郷」です。
ホテル藤原郷は、心霊研究家の池田武央さんが、2014年7月16日にTBS「水トク!」枠で放送された心霊特番「世界の怖い夜!真夏に震える恐怖の絶叫SP」にて、「浮遊霊の巣窟」として紹介した事で心霊スポットとして有名になりました。
ホテル藤原郷の廃墟には心霊をテーマに扱うYouTuberも多く肝試し企画などで訪れており、そうした動画では、足音のような怪音が聞こえる、人の気配がする、カメラ機器が故障や誤作動を起こす、人影が映り込む、心霊写真が撮れるなどの怪現象が発生しています。
[youtube https://www.youtube.com/watch?v=292M08ZCKWE]
なお、2022年6月中旬、このホテル藤原郷で火災が発生し、地域住民に不安を与えており、地元警察も警戒を強めているようです。心霊スポットとして有名な物件ですが、外からの鑑賞にとどめて不法侵入は止めましょう。
火災があったのは旧ホテル藤原郷(同町藤原)。鉄筋コンクリート3階建ての一部が燃え、けが人はいなかった。
ホテル大宮の心霊の噂
水上温泉の有名廃墟「ホテル大宮」にも心霊の噂が存在します。ホテル大宮では営業時に宿泊客がエレベーター事故で重傷を負う事故がありましたが、この事故が死亡事故と誤認され、この男性客の幽霊が出るという心霊話が囁かれているようです。
この他にも、温泉施設跡地で女の笑い声が聞こえる、探索中にオーブが飛び回っているのを見たといった心霊の噂が囁かれています。
ホテル藤屋の心霊の噂
「ホテル藤屋」の廃墟にも心霊の噂があり、深夜に肝試しに入ったグループがポルターガイスト現象に遭遇したと言われています。
水上温泉の廃墟ホテルの現在
廃墟スポット、心霊スポットとして有名になっている水上温泉の廃墟群ですが、水上温泉自体は現在も温泉地として知られており、営業している宿泊施設や新たに建設途中の宿泊施設も多数あります。
地元の旅館組合や観光関係者、地域住民は、現在も温泉地としての復活を目指して様々な努力を重ねられており、少しずつながらも当時の賑わいを取り戻しつつあるという事です。
そうした事情もあって、水上温泉に放置されたままの廃墟ホテル群は、景観を損なう、イメージを悪くする、治安の悪化を招くとして地元では問題視されており、取り壊しに向けた取り組みも進められています。
ただ、管理者の所在不明や取り壊しにかかる高額な費用など問題が山積しており、なかなか思うように取り壊しが進んでいないというのが現状のようです。
2022年8月現在は国もようやく対応に動き出しており、2021年度に観光拠点再生などを支援する補助事業が、2022年度には観光地再生やサービスの高付加価値化を支援する補助事業が始まっています。
まとめ
今回は、宿泊施設などの廃墟群や心霊スポットとしてネット上で話題になっている水上温泉についてまとめてみました。
廃墟ホテル群のある水上温泉の場所は「群馬県利根郡みなかみ町湯原」という地域で、最寄駅であるJR水上駅の駅前から温泉が地域一帯にかけて廃墟が点在しています。
廃墟化の理由は、バブル崩壊後の観光客のニーズの変化に対応できずに経営が悪化した事や、2004年に同地域で発覚した温泉偽装問題によって観光客が激減し、倒産するホテルが相次いだ事でした。
水上温泉の廃墟ホテルのいくつかは心霊スポットとしても有名になっており、特に「ホテル藤原郷」の廃墟は、ゴールデンタイムのテレビ番組で「浮遊霊の巣窟」などと紹介された事で全国的に有名になってしまい、肝試しに訪れる若者が後を絶たないようです。
このホテル藤原郷では2022年6月に火災も発生しており、地域住民に不安が広がり、地元警察も警戒を強めています。有名なYouTuberも訪れている心霊スポットとはいえ、敷地内に侵入するのは違法行為となるため、外から景観を眺めるだけにとどめましょう。
そんな水上温泉ですが、現在は温泉地、観光地としての復活を目指し、地元の旅館組合や観光関係者、地域住民などによる取り組みが進んでいます。廃墟群の取り壊しに向けた動きもあるようですが、様々な問題があって思うように進んでいないようです。